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国際社会・国際協力の影響

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第 6 章 中国における障害者運動の考察

1.5 国際社会・国際協力の影響

中国の障害者運動は2008年の権利条約の批准をきっかけに発展しているものであり、

国際社会の影響が大きいと言える。また、前文に述べたように、最も活躍している DPO である「一加一」が設立された当初もイギリスからの資金援助を受けている。近年団体の リーダーも積極的に国際会議に参加して発言し、留学経験がある当事者たちもいる。さら

に、障害者権利条約の規定は、中国の障害者運動の展開のあらゆる方面で基礎的な支えと なっている。

2 社会運動論的視点からの中国障害者運動の考察

以下では、社会運動論的視点から、中国障害者運動について、運動形成の要因や、集 団的意識などの障害をめぐる価値観の転換、そして運動の発展を促す諸要因といった側 面から検討する。

まず、運動発生の社会環境要因から論じる。中国では古代から障害のある人のための専 用施設は存在しておらず、社会の貧困者や、孤児、高齢者などの弱い立場にいる人びとを 含めた総合的な収容所が設立された。その後、1949 年に新政府の成立に伴い、一連の社 会福祉制度が制定されたが、障害のある人びとは依然として高齢者と共に「残老院」に配 置された。当時のハンセン病患者に対しては、病院や施設に集中させることなく、家で隔 離して養護することを推進した。さらに、国内の文化大革命などの原因によって、社会全 体の発展はおおよそ1980年代から本格的に始まるので、中国における障害のある人びと は長い時間にわたって生態学的集中が形成されていない。その後、1981 年の国際障害者 年をきっかけに、第4章で言及した呂争鳴が、初めて障害のある人を集めて組織を創設し た。そして、1988 年の障害者連合会の誕生をはじめとして、政府主導の性質を持っては いるが、全国の障害のある人びとの組織が形成されるようになった。

一方、多くの障害のある人びとは、同時期の欧米や日本のように、施設に集中すること はなかった。都市部における一部の障害のある人びとを、集中就業という形式で福祉企業 等の生産活動に従事させたが、改革開放の後に労働力の市場化が進み、このような形式も 徐々に崩れていった。また、政府の民間組織に対する厳しい管理規則も、権利主張などの 活動を行う可能性を抑制してきた。このように、2008 年の障害者権利条約の批准までの おおよそ20年間、中国では権利擁護のための活動が発生することはなかった。

2000年頃から、政府が「福祉の社会化」を提案し、民間組織に対する抑制が一定程度緩 和され、政府によって設立された連合会の他に、民間の障害者組織が出現した。また、2008 年に政府が障害者権利条約を批准したことで、国際社会の障害理念が中国で認められた と理解することができる。これが民間のDPOに権利擁護を主張することの正当性を与え、

運動の発生を大きく促進したと言える。そして、障害のある人びとは、長い間、不十分な 福祉制度と「社会的弱者」という意識の社会環境で生きており、障害者連合会も「個人モ デル」に基づく活動を展開したことで多くの不満を抱えていた。

また、中国では、障害者権利条約の批准をする前に、フェミニズム運動、HIVや環境保 護等の活動が、大規模なものではないが、既に行われている。これらの活動は、平等な権

利の保障と、差異を理解できる多元的社会の実現ということに焦点をあてて、マスコミや インターネットの力を利用して影響力を広げることや、不当な扱いを受けた際に訴訟を 起こす等の事例が、数多く存在している。これに対し、「一加一」をはじめとする DPO の目標は「障害のある人の成長に合わせた多元的社会」であり、本研究の調査からも、そ の展開戦略や方法も他の運動の形式と似ていることがわかる。このようにして、中国にお ける障害者運動の集合行動フレームが形成されたと考える。

次に、運動形成をめぐっての意識や価値観を検討する。本論の調査結果から、2008 年 以来、多くのDPOが権利条約の規定を中心として、一連の差別に反対する権利擁護運動 を展開したことがわかる。また、権利主張のための運動で活躍している障害者リーダーは、

海外への留学経験があり、当地の障害者の状況を理解して、中国における障害のある人び とが置かれている状況を改善しようと試みている。従来の「自らの力で心強く生きること」

という個人モデルに基づく意識から、国際社会に認められた「社会モデル」の認識に転換 させようとする行動を確認できる。さらに、国際障害者会議に、DPO のリーダーが積極 的に参加し、障害のある人の権利意識を学び、またそれを中国に持ち帰って多くの人に共 有する基盤が形成された。そして、自立生活項目に対する調査から、障害のある人びとの 自立生活の意識が出現したことを確認できる。その他、障害に関連する政策の提案書や発 言を積極的に発表し、政策作成の場に「障害当事者の視点」を提示し、当事者性の主張も 見られる。

最後に、運動発展の社会文化的要因から、中国障害者運動の展開と持続性を考察する。

上記の内容から、DPO を中心に、障害のある人の共通の社会空間とネットワークができ たと考えるが、欧米や日本の運動発展の持続性を確保してきた自立生活センターは中国 ではまだ確立されていない。つまり、障害意識の普及運動を行う過程で、他のDPOや家 族組織と連携し、ネットワークを広げることができる。また、地方DPOの展開を支持し、

経験の共有と資金援助を行うことで、全国各地の障害者リーダーとのネットワークは形 成されたが、サービス提供を通じてすべての障害のある人びとのニーズを把握しながら、

権利擁護の持続を保証するような空間がまだ形成されていない。発展途上国として、多く の福祉先進国の影響を受けることは当然であるが、中国の障害者運動では、自国の障害の ある人びとのニーズから形成される「独自の社会モデル理念」は強くないと考える。また、

民間のDPOは、独自の戦略で行政との交渉で一定の政治資源を獲得したが、その資源は 主にサービス提供の方面であり、障害福祉の制定などに関して、まだ欧米や日本のような 十分な影響力を持っていない。

以上を踏まえると、現在の中国障害者運動は、民間DPOの誕生と権利条約の批准、他 の社会運動の戦略の提示、そして長期間蓄積した不満という社会要因によって、その運動

が発生し、展開されている。また、国際社会の影響を受けて、障害の社会モデルの理念を 中国に広げ、国内の障害意識を転換させようとする行動が、現在の障害者運動の中心的な 部分である。しかしながら、全国の福祉制度の不均等や、政府の厳しい管理を原因として、

障害者運動の一層の展開と今後の運動持続性の確保に対して疑問が生じることも事実で あろう。

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