第 2 章 現場作業の災害防止対策
2.6 運搬災害の防止
(1) 概説
取扱い運搬による災害は、全災害中に占める割合は 1/3 にも及んでいる。その災害の原因は、
① 適切でない道具を使用した。
② 場所が狭い。足もとが悪い。整理整頓が不十分であった。
③ 基本動作を忠実に守らない。無理をして運搬した。共同作業の呼吸が合わなかった。
④ 運搬作業の訓練が不十分であった。危険性、有害性の知識がなかった。
等であり、人力作業が不適当な場合は機械作業や器具を活用し、人力を省くようにしなければな らない。このような取扱い運搬災害を防止する対策として次のような事項をまず考えてみるべき である。
① 取扱運搬作業をできるだけ減らすよう現場をレイアウトし、物の流れを単純にする。
② 小物は箱や容器に入れて運ぶ。できれば台車や手押車の利用を考える。
③ シュートなどを設け重力を利用する。またウインチ等の利用を考える。
④ 作業場内の整理整頓を徹底し、通路を確保し、足もとをかためる。
⑤ 作業場内の採光・照明を適切にする。
⑥ 標準作業を定めこれを忠実に守る。
(2) 入力の運搬
① 一人で持ち上げられるか否かを確め、重すぎる時は手伝ってもらう。
② 両足を開き片足をやや前に出して、足場をかためる。場合によっては片ひざを直角にまげ、
一方のひざが床面につくまで下げる。できるだけ体を荷に近づける。
③ 背筋はできるだけまっすぐに伸ばす。
④ 荷をしっかりつかむ。持ち上げたり、運搬するときにすべらないように必要あれば片方の 手を荷の下にまわす。この場合荷物を下すときに手を挟まれないように注意する。
表 2.6.1 入力運搬の限界
作 業 内 容 限 度 持ち上げる l 個の重さ 30kg まで
持ち上げる 1 個の大きさ 平均して 1 ㎥くらいまで
持ち上げる高さ 地上 30〜40cm より 150〜160cm まで もし、台にのぼる場合は 台の段階は 1 段とし、その高さは 30cm まで
持って動く距離 3m 以内
持っている時間 3sec 以内
くり返し作業 してはいけない
危険物 持ってはいけない
⑤ 人力で単純運搬する重さの限度は、ほぼ体重の 35〜40%位で、男子で 20〜25kg、女子で 15kg が目安である。最大でも 55kg を限度とする。(表 2.6.1、表 2.6.2)
⑥ できるだけ水平に直線距離を運搬し、なるべく中継ぎ運搬や反復運搬はしない。
⑦ 荷物の持上げ、おろしの高さを小さくし、頭上より高い位置での運搬はさける。
⑧ 下積みのものを抜きとったり、中抜きをしない。
表 2.6.2 人力運搬中の走行速度
区 分 速度 m/min 条 件
1 個の重量(kg) 標準距離(m)
片手提歩行 50〜70 15 20
両手提歩行 50〜60 15 −
肩荷歩行 60〜70 30 20
手押車歩行 60〜70 500 20
手引車歩行 50〜60 500 20
⑨ 運搬中は下に置いてあるものをまたいだり、踏んだりして運ばない。
⑩ 転がりやすい物、長いものの人力運搬はなるべくさけること。
また危険物や有害物を取り扱う場合には必ず保護具を着用する。
⑪ 背をなるべくまっすぐにしたまま足だけを伸ばして持ち上げる。 (図 2.6.1)
図 2.6.1 人力運搬の標準作業 (3) 人力による長尺物・重量物・危険物の運搬
① パイプ、丸太等の長い物を一人でかついで運搬する場合は、前方の端を身長よりやや高め に上げて運搬する。おろすときははね返りや、思わぬ方向へころがぬように気をつける。
② 長い物を共同で運搬するときは、全員が同じ側の肩でかつぎ、リーダーの合図によって呼 吸を合わせて作業を行う。
③ 重量物の運搬に当っては、熟練者の指揮のもとで予め作業の方法、段取り等を十分慎重に 検討してから作業をはじめる。
④ 数人で一つの重量物を運搬する場合は、体力のいちぢるしく異なった者は加えない。重心 の高い荷物は特に注意を要する。
⑤ 手かぎ、てこ、ころ、ロープ等の補助具は常に点検し整備し、正しく使用する。
⑥ 危険物の運搬は作業指揮者を定めて行う。作業指揮者は危険物について作業者に十分な知 識を与えておく。
⑦ 薬液の飛散、漏えいする心配がある時は、必ず保護具を着用する。
⑧ 温度上昇や湿気によって危険性を生ずるものは、通風、火気、湿気、直射日光、雨等に十 分に注意する。ボンベ類は直射日光にさらさないようにする。
(4) 手押車・リヤ力一・自動車運搬
① 一輪車等の手押車には重すぎる物を無理して載せない。
② 小物は箱などに収納して車に載せる。
③ 不安定なもの、重心が上にある物は載せない。
④ 転がりやすいもの、倒れやすいものはあて物を用い、ロープ掛けなどで固定する。
⑤ 片荷にならないように正しく積むこと。
⑥ 手押車等は前から引かないで、必ず後から押ようにする。
⑦ 荷台に“あおり"のないトラックには人員を荷台に乗せない。
⑧ 構内などでトラックの荷台に人員を乗せ、荷物を監視するような場合は、走行中に荷物が 移動しないよう荷物には歯止め、すべり止めを必ず行う。
⑨ 上記⑧の場合、動揺により墜落のおそれのある危険箇所には人を乗せない。
⑩ トラックの荷掛けに使用するロープはストランドが切断しているもの、著しく損傷している ものは使用しない。ロープに異常を認めたときは直ちに取り替える。
⑪ 一つの荷物の重量が 100kg 以上のものをトラックに積み卸しをする場合には、作業の指揮者 を定める。
⑫ 作業の指揮者は、作業の方法、順序を決定し作業者によく知らせておく。また作業に関係の ない者は立ち入らせない。
⑬ 作業に使用する器具・工具をよく点検し不良品は使用しない。
⑭ 作業指揮者は、ロープ解き、シートはずしを行うときは、荷台の荷物が落下しないかをよく 確認する。
(5) 不整地運搬車による運搬
不整地運搬車にはクローラ式とホイル式があり、クローラ式には鉄クローラとゴムクローラが あって各々その特色を有するが、一般的にはクローラ式は接地圧が小さく運送速度が小さいとい われ、ホイル式は逆に機動性にすぐれるが軟弱地に弱いとされる。また、荷台の形状にも平床 2 方開、スクープエンド(ダンプ)及び平ボディの種類があり、運転席の位置にも前方にあるものと 後方にあるものとがある。それぞれの形式に応じた安全上の配慮が必要である。(図 2.6.2)
不整地運搬車は構造規格の適用を受けており、構造規格を充たさない不整地運搬車の譲渡、貸 与及び設置が禁止されている。運転の業務については最大積載量が 1t 未満の不整地運搬車につい ては特別教育が必要であり、最大積載量が 1t 以上のものの運転は就業制限の対象業務となってい る。すなわち、各都道府県の労働基準局長あるいは労働基準局長が指定する機関の技能教習を終 了した者でなければ最大積載量 1t 以上の不整地運搬車の運転の業務を行うことができない。また、
不整地運搬車は定められた項目について 2 年以内に 1 度の定期検査と、1 カ月以内に 1 度の特定 自主検査を行い、その記録を 3 年以上保存することが義務付けられており、毎日の作業開始前に は点検を行い必要な部分は補修をすることになっている。
不整地運搬車による運搬作業には次のような注意事項があり、遵守されなければならない。
① 運搬作業、荷の積み卸し又は修理作業を行う 場合には、作業計画を作成し、作業指揮者を定 める。
② 運転には資格のあるものをあてる。運転者は 制限速度を守り、運転位置を離れる場合には原 動機を止め、確実にブレーキをかけなければな らない。
図 2.6.2 不整地運搬車
③ 作業開始前の点検は次の事項について行う。不備が発見された場合は整備をしてから作業 を行う。
・制動装置及び操縦装置の機能
・荷役装置及び油圧装置の機能
・履帯又は車輪の異常の有無
・前照燈、尾燈、方向指示器及び警報装置の機能
④ 転倒又は転落の防止のため、運行経路の幅員の確保、地盤の不同沈下の防止、路肩の崩落 の防止等の必要な措置を講ずる。
⑤ 転倒又は転落の危険があるとき、他の建設機械等と接触の危険があるときなどは、誘導者 を置き合図を定めて作業を行う。
⑥ 荷の積み卸しには次の注意が必要である。
・作業指揮者を定め、作業手順を明らかにして作業を行う。
・積載制限重量を越えないこと。
・偏荷重が生じないように積載する。
・荷崩れや荷の落下がないようロープやシートをかける。
・最大積載量が 5 トンを越える場合、荷の積み下ろしのための床面と荷台上との往来のため に安全に昇降する設備を設ける。
・繊維ロープは使用前に点検し、ストランドが切断しているものや著しい損傷があるものは 使用しない。
・荷卸し時の中抜きは危険であるのでさせない。
⑦ 荷台に作業員を乗車させる場合には次の注意が必要である。
・あおりのない不整地運搬車の荷台には乗車させない。
・荷の移動により危険が生じないよう、歯止め、滑り止めなどを用いる。
・あおりを閉じ、車体の動揺により墜落するおそれのない場所に乗車する。
・体の最高部が運転席や荷の最高部を越えないこと。
⑧ 不整地運搬車を移送する場合には次の注意が必要である。
・積み卸しは平坦で堅固な場所で行う。
・道板を使用するときは十分な長さ、巾及び強度を有する道板を用い、適当な勾配で確実に 取付ける。
・盛土、仮設台等を使用するときは、十分な巾、強度並びに適当な勾配を確保する。
(6) モノレールによる運搬
モノレールには貨物用と乗用があり、乗用でないモノレールには絶対に乗車してはならないし、
乗用のものはあらかじめ定められた乗車位置に乗車しなければならない。(図 2.6.3、図 2.6.4、
図 2.6.5)モノレールの機体はメー力、納入業者又はモノレール工業協会により指定された者が行 う定期整備を、貨物用では 3〜5 ヶ月毎あるいは 1 現場毎に 1 回、乗用では 1 ヶ月に l 回の割合で 受けることが推奨されている。
軌条の架設については次のような点に注意を払う必要がある。
① 軌条上面の横方向の傾きは最大±3 度以内とし、±2 度以内の設置が推奨される。
② 最大勾配は 45 度以下とする。