第 3 章 安全管理推進のために
3.1 安全管理推進のために
(1) 現場管理とは
現場管理とは、“より良く”、“より早く”、“より安く”、“より安全に”仕事を仕上げるための種々 の管理手法のことをいう。
又、安全管理とは、作業員の安全のための管理手法であり、それはまた人間性を尊重した労務 管理でもある。
安全管理を実現することにより、“明るい良い職場”をつくり、“労働意欲を向上し”その結果 として生産性を向上してゆくことにある。
企業経営の最終の目的は、生産性をあげ、収益を確保し、その企業に所属する人々の生活をよ り豊かにすることである。
その目的を達成するための有力、有効な手段が工程管理であり、安全管理である。従ってこの 工程管理と安全管理を、無理なく日常の業務の中で実行してゆくことが一番有効な現場管理であ るということができる。
この様な職場を実現することが現場監督者の義務であり、責任である。
(2) 現場管理の四大機能について
現場管理の意義を簡単に言えば、調査目的物の品質(地質調査の場合は、精度)、調査の期限、
調査の経済性及び安全性の 4 条件をうまく調整し「良く、早く、安く、安全に」完成するように、
調査を計画し管理することが、現場管理である。この品質管理、工程管理、原価管理、及び安全 管理は、現場管理の基本的に必要な四大管理機能である。
簡単にこれらの関係を図に示せば次のようになる。 (図 3.1.1)
図 3.1.1 現場管理の四大管理機能 これらの四大管理機能は各々独立し
たものでなく、企業経営という一つの 枠内で相互に関連性をもったものであ る。安全管理は全てに関連しているの で図示し難く、除外し他の品質管理、
工程管理、原価管理の 3 つは相互に密 接に関連しあっている。(図 3.1.2)
即ち工程と原価の関係は x 曲線の様 になり、施工を早めて出来高を多くす ると単位当りの原価は安くなるが、突 貫作業をすると逆に原価は高くなる。
原価と品質の関係は y 曲線が示すよう に、品質を良くすれば原価は高くなる。
図 3.1.2 工程、原価、品質の相互関係
また、工程と品質の関係は Z 曲線が示すように、施工を早めて突貫作業をすると品質は悪くな る。そこで調査の品質と工期の 2 条件を満足しつつ、いかに経済的に調査を計画し、管理するか が現場管理の眼目である。
実際には更にこの 3 条件に安全管理の条件が加味されなければならない。
(3) 工程管理と安全
現場管理の中での工程管理は、所定の調査を、所定の数量だけ、所定の期間に完成させるため に、現場または事務所内の生産手段を総合的に調整し、且つ経済的に、安全に実施するための管 理活動である。当然その品質及び原価を所期の成果に維持することが前提である。
工程管理の目標は次の 5 つに要約できる。即ち、
① 工期を確保し短縮する
工期を守ることは品質と同様に取引上の絶対条件である。また工期的に始めから無理な場合 は、発注者と事前に良く話しあって適正な工期で受注するよう心掛けるべきである。地質調査 の場合は自然条件が大きく工期に影響するが、事前に十分な調査を行い地質状況を予測して工 程を計画すべきである。
工期を守ることによって発注者からは信頼され、社内においては業務自体が安定した状態で 行なうことができ、作業の無駄は減少し、人や物の効率が向上する。工程管理は最小の費用で 最大の生産を上げるため重要な総合管理の手段である。
調査に要する期間、つまり、受注して報告書を完成、納品するまでの期間を短縮することは コストダウンへの近道である。調査期間を短縮するためには停滞工期の排除を積極的に進める ことが大切である。調査期間を短縮することにより、工期を確保し、原価を下げ、手持調査を 減少させ、新たな受注機会を増大させ、企業活動は活発になってくる。
② 稼働率を上げる。
人や機械の稼働率を高めるためには、基本的には生産方式を合理化することであるが、工程 管理の立場からは日程計画や作業割当ての適正化を進め、手持の減少を図ることである。稼働 率の向上により作業能率は向上し、人や機械の節減ができ生産活動は安定化し、原価の低減を 図ることが出来る。
③ 調査の精度を上げる。
我々の業務は建造物を作ったり、商品を収めたりする仕事でなく、調査結果を報告書として まとめ、それを納品するだけで、いわゆる出来型というものが無い。従って成果物を信頼関係 で納品しているようなものである。その信頼に応えるためにも高い調査精度が必要である。 精 度を維持するためには、必要最小限度の日時が必要であり、そのためには計画的に工程をたて 必要な日数を確保するように管理しなければならない。
④ 原価を下げる。
工程管理の適切な実施を通じて、あくまでも原価の引下げを図ることが目標である。工程管 理面からの原価の引下げは生産統制よりも生産計画に重点をおいて考えること。
⑤ 安全性を確保する。
適正な工期を確保し、事前に十分な調査を行ない、地質条件を予測して、工程、計画をたて て調査することにより、現場は無理なく、余裕をもって実施されることになる。このことは安 全面にも大きな影響を及ぼす。
現場の安全確保の初歩的要件は、
1 に無理をしないこと 2 にあせらないこと
3 に余裕ある工程、計画に従い秩序正しく行なうこと にあることを銘記すべきである。
現場の安全確保のためには、工程管理が重要な役割を果すものである。
(4) 各種工程図表
工程を計画し管理する目的や内容によって各種の工程表が工夫されて使用されている。一般 に使用されている工程表を大きく分ければ次の 3 種類になる。即ち、
・横線式工程表
・座標式工程表
・ネットワーク式工程表
である。以下にその代表的な工程図表について記す。
① 横線式工程表
横線式工程表は、更にガントチャート、バーチャート、グラフ式バーチャートの 3 つに分け られる。以上の工程表を簡単に次の図表で示す。(図 3.1.3,図 3.1.4,図 3.1.5)
図 3.1.3 ガンチャート
図 3.1.4 バーチャート 図 3.1.5 グラフ併用バーチャート
② 座標式工程表
座標式工程表は、X 軸、Y 軸からなり、一方の軸に工事期間を、他の軸に工事量・位置等をと り、座標によって表現するもので、路線に沿った工事、トンネル工事等では、作業場所、進行 状況、工事期間などの工事内容を確実に示すことができる。地質調査の工程管理ではあまり使 用されないのでここでは省略する。
③ ネットワーク工程表
ネットワーク工程表は、工事全体を構成する各作業の相互関係を明確にして、工事の流れ(作 業経路)を矢線に用いて表現する工程表である。この工程表による工程計画のたて方は、ネット ワーク技法として体系的に確立されている。特に他の工程表と比べて計数的に工程を計画し、
管理できる点が優れている。しかも、計数的に表現できるのでコンピューターで管理できる利 点もある。しかし一方ではネットワークを組むのに手間がかかり、簡単な工程計画には向かな い欠点もある。
ネットワーク工程表には、アロー型と、サークル型とがある。
④ アロー型ネットワーク工程表
作業の流れをアロー(矢線)で示すのでこの名がある。一般にはネットワーク工程表といえば、
このアロー型を指す場合が多い。(図 3.1.6)
⑤ サークル型ネットワーク工程表
作業をサークルで表示した工程図表である。サークル型もアロー型と同じく作業の順序関係 を表示する。ただサークル型の場合はネットワーク作成にダミー及結合点の概念を必要としな い。従って矢線で結びつけるだけで、ネットワークが作成できるので簡単である。(図 3.1.7)
図 3.1.7 サークル型ネットワーク工程図 図 3.1.6 アロー型ネットワーク工程図
・ 機材準備をしている間に用地交渉を済ませる
・ 機材準備と用地交渉が終了したら運搬仮設をする
・ 運搬仮設をしている間に地表踏査と導水配管を同時に行なう
・ 運搬仮設、地表踏査、導水配管全てが終了したら掘削を始める
・ 機材準備をしている間に用地交渉を済ませる
・ 機材準備と用地交渉が終了したら運搬仮設をする
・ 運搬仮設をしている間に地表踏査と導水配管を同時に行なう
・ 運搬仮設、地表踏査、導水配管全てが終了したら掘削を始める
(5) 余裕をもって現場作業を行なうために
今、ここに外業部門、試験・計測部門、内業部門の 3 部門で一件工事が完成する仕事を仮定し てみる。この様な場合、それぞれの部門の担当者は自分で日程を考え、クリティパス上の作業を 重点的に管理し予定におくれることなく、次の部門に仕事を引継いでゆくのが一般である。しか しこれを他の部門との関連を考慮に入れて、全体の関係を大局的に眺めることが出来れば、若干 状況が変ってくる場合がある。
今、3 部門が別個に工程を計画し、それを合計した日数が完成日程であるが、これを 3 部門を 合併して工程を組むと個々の作業日数は何等短縮しなくても、全体日数は遥かに少い日数で完成 することができる。(図 3.1.8,図 3.1.9)
このことは、複数の現場を管理する場合に充分応用することができる。図 3.1.8 と図 3.1.9 の 両者を比較すると、部門毎に工程を管理し完成させると 65 日を要するが、これを b 図の様に 3 部 門を統合して工程を考えれば、40 日で完成することが出来る。これは、3 部門を統合する事によ りクリティカルパスが他の所を通るためである。
この例のように部分だけで物事を考えようとすると、「全体最適」という意味での合理性を失う 事になる。 しかし現実にはまだまだ全体の関係を無視し、部分を積み上げて全体の格好をつけて、
まとめてしまう考え方が多い。今後は仕事が複雑になったり、ビッグプロジェクトの様に組織が 大きくなってくると、部分思考では思わぬ所にネックが発生する。一局所を改める事によって素 晴らしい成果を収めても、全体的な機能を失ってはその効果はあまり期待できない。これからの 時代は、多くの要素を全体として有機的に結合し、総合化するための思考、即システム思考が重 要な意味を持ってくるようになる。
「部分思考から全体思考へ」これが余裕をもって現場作業を行なうための指針である。
図 3.1.8 3 部門が別個に組んだ
ネットワーク工程図 図 3.1.9 3 部門を統合して組んだ ネットワーク工程図
全体で所要日数65日
全体で所要日数40日