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活動への反応・評価

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 136-144)

第 3 章 表現活動の実際

3.5 表現活動の観客

3.5.6 活動への反応・評価

(1) こわれ者の祭典アンケートより

こわれ者の祭典やK-BOXのライブなどイベントが行われる際は,受付を通して様々な案内が記 載された配布物が配られる。そこには,出演者の近日行われるイベントの案内,出版やラジオ放 送の案内などが含まれ,K-BOX のライブではメンバーの活動が記載された新聞記事のコピーな ども含まれる。配布物の中にはライブのアンケートも含まれており,その内容は,イベントを知った きっかけや,感想,連絡先などが記載できるようになっている。アンケートのみで観客の反応やイ ベントの評価の全容を理解することは困難であるが,ある程度の観客の反応は推察できると思わ れる。アンケートの感想欄には,イベントに対して肯定的な反応が多く記されており,表現活動に 対して,肯定的にとらえている人が多いことが推察される。記述内容としては,「生きやすくなった」,

「共感した」,「また来たい」,「楽しめた」,「心動かされた」という内容が主なものとして挙げられた メディア

 書籍

 ニュース

 新聞

 インターネット

知人・友人

表現活動 生きづらさ

創作

福祉 経験

(表 1)96

96 なお,アンケートは 2014年9月14日のこわれ者の祭典東京公演時のものを中心にとりまとめてあ る。アンケート内容には,個々の経験の詳細が書かれているものなどもあるが,ここでは,複数人に おいて類似した記述がみられる,一般的な観客の反応ととらえられるものを提示する。

表 1 アンケート記述内容例

記述内容要約 記述例

生きやすくなった 前向きになれた  生きる勇気をもらった。

 前向きになれた。

生きやすくなった  少し生きやすくなった 生 き 方 の 参 考 に

なった

 今後の生き方の参考にしたい。

 何かヒントにさせていただきます。

 いろいろな方のお話を伺えて,方向がみえてきたよ うな感じになりました。

 過去とうまく折り合いをつけ,新たな道,関係を作り 直せたらと思っています。

 一番自分の嫌な事をしゃべってしまうと,楽になれる とおっしゃっていたことが,印象に残りました。

共感した 共感できる  僕も同じような経験をしたので気持ちはわかります。

 アイコさんのお話に共感しました。

 自分だけじゃないんだと思いました。

 私も生きづらさの真っただ中にいます。

過去を思い出す  私も生きづらさを抱えてきました。同じ気持ちだった 頃を思い出します。

 自分が自助グループに通っていた頃を思い出しまし た。

楽しめた 楽しめた  自虐的で面白かったです。

 思っていたよりも楽しくエネルギッシュなパフォーマ ンスでした。

 かなり重苦しい感じの会と思っていたが,逆に面白 すぎて涙が出てしまいました。

ゲストがよかった ゲストがよかった。

心動かされた 感動した 感動をありがとうございます。

驚いた  本音トークに驚いた。

 熱いライブに圧倒された。

アンケートという方法にも起因すると思われるが,全体的に肯定的な反応が多い結果となって いる。共感できるという記述も複数みられ,当事者の参加が広くみられることが考えられる。また,

参考になった,という記述もあり,イベントが生きづらさを抱えている人々が新たな生き方や視点を 拡大していく一助となっていることがうかがえる。アンケートからは,共感したり,他の人の生き方を 知ったりといったセルフ・ヘルプグループ的な機能を表現活動が有することがうかがえると共に,

それのみではなく,「楽しめた」,「心動かされた」というようにパフォーマンス活動であるからこそ感 じられやすい思いを参加者は有していることがうかがえる。

(2) メディアを通した反応

月乃さんがこわれ者の祭典の司会をしているフリーアナウンサーの松井さんと共に行っているラ ジオ番組(月乃光司のハート宅配便)において,リスナーの反応が,リスナーからのメールの紹介 という形で紹介された。

松井(リスナーのメール紹介):私はうつ病を発症し,現在無職でひきこもり中の 30 歳の女性 です。AC97でもともと自傷傾向がある私でしたが,ある時,希死念慮がひどくなり,一度自 殺に失敗した時,ぐったりしながらインターネットで「自殺」というキーワードをググると,月乃 さんのページが現れたのです。そして,月乃さんのイベント「ストップ! 自殺~どん底から の出発」をユーストリームで食い入るように,泣きながら見ました。あれだけ死にたかった私 は,月乃さんと出会い,月乃さんのラジオや動画がたくさんあるから,死ぬのはこの後でも いいやと思いました。

そして,かかってみたいけど行けなかった精神科,月乃さんがおっしゃる「心のかぜで すから」という言葉に背中をポーンと押され,現在は精神科に通院中です。投薬が中心で はありますが,サイコドラマというグループセッションも始めて,ほんの少し前向きです。

病院に行く勇気を下さり,ありがとうございます。欲をいえば,もっと仲間とつながりたい です(ハート宅配便第145回)。

このように,自殺を試みたことがある人が,表現活動に参加することによって,医療の助けを借り るようになり前向きになれたといった状況がラジオ番組のリスナーより報告されている。こうした内容 は活動の意義の一端をうかがわせるものと考えられる。また,別の回 98では,「こわれ者の祭典や

97 アダルトチルドレンの略

98 「月乃光司×本宮宏美『ハートエナジー』」第73回。

K-BOX が居場所になっている」とのリスナーのコメントが取り上げられており,表現活動は観客に とっての居場所といえる場となっていることがうかがえた。

ラジオ番組のみならず,ツイッターなど SNS 含め,インターネット上において,イベントについて の反応がみられることも多い。たとえば「ストップ!自殺」という月乃さん主催のイベント(2012 年 8 月 25 日)において,月乃さんは何人かのゲストと共にイベントを行い,インターネット動画中継を 行った。そこでは,「死んでなくてよかったと思わせてくれる。」「腹抱えて笑いました。」「リアルで見 ました。チョッと圧倒される。あと笑いもある。」「『ストップ!自殺』のイベントを見ていると,ほっとし て気持ちが落ち着きます。」といった観客の反応がみられた。こうした内容は,イベント時のアンケ ート等でもみられる反応であり,動画中継という手段であっても,共感したり,笑ったり,圧倒された り,といった観客からの反応があることがうかがえた。また,新聞記事において観客の反応が示さ れることもあった。月乃さんの講演を聞いた60歳代の女性は新聞に以下のように寄稿していた。

心身障害者のパフォーマンス集団「こわれ者の祭典」を立ち上げ,朗読パフォーマンスを 織り交ぜた月乃光司先生の講演は私の考えを覆すものでした。

先生は自らの苦しい体験や病気をあるがままに受け入れ,生々しく赤裸々にユーモアを交 えたパフォーマンスで聴衆に語りかけてくださり,感動と喜びで心から拍手を送らせていただ きました。

(略)100 人いれば 100 通りの生き方があります。みんな違う道を歩みながらも,お互いの心 を思いやり,声を掛け合って生きていくことの大切さをあらためて考えさせられました。(2012 年10月13日,新潟日報)

こうした反応からは,表現活動が,多様な生き方,考え方に触れる機会になり,感動を呼ぶなど の肯定的な評価が観客によりなされていることがうかがえる。また,60 歳代という年齢層の高い層 の人々の共感も得られていることがうかがえる。このように表現活動は共感できたり,生き方を知る ことができたり,楽しめたりと多様な側面から意義が感じられており,多くの人から肯定的な反応を 得ている状況となっている。

(3) 外部からの評価など

表現活動を行う中でメンバーやその活動は文化的,人権的,芸術的見地から評価され,いくつ

かの賞を受賞している 99。2010 年に月乃さんが受賞した安吾賞は,新潟市ゆかりの作家坂口安 吾にちなんだ「生きざま」を評価するユニークなものとなっている 100。そこでは,月乃さんは次のよ うに評価されている。

月乃さんは引きこもり生活やアルコール依存症,自殺未遂などつらい時期を過ごされま したが,アルコール依存症を克服し,現在は心身障がい者によるバフォーマンス集団「こわ れ者の祭典」代表として活躍されています。

自らの病気体験をユーモアに転化するというかつてない方法で心や身体に障がいをも つ方々,病気に苦しむ人たちに光を当て,生きる力を与え続けている月乃さんの活動に心 から敬意を表したいと思います。(第5回安吾賞授賞式配布パンフレット: 3)

DAIGOさんや,いっしーさんは作った映画や著作の受賞歴があり101,表現者の中には各種パ

フォーマンスの大会などにおいて,いくつかの結果を残している102。以上のように,受賞や競争的 な活動において,制作物やパフォーマンスが評価されている。しかしながら,受賞や競争的な活 動ではなくとも,表現活動が継続してなされていることや,パフォーマンスはじめ,講演会や楽曲 提供に至るまで様々な外部機関から依頼を受け行われていること自体が外部から一定の評価が なされていることを示している。

99 たとえば,月乃さんは,第 65 回新潟日報文化賞社会活動部門・個人(2012 年),新潟弁護士会人 権賞(2010 年),第 5 回安吾賞新潟市特別賞(2010 年),新潟市民文学奨励賞・新潟出版文化賞 受賞(2001年) などの賞を受賞している。

100 安吾賞は「新潟市ゆかりの作家である坂口安吾は,文学をはじめ多くの分野において何事にも一 生懸命に挑み続ける人であった。安吾の精神を具現し,きまざまな分野で挑戦し続けることにより,

わたしたち日本人に喝を与えた個人または団体を表彰する『安吾賞』(第5回安吾賞授賞式配布パ ンフレット: 3)」と説明され,「『国籍,年齢,性別,職業‥を問わず,その生きざまが安吾のそれに通 ずる』と当初から謳ってきた選考基準(第5回安吾賞授賞式配布パンフレット: 3)」に準じて賞を授与 する新潟市の事業である。なお,第5回安吾賞は 日本文字・文化研究者のドナルド・キーンさんが 受賞しており,月乃さんが新潟市特別賞の受賞となった。新潟市特別賞は例年,「新潟市にゆかり のある方にお贈りする(第5回安吾賞授賞式配布パンフレット: 3)」ものとなっている。

101 DAIGO さんは,自身が作成したドキュメンタリー映画「崇とその仲間たち」が,山形国際ドキュメンタ

リー映画祭「日本パノラマ部門」招待作品に選出され(2001年),K-BOXのいっしーさんは,2010年 日本文学館出版大賞ノベル部門特別賞を自伝的著書「『自転車』でいこう」にて受賞している。

102 たとえば月乃さんは詩のボクシングという詩の朗読を競う大会にて,東京大会優勝を(2009 年),脳 性マヒブラザーズは,障害を持つ当事者によるお笑いを競うテレビ番組企画である「『バリバラ』

SHOW-1グランプリ優勝」を果たしている(2010年)。K-BOXでは純名さんが,ピアノの弾き語りにて,

2012年9月から11月にかけて,「egg ! Live」という出演者がパフォーマンスを競うテレビ番組に出 演し,継続して出演するための票を獲得し連続出場を果たしている。

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