第 8 章 為替換算 117
8.3 仕訳帳と為替損益
P社の当期の仕訳帳を次に示す。ここでは、株主総会提出時の財務諸表を前提に議論を行なう が、いつの時点での財務諸表でも作業の仕方は同じである。仕訳帳は税引前で一旦仕切っている。
P社の持っている現金のうち、一部が外貨F2.5であったとしよう。期首と期末の換算レートを 22円/Fと26円/Fとすると、期首には、邦貨55円であるが、期末には65円になる。つまり、為替 レートの変動により、儲かったことになる。この差の調整には為替差益(exchange marginal profit) という概念を用いる。一般にこれが負になったときには為替差損(exchange marginal loss)という 項を導入することがあるが、本書では左借方に!為替差益(負)と記載することとする。
将来キャッシュフロー計算書を作成することを考え、キャッシュと非キャッシュの実在勘定間の 取引の場合には、これを二行に分割するという手続きをとる。またキャッシュの項目は「現金と預 金」という科目に纏めた。こうした分割処理を行なった仕訳は、右欄外に「c」、「n」を付けた。
摘要 P社の仕訳帳(百万円)
現金売上 P現金と預金 29000 c!P売上 29000 掛売売上 P売掛金 600 !nP売上 600 貸倒引当金設定 !nP貸倒引当金繰入 60 P貸倒引当金 60 手形割引 P割引手形 200 !nP売上 200
現金仕入 c!P仕入 12000 P現金と預金 12000
掛買仕入 P買掛金 100 !nP仕入 100 棚卸 P棚卸資産 200 !nP棚卸資産増 200 人件費支払 c!P人件費 4500 P現金と預金 4500 諸経費支払 c!P諸経費 8300 P現金と預金 8300 配当金受取 P現金と預金 120 c!P受取配当金S 120 配当金受取 P現金と預金 60 c!P受取配当金A 60 利息受取 P未収利息 100 !nP受取利息 100 利息支払 c!P支払利息 300 P現金と預金 300
!nP支払利息 100 P未払利息 100
社債設定 !nP社債発行 800 P社債 800 n P現金と預金 800 c!P社債発行 800 c P社債発行差金 50 P社債 50 社債償却 !nP社債差金償却 10 P社債発行差金 10 法人税等支払 c!P法人税等 1000 P現金と預金 1000 c
P未払法人税等 1000 !nP法人税等 1000 n 未払消費税支払 !nP消費税 100 P未払消費税 100 有価証券取得 c!P有価証券取得 300 P現金と預金 300 c
P有価証券 300 !nP有価証券取得 300 n 減価償却 !nP減価償却 500 P減価償却累積 500 固定資産購入 c!P固定資産購入 1000 P現金と預金 1000 c
P有形固定資産 1000 !nP固定資産購入 1000 n 固定資産リース P有形固定資産 1000 Pリース債務 1000 リース債務返済 c!Pリース債務返済 100 P現金と預金 100 c
Pリース債務 100 !nPリース債務返済 100 n 固定資産除去 !nP固定資産除去 100 P有形固定資産 100 借入金設定 !nP借入金設定 400 P借入金 400 n
P現金と預金 400 c!P借入金設定 400 c 借入金返済 c!P借入金返済 100 P現金と預金 100 c P借入金 100 !nP借入金返済 100 n
図 8.3: P社の仕訳帳
退職金支払 P退職給与引当金 50 !nP退職引当金取崩 50 c!P退職給与支払 50 P現金と預金 50 退職引当金繰入 !nP退職引当金繰入 100 P退職給与引当金 100 増資 !*nP増資 300 *P資本金 300 n
P現金と預金 300 c!P増資 300 c 為替差益 P現金と預金 10 c!P為替差益 10 法人税等中間支払 c!P法人税等 1200 P現金と預金 1200 未払法人税等設定 !nP法人税等 900 P未払法人税等 900 中間配当 c!P中間支払配当金 500 P現金と預金 500
次にS社の仕訳帳を見てみよう。仕訳帳も外貨建てのものは、従来のものとまったく同じ考え で作成される。例のごとく、キャッシュと非キャッシュ実在勘定間の取引はキャッシュ性の仕訳と 非キャッシュ性の仕訳の二行とする。表の横幅が大きいので、摘要覧を省略したが、こうした分離 された仕訳には、右欄外に「c」、「n」を付した。
円建てのものは、本来、取引の時点ごとに、その日のレートで換算すべきであるが、決算時にま とめて計算する方が楽なので、期中の平均のレートである25円/Fで換算する便法がとられる。便 法とは言え、期末決算の作業量を考えると、この換算の方がはるかに便利である。
しかし、すべての科目が同じレートで換算される訳ではない。最後の配当金だけは、配当当時の レートである 24円/Fで換算する。これは配当の一部が親会社に配られる可能性があり、その場 合、親会社側は、当然のことのように、そのときのレートで円に換算して収益に組入るからであ る。円建ての借方貸方の平衡が崩れるため、調整の必要があるが、この場合には「為替換算調整勘 定」ではなく、「!為替差益」で処理する。このように、外貨のままでなく、円に交換される場合に は名目勘定科目で処理する。
S社の仕訳帳
F 円/F 円 F 円/F 円
S現金と預金 257 25 6425 c!S売上 257 25 6425
S売掛金 18 25 450 !nS売上 18 25 450
!nS貸倒引当金繰越 3 25 75 S貸倒引当金 3 25 75 S棚卸資産 9 25 225 !nS棚卸資産増 9 25 225 c!S固定資産購入 15 25 375 S現金と預金 15 25 375 c S有形固定資産 15 25 375 !nS固定資産購入 15 25 375 n
!nS減価償却費 3 25 75 S減価償却累積 3 25 75 c!S仕入 181 25 4525 S現金と預金 181 25 4525
!nS仕入 8 25 200 S買掛金 8 25 200
!nS支払利息 1 25 25 S未払利息 1 25 25
!nS借入金設定 13 25 325 S借入金 13 25 325 n S現金と預金 13 25 325 c!S借入金設定 13 25 325 c c!S借入金返済 2 25 50 S現金と預金 2 25 50 c S借入金 2 25 50 !nS借入金返済 2 25 50 n c!S人件費 13 25 325 S現金と預金 13 25 325 c!S諸経費 59 25 1475 S現金と預金 59 25 1475 c!S支払利息 1 25 25 S現金と預金 1 25 25 c!S法人税等 3 25 75 S現金と預金 3 25 75
!nS法人税等 1 25 25 S未払法人税等 1 25 25 c!S中間支払配当金 4 24 96 S現金と預金 4 25 100
c!S為替差益 - - -4
図 8.4: S社の仕訳帳