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観客の特徴

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 127-130)

第 3 章 表現活動の実際

3.5 表現活動の観客

3.5.2 観客の特徴

(1) 年齢・性別など

観客の性別はこわれ者の祭典,K-BOX 定例ライブ,その他多くの表現の場において,男性も 女性もそれぞれ一定割合おり,どちらかの性別の観客数が極端に多いような印象は受けない。年 齢層は幅広いが,東京公演の観客の年齢層が新潟公演よりも若いように見受けられる。これには,

大都市部(東京)と地方都市(新潟)という開催場所の違い,サブカルチャーイベントを行うような 会場(東京)と福祉会館という会場(新潟)という会場の違い,著名人なのか地元で活動している人 なのかといった招かれるゲストなどの違いなどによるものと考えられる。特に迫真的なパフォーマン スが伴う内容や,サブカルチャー色の強さ,メンヘラ,ひきこもり,といった扱うテーマの状況から,

20歳代くらいの若年層が観客の中心となるよう想定され,実際,特に東京公演での観客にはその ような年齢層の人々の参加が多いように見受けられる。しかしながら,こわれ者の祭典も始まって から10年以上経過し,主要メンバーも40代後半,イベントを共に盛り上げる司会の江口さんも同 世代という状況になる中,彼らと同世代,もしくはそれ以上の年齢層の観客も,公演の場所やパフ ォーマンスが行われる背景,状況の違い 91によっては多く見受けられる。筆者が複数回会う機会

91 表現者自身の企画によるライブなのか,他組織から依頼されたライブなのか,パフォーマンスか講 演かといった違いが表現活動にはある。

のあったある人は,K-BOX をはじめ,時にはこわれ者の祭典やその他表現活動に関連するイベ ントに継続して観客として参加している人であるが,仕事を定年退職して何年か経つという年代の 人であった。そして,昔うつ等の病気で仕事を休んでいたことがあるとのことであった。こうした例の ように,高齢といわれる年代の人々もまた当事者として活動に共感し,参画している様子が見受け られる。また,表現活動に参加する人々には,疾患などを有する当事者というわけではなく,その 親の参加も含まれる場合がある。表現団体としても,ゲストとして当事者の親を招く機会は複数あ った 92。筆者は,K-BOXの交流会にて, 60~70歳代と見受けられる,成人した子が複数いる女 性と話す機会があったが(2013 年 12 月 15 日),その女性は,子どものひとりがひきこもりとなり,

県内の居住地にて親の会を立ち上げた,という話をしてくれた。このような状況から,おそらく,たと えばゲストで当事者の親が出演するなどの際は特に観客の一定割合は当事者の親ではなかった かと推察される。また,ある他団体のイベントに表現者(月乃さん,長男さん,YOPPY さん)がゲス ト出演した際には(2014年5月25日),当事者の保護者世代の人が多いように見受けられ,表現 者自身もそのような旨の発言をイベント中に発していた。

以上のように,観客は20~40歳代くらいの年代の男女の当事者の人たちを中心としながら,10 代の若い人から 60~70 歳代という年代の人,時に非当事者や表現者の支援者に至るまで多岐 に渡る。幅広い年代層が集まる背景としては,ひきこもり等従来若年層を中心とした諸問題を抱え る人々の高齢化といった時代的背景や,当事者の親という観客層の存在も考えられる。

(2) 当事者,専門職等,表現活動をしている人

こわれ者の祭典では,イベント後の打ち上げ交流会があり,その際は出席者が自己紹介をする 機会がある。自己紹介では,自らの病名や,ひきこもりの経験があることが語られることが大多数で,

こわれ者の祭典に来る観客,特に交流会に来る人々には病気やひきこもりなどの経験を有する当 事者が多いことが推察される。

また,公演(こわれ者の祭典)の最後の方には,観客から質問やコメントなどを受け付ける機会 もあり,そこでの発言から観客の特徴が一部うかがえる。あるこわれ者の祭典の東京公演(2012年 9 月22 日)で発言した人は,知的障害者の支援をしている人であり,ある人は発達障害を持ちな がらイラスト等を描いている人であり,ある人は躁うつ病で入院が嫌だったということを語っていた。

また,福祉関係者,リハビリ専門職など専門職の人々や福祉を学ぶ大学生などの参加者と筆者は 打ち上げ交流会などで接してきた経験もあり,そうした支援者側の人も観客の一部を占めていると 思われる。このように,イベントに参加している人々には病気や障害の当事者もいれば,そうした

92 たとえば薬物依存の当事者の親(2010年12月5日),発達障害の当事者の親(2014年4月27日)

がゲスト出演し,当事者の親としての経験や行っている支援活動の話などが語られた。

人々を支援する人も一定割合いることが推察される。

加えて,何らかの表現活動を行っている人もいる。先に挙げた人たちの中でも,演劇活動を行 ったり,漫画や小説を書いている人たちが見受けられた。そしてメンタルヘルス上の問題を抱えて いたり,医療機関に受診していたりと当事者としての側面も有する人たちであった。そうした当事 者でありかつ表現活動自体に関心が高く,またそうした経験を有する人が観客には一定割合含ま れることが考えられる。

このように病気の当事者であったり,支援者であったり,表現活動をしている人が観客には多く 含まれることが推察される。

(3) その他-表現や福祉以外の文脈からの参加者

表現活動は,祭などのイベントや商店街の一角,ショッピングモールなどで行われていることが あり,状況によっては,福祉とも表現活動とも関係の薄いその場に居合わせた人が観客として参 加することがある。祭などのイベントに出演する K-BOX の演奏を見に来る人々は祭に来ている 人々が観客になり,ジャズカフェなどで行われる時は(2011 年 3 月 12日など),その店の常連の 人が観客になったりする。また,表現活動は時折ゲストが招かれるが,ゲスト目当ての観客も多い ことが考えられる。ある地元の高校野球のチームの監督がゲストで招かれた K-BOX のライブ

(2009年12月23 日)では,K-BOXの定例ライブの客層とは異なる壮年期以降の男性が多く見 られた(2009年 12 月 23日)。これはゲストの話を聞きに来ることを目的とした人々の参加が多か ったことによることが考えられる。また,ある月乃さんが主催したイベントは,映画等に出演している 女優がゲスト出演していた(2014年8月4日)。イベントの休憩時間などには,ある観客はゲスト出 演した女優と出演作についての話をしていた。他にもゲストに音楽活動を行うアーティストが招か れる際,または共同で行われる際には,そのアーティストのファンであるという人も数多く見受けら れた 93。こわれ者の祭典,特に東京公演では,メディア出演や書籍の出版なども行う著名人のゲ スト参加がなされることが多く,ゲストに魅かれて参加する観客も多いことが想定される。このような 状況はゲストに魅かれてイベントに出演する人の多さと,映画など一見福祉的な文脈とは関係の ない分野から興味をもってイベントに来場する人々の存在を示唆する。

加えて,活動やメンバーを支援する人が観客となることもある。K-BOX の年に 2 回ほどの規模 の大きなライブ時には,イベント後の交流会が行われるが,そこではK-BOXやKaccoさんを昔か ら支援してきた人たちの参加もみられる。こうした人々の中には40 歳代の Kaccoさんが慕ってい

93 新潟を中心に活動するアーティストと共に行ったイベントでは,そのアーティストのファンであると述 べる人がいた(2012 年 6月 9日),県外で活動するアーティストがゲストで出演した際には,その人 のファンであり県外からイベントに来たと述べる人がいた(2013年8月18日など)。

るKaccoさんの親ほどの年代の人も含まれる。表現活動に参加する観客の特徴は,ライブ活動や 祭などへの出演,講演会,著作活動などのイベントの多岐にわたる特性に依るところが大きい。福 祉関係の専門職を対象とした講演会に招かれる際にはもちろん福祉関係者が観客の中心になる し,当事者向けの講演会に行くときは,当事者が聞き手の中心になる。また学校などで講演会を 行う際は,学生,生徒が主とした聞き手となる。また一部,大学の卒業論文の題材にしたり,ものを 書くことを学ぶ学校に通っていてその課題として取り上げようと考えている,といった人々の姿がみ られることもあった(2013年9月8日など)。

このように,当事者や支援者,表現活動に関係する人以外にも,偶然パフォーマンスの場に居 合わせる人や,ゲストに魅かれる人,表現者の関係者といった人々の観客としての参加がみられ る。表現活動の観客は多くは生きづらさや病気などを抱える当事者であることが考えられるが,必 ずしもそうであるわけではなく,観客の特性はイベントの性質により異なってくる。

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