第 3 章 安全管理推進のために
3.9 異常時と災害発生時の措置
このように物の「不安全な状態」と人の「不安全な行動」が共存し、これが組み合わさって災 害が発生するような管理をしている場合、これを「安全管理上の欠陥」としている。
このようにみてくると、災害が発生するのは物の不安全な状態と、人の不安全な行動によるた めであり、災害の原因としては、物と人の両面から明らかにしなければならない。
災害発生のしくみと原因は以上のとおりであるが、その根底には、人間のミスが必ず介在してい ると考えられ、ヒューマン・エラーを災害防止の重要なチェックポイントとしなければならない。
①気のゆるみ ②錯誤 ③省略(手抜き)行為
④憶測判断 ⑤未熟練
などを職場からなくすことは容易なことでなく、多彩な安全衛生活動を手をかえ品をかえ繰り返 し実施して、安全行動をはかることが大切である。
図 3.9.1 災害発生のしくみ
図 3.9.2 災害発生の原因別分布
(2) 異常時の措置
不安全な行動や不安全な状態を異常事態として認識し、これを排除することによって災害の防 止に努めなければならない。したがって現場監督者は自己の担当する範囲の職場について、常に 異常の有無に関心を持ち、体得した経験と知識、さらに基準などを十分に活用して、異常事態を 早期に発見しなければならない。
① 異常事態の発見
一般に職場での異常事態と考えられるものをつぎにあげれば
・機械・装置等の安全装置の故障、破損、機能の低下など。
・防護覆い、囲い等の欠損、取り外しなど。
・運転中の機械の音、振動、加熱などの異常。
・計器類の指針の異常な触れ。
・運転中の機器類の不調。
・機器、工具、用具などの破損、摩耗。などである。
② 異常発見時の措置
現場監督者は災害に直結するような、または災害に直結する可能性のある異常事態を発見し た場合は、直ちに適切な処置をとり、災害を未然に防止しなければならない。処置が適切でな かったために大惨事になった例はたくさんある。
作業はその種類によって作業手順が異っているのと同様に、異常事態の処理もその手順が異 る場合もある。現場監督者は平素から自信をもって正しく処置できるよう心がけておかなけれ ばならない。災害や非常の場合の処置は、つぎのような内容に従って具体的に定めておくのが よい。
・火災・爆発・感電・海難などの非常事態が起きたとき、どのような情報を求め、それをど こに連絡するか、また二次災害を予想して、だれが、どこへ、どんな方法で、なにを、い つ連絡するかを定めておく。
・事故の発生を予測し、もし事故が起きてもそれを拡大させないための具体的方法や防止対 策をきめておく。
・どのような事態が、どこで起き、どの程度のものであるかを十分確かめる。原因と状況を 確かめたうえで、適切な措置をとる。
・応急措置をとる一方、上司に報告してその指示を受ける。また異常現象が軽微で、発見が 早く適切な処置で「正常」に復した場合でもその状況を上司に報告することを忘れてはな らない。
・異常事態が解消された場合でも、なるべく早い機会にその原因を調査検討する。
平常からこのような事態を考慮して、現場監督者は自己の担当職場の機械・設備および作業 手順を検討して、異常時の措置基準を作成し、作業者に訓練しておくことが大切である。
(3) 事故発生時の措置(人身被害のない場合)
異常が発生した場合に緊急措置として、電源の遮断、エンジンの停止などの非常停止を行なう ことが必要である。そのためには現場監督者が平常から作業者に対し教育訓練しておかねばなら ない。また緊急時の連絡方法や連絡先を明示し、電話などで連絡する場合には相手の指示を受け るまで、電話を一方的に切ってはならぬことも併せて指導しておく。 (図 3.9.3)
図 3.9.3 緊急連絡先の明示例
特に爆発、火災時においては二次爆発や延焼のおそれがあるときには、付近のものをすみやか に安全な場所に退避させることが必要である。作業者を安全に退避させるためには、退避基準を 作成し、平常から十分に訓練しておかねばならない。
現場監督者は、現場で異常事態が発生した場合は、直ちにその正確な状態を確認し、冷静沈着 に判断して、正確な指示・命令を与えられるよう平常から心がけておかなければならない。その ために常につぎのことに留意する。
① 職場で異常事態が発生しやすい個所と状況を推定し、その処置について考えておく。
② 作業者が操作を誤りやすい個所を推定し、その処置を考えておく。
③ 以上のほかに偶発故障についてもその処置がとれるようにしておく。
(4) 災害発生時の措置(人身被害のあった場合)
労働災害といってもさまざまな型があるから、その発生時における措置もまた各種各様である。
したがって措置のとり方や順序、そしてタイミングなどもケースバイケースであるが、原則的な ことをつぎに記した。
① 災害発生時には、必ず連結、報告、確認、処置、非常停止、避難、緊急処置(緊急処置を含 む)、災害調査を実施すべきである。そのためには社内における基準を設け、作業手順等を定 め遵守すること。
② 災害の発生した機械設備等については運転を停止する。
③ 被災者を救出して、応急手当をする。
④ 医師、関係者、上司に連絡、報告、また火災、爆発の場合には遅滞なく所轄労基署長に事 故報告書を提出すること。この場合、直ちに消火活動を行ない、二次災害発生の防止に努め る。
⑤ 災害原因究明に備え、現場保持に努める。また、類似災害の防止のため発生状況、原因対 策、その他の事項を社内に周知徹底すること。
⑥ 災害発見者の行動基準、社の内外に対する通報基準、応急措置、処置基準についての規程 を設けておくこと。意外に、この種の規程を定めている事業所は少ない。
⑦ 発生した災害の様子を関係者に知らせて、注意を喚起したり、関心を持ってもらう。
(5) 事故・災害の報告
万一、現場で事故や災害などが発生した時は会社と密接に連絡をとり、監督官庁などへの報告 について適切に対応しなければならない。
災害事故発生時の監督官庁への緊急報告の要点を次に訳す。
① 死亡または死亡のおそれある重篤災害および重大災害(3 名以上の死傷者)が発生したとき は、直ちに所轄労働基準監督署に報告する。
なお、状況により所轄警察署に報告する。
② 火災爆発、クレーン倒壊・土砂崩壊等の事故が発生したときは、所轄労働基準監督署に通 報する。
なお、事故内容により所轄消防署、警察署等関係機関に報告する。
③ 有害物による急性中毒が発生したときは、所轄労働基準監督署に報告する。
事故・災害の報告は所定の用紙を定めておく方が良い(表 3.9.1)用紙例を表 3.9.1 に示した。
(6) 災害調査への協力
災害が発生した場合は、まず応急処置をとると同時に、事実を正しく把握するため、発生状況、
原因等を調査検討し、その状況を記録して再発防止対策の実施等に活用する。
特に、土砂崩壊、落盤、クレーン災害等の重大な災害が発生した時は、技術的知識や経験のあ る人を選任して調査を行う必要がある。
① 一般的な災害調査の留意事項
・災害調査を実施する者は、調査の目的を理解して、常に客観的に、公平な立場をとる。
・災害調査は、発生後できるだけ早く、現場が保存されているうちに実施する。
・災害に関係ある物的なもの、人的なものを集め保管する。
・施設の不安全な状態や、作業者の不安全な行動について、特に留意して調査する。
・できる限り、目撃者や一緒に作業していた者、現場の責任者から当時の状況について説明 を聞く。又被災者から状況の説明を聞くことも大切である。
・現場における平常の慣習や、常識についてもその現場の責任者から聞いて参考とする。
・災害現場の状況については、できるだけ写真や図面を作って記録しておく。
② 具体的な災害調査の留意事項
・事故の直接原因、間接原因
・発生時の施設の状態に、もし不安全な状態があるときは、その背景となった管理的な欠陥
・作業者の不安全行動があるときは、その背景となった管理的な欠陥や、作業者の人的欠陥
・作業方法についての欠陥があるときは、作業手順
・管理的な問題として、作業者に対しての安全の指導、教育や、監督、指示
・災害発生時の作業の手順や内容
・被災者の傷害の性質、部位、程度
・災害発生時の措置
・災害による施設の破損の程度
表 3.9.1 事故・災害報告書(1/2)
業務上 業務外 被害 加害 従業員 委託者 請負者
災害 事故 平成
報告先 総括安全衛生管理者 発 生 事 業 所 発 生 措 置 報 告 書
年 月 日
支 店 長 ・ 所 長 安 全 管 理 者 担 当 者
当 事
者
所属 役職
氏
名
傷 病 名
出
生 大
昭 年 月 日
入 社
昭 年 月 日
程
度
死 重 軽 不 亡 傷 傷 休
休業 予定
日 物
損
車種 形状
登録
番号
物
損 内 容
約 円 設備
機器
相 手 物 損
車種 形状
登録
番号
物
損 内 容
約 円 設備
機器 発生 日時
午前
平 年 月 日( 曜)午後 時 分 気象
条件
発生
場所
発 生 状 況 路 面 状 態
道巾( )m コンクリート舗装 簡易舗装 砂利道 土面路 泥面路 凍結路
積雪路(積雪 m)
道 路 形 態
速度制限 ㎞/H
直進路 十字路 T字路 迂曲路 S 字路 踏切 橋上 上り坂 下り坂(勾配 ) 往路 復路 移動中 その他 当日走行 ㎞ 前日走行 ㎞
現場略図︵必要があれば別紙︶