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第 4 章 農地賃貸市場の形成と農地利用の効率性:浙江省の事例を中心に

第 3 節 浙江省調査地域の農地流動化の特徴

3.3. 農地流動化の特徴

ニ係数を比較すると、2 つの値に大きな開きがあることがわかる。すなわち、農地面積の ジニ係数は請負面積のそれを大きく上回り、経営農地面積に関する農家間格差が非常に大 きいことである。このことは、請負面積については世帯員数や労働者数で相対的に均等に 配分されていたが、その後の農地流動化や農地転用などによって、農地配分の不平等化が 進んだこと、そして林地面積は村民全員の承包の対象とならず、特定の農家に請け負わせ る形で配分されたことが関係していると考えられる。

15

表 4-4 農地賃貸の基本状況

(1)農地貸出

世帯比率 契約期間

(%) 平均 変動係数 平均 変動係数 (年)

奉化市 転包 39 2.15 0.55 374 0.40 9.85 25

転包 21 3.13 0.52 503 0.30 14.07 4

反租倒包 22 3.98 0.52 465 0.22 12.49 0

徳清県

形式

貸出

面積(ムー) 地代(元/ムー) 地代受け取

りなし

(%)

(2)農地借入

世帯比率 契約期間

(%) 平均 変動係数 平均 変動係数 (年)

奉化市 26 5.65 1.46 305 0.62 11.00 28

徳清県 11 13.28 1.26 245 0.63 11.28 8

地代支払い なし(%)

面積(ムー)

借入

地代(元/ムー)

(注)1)流動化面積が60ムーを超える農家は集計から除外した。

2) 地代について、現金の授受がない農家、および地代が1000元を超える農家は集計から除外した。

3)徳清県の平均地代は浙江省農村消費者物価指数(2007年=100)で実質化した。

さらに、平均地代は奉化市では305元、徳清県では245元と貸出地代よりも低い水準に あり、その傾向は徳清県で顕著である。借入地代のヒストグラムを示した図4―3をみると、

2つの地域ともに貸出地代は200元以下に集中していることがわかる。ただし奉化市の貸 出地代は、400元前後にもう一つピークがみられるのに対して、徳清県では地代分布が200 元前後とそれ以下の水準に非常に偏っているといった特徴が窺える。徳清県の借入地代が 相対的に低い理由の一つとして、徳清県では反租倒包が実施されるなど、村民小組からの 農地借入比率が相対的に高いため(徳清県は22%、奉化市は10%)、地方政府が借入農家 に対して優遇価格で地代を提供していることが考えられる。

また、徳清県の農地貸出の多くが、地方政府による強制力によって行われている点も注 目すべきであろう。貸出農家に対する農地の貸出理由の回答結果によると、奉化市では農 地貸出の理由として、「労働力不足」と「農業の割の悪さ」がそれぞれ4割程度の比重を占 めているのに対し、徳清県では約7割の貸出農家は「集団の指導のため強制的に流動化」

を選択している。このような農家の意思に反した非自発的な農地流動化に対する補償とし て、貸出農家に対して相対的に高い地代を提供している可能性がある16

15調査データによると、奉化市農家で親類・友人から農地を借り入れている人のうち、約7割の農家が地代の 支払いを行っていないという結果となった。

16その他の理由として、農地の質の違いが考えられる。しかし本調査では、農地一筆(plot)ごとの質に関する

図 4―2 貸出地代のヒストグラム

(1)奉化市

0

.001.002.003.004

0 200 400 600

(2)徳清県

0

.002.004.006

0 500 1000 1500 0 500 1000 1500

(出所)浙江省奉化市・徳清県農家調査データより筆者作成(以下、同様)

調査項目が含まれていないため、農地の質をコントロールできていない。この点については、今後の研究課題 としたい。

度数

度数

地代(元/ムー)

地代(元/ムー)

反租倒包 転包

図 4―3 借入地代のヒストグラム

(1)奉化市

0

.001.002.003

0 200 400 600 800 1000

(2)徳清県

0

.001.002.003.004.005

0 200 400 600

地代(元/ムー) 地代(元/ムー) 度数

度数