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第 2 章 財務諸表の作成の実際 17

2.5 総勘定元帳、残高試算表

2.5.1 各勘定科目の現在量は総勘定元帳でわかる

かつて、計算機がまだ無かったころには、仕訳帳の記帳だけでは、日々の各財産の残高を簡単に は計算できなかった。このため、仕訳帳の補助として、勘定科目ごとに元帳(ledger)と呼ばれる帳 簿を作成し、それに仕訳帳の内容を転記することにより、日々の残高を求めていた。つまり、現金

元帳(cash ledger)、預金元帳、また負債である借入金元帳といったものである。

要するに財産の範囲が現金だけでなくなった分、現金出納帳のようなものをすべての財産に関し て作成しようというのである。これらを一体として、総勘定元帳(general ledger)と呼ぶ。計算機 が普及した現在では、その意味が急速に低下しつつあるので、本節は場合によっては、読みとばし てもらって構わない。

メモ: 主要簿、補助簿と決算書

仕訳帳と総勘定元帳は、主要簿(principal book)と呼ばれ、簿記の基礎となる 帳簿 である。主要簿という言葉に対し、補助簿(subsidiary book)という用語があるが、こ れは総勘定元帳作成の明細などを示したもので、現金出納帳、当座預金出納帳、受 取 手形記入帳、支払手形記入帳、売上帳、仕入帳などがあるが、補助的な役割しかない ので、本書では説明を省略する。また、主要簿から作成された貸借対照表と損益計算 書を決算書(financial statement)と呼ぶ。

さて、総勘定元帳は、実在勘定について作成するのは予想できようが、名目勘定についても元帳 を用意する。つまり、財産の増加に関する名目勘定の !売上元帳、減少に関する名目勘定の!雑費 元帳、!仕入元帳 を用意する。これにより、総勘定元帳全体では、平衡の原理が保証されるように なる。

日々の作業は、各取引に対応する仕訳帳の行ごとにこれら元帳に転記することであるが、その 際、その左借方と右貸方を分離し、必ず関連する二つの元帳に記帳する。例えば、預金引出につい ては、預金が減って現金が増えるので、預金元帳の右貸方と現金元帳の左借方の双方に、移動した 金額を記載する。また、表2.4の第2行の切手代に関する仕訳は、現金が減って、!雑費がそれに 対応するから、表2.17のように現金元帳の右貸方と!雑費元帳の左借方の両方に記載する。

日付 摘要 現金元帳 残高 . . . .

1/6 切手代 現金 4 . . .

. . . .

!雑費元帳 . . . .

1/6 切手代 !雑費 4 . . .

. . . .

図 2.17: 各勘定の元帳の記載法

これが本来の書き方であるが、このようにすると、現金元帳には現金という科目だけが並び、!

雑費元帳には!雑費という科目だけが並んでしまう。そこで科目を省略し、表2.18のように、数字 だけを書く方法がしばしばとられる。

日付 摘要 現金元帳 残高 . . . .

1/6 切手代    4 . . .

. . . .

!雑費元帳 . . . .

1/6 切手代 4    . . .

. . . .

図2.18: 各勘定の元帳の簡略記法(現金元帳は現金出納帳と残高記述以外、完全に一致する)

この簡略法にしたがって記載した現金元帳は、左借方を収入欄、右貸方を支出欄とみなせば、形 も内容も現金出納帳とまったく同じものとなる。唯一異なるのは期末の残高処理だけであるが、そ れについては次節に述べる。

現金、預金、借入金、資本金といった資産と直接関連する実在勘定は繰越のできるストック(stock) である。したがって、元帳の一番最初の行に前期繰越(transfer from preceding period)が入る。こ の値は前期末、つまり期首の貸借対照表、期首貸借対照表(initial balance sheet, initial B/S)に書 かれているので、対応する勘定科目を移動してくればよい。具体的には、仕訳帳の前に前期の貸借 対照表を付けた連続した表として、仕訳を行えばよい。

一方、実在勘定の純増、純減に対応して作られた収益、費用といった名目勘定は変動分だけに意 味を持つ、当期限りのフロー(flow)である。したがって、前期繰越という概念はもともとない。

前節で示した日々の取引に対応して、二冊ずつの元帳に記帳した結果を、表2.19のいくつかの 表により示す。以下、実在勘定の資産、実在勘定の負債と純資産、名目勘定の収益、名目勘定の費 用の順に示す。

期首貸借対照表+ 仕訳帳 → 総勘定元帳

総勘定元帳全体で、期首貸借対照表と仕訳帳に書かれたすべての項目を再分類したものを収容で きることから、総勘定元帳はもともと一体で考えなければならないということで「総」という接頭 語が付いているのである。

なお、総勘定元帳を作成する大きな目的の一つは、財産の実状と帳簿上の日々の残高の照合にあ るから、便宜のために行ごとの残高を現金出納帳のように示した。

こうして得られて総勘定元帳のそれぞれ、例えば現金元帳を見てみると、ほとんど、現金出納帳 と同じ形をしている。一番大きく異なるのは、次期繰越の扱いである。一番最後の行に、平衡残高 という形で次期繰越を入れるのである。これにより、remainderの意味の残高は0 となっている。

平衡残高以外の項をまとめた統合項は当然「現金」であるので、その対項である平衡残高は「*現 金」と記載した。ただし、科目が現金または*現金であるのは当たり前なので、多くの場合、総勘 定元帳には表題を除いて科目は省略されることが多い。

図 2.19: 総勘定元帳

日付 摘要 現金元帳 残高

1/1 前期繰越 現金 300 300

1/5 預金引出 現金 400 700

1/6 切手代 現金 4 696

1/9 現金仕入 現金 600 96

1/11 現金売上 現金 720 816

1/12 現金仕入 現金 600 216

1/13 梱包材購入 現金 90 126

1/26 旅費 現金 10 116

1/31 売掛金回収 現金 2000 2116 1/31 買掛金支払 現金 1000 1116

1/31 預金預入 現金 1000 116

1/31 期末平衡残高 *現金 116 0

日付 摘要 預金元帳 残高

1/1 前期繰越 預金 1900 1900

1/5 預金引出 預金 400 1500

1/22 青色給料 預金 140 1360

1/25 借入金 預金 200 1560

1/25 借入金利息 預金 20 1540 1/30 電気水道料 預金 20 1520

1/31 預金預入 預金 1000 2520

1/31 期末平衡残高 *預金 2520 0

日付 摘要 備品元帳 残高

1/1 前期繰越 備品 800 800

1/31 期末平衡残高 *備品 800 0

日付 摘要 借入金元帳 残高

1/1 前期繰越 借入金 1000 1000

1/25 借入金 借入金 200 1200

1/31 期末平衡残高 *借入金 1200 0

日付 摘要 *資本金元帳 残高

1/1 前期繰越 *資本金 2000 2000

1/31 期末平衡残高 資本金 2000 0

日付 摘要 !売上元帳 残高

1/11 現金売上 !売上   720 720

1/31 売掛金回収 !売上 2000 2720 1/31 期末平衡残高 !*売上   2720 0

日付 摘要 !仕入元帳 残高

1/9 現金仕入 !仕入 600 600

1/12 現金仕入 !仕入 600 1200

1/31 買掛金支払 !仕入 1000 2200 1/31 期末平衡残高 !*仕入 2200 0

日付 摘要 !給料元帳

1/22 青色給料 !給料 140 140

1/31 期末平衡残高 !*給料 140 0

日付 摘要 !雑費元帳 残高

1/6 切手代 !雑費 4 4

1/13 梱包材購入 !雑費 90 94

1/26 旅費 !雑費 10 104

1/30 電気水道料 !雑費 20 124 1/31 期末平衡残高 !*雑費 124 0

日付 摘要 !支払利息元帳 残高

1/25 借入金利息 !支払利息 20 20 1/31 期末平衡残高 !*支払利息 20 0

これらの残高あるいは期末平衡残高(final balance)を次期に繰越す場合、次期の期首には平衡 残高ではなく、その対項である統合項の方が記載されるべきであろう。そこで、例えば現金の場合 には左借方に記載されることになる。この様子は表2.19の現金元帳の最初の行で確認できるであ ろう。

名目勘定の場合には、前期繰越という概念はないが、期末平衡残高は存在する。これは当期だけ の期間合計(total within period)である。