第 5 章 キャッシュフロー計算書で経営 79
5.4 資金移動表と準直接法によるキャッシュフロー計算書
すでに示したように、!売上にはキャッシュ性のものと非キャッシュ性のものがあるが、売掛金の ような対応する発生実在勘定の値を控除すれば、キャッシュ性のものを抜き出すことが可能である。
また備品にも売買によるキャッシュ性のものと、減価償却による非キャッシュ性のものがあるが、
これも !減価償却を控除(加算)すればキャッシュ性のものが得られる。
例えば、!売上や売掛金の絡む仕訳は表5.10に示す三種類である。
キャッシュ x !売上 x 売掛金 y !売上 y キャッシュ z 売掛金 z
図5.10: 売掛金、!売上に関する仕訳
直接法によるキャッシュフロー計算書の作成の際には、この最後の行を表5.11のように二つに 分け、キャッシュ性の売上を分離した。
キャッシュ x c!売上 x 売掛金 y n!売上 y n!売上 z 売掛金 z キャッシュ z c!売上 z
図5.11: !売上のキャッシュ、非キャッシュを分離する
この表からわかるように、売掛金はn!売上としか関係を持たない実在勘定である。したがって、
最終のフロー試算表のように!売上にキャッシュ、非キャッシュの区別がなくても、売掛金の増減か ら非キャッシュ性のn!売上の総量は簡単にy−zであることが予想できる。それを全売上x+y か ら除外したものがキャッシュ性のc!売上x+z になるのである。つまり、c!売上を!売上と売掛金 の平衡残高「c!*売上」として求めることができるのである。実際、表5.11の中二行を取り出し、
それに「c!*売上」と「c!売上」からなるx+z の平衡行を加え、右辺の「n!売上」と「c!売上」を まとめて「!売上」と書くと、表5.12が得られる。
売掛金 y−z !売上 x+y c!*売上 x+z
図5.12: c!売上は売掛金と!売上から得られる
このようにして、最終のフロー試算表から、!売上のキャッシュ分の分離が可能となる。この「c!*
売上」の対項である「c!売上」をキャッシュフロー計算書の本表へ移動する。この作業を、フロー 試算表に現われたすべての名目勘定に対して行えば、表5.13に示すキャッシュフロー計算書が完 成する。この表の下半分で、キャッシュ分の分離を行っている。なお、給料の以下3行のように、
組み合わせる実在勘定がない場合には、同じ大きさのキャッシュ分を得ることになる。また、!役員 賞与引当金繰入の以下の行のように、たまたま平衡がとれてしまったときには、キャッシュ分はな いことになる。
この各名目勘定のキャッシュ分の算定、およびその対項からなる表は資金移動表と呼ばれている が、事実上、直接法によるキャッシュフロー計算書作成の別法になっているので、本書ではキャッ シュフロー計算書(準直接法)と呼ぼう。基本的には損益計算書からスタートするが、控除のため に実在勘定フローも必要なので、フロー試算表をそっくり利用する。
キャッシュフロー計算書(準直接法)
c!売上原価 1570 c!売上 3185
c!給料 420
c!雑費 50
3185 c!*小計 1145 3185
c!支払利息 20 c!小計 1145
c!法人税等 130 c!受取利息 30
1175 c!*営業活動C/F (CFO) 1025 1175
c!有価証券購入 25
125 c!備品購入 100 -c!*投資活動C/F (CFI) 125 125
c!借入金返済 50
150 c!支払配当金 100 -c!*財務活動C/F (CFF) 150 150
-c!投資活動C/F (CFI) 125 c!営業活動C/F (CFO) 1025
-c!財務活動C/F (CFF) 150
現金 270
1025 預金 480 1025
図 5.13: 準直接法によるキャッシュ/非キャッシュフロー計算書
非キャッシュフロー計算書(準直接法)
!売上原価 1550 買掛金 105
1675 商品 125 c!*売上原価 1570 1675
売掛金 -85 !売上 3100
3100 c!*売上 3185 3100
!給料 420 c!*給料 420
!支払利息 20 c!*支払利息 20
c!*受取利息 30 !受取利息 30
!法人税等 436 未払法人税等 306
436 c!*法人税等 130 436
有価証券 25 c!*有価証券購入 25
!減価償却費 40 未払金 50
備品 160 c!*雑費 50
200 c!*備品購入 100 200
借入金 -50
0 c!*借入金返済 50 0
!支払配当金 100 未払配当金 0
100 c!*支払配当金 100 100
!役員賞与引当金繰入 10 役員賞与引当金 10
!*利益準備金取崩 30
115 !*利益準備金積立 115 *利益準備金 85 115
!*利益剰余金取崩 270
739 !*利益剰余金積立 739 *利益剰余金 469 739
ただし、この作業は必らず成功する訳ではない。名目勘定が複数の実在勘定と複雑に絡んでい る場合には、うまくいかない。この例でも!備品購入は備品と未払金に絡み、備品は!減価償却と、
未払金は!雑費と複雑に絡みあっており、c!*雑費 とc!*備品購入 の和は求められるが、それぞれの 値を求めることはできない。最小限、c!*備品購入 の絡む仕訳に遡った調査が必要となる。一般に、
このような場合には、元の仕訳帳のある程度の調査が必要となる。しかし、一番項目の多い営業関 連の仕訳の調査を行う必要はなく、比較的作業量の少ない調査で済む。
実は、この表の下半分は、実質的に直接法の非キャッシュフロー計算書になっている。!売上か
ら c!売上を引いたものがn!売上となっていることなどに着目すると理解できよう。この準直接法
は作業が簡単であるので、直接法によるキャッシュフロー計算書もこの方法で求めるのがよいと思 われる。