• 検索結果がありません。

第 3 章 お金の移動と取引のタイミングずれを処理する発生主義会計 40

3.3 固定資産の価値は年々落ちていく ( 減価償却 )

3.3.1 直接法

備品や建物といった固定資産(fixed assets)の概念もそもそも現金主義からは逸脱した発生主義の 概念である。現金主義ならば、現金の出入りがあった購入時と売却時しか関知しないが、その間も資 産としての価値があるという発生主義の立場から作られた概念である。ただ、これらは徐々にその 価値を低下していくと考えるのが自然であろう。この価値の減少のことを、減価償却(depreciation) という。

減価償却: 固定資産の価値は年々下る

その減価償却の実際の速度については、実際に、それを販売してみて計測するのがもっとも正確 かも知れないが、売ってしまっては意味がなく、その結果、色々な仮説に基づいて計算をする。特 に税務署に対し、事前申告しない場合には、定額法(straight line method)と呼ばれる毎年一定の 額ずつ減価償却していくという方法を前提とする。また、耐用年数が経過した後は、廃棄されるま で一定の残存価値が残るとする。残存価値は通常、取得価格の 10%とされている。また、平衡を とるために、備品等の減価償却に対して、!減価償却費(depreciation expenses)という費用科目を 記入する。

例えば、前章に述べた取得価格800の備品の減価償却費を計算してみよう。耐用年数は 5年と して、定額法で償却するとすると、減価償却費= 800×0.9/5 = 144となる。これによる備品の価 値減耗のようすを表3.16に示す。

年 備品元帳 残高 購入時 備品 800       800

1年目 !減価償却費 144 備品 144 656

2年目 !減価償却費 144 備品 144 512

3年目 !減価償却費 144 備品 144 368

4年目 !減価償却費 144 備品 144 224

5年目以後 !減価償却費 144 備品 144 80

売却時 現金 100 備品 80

!備品売却益 20 0

図3.16: 定額法による減価償却の考え方

売却で利益が出たときには、右貸方に!備品売却益を置く。また、売却せず廃棄とする場合には、

左借方の!備品廃棄損によって全価値を始末する。

仕訳帳には、この例の場合、開業1年目(本当は、まだ 1ヶ月目であるが、練習のため1年目と しよう)であるので、この表の第2行目を表3.17のように仕訳する。

1/31 備品償却 !減価償却費 144 備品    144

図3.17: !減価償却費による減価償却の仕訳(直接法)

この方法を直接法(direct method)による減価償却と言う。

3.3.2 間接法

これに対し間接法(indirect method)と呼ばれる方法は、固定資産の価値を直接減耗したことに しないで、減価償却累計(accumulated depreciation)という資産勘定科目を用いて、表3.18のよ うに間接的に減耗させるものである。この値は資産であるので、貸借対照表上では、例外的に左借 方に負数で表現されることになる。ただし、仕訳の際はいずれでもよい。直接法による固定資産総 額は、間接法による固定資産総額と減価償却累計(負)の和に一致する。

一方、!減価償却費は相変わらず、!費用として扱うことは言うまでもないだろう。

1/31 備品償却 !減価償却費 144 減価償却累計 144

図 3.18: 減価償却累計による減価償却の仕訳(間接法)

備品を売却や廃棄する場合には、備品と減価償却累計を組み合わせる必要がある。例えば前例の 売却の場合には、表3.19のように仕訳する。

売却時 減価償却累計 720 備品     800

現金 100 !備品売却益 20

図3.19: 間接法による売却/廃棄時の仕訳

間接法のもう一つの方法として、同じことを表3.20に示すように、減価償却引当金(less-accumulated

depreciation)として処理する方法もある。これは、上記の減価償却累計の言い換えに過ぎないが、

考えかたは大きく異なる。!減価償却費や減価償却累計では、備品の価値が落ちていると理解して いる。しかし、減価償却引当金では、備品の価値は購入時のままとしている。しかし、何年か経っ て処分するときに、購入時の価格相当の入金が得られない可能性が高い。そのとき、苦労しないよ うに、価格低下分を予想して、資産減とみなしておこうという発想である。

こうした資産や費用の将来を予測して、その分だけ資産を減らしたり、負債を多くしたりする手 法を引当金と呼ぶ。詳細については後述する。

減価償却引当金も貸借対照表では資産側に負数で記載し、!減価償却引当金積立は!減価償却に対 応するものなので、!費用として扱う。

1/31 備品償却 !減価償却引当金積立 144 減価償却引当金   144

図3.20: 引当金による減価償却の仕訳

売却時あるいは廃棄時には備品と減価償却引当金の総額を記載し、それを現金と!備品売却益で 辻褄を合せることになる。

実際には、いずれの場合にも、その仕訳の値は減価償却の標準手法によって算定されるので、結 論は変らない。本章では減価償却累計で説明することとする。

3.3.3 減価償却の方法

減価償却の速度については定額法以外にも以下のようなものがある。

定額法(straight line method): 減価償却費= (取得価格残存価格)/耐用年数

定率法(declining balance method): 資産価値が一定の割合で償却していくという考え方で実務で

よく用いる。

資産価格=取得価格×(残存価格/取得価格)(年数/耐用年数)

資産価格は毎年期首の資産価格の(残存価格/取得価格)(1/耐用年数)倍(<1)になり、減価償却 も毎年、その年の資産価格に同じ比率を掛けたものとなる。

償却率=減価償却費/資産価格= 1(残存価格/取得価格)(1/耐用年数)

残存価格10%、耐用年数5年とすると、1年度、2年度、3年度、4年度、5年度の資産価格

はそれぞれ、最初を 1として 0.11/5 = 0.631、0.12/5 = 0.398、0.13/5= 0.251、0.158、0.1 となり、また償却率は、10.631 = 0.369となる。これを表3.21に示す。

年 備品元帳 残高 購入時 備品 800       800

1年目 !減価償却費 295.2 備品 295.2 504.8

2年目 !減価償却費 186.4 備品 186.4 318.4

3年目 !減価償却費 117.6 備品 117.6 200.8

4年目 !減価償却費 74.4 備品 74.4 126.4

5年目以後 !減価償却費 46.4 備品 46.4 80

売却時 現金 50 備品 144 30

!備品売却損 30 0

図 3.21: 定率法による減価償却

級数法(progression method): 前二方式の中間。

減価償却費=取得価格×(耐用年数年数)/∑耐用年数

年数 生産高比例法(yield proportional method): 略

取替法(replacement method): 50%まで定額法または定率法、その後、取替費は全額費用扱い。

減量率(quantity loss rate)による償却: 略。フィルム等、特別な資産にのみ適用する。

備品を期間途中で購入した場合には、どの方式でも月割処理する。さらに、車両(自動車)のよう な備品で一部私用で使用している場合には減価償却も事業分だけに抑える必要がある。例えば、取 得価格1500の車両の減価償却費を定率法で計算してみよう。しかも、期間の真中で購入し、私用 に20%使っているとしよう。耐用年数5年とすると、初年度の償却率は、0.369である。車両を期 間の真中で購入しているので6/12を掛けると、当期の減価償却費= 1500×0.369×(6/12) = 277 となる。これの 80% の 222 が事業用で、20% の 55が私用となる。このような場合の仕訳は表 3.22のようになる。

車両減価償却 !減価償却費 222 減価償却累計 222

事業主貸 55 減価償却累計 55 車両運搬具合計277

図3.22: 減価償却の月割処理