第 3 章 安全管理推進のために
3.3 作業改善と作業手順の進め方
(1) 作業改善の目的
作業の中で災害原因につながると思われる要素を分析・検討して、危険な要素を取り除き、災 害発生を未然に防止することが、作業方法改善の目的である。従って監督者は職場の中から不安 全な行動を発見し、作業方法を改善したり、より安全に改善するように心がけることが大切であ る。とくに災害の 7 割は不安全行動によるものであるから、災害を防止するためには作業行動そ のものを分析・改善することから始めなければならない。災害は人と物との異常な接触によるも のであるから、作業点における物の不安定状態も検討しなければならないのは当然である。
改善は「既存の知識と経験の新らしい組合せをはかる」ことであるから、改善にあたっては関 連知識は勿論、広く一般的な知識を吸収し、職場経験を生かしてゆくことが必要である。同時に また作業動作の無理や、無駄を排除すべきでもある。具体的には、
① 不安全な行動に対する改善
不安全な行動といっても、それは単に表面のみを眺めるのではなく、状況を深く究明し、そ の原因となった条件を分析して排除することが安全への最大の近道である。
② より安全な行動へ
特に不安全な行動ではない一般の作業行動であっても、より一層安全に、より能率的に改善 することによって、更に効果的な生産を進めることが出来る。従って現状に慣れて満足してい ては改善のポイントを発見することは出来ない。常に前向きに現状を反省する態度で、より効 果的な、安全な作業改善を考えねばならない。
(2) 作業改善の方法
作業改善の第一歩はまず疑問をもつことである。現在の作業の方法をなるべく細かく、正確に 一つ一つ動作毎に書き並べ、それらについて 5W1H の自問を行ってみる。
(a) なぜ必要なのか?
(b) その目的はなにか?
その動作がどんな役割を果しているのか?、安全を保持するために必要な動作なのか? と自 問して、不要な動作等を除去することにより、作業改善ができる。取り去ることの出来ない 動作、どうしても必要な動作については次の四つの自問をなし、その動作を最もよい方法に 改善する。
(c) どこでするのがよいのか?
(d) いつするのがよいのか?
(e) 誰れが最も適する人なのか?
(f) どんな方法がよいのか?
この様に現状を否定することによって改善の糸口が見つけ出される。 これら 6 つの疑問が改善 を芽生えさせる力となる。グループでアイディアを出しあい材料、機械、設備、道具、設計、配 置、動作、安全、整理整頓など項目に着目して改善の発想を育てあげてゆくことが大切である。
作業が忙しいとつい作業分解をする時間を惜しみがちになるが、監督者でも現場の作業をすみ からすみまで掌握しているつもりでも、やはり直接に作業を目でみて確認し、その一つ一つを細 かく記録する。作業分解によってはじめて正確な記録がとれ、作業の実際の姿をつかみ、はじめ て細かい点まで掌握できるものである。 これが作業改善の土台となり出発点となる。作業改善の
成否の半ばは作業分解が細く、正確に行なわれているかどうかにかかっている。事故、災害、危 険の多い作業からまず選び出し、それから作業改善に着手してゆくようにする。
作業改善の方法にはいろいろな方法があり、創意工夫を発揮できるよう、小集団で自由に「ひ らめきの着想」を出しあって、衆知を集めることも非常に有効である。
しかし、何といっても現場の中心にある現場監督者が現状に甘んぜず、積極的に現在行ってい る作業を分解し、今のやり方に疑問をもって反省し、さらにもっと良い方法をたゆみなく追究し てゆくその姿勢こそ、作業改善の効率を左右するものである。それがリーダーシップ発揮の有力 な手段であり、職場のモラル、チームワークの源泉でもある。
(3) 作業手順と作業標準
一つの作業には一般に基本的なやり方がある。それは作業者にとってはやりやすく、安全でな ければならず、監督者にとっては管理しやすくなければならない。
ここで一つの作業というのは、A 点から B 点に荷物を運搬する等の一つの特定の単位作業、あ るいはこの単位作業を構成する個々の特定の要素作業をいう。要素作業で構成されたいくつかの 連続した単位作業の順序を作業手順といい、生産、品質、安全の面からみて、基準となる作業の やり方の順序を定めたものでもある。
この作業手順の中に作業ステップごとに、仕事の成否や安全についての急所を明示し、成文化 したものを作業標準という。
現場監督者は担当する職場の作業標準を自ら定め、これを部下に教育し、作業中も監督指導し て励行させなければならない。
① 作業標準と安全規定の関係
作業標準は一つの定められた作業の範囲を対象として作業の流れを秩序づけるものである。
一方安全規定は全社横断的に安全上考えねばならぬ作業の急所を集約したものである。安全規 定をヨコ糸とすれば、作業標準はタテ糸の関係である。
② 作業標準の意義
作業標準は作業のムリ、ムダ、ムラを省き、職場から不安全な行動を排除するための基本と なる。主な作業については作業標準が制定されており、作業標準が監督者によって作業者一人 ひとりに正しく教育訓練され、理解され、励行されている状態の職場が望ましい職場といえる。
(4) 作業の標準化
① 作業標準化の前提条件
作業の標準化をすすめるには、管理者のリードと全従業員の理解と協力が絶対に必要である。
作業標準はみんなのものであり、みんなが守らねばならないものである。作業の標準化を行な うためには次のような前提条件が必要である。
第一は、適正な設備と整理整頓された良い環境の作業場所であること。その作業に適した設 備で、危険な操作を必要としない職場でなければならない。
第二は、作業方法の検討である。新規作業の場合も現行作業でも、作業そのものを単純化し、
専門化することができないかを十分に考えてみる。例えば、手作業を機械化できないか、流れ 作業方式を採用できないか、もしくは設備のレイアウトの改善、作業条件の改正など、色々な 面から検討し、必要に応じて上司に改善提案または意見具申ができる体制でなければならない。
② 作業標準の要件
安全を確保しつつ決められた精度のものを、決められた時間内に、精度よく、正しく楽にで きる標準でなければならない。
すなわち作業の流れの実態に合致しており、だれにも分かりやすく、具体的なものであり、
むずかしかったり、読む人によって解釈が異なるようなあいまいな表現であってはならない。
作業標準の具備すべき要件を次にあげる。
第一に作業の実情に即したものであることが大切である。作業の目的がよく理解され、作業 の内容が正しく分析されたうえで作成されたものでなければならない。
第二によい作業の標準であることが必要である。よい作業とは安全に、早く、かつ楽に行え る作業であり、ムリ、ムラ、ムダのない作業である。
第三に作業や品質(調査精度)の特性に見合ったものであること。ある程度の幅があり、少し ぐらい作業者が間違っても調査精度がだめになったり、事故につながるような作業標準であっ てはならない。例えば「60℃で 30 分攪拌」と定めるのでなく「60℃±3℃で 30 分±5 分攪拌」
のような基準を示すのがよい。
第四に他の規定との関係を配慮する。とくに保守、公害防止等に関する規定に留意し、これ に関することは絶対に守らせるとか、禁止事項を明示したものでなければならない。
③ 作業標準と安全衛生
作業標準はある特定の作業を対象とするのに対し、安全衛生の規定は全社横断的な同類作業 を対象としたものである。安全衛生の規定は必要最少限度の遵守事項を定めたものであり、作 業標準励行のための前提条件といえる。
次に不安全行動が起る原因のうち作業標準に関係のあるものをあげると
・その作業についての作業標準ができていない。(対策:作業標準の作成)
・作業方法の変更のために既設の作業標準が不備になっている。(対策:作業標準の改正)
・作業標準そのものに欠陥がある。(対策:標準検討)
・設備または環境に欠陥があるため、現在の作業標準の作業ステップに無理がある。(対策:
設備、環境の改善)
・作業標準の教育訓練が不十分。(対策:再教育)
・作業者が作業標準を確実に励行しない。(対策:作業標準の再教育、場合によっては処罰) (5) 作業標準の作成
作業標準は監督者が適切に管理できる範囲の作業の大きさを対象として作成する。作業標準を 作成する作業の大きさは、一つの単位作業を対象とするか、これを構成する標準作業、本体作業、
後片付作業ごとこれを対象としてもよい。又作業標準の対象は、作業の種類別、機械別、項目別 であるとか、或は単独作業、共同作業に区分して作成する場合もある。
① 作業標準の作成者
一般に現場監督者が案を作成し、これを関係のあるラインまたはスタッフの人々が検討し、
さらに作業標準作成委員会などの専門委員にはかるというのが順序である。
現場監督者が原案を作るのは、職場の実情にもっともくわしく、実態に適合したものを作る ことができるからである。それは技術者が作成すると作業標準がむづかしくなり、作業者が守 りにくいものとなりやすいからである。