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生活保障について

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第 2 章 中国における障害のある人びとの実態

3.5 生活保障について

のバリアフリー化された出入り口が閉鎖されている現象がある。その他、視覚障害のある 人の専用路の不正占有の現象も珍しくない。

こうしたバリアフリー環境の現状から、中国政府は近年、積極的にバリアフリー化を推 進する意向が見られるが、現段階ではまだ十分に整備されていないと考えている。

1989 年にバリアフリー環境の建設に関連する規定「障害者のための都市部の道路と建 築物のデザイン規範」が施行され、1999年に「都市部道路と建築物のバリアフリー規範」

に改定されたが、その内容は曖昧であり、具体的な指導意見や規則については言及されな かった(呂 2013)。そして、2012年に「バリアフリー環境建設条例」が公表されてから、

中国のバリアフリー環境建設が真の始まりを迎えた。それ以前にできた施設は、本当に障 害のある人びとに利便性を提供するという視点に立っておらず、「坂道の長さが足りな い」、「電柱が視覚障害のある人の専用道路を占める」、「公共場所のバリアフリー化さ れたエスカレーターの中に、視覚障害のある人のための文字が存在しない」などの事例が 度々発生した。また、一部の古い所は改造する際に、大量の資金や人力が必要なので、バ リアフリー化が進んでいない状況もしばしば見られる(沈ほか 2018)。

現在の中国におけるバリアフリー環境に対する意識はまだ弱く、環境建設に関連する 教育項目の整備も十分になされてはいない。当事者たちも長い間社会から排除されたこ とにより外出する意向が弱く、公共施設に行って不合理的なところや、不便なところに出 会っても我慢する人が多い。また、農村部ではバリアフリー環境はまだ始まったばかりで あり、政府が提出した全社会の「平等、参与、享受」というスローガンを実現するには、

まだ程遠いと考える。

ものと、貧困状態にある障害のある人と重度障害のある人に対する特別手当て(中国では

「兩項補貼」と呼ばれる)に分けられる。

3.5.1 法制度の現状

中国の憲法において、障害のある人びとの生活保障について言及されている。「中華人 民共和国の公民が高齢、疾病、または労働能力を喪失した時、国家と社会に経済的支援を 求める権利を有する。国家はこれらの権利を保障するための社会保険、救済、医療衛生事 業を行う責任がある。国家と社会は盲、聾、唖、およびその他の障害を持っている人びと の労働、生活、教育を支援する責任がある」と憲法の第45条に規定されている。現行の 中国の社会保障制度は、障害のある人びとに対する生活保障を含んでいる。

まず、すべての障害のある人びとが享有できる保障制度について述べる。都市部におけ る障害のある人びとは、最低限度の生活保障費(生活保護)、養老保険、医療保険、失業 保険、社会福祉サービスなどの制度により、基本的な生活を保障されている。これに対し、

農村部における障害のある人びとは、最低限度の生活保障費(生活保護)、新型協力医療

29、五保供養30、養老保険により生活が保障されている。また、政府は1991年から5年ご とに「障害者事業発展の計画」を公表し、5年以内の障害者事業の発展の目標と理念を提 示している。2006年に「障害者就業と社会保障事業の十一五実施方案」において、「重度 障害や、一世帯に1人以上障害のある人がいる場合に対し、生活保障の水準を上げること」

という方針を提出した。2010 年に「障害者社会保障とサービスシステムの建設を促進す るための指導意見」の中で、インクルーシブな社会を実現するために、障害のある人びと に対する保障をすべての中国公民の社会保障体系に入れ、その上で特別な手当てや保障 金を給付することが規定された。それをきっかけに、障害のある人びとのニーズを満たす ための社会保障政策の制定が成立した。そして、2015年9 月に、国務院が「貧困状態に ある障害のある人びとへの生活保護金と重度障害のある人びとへの介護手当て制度に関 する意見」を発表し、「意見」はこの2つの手当てを「兩項補貼」と呼び、障害のある人 びとに対する特別な保障制度とした。以下、障害のある人びとの生活保障制度の中の「養 老保険」、「兩項補貼」、「生活保護」という3つの主要な保障政策について検討する。

まず、「養老保険」から見ると、2017年末までに、都市部における2614.7万人の障害 のある人が社会養老保険に加入し、農村部における547.2万人の障害のある人が農村部社 会養老保険に加入した。60歳未満の重度障害のある人びとのうち、529.5万人が政府の補 助金を受け、養老保険料の96.8%を政府が負担している。282.9万人の非重度障害のある 人びとが、養老保険の全額または一部を支払い優遇措置を受けている。また、1億2423万 人が年金を受給している。

障害のある人びとの多くは、労働市場に参入した経験もなく、社会保険に加入していな い状態にある。それにより、障害のある人びとが高齢になったとき、社会からさらに排除 され、困窮した生活を送るという現象が出現した。2016 年から社会保険に加入する障害 のある人びとの比率が増加している。以下の表は 2014 年から 2017 年の都市部と農村部 を含めた社会保険に加入した障害のある人びとの状況を示している。

表2.18 社会保険の加入状況

年 社会保険に加入した数(都市部と農村部の総計)

人数(万人) 増加率(%)

2014 2180.0 ---

2015 2229.6 2.28

2016 2370.6 6.32

2017 2614.7 10.30

出典:中国障害者連合会による『中国障害者事業発展統計公報』2014〜2017のデータに 基づき筆者作成

2008年に改正された「中華人民共和国障害者保障法」において、「生活困窮の障害のあ る人に、社会保険の手当てを給付すること」と規定された。また、2015年に国務院が「障 害者の生活レベルの向上に関する意見」を公布し、特に各地方の政府は貧困状態にある障 害のある人びとや重度障害者を養老保険に加入させるために、保険料の免除や減免、すな わち地方政府が代わりに払う責任があると強調した。そして、2017年に60歳以下の養老 保険に加入した障害のある人びとの中で、全免または一部の料金を払う人は812.4万であ り、全数の31.07%を占めている。重度障害のある人で全免または一部の料金を払ってい

る人数は529.5万人で、保険に加入した全ての重度障害のある人の96.77%になっている。

次に、「兩項補貼」について述べる。2015年に国家が「貧困状態にある障害のある人び とへの生活保護金と重度障害のある人びとへの介護手当制度に関する意見」の中で、「兩 項補貼」という、貧困か重度障害のある人に特別な生活保護手当を給付する制度が制定さ れた。「意見」の内容により、住民の最低生活保障を少し上回る収入がある障害のある人 びとに対し、各地方政府は財政状況により適切に補助する義務もあると規定された。重度 障害のための手当は、障害等級が1、2レベルかつ長期間の介護が必要となる人を対象に する。国家は、経済状況がよい地方では、その給付対象の範囲を非重度の知的、精神や他 の障害のある人から、すべての長時間介護のニーズがある障害のある人にまで拡大する ことを奨励している。

2017年までに「兩項補貼」を受給する範囲は県に広がり、2016年度に受給した障害の ある人の数は1020万で、2017年は2100万になっている。全国の各地の実施状況から見 ると、北京、上海、天津、遼寧、江蘇、浙江、広東、福建省、安徽、陝西、青海など11の 省市が生活手当の受給対象の範囲を拡大した。拡大した対象は主に低所得家庭の障害の ある人と最低生活保障以外の固定収入がない重度障害の人であり、特に北京市は、非低所 得家庭の無所得の成人、障害のある学生および未成年障害者にまで及ぶ。江蘇省、広東省、

青海省の 3 省は、すべての最低生活保障以外の固定収入のない重度障害のある人を含め て手当を給付する。北京、上海、浙江省の3つの省市は、介護手当の受給対象の範囲を拡 大し、1、2級に加え、3級の知的障害、または精神障害のある人も受給対象となり、その うち浙江省は長期的なケアが必要となる3級、4級の知的障害、精神障害のある人にも及 んでいる(牟・易 2018: 147)。

さらに、「生活保護」を取り上げ、養老保険と特別な手当のほかに、障害のある人びと の最も基本的な生活を保障する制度についても少し検討してみる。2011年から2015年ま で、最低生活保障に加入した障害のある人が全体の都市部と農村部の最低生活保障人口 に占める割合は、それぞれ13.60%、14.30%、14.67%、15.61%、16.48%であった。以下の 表2.19 では、2011年から 2015年までの最低限の生活保障に加入した障害のある人びと の人数と総数に占める割合を示している。

表2.19 最低生活保障の加入状況

年 最低生活保障に加入する 障害のある人(万人)

最低生活保障に加入する 総数(万人)

障害のある人の割 合(%)

2011 1031.4 7582.5 13.60

2012 1070.5 7488.0 14.30

2013 1093.0 7452.2 14.67

2014 1105.5 7084.2 15.61

2015 1088.5 6604.7 16.48

出典:中国障害者連合会による『中国障害者事業年鑑』(2012〜2016)、中国国家統計 局による『中国統計年鑑』(2012〜2016)のデータに基づき筆者作成

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