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当事者活動の特性の重なりと多様な当事者活動のひとつとしての表現活動

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 155-158)

第 4 章 他の当事者活動との比較

4.4 当事者活動の特性の重なりと多様な当事者活動のひとつとしての表現活動

病気の表現活動と,自助グループを含む他の当事者活動の特性の重なりや違いを検討するこ とは,病気の表現活動がいかなる活動であるのかの理解を深める上で,また,表現活動からは得 られた知見が当事者の知識としてどれだけ考察に値するものであるのかを検討する上で重要であ る。そして当事者活動としての表現活動をとらえようとした際に気づかされるのは当事者活動の多 様さと,ひとつの当事者活動が有する多様な側面である。当事者活動と一言でいえども多様であ るし,その中のひとつのセルフヘルプ・グループといえども多様なグループがある。また,同じ活動 やグループ,たとえば典型的な匿名性や政治的活動をしないようなタイプの当事者グループであ っても,そうではない側面もある。

こうしたことから,病気の表現活動は特徴的な活動でありながら,他の当事者活動と決定的に 異なる点は意外と少ないのではないかと思われる。そして,病気の表現活動のみが突飛な活動な のではなく,他の様々な当事者活動と特性が重なりあうものであることが考えられる。いわば表現 活動は自助グループなどの様々な当事者グループと決定的に異なる点が意外と少ない点で当事 者の活動のひとつとしてとらえられ,また,様々な活動と異なる点を含むことで,既存の当事者の

自分の経験

〈表現内容〉

芸術作品

〈志向〉

「素」のままの表現

べてるの家での幻覚&

妄想大会など

こわれ者の祭典の公演

K-BOXのライブ

「つくられた」表現 アウトサイダー・アートな どの取り組み

活動では見出されにくかった当事者の知識を照射できる可能性を有していると考えられる。

本章においては,補助的なフィールドワークを中心に,他の当事者グループの実践を提示しな がら,それらとの比較を通して表現活動の位置づけを考察した。その結果,表現活動は大まかな 特徴としては,対社会的な意識と実践の形態を有すること,曖昧な枠組みで参集すること,ネガテ ィブに陥らないこと,パフォーマンスとしてつくられた表現をすること,といった特徴があることが考 えられた。しかしながらこのような特徴は,あるひとつのグループと比較するならば違いといえるか もしれないが,自助グループ全般,当事者活動全般としてみるならばそのような特徴を有する活 動が存在しないわけではない。また,自助グループを定義することは難しく,とらえ方によっては表 現活動も自助グループとみなすこともできる。表現活動においては,あるタイプの自助グループで なされていることが,パフォーマンスイベントにしても,打ち上げ交流会などの場においても多く取 り入れられている。月乃さんが作品でよく表現し,表現活動の根底をなすひとつのテーマといって も差し支えない「仲間」という言葉も,元々は自助グループで使われているものであることが度々示 される(NHK ONLINE 2014 など)。こうしたことからは,表現活動の起源のひとつは紛れもなく自 助グループであり,自助グループを基盤とし,多くの共通点を持たせながらエンタテイメント性など の要素を加味し,表現活動は形作られていることが考えられる。このように,表現活動と,自助グ ループはじめ他の当事者活動は重なり合う部分が多くある。これらのことから,表現活動は,特徴 的な活動でありながら,多様な広がりをもつ当事者活動のひとつととらえられるように思われた。

本研究は本研究フィールドに特有の知識のみを見据えるものではなく,病気の表現活動の実 践を通して,「当事者の知識」を考察することを目的としている。病気の表現活動は特徴的な実践 でありながら他の当事者活動と多くの共通点を有していることから,表現活動で見出される知識は,

ひとつの当事者活動に存在する知識として考察しうると考えられる。また,それでも病気の表現活 動が他の当事者活動と比べて特徴的な要素があることで,今までの当事者の実践にも含有され ていたが,未だ明らかにされていなかった知識が照射され,それらを明らかにすることが可能にな ることが考えられる。当事者活動の形態も多様化しており,病気の表現活動もまた他の当事者活 動と多くの共通点を持つひとつの当事者活動である。ある特定のタイプの自助グループの多様な 側面と共に,どのタイプにも広くまたがるような要素の強い表現活動のような実践の双方を見据え ることにより,当事者の知識の理解を深めることができると考えられる。こわれ者の祭典や K-BOX の実践は,様々な要素をあわせもつ特徴ある当事者活動のひとつであり,当事者の知識を考察 するのに適したフィールドであるように考えられる。

なお,本章においては,自己内部や一般社会への働きかけといった視点を元にした枠組みが 提示されているセルフヘルプ・グループとの比較を行ったが,当事者の実践を整理するには様々 な視点が考えられる。本章で示した〈参集の枠組み〉,〈ポジティブ思考-ネガティブ思考〉,〈表

現内容〉,〈「素」のままの表現―「つくられた」表現〉といった視点もひとつの視点であるが,別の視 点も想定しうることが考えられる。今後は当事者の活動をとらえる軸を整理して行くことで表現活動 の特性がより明確になると考えられる。

本章では,当事者活動としての表現活動を考察し,表現活動への理解を深めた。そして,表現 活動は特徴的なものでありながら,他の当事者活動と特性が重なり合う中で位置づけられること,

当事者活動と一言でいえども多様であり,同一グループにおいても多様な側面を持つこと,表現 活動が,特徴的でありつつ,同時に自助グループはじめ,他の当事者活動と多くの共通点を有し ながら実践を展開していることを本章で確認した。これを踏まえ次章からは表現活動から見出せる 当事者の知識について考察する。

5 章 表現活動における「生きづらさ」のつな

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