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第 6 章 財務分析 103

6.6 株価の評価

日本での株価は、各個人が行う企業の業績評価の結果というよりは、他人の評価を盲信するムー ドによる結果が効いているように思われるが、それでも徐々に米国式の客観評価によるようになっ てきている。株価がこうした客観評価からどのくらいずれているかを判断する指標として表6.8に 示すようなものがある。これらの指標は、株価が客観評価よりも高過ぎるときには、いずれ下がり 出すだろうし、逆に低過ぎるときには、いずれ上がり始める可能性が高いといった見通しに使わ れる。

株価収益率(price earnings ratio, PER) =株価/一株純利益

損益計算書上の利益に対する株価。現在、もっとも使われている指標。

株価純資産率(price book value ratio, PBR) =株価/一株資本金 企業の精算価値に対する株価。

株価キャッシュフロー率(PCFR, price cashflow ratio) =株価/一株キャッシュフロー 分母は税引後利益+減価償却で簡略計算されることが多い。注目指標。

配当キャッシュフロー率=配当金額(含自社株買)/一株キャッシュフロー

分母は税引後利益+減価償却で簡略計算されることが多い。株主還元の程度の指標。

図 6.8: 株価のチェック

II

さらに進んだ話題

7 新会計制度

21世紀に入ってから、新会計制度という言葉があちこちで聞こえる。発生主義でも説明したよ うに、原価償却、棚卸、引当金の算出などには、かなりの自由度がある。今迄の日本は、どちらか というと企業優遇処理をしてきた。つまり、これらの算出に当り、企業が困らない方向の自由を認 めてきた。例えば、有価証券は販売時まで、評価額は固定とし、土地建物といった固定資産も、余 程の下落がない限り、評価額の変更は必要とされなかった。退職給与引当金も... と甘いものであっ た。しかし、欧米では、株主や投資家の立場を重視し、こうした評価をより厳密に行なっているた め、外国投資家が増えてきつつある現在、強い批判がでるようになってきている。

このため、従来より正確な評価をするように改革が進んでいるのが、新会計制度という言葉で代 表される会計の改革である。とは言え、基本的には発生主義をより厳密にしていこうというもの である。したがって、本章も発生主義に入れるべき内容である。しかし、日本では特に近年話題に なっていること、またやや詳細でもあるので、特に別の章としたものである。

7.1 時価評価

かつては取得原価会計(aquition cost accounting)といって、土地、建物、有価証券、投資債権 といった資産については、すべて買取時の価格で記載していたのであるが、近年、徐々に財産を正 確に評価しようという方向が強まり、これらを時価(current value)で記載する方向で動いている。

例えば、保有している株券が暴落したら、資産はその分、急減することなる。そもそも、1990年 のバブル崩壊後、土地や株の価格が異常に下ったにもかかわらず、その資産価値をバブル中の購入 時から変えずにいた日本の多くの企業に対し、特に欧米から会計処理上の批判が上がるようになっ た。そこで、従来からも弱いながら存在していた時価会計(current value accounting)の概念が強 化されるようになったのである。

時価会計とは、有形固定資産や有価証券に適応される。土地の価格や株価が大きく下った場合に は、それをなるべく速やかに資産減として簿記に反映させることを言う。逆に上がれば資産増とし て反映させる。法律はどれほどの変動までを、無視してよいか、どのくらいの頻度で簿記に反映す べきかを規定しているだけである。

当然、時代の経過につれ、なるべく迅速に現実を反映する方向が要求されるようにあってきてい るので、法律の如何にかかわらず、現在でも決算時にはこれらの時価を調べ、それを記載するよう に努力すべきであろう。こうした透明性が、株主や投資家に対する責務であろう。

先に述べたように、かつては時価会計はそれほど厳密には適応されていなかった。それが、バブ ル崩壊などにより投資額の回収不能となった土地などの有形固定資産の大きな減少があった場合、

不良資産整理のため、下落額を正確に見積もることが特段に要求されることがあった。これを減損

会計(impairment accounting)という。これはあくまでも、不良資産額を正確に見積もるための一

時的に時価会計を適用したものであり、それゆえ、増益会計といった概念はない。もともと、時価 会計がきちんと行われてきていれば、不必要なものであったと言える。

さて、例えば有価証券の時価が下ったとすると、次のように仕訳を行なう。

取得時 有価証券 x 現金 x

. . . .

評価時 !評価損 y 有価証券 y

これも棚卸と同じような処理である。