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災害調査と結果の活かし方

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第 3 章   安全管理推進のために

3.10  災害調査と結果の活かし方

労働災害は再び繰り返したくないと誰もが願っているが、毎年のように 100 万人近くの被災者 が発生しており、そのほとんどは在来型の繰り返し災害によるものである。 

最近における労働災害の発生は、全体としては減少の傾向を示しているが、一方、交通災害、

爆発、火災やクレーン災害などによる災害は増加している。また、技術革新の進歩や新工法の採 用に基づく新しい型の災害も散発している。 

不幸にして災害が発生してしまった場合には、そこからなにを学びとるか。私たちは、災害の 深層を究明し、災害の再発防止のために重要な指針を得ることに努める必要がある。 

(1) 調査の必要性 

災害調査の目的は、同種災害を二度と繰り返さないように、災害の原因となった不安全な状態 および不安全な行動を発見し、これをさらに分析検討し、その背後にあって災害発生の重要な契 機となった基本的な要因を明らかにし、適正な対策をたてることにある。したがって、災害が発 生した場合は、被害の大小にかかわらず、常に徹底的にその原因を追及することが大切である。 

災害調査は、調査することが目的ではなく、また、関係者の責任を追及することが目的ではな い。災害調査で大切なことは、真実を知り、事後の安全対策を正すことである。したがって、災 害調査は、会社または、職場の総力をあげて、定められた労働災害報告書の内容について適正に 実施されるべきである。調査者には、災害の元となった事故の真実の原因をつかむことができる ボーリング作業に明るい人を選ぶことが望ましい。(表 3.10.1) 

表 3.10.1  事故・災害発生時の措置 

手  順  措  置  措    置    の    内    容 

緊 急 措 置 

1  被災機械の停止  2  被災者の救出 

3  被災者の応急手当(救急処置)  4  関係者に通報 

5  2 次災害の防止  6  現場の保存 

災 害 調 査 

災害要因の摘出  1  だれが 

2  いつ 

3  とのような場所で 

4  どのような作業をしているときに  5  どのような物または環境に 

6  どのような不安全な状態または行動があって  7  どのようにして災害が発生したか 

原 因 の 決 定 

原  因  分  析  1  直接原因(人・物) 

2  間接原因(管理)  対 策 の 樹 立 

安全衛生の 12 の鍵により  1  同種災害の防止対策 

2  類似災害の防止対策  実 施 計 画  5W1H の原則に基づき 

施   

価   

(2) 災害調査の留意事項 

①  い      つ 

一般には、事故や災害時には緊急措置が行われ、職場の状況が正常に治まったのち、現場の 状況が変更されないうちにできるだけ速やかに災害調査を実施すること。 

②  だ  れ  が 

調査に関係する参加者は、2 人以上の人員で災害に関係のあるラインの管理・監督者および 作業者を中心に安全管理者や衛生管理者、安全衛生委員会の委員、職場の安全衛生推進員など の参加を求める。被災者、目撃者、現場の責任者、設備の点検保守の責任から、できるかぎり 事情の聴取をする必要がある。学問的、理論的判断を必要とする場合には、学識経験者の力を 借りるが、実務的には、労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントなどを依頼するの が望ましい。これらの人たちはつぎのような特性を持っている。 

・現場の管理・監督者は、現場の人と物との構成関係について最も詳細に熟知している。 

・安全衛生スタッフは、安全衛生に関する会社の方針と現場との関係を充分に知っており、

災害の原因となった物的欠陥、人的欠陥及び管理的欠陥に対する災害防止対策を社内的に 広く推進する立場にある。 

・安全衛生委員会の委員は、災害状況に対して公正な立場で調査し、判断をすることができ る。 

・職場の安全衛生推進員は職場特有の災害原因をつかむことがきる。 

調査者は、公正な立場に立ち、判断を誤らないようにし、聴取する関係者に対しては、高圧 的でなく、親しみをもって接するようにし、責任追及の態度は特につつしむ必要がある。 

③  だ  れ  に 

事故や災害発生当時現場に居合わせた作業者および被災者の協力を求めて調査を行う。 特に、

当該現場の周囲に目撃者がいなかった場合には、調査は慎重に要する。 

④  なにを、どのように 

・作業の開始から災害発生までの経過および人的、物的被害状況を 5W1H の原則に基づきなる べく客観的に、詳細につかむため、つぎの事項を文書として記録すること。必要があれば、

テープ・レコーダーによる録音やビデオ・テープ・レコーダーによる録画を併用すると有 効である。 

・い      つ 

・だ  れ  が 

・ど  こ  で 

・どんな作業をしていたときに 

・どのような不安全な状態または作  業者に不安全な行動があって 

・どのようにして災害が発生したか 

・災害現場の状況については、写真撮影や見取り図を作成するほか、必要に応じて測量、測 定・検査や試料採取などを行うこと。 

・災害に関係があると思われる物件は、原因が決定されるまで保管すること。必要があれば、

試料の分析を行う。 

・災害の元となった事故の原因調査に重点をおき、災害要素や対策に無関係と認められる余 分な項目の調査はできるだけ避けること。 

・災害当日の状況のほか、平常の職場の慣習やヒヤリ、ハット、トラブルや異常事態の兆候 および発生状況についても情報を入手すること。 

・災害に直接関係のある不安全な状態や不安全な行動のほか管理・監督者の管理状況とその 欠陥についても調査すること。 

・二次的災害が発生した場合など、必要があれば、災害発生の措置の経過および内容とその 適否についても調査すること。 

・調査結果に基づき災害要因を直接原因である人・物の面から、分析・検討し、これらの相 関関係とウエイトから真実の災害原因の究明に努めること。 

この場合、被災者や目撃者のいう憶測や判断または心理的状態などに関することは、事実と は区別して参考程度にとどめる。 

(3) 災害発生までの経過の把握 

災害調査に当たっては、作業の開始前後から災害発生までの経過を把握する必要があるが、特 に不安全な状態および不安全な行動ならびにそのような状態がなぜ起こったか、その原因および 背景となる事実を明らかにする。なお、トラブルや異常事態の有無、およびその内容ならびに異 常時の措置、または災害発生時の措置の状況についても明らかにする。 

災害発生までの経過の把握に際しては、特につぎの点に留意する。 

①  5W1H 原則に基づくこと。 

②  事実を経過的(時系列)に配列すること。 

③  真相を忠実につかみ、なるべく客観的に、正確に、簡潔に、表現すること。 即場、即物、

即人的に表現することが大切である。 

④  事実の背景となる管理面の状況を明らかにすること。 

⑤  不安全な状態および不安全な行動の詳細を明らかにすること。 

(4) 調査すべき事項 

発生した災害の調査項目は、一般的につぎのものがある。 

①  発生年月日、時刻、場所 

②  被災者の氏名、性別、年齢、経験(年数)、現場就労日数 

③  被災者の作業、職種 

④  被災者の傷病の程度、部位、性質 

⑤  事故の型 

⑥  起因物 

⑦  加害物 

⑧  被災者の不安全な行動 

⑨  被災者の不安全な心的要素 

⑩  起因物の不安全な状態 

⑪  管理的要素の欠陥 

⑫  その他必要事項 

以上の項目について調査した結果は(表 3.9.1) にまとめて記載する。 

 

事故の型    事故の型とは、傷病を受けるもととなった起因物が関係した現象をいう。

起因物    起因物とは、事故をもたらすもととなった機械、装置もしくはその他の物または環境等 をいう。

不安全な状態    起因物が事故に関係するに至ったことについて、現存し、または介在した客観的 な不安全要素をいう。

不安全な行動    事故をもたらすこととなった作業者自身の行動についての不安全な要素をいう。

不安全な人的要素    不安全な行動をした作業者の不健全な精神的もしくは身体的要素、または状 態をいう。

管理的要素の欠陥    不安全な行動や、不安全な状態に至らしめた管理、監督者の不十分な管理、

監督の状態をいう。

傷病の部位    負傷または疾病におかされた身体の部分をあらわすもので、第10ILO国際労働 統計家会議で採択された分類に準ずる。

傷病の性質    負傷または疾病の医学的性質またはその種類をあらわすもので、前記同様ILO分類 に準ずる。

 (5) 災害原因の分析 

災害発生の原因を構成するものに、災害を起こす引金となった第一次原因である物の不安全状 態と人の不安全行動、すなわち直接原因と通常いわれているものと、第一原因の存在(発生)理由 となった第二次原因とでもいうべき基本的な原因がある。 

後者は、従来は間接原因といわれていたが、この用語では、災害発生とあまり関係のない事実 でも数多く挙げれば原因分析を綿密にやったと誤解したり、そのような分析では逆に、直接原因 の背後にあった本質的な欠陥の究明をぼかしかねないことなどのために、最近では基本原因とい われている。要するに直接原因は、もっと深い根底にある問題の徴候として現れたものであって、

その基本原因を明らかにすることによって、真に効果的かつ永続的な安全対策が可能となるので ある。 

つぎに、原因分析における留意事項を挙げる。 

①  直接原因である物的原因、すなわち不安全状態と人的原因すなわち不安全行動に該当する 事実の有無を明らかにする。 

②  直接原因には、不安全状態と不安全行動の両方が存在する場合が大部分である。 

③  基本原因は、不安全状態と不安全行動のそれぞれについて検討を行う必要がある。その内 容はつぎのようになる。 

(a) 人間的要因 

作業者の心理的要因(無意識行動、危険感覚の欠除、憶測判断錯覚、忘却、考えごと  など)  作業者の生理的要因(疲労、睡眠不足、身体機能の低下、疾病、アルコール  など)  職場の要因(職場の人間関係、チームワーク、コミュニケーション、監督者のリーダーシッ

プ  など)   

 

調査に必要な用語の説明

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