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パフォーマンス

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 64-69)

第 3 章 表現活動の実際

3.1 こわれ者の祭典

3.1.5 パフォーマンス

こわれ者の祭典でなされるパフォーマンスには,自作詩の朗読,映像の上映,お笑いなどがあ る。自作詩の朗読は,月乃さん,Kacco さん,アイコさんが行い,長男さんは自作映像の上映を行 う。脳性マヒブラザーズはお笑い芸人としてのパフォーマンスを行う。オーディションメンバーとして

活動するYOPPYさんは自作曲を歌う。パフォーマンスは以下のようにフライヤー(2010年12月5

日新潟公演用)では案内されている。

 アルコール依存症自慢。引きこもり自慢。月乃光司による絶叫朗読

 摂食障害自慢。引きこもり自慢。Kaccoによる女装パフォーマンス

 強迫行為自慢・アイコによるパフォーマンス

 脳性マヒプラザーズ(DAIGO&周佐則雄)によるお笑い

 統合失調症自慢・YOPPYによるメッセージソング

同じ自作詩の朗読パフォーマンスであっても,そのスタイルは表現者や作品によって異なる。音 楽が伴う場合,伴わない場合があり,音楽はCDを流す場合もあれば,ギタリストなどの演奏が伴う 場合がある。朗読のスタイルも,月乃さんにより絶叫朗読という形での朗読パフォーマンスがなさ れる場合もあれば,「癒し」をテーマとする Kacco さんの朗読のようにそうではない場合もある。朗 読される自作詩には,表現者の経験や伝えたいメッセージが含まれている。作品には時に具体的 な病名や経験が内容に含まれることも多い。月乃さんはたとえば醜形恐怖の体験を以下のように

示す。

僕は10代の頃,自分の顔が醜いと思い込み 醜形恐怖症という病気でした

高校生の時はクラスメートと話すことができなかった

(2011年6月19日)

アイコさんは社会不安障害や家庭内暴力の経験を表現する。

現在私はSAD 社会不安障害という病気で通院を続けています

特定の関係での会食恐怖 静かな場所での体の緊張 人前で電話をする時の手の震え 人々が座っている部屋への入室恐怖などなどが現在私の持つ主な症状です(2011年6月 19日)

また家庭内暴力については以下のように表現される。

幼いころ,家庭内暴力が日常の景色だった。

悔しくて悲しくて,殴られたほほと,父親が殴り壊したガラスの窓。

私に降ってきたガラスのかけら(2009年12月13日など)

表現される内容には自らの経験が含まれることが,イベント中に以下のように語られることもある。

月乃:「変質者としての私 40」というリクエストがありまして,ありがとうございます。ちょうど私 の病歴みたいなのが詳しく書いてありますんで,こういう病気になって今ここにいるんだ なというのがわかると思うんです(2011年9月23日)。

Kacco:自分の病気の経験から,死ぬことしか考えられなかったんで,その時の状態を作 った詩でした(2011年9月23日)。

YOPPY:自分が一番具合が悪かったのが 20 代,19,20,21 くらいがいろんなこと,症状

があって,入退院の連続で。今思い返すと一番せっぱつまってたのが 28,29,30 ちょ

40 月乃さんの作った詩,文章のタイトルのひとつ

っと前くらいで,だけど今思い返すと自分で自分を責めたり,自分で自分を苦しめてた だけなんじゃないかなって思います。だけどその頃つらくてつらくて,その頃を思い出 した曲です(2011年9月23日)。

作品には自らの経験が反映されるが,自らの経験そのものを常に表すわけでもない。たとえば,

Kacco さんが,女性の会社員を主人公にした物語を自作詩にして表現したように(2009 年 12 月

13日など),創作を含めて表現されることもある。

そして,自らの経験などと共に,伝えたいメッセージが自作詩に表される。たとえば月乃さんは,

「人生なんでもあり」という作品で,以下のように表現する

アルコール依存症になってよかった お酒をたくさん飲んで肝臓を壊して 医療費をたくさん払い

我が国の経済に貢献した

(月乃さん作「人生なんでもあり」より)

アルコール依存症の経験がユーモアを含ませて表現され,「アルコール依存症になってよかっ た」と自分の経験を肯定していく姿が表現される。また,「仲間」の大切さをが表現されたりする。

僕と同じ匂いを感じる人たち それは僕の仲間だ

僕と同じ「生きづらさ」を持つ人たち それは僕の仲間だ

(略)

仲間がいれば,僕は生きていける

(略)

鼻水とよだれを流しながら

生き抜いていこう,仲間 (月乃さん作「仲間」より)

自作詩以外には,脳性マヒブラザーズによるお笑いや,長男さんによる映像などが作品として挙 げられる。脳性マヒブラザーズによるお笑いには,自らの障害をネタにするものもあればそうでない

ものもある。たとえば「お医者さん」というコントでは,脳性麻痺で手足の自由がきかない中で,注 射をされたり,尿を採取したりする動きが取り込まれる。長男さんが出演する場合は,自作映像が 上映されることもあるが,毎回行われるわけではない。行われる際は,スクリーンを会場に設置しプ ロジェクターで映像を投影させる。なお,映像上映については,それに特化したイベント「こわれ者

映画祭 2014」(2014年12月13日)が長男さん主催で行われたことがあった(図 13,図 14)。映

画祭は月乃さん,Kaccoさんの進行の元行われた。

図 13 こわれ者映画祭フライヤー(2014年1213日用)

図 14 映像作品上映イベント(2014年1213日)

映画祭では出演者に対し,主演男優賞,主演女優賞といった賞が受賞された。映像は 5 分か ら 30 分程度のもので,こわれ者の祭典で上映されたものも含まれていた。Kacco さんや月乃さん もいくつかの作品で出演している。作風としては既存映画のパロディ色のあるものであったり,馬

鹿馬鹿しさが感じられるものがあったりと,こわれ者の祭典の雰囲気に合ったものとなっている。月 乃さんは,長男さんの映像が,こわれ者の祭典に強く「アングラ(アンダーグラウンド)な感じ」をも たらしたといい(2014 年 12 月 13 日),こわれ者の祭典のアンダーグラウンドな雰囲気といった特 性が様々なメンバーの作品,パフォーマンスを通して形づくられることがわかる。また,映画祭には 出演者等関係者の出席が多いように見受けられ,こわれ者の祭典の定期公演とはまた異なった 長男さんの人脈の元での参加者,観客が多く見受けられるような状況であった。このように,同じこ われ者の祭典関連のイベントであっても,行われる場所や内容によっては,イベントの様子や,観 客は異なってくる。

パフォーマンスは,音響やステージ装置,衣装などによって彩られる。イベントの全体的な進行 と共に,マイクの音量や照明などはリハーサルで確認される大事な点である。また,表現者は衣装 などに気を配る。パフォーマンス時の照明の操作や,CD の操作などを含む音響の管理などもパ フォーマンスにとっては重要であり,リハーサルなどの機会を通して,確認される。衣装について は,月乃さんは,イベント時には,パジャマを着てパフォーマンスを行うことが多いが,これについ ては,イベント中に以下のような説明がなされる。

月乃:なんでパジャマ着てるんだろうってみなさん思われてると思います。このパジャマは何か といいますと,私結構長期間ひきこもっててうちでお酒飲んだりしてたんですけど,その当 時このパジャマを着てうちでひきこもっていたんですね。(略)このグループは過去のことを どう明らかにするかということをテーマにしてますんで,(略)今会社勤めもなんとかできるし,

仲間もいるし,しあわせだなと。でも昔はこんなにつらかったんだと思いだしながらパジャマ を着てるんですね。(2011年9月23日)

パジャマ姿はひきこもっていた頃の姿であり,その頃の経験を思い出し,示していくためにパジャ マを着てパフォーマンスしていることが語られる。Kacco さんは女装してパフォーマンスを行う。

Kaccoさんは女装について,下記のように語っている。

Kacco:急にこれ(女装)じゃないですから。ただ小さい頃からずっとコンプレックス持ってて。

たとえばあの,足がちっちゃいからこの女性モノがはいるんですね。この服もこれも男性 だったら華奢な身体なんで(着られないのだけれども),ずっと小さい頃から(華奢な身 体であることなどが)コンプレックスで。まぁ,そういうのが全部コンプレックスだったんで すが,病気をしました。躁うつ病や摂食障害や,パニック障害。そんな中でイラストを描く という表現の世界に出会って,そこでは自分らしさを出していいってことを教えてもらっ

たんです。自分らしさ,個性を大事にしていい世界だ,そしたらコンプレックスだとずっと 思っていたのが,それは生きづらさのままで一生生きていかなきゃならないんだけど,コ ンプレックスも個性にかえられないかなって思ったときに,これがあったわけですね。(略)

結局これも表現の一つで,コンプレックスを個性に変えたっていうメッセージを伝えてい きたいなっていう。

月乃:男らしいとか,女らしいとかじゃなくて,Kaccoらしい生き方。

Kacco:そうですね,唯一らしいがあるとしたら,Kacco らしければ,自分らしければそれで

いいなと(2009年2月28日)

このように Kacco さんの女装の演出は,コンプレックスを個性に変えていく姿であり,「自分らしさ」

の表現であることが示される。このように,表現者のメッセージは,その作品と共に,衣装や演出の 総体によって表される。

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