第 3 章 安全管理推進のために
3.5 指導および教育の方法
② 第 2 段階……作業を説明する。
第 l 段階で教える方の用意と習う人の受入れ態勢が整っているはずである。 そこで教える方 は習う人へ作業を説明することになる。 ここで大切なことは、仕事を進めるための主な作業手 順、つまりステップ、急所の理由まで教えることである。機能的に急所がなぜ必要かを分から せておけば、記憶も深まり忘れにくくなる。
この場合作業分解表があれば作業の内容を順序よく、手落ちなく、簡明に何回でも正確に説 明できる。また必要があれば仕様書、取扱説明書なども用いてみるのもよい。今日では関連知 識の教育も必要な場合もある。 具体的には:
・主なステップを 1 つずつ言って聞かせ、やって見せ、書いてみせる。
・急所を強調する。
・理解する能力以上に強いない。
③ 第 3 段階……やらせてみる。
第 3 段階は習う人に実際にやらせてみることである。 頭で理解したようにみえても実際にや ってみるとなかなかうまくできないものである。「やることによって始めて習得できる」もので あり、知行一致になってはじめて安全作業を教えた効果が現われる。
この段階では動作、手順、急所、および急所の理由について実際に行なわせて相手が覚えた ことを確認する必要がある。多少のことは良いだろうという気持ちで作業に従事させると、往々 にして取り返しのつかない災害を起こすことになる。具体的には:
・やらせてみて……間違いを直す。
・やらせながら作業を説明させる。
・もう一度やらせながら急所を言わせる。
・わかったとわかるまで確かめる。
④ 第 4 段階……教えたあとをみる。
実際に仕事につかせてみる。しかしすぐ目をはなしてしまうと正しい作業手順を忘れ、間違 ったことをする場合もある。正しい作業が習慣になるまで面倒をみる必要がある。そうして正 確で、安全で楽に作業ができる方法が身について、はじめて安全な態度に仕上がる。
現場監督者はその観察結果、仕上がり状況を十分に検討し最後のしめくくりとして、「相手が 覚えていないのは自分が教えなかったのだ」と考え、次ぎの指導に貢献させてゆく心構えが必 要である。具体的には:
・仕事につかせる。
・わからぬときに聞く人をきめておく。
・たびたび調べる。
・質問するように仕向ける。
・だんだん指導を減らしてゆく。
以上の効果的な指導の方法を表 3.5.1 にまとめて示す。
表 3.5.1 仕事の教え方 用意の仕方
教える前に
訓練予定表を作る 誰れを……
どの作業に……
いつまでに……
作業を分解する 主なステップを列記する 急所をとり出す
総てのものを用意する 正しい設備、道具、材料その他必要なもの
作業場を整理する 作業員が常に守ることになっているようにきちんと
教え方の四段階 第一段階
習う準備をさせる
気楽にさせる
何の作業をやるかを話す
その作業について知っている程度を確める 作業を覚えたい気持ちにさせる
正しい位置につかせる 第二段階
作 業 を 説 明 す る
主なステップを 1 つずつ言って聞かせ、やって見せ、書いて見せる 急所を強調する
はっきりと、ぬかりなく、根気よく、理解する能力以上に強いない 第三段階
や ら せ て み る
やらせてみて、間違いを直す やらせながら作業を説明させる もう一度やらせながら急所を言わせる わかったとわかるまで確める
第四段階
教えたあとをみる
仕事につかせる
わからぬときに聞く人をきめておく 度々しらべる
質問するように仕向ける 段々指導をへらして行く
(3) 現場教育の原則
現場監督者が指導教育を上手に行なうためには、その教育の原則の基本的なものを知っておく 必要がある。多くの原則のうちとくに大切なものを以下にあげる。
① 相手の立場にたって
現場での教育指導は相手が覚え上達し、指導者の望んでいるレベルまで進歩させてこそ効果 がある。指導者が一方的にしゃべったり、やってみせても相手にその内容が伝わらず、目標ど おりに相手が進歩しなければ徒労である。相手が覚えてくれなかったときは、相手の不勉強や 無能力のせいにせず、自分の指導能力の至らなかったことを反省すべきである。
② 動機づけを大切に
指導教育には動機づけをすることが大切であり、この前提がなければまず成功はしない。そ のために習得することの意義、目的、価値、本人への影響をよく説明することが必要である。
そうしてその目的や重要性をよく理解させ、納得させる。
③ やさしいことから難しいことへ
すでに持っている知識や技能を土台にして、相手が理解し習得しうる程度に合わせて、少し ずつ程度を高めながら教育してゆく。そうすることによって習得しえた達成感を与え、自信を つけ、学習する意欲を高めてゆく。
④ 一時に一事を
一度に多くのことを教えると混乱をきたす。その相手の能力に合わせ、相手が習得できる速 さで、一回にひとつのことを教えてゆくと理解、習得が容易となる。
⑤ 反復する
安全教育は知行一致が不可欠である。行動が技能化し、習慣化するまで根気よく繰り返し実 行させる必要がある。 技能は実際に行なってみてはじめて習得できるものである。その根底と なる知識を反復することにより、記憶も確立し定着するものである。
⑥ 印象の強化
教える場合に他のことを混ぜて説明すると肝心の重点、急所がぼけてしまう。抽象的、概念 的でなく事実によって具体的に実際に即した説明を行なう。
⑦ 五感の活用
ただ講義するだけでなく、視聴覚をフルに活用し教育するとその効果は高い。前者にくらべ 後者の方は 1/12 の速さで理解し、55%程度記憶の歩留まりがよいといわれている。
⑧ 機能的に理解させる
その作業手順をなぜ守らねばならないのか、そのような急所がなぜ必要なのかを十分に理解 させると、記憶が確実となり忘れにくくなる。規則で決められていると言うだけで、実行を強 制することはやむをえない時にのみ限定すべき指導方法である。
(4) 教育効果の持続
安全教育は反復練習してはじめて身につくものであり、習い性となり習慣化が実現できる。期 待される作業者としての知識、技能、態度の具備が完全に実現されるまで、現場監督者は正しい 作業方法を根気よく日常業務の中で教育し、監督していかなければならない。安全教育は現場で の教育であることを認識し、常に工夫し、機会をつかんで追指導を行なうのは、現場監督者とし ての重要な業務である。
① 教育効果の持続法
安全教育の効果を持続するために、現場監督者は率先垂範で実施し、日常指導の中で正しい 作業方法が身につくまで、根気よく継続的に接触指導を行なう。また朝礼、ツールボックス・
ミーティング、定例会合等の場を利用することも有効である。また安全委員等を交替で実施さ せたり、安全作業について建設的に協力し、よい提案などを出した時はその成果を認め、時機 を失わずほめてやることは非常に有効である。
また不完全な作業を発見した場合は、直ちにこれを指摘し是正させる。さらに是正だけにと どまらず、不完全行動がなぜ行なわれたかを調査しその根本原因を究明し、必要があれば再教 育を行なう。
② 指導教育の機会のつかみ方
指導教育をするため、とくに追指導のためには始業時、仕事の変わり目、暇なとき、指示・
命令を与えたとき、報告を受けるとき、職場会議のとき、仕事に関し質問を受けたとき、一緒 に仕事をしたとき等の機会を利用すると効果的に追指導を行なうことができる。
(5) 新入者教育
平成 2 年 10 月に改正された労働安全衛生規則によると、新たにボーリングマシンの運転に携わ る者は、安全衛生についての特別教育を受けなければならなくなった。ただしマシンの運転を行 なわない者は対象者とはならないが、安全作業についての認識を高めるためにも受講することが 推奨されている。この教育は学科 7 時間、実技 5 時間で構成されている。事業者は特別教育を実 施したら、受講者や学科の記録を 3 年以上保存することを義務づけられている。
この特別教育によらない場合は、次の事項について新入者の安全教育を行なうべきである。
・機械設備等の危険性、有害性およびその取り扱い方法。
・原材料等の危険性、有害性およびその取り扱い方法。
・安全装置、保護具等の性能およびその取り扱い方法。
・作業手順や作業開始時の点検方法
・その業務に関し発生するおそれのある病気の原因とその予防法
・整理・整頓や清潔の保持の方法
・事故発生時の応急措置や退避の方法 (6) 現場監督者教育
現場監督者は安全衛生に関する監督業務を、日常の監督業務の中で効果的に果たさなければな らない。経営者、管理者は現場監督者に対し、定期的または必要に応じ教育を行なう必要がある。
教育は以下の点を重点的に行なう。
・作業手順(標準)を設定すること。
・作業手順のうちの安全上の急所を部下に励行させること。
・部下の能力、経験に応じた適正配置を行なうこと。
・職場における安全衛生教育を行なうこと。
・部下の安全衛生の向上に対する工夫と安全規律が習慣化して身につけさせる努力をすること。
・職場の機械、施設の保全と自主点検の励行。
・安全に関する改善提案の奨励。
・異常時または災害発生時に調査および再発防止対策の実施。
・防火、救急に対する訓練。
(7) ライン管理者教育
現場監督者の上にたつライン管理者は、一般に課長、次長、部長と呼ばれる人たちである。災 害のない職場は、これら上にたつライン管理者の安全衛生に対する関心と理解がなければ、達成 することはおぼつかない。各企業において安全衛生管理体系を作りあげ、安全委員会を設置し定 期的な会合を聞き、種々の問題点を討議するようにする。この会合にライン管理者の出席を求め、
安全衛生に対する関心と理解を深めることが必要である。
また現場監督者は現場で発生する、安全衛生に関する情報は逐一上司に報告し、問題点がある 場合にはその指示を仰ぎ、常に緊密な連携を保たねばならない。このような災害防止に対する意 識の高揚は災害のない職場の実現に不可欠なものである。
(8) 下請業者教育
ある工事を元請として受注し、この工事を下請業者に施工させる場合が多々あると思われる。
このような場合には当該工事について、安全衛生上の点から下請業者に対し教育を行なわねばな らない。元請の工事責任者は、工事着手前に安全衛生管理者のもとに安全委員会を設置し、当該 工事に従事する現場監督者を集め教育を行なう。
さらに工事が長期にわたる場合には、月ごとに委員会を開き下請の現場監督者を出席させ、安 全作業実施の状況を報告させたり、問題点について相互に情報の交換を行なう。とくに機械設備 の点検は、点検表に基づき確実に実施させ、始業前点検表は毎日提出するよう指導する。