• 検索結果がありません。

展開の戦略

ドキュメント内 著者別表示 DU LIN (ページ 149-160)

第 4 章 当事者団体による障害者運動 ———「一加一」と「瓷娃娃自立生活項目」を例

3.3 展開の戦略

3.3.1 エンパワーメント支援

ほとんどの「瓷娃娃」自立生活項目に参加した人は、長い間、家族に依存して暮らして きた。自分1人で何ができるかわからない人が多く、自立生活に対する意識も独立して生 活することにとどまっていた。そこで、「瓷娃娃」は精神的なエンパワーメントを支援す るためにピアカウンセリングを開始した。また、参加者が家から一時的に離れて、自立生 活を実際に体験する支援も必要がある。現段階では 1 人きりでの生活を体験することは 難しいので、シェアハウスの形で3、4人が一つのマンションで生活するという体験を提 供している。

3.3.1.1 精神的なエンパワーメント

過去の障害観念から解き放たれることが自立への第一歩と言える。「瓷娃娃」はまず、

障害のある人びとの自主性を引き出すことを最初に取り上げる。具体的には、参加者の興 味に相応しいトピックを選ぶことや、個人の成長計画を助けて作成すること、コースと卒 業式の設計に全ての人の参加を要求するなどの一連の活動を行っている。それを通じて、

障害のある人がこの過程の中で自分の存在感と認められていることを感じて、自分のこ

とをコントロールできるという信念が高まり、「障害のある人が自立意欲と可能性を持っ ていることを信じて、メンバーの自主性を強調する」と対象者Hが語ってくれた。

また、参加者が自分の強みを発揮するよう、互いに経験を共有して協同的に学ぶチャン スを提供し、常に障害のある人を励ますことが、重要な方法の一つとしてあげられた。そ して、障害者家族の意識については、「多くの障害のある人は、いつも弱い立場に位置付 けられて、家族や周りの意識の影響を受けて、自分の独立した個性や考え方を認識できな い」と対象者Fが語った。このような実情に対し、「瓷娃娃」は家族の障害認識を向上さ せるために、障害者家族を対象とした講義を行い、項目終了時の卒業式に参加させ、障害 のある人と共に認識の変化が生まれることを期待している。

そして、担当職員やピア・カウンセラーは、自立生活項目実施の際に、必ずサポーター として支援することと参加者の潜在的能力を信じることを心がけていると話していた。

以下は担当者とピア・カウンセラーの参加者の精神的なエンパワーメントの支援につい ての話である。

「私たちは、指導者・先生・または援助者ではなく、生活の中での悩みや喜びを共有で きて、共に成長する仲間としてメンバーたちと付き合っている。この過程の中で、ピア・

カウンセラーは、サポーターとしてメンバーの行動を観察し、生活の悩みを記録し、自分 の経験を生かして支援を提供する」(対象者F)。

「以前私も自分のことを認められなくて、障害は悪いことだと思っていた。自立生活項 目に参加して、多くの自立した仲間と知り合って、徐々に私の認識が変わった。いま私は 障害を自分の一部だと考えて、普通の人と同じく自由に生きることも可能なことだと思 って、自信を持つようになった。現在は、項目のピア・カウンセラーとして働いている。

私と同様な経歴の障害者を支援し、自己信頼できない障害者に私の認識と経験を伝える。

自分のことを信頼することが一番重要だと思う。障害を持っていることは一つの「個性」

であり、それ自体何も悪いことではないと伝える」(対象者G)。

3.3.1.2 体験的なエンパワメント

障害のある人は、地域での自立生活を体験することにより、自分のニーズについて理解 でき、生活の各場面においての問題の解決方法や技能を身につけることもできると考え る。このような体験的エンパワメントの支援方法については、「瓷娃娃」は直接手伝う方 法を採用しておらず、参加者の自らの試行を励まし、観察と助言の提供という形式で行っ ている。

「参加者の自立生活の可能性と意欲を信じることは、IL 項目の実施プロセスの中で、

サポーターの私たちにとって非常に重要な信念だと考えている。支持者は彼らに代わっ て問題を解決するのか、それとも彼ら自身で挑戦してみることを励ますか、ということに ついて、私たちのやり方は、彼らの行動を観察して、それぞれの状況に合わせてアドバイ スを提供し、彼らの自己信頼の程度を高めることに努めている。また、成長はいつも間違 いや困難を乗り越えて手にするものだと思うから、メンバーたちがIL項目に参加する際 でも、普段の日常生活の中でも、各方面で挑戦して、互いに支え合い、従来ではできない ことをやってみることを奨励している。何事でも試みる意識があれば、それなりの価値が あると信じている」(対象者F)。

3.3.1.3 バリアフリー生活体験

バリアフリー生活体験の場所と状況について述べる。これは、IL項目の実施期間中に、

北京市以外からの参加者と、独立した生活を体験したい当地の参加者のために用意され ている。

場所については、交通の利便性や、周辺の安全性と生活施設の整備状況を考慮し、バリ アフリー化が済んだ住宅を先決条件とするが、場合によって組織のスタッフが自らの力 で軽い程度のバリアフリー施設の改造も行う。最初の段階では、参加者に一定程度の合理 的配慮を提供するが、徐々に外出の頻度を増やすことなどの訓練を通じて、今後の生活の 自立性を促進する。空間の構成については、平均的に1人15〜20m2であり、ドアの幅は 約60cm以上である。安全的かつ自由に車椅子での移動が行えるように、室内には階段が ない。また、車椅子の使用者のためのコミュニティと基礎的なバリアフリー設備を提供す る。その他、障害のある人のためのトイレやキッチンが付いている。

また、バリアフリー生活体験の支援については、事前インタビュー、個人の成長計画、

グループワークなどの活動が挙げられる。それを通じて、参加者の生活状態や自立生活に 対する期待、個人の成長目標などを把握することができ、そして定期的に参加者の状況を 共有し、個別に支援計画を作って進めている。このような親から離れて生活してみる参加 者たちは、宿泊体験的なものを通じて、自立生活の能力を向上させるだけでなく、自分の ニーズの把握と、多くの仲間と互いに支え合うことも実現できると考える。

3.3.2 ピア・カウンセラーと当事者リーダーの育成

ピア・カウンセラーは、同じ障害のある人で担当し、障害当事者と協力して自立生活を 実現するための必要条件である。「瓷娃娃」のピア・カウンセラーの選抜については、自 立生活意識が高い障害当事者の中で、障害のある人の成長の援助を提供し、自立を促進す

ることを助けたいという意欲を持っていることを条件とする。また、年齢は16歳以上で、

自立生活の経験があり、他人の話がよく聞けて共感できることを重視しており、早期項目 に参加した経験がある当事者に対して内部募集を行う。

アメリカや日本の自立生活センターのピア・カウンセリングと同様に、障害当事者が自 立して生きていく力のあることを、ピア・カウンセラーの経験を通して伝えていくことが できる。「瓷娃娃」のピアカウンセラーは障害のある人と同様な過ちを犯した経験がある ので、感情問題、他人とのトラブルなどが解決できない時に、ピア・カウンセリングの方 法が障害のある人の問題を解決するのに役に立つと考えられる。

また、参加者の中で特に自立に対する理解度が高く、権利擁護の主張意識も強い人に対 し、「瓷娃娃」の従業員として勧誘し、障害者リーダーの育成の基礎を築く。例えば、調 査対象者 H は、自立生活項目に参加する際に、どんなに苦労しても、自分の可能性を探 索し、家から離れて社会の中で自立する力をいかして暮らしていくという意欲が強かっ た。また、当事者性を発揮し、生活上で不公平な扱いを受け時に積極的に自分の権利を擁 護し、周りの人にも影響を与える魅力を持っている。そして、項目が終了した後に、担当 者に「瓷娃娃」の従業員となることを誘われ、現在は「瓷娃娃」の自立生活項目の事務局 員として働いている。社会発展の途上国としての中国では、障害関連制度や権利意識の確 立はまだ十分に進んでいないが、これらの問題に気づいた当事者が増えれば、社会も徐々 に変わると考える。

3.3.3 マニュアルの作成

「瓷娃娃」は2015年5月に「瓷娃娃」で主催された初回の自立生活研究討論会の中で、

中国で初めての「自立生活項目・マニュアル」を発表した。マニュアルの中に、福祉先進 諸国における自立生活センターの状況と「瓷娃娃」自立生活項目が創設されてからの経験 を踏まえながら、中国の障害のある人の自立生活の達成に関する意見を示した。また、項 目は一回ごとに創設者と業務担当者で成果と問題点を検討し、前述のカリキュラムの見 直しと増加を行い、徐々に「瓷娃娃」独自のものを作り上げた。さらに、参加者とその家 族が、外出・教育・就業・家庭生活・周りとの関係・権利擁護等の面についての事例を取 り上げ、自立生活項目を通じてどのように自己決定、自己責任に至るかのプロセスを説明 した。今後の自立生活項目は、このマニュアルを参考にして行うことが可能となる。

ドキュメント内 著者別表示 DU LIN (ページ 149-160)