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トーク

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 69-75)

第 3 章 表現活動の実際

3.1 こわれ者の祭典

3.1.6 トーク

たんです。自分らしさ,個性を大事にしていい世界だ,そしたらコンプレックスだとずっと 思っていたのが,それは生きづらさのままで一生生きていかなきゃならないんだけど,コ ンプレックスも個性にかえられないかなって思ったときに,これがあったわけですね。(略)

結局これも表現の一つで,コンプレックスを個性に変えたっていうメッセージを伝えてい きたいなっていう。

月乃:男らしいとか,女らしいとかじゃなくて,Kaccoらしい生き方。

Kacco:そうですね,唯一らしいがあるとしたら,Kacco らしければ,自分らしければそれで

いいなと(2009年2月28日)

このように Kacco さんの女装の演出は,コンプレックスを個性に変えていく姿であり,「自分らしさ」

の表現であることが示される。このように,表現者のメッセージは,その作品と共に,衣装や演出の 総体によって表される。

松井:あ,病院の先生に伝える。なんのために病院に行ったか分かんないですもんね,

先生との話ね。

Kacco:そうなんです。でも,診療時間って本当短いんですね。そんな中でやっぱりいろ いろ聞かれて,「え,どうなんですか?」って言われるから,「いやあ,すごい調子悪い です」って。そのぐらいしか浮かばなくって。中にはいろんな感情とか気持ちがあるん だけど,それを上手く説明できなくて。そう。結局そうすると毎回同じ薬,「じゃあ,また いつもの出しておきます」って言われるわけですよ。それで出されると,その薬で本当 に副作用があったことがあるんですけど,副作用があっても,「またいつもの出しておき ます」って言われるから,もうめっちゃくちゃ気持ち悪くて戻したりしてて。それがやっぱ すごいしんどかったですね。病院のエピソードっていうか。

(略)

アイコ:私,高校時代の時が一番生きづらいなと思ってたんですけど,その時は,人に伝 えるのは自分の気持ちじゃなくて,人に見られたい自分を一生懸命伝えていたんです ね。こう見られたいからこう言おうとか,こう思われたいからこうやって返事をしようって いうのを。自分の気持ちではないものを一生懸命伝えていて。だから・・・。

江口:それはまさしくKaccoさんとイコールだよね。

アイコ:なので,なんで伝わらないんだろうっていうのは,自分の気持ちを伝えてなかった から伝わらないんだなっていうのは,過ぎた今だから思いますね。

(略)

月乃:今は,まあしょうがないんですけど,10 代の時とか 20 代の時,あのね,何を考えて るか分からない男っていうのは気持ち悪いんですよ(笑)。それをね,今,屈辱の記憶 ほじくるとね。なんかだから,コミュニケーション不能になってしゃべられないんです。で,

じーとして冷や汗流して苦しんでるんですけど,そうするとやっぱり気持ち悪がられる。

江口:それはそうだな。

月乃:なんかね,何考えてるの?ってこう言われたりとか(笑)。いろんなこと考えてるんで すよ,私。難しいことも。日本の政治とかプロ野球のこととかいろいろ考えたりする。

江口:プロ野球,難しいか(笑)。

月乃:(笑)まあでも,気持ち悪がられる。それが。

松井:もう,言葉が出ずにもう汗が出るっていうか。分泌液まで出ちゃって。

月乃:そうそう。分泌する。もうただ,仁王立ちで分泌しているだけですから,もうただひた

すら気持ち悪がられて。

江口:いやあ,いや,俺,大体想像つく。本当に。

松井:へええー。

江口:まだ,でもまだ気持ち悪がられるだけいいじゃん。まだそこも,さっき言ったように無 関心までいかれるとね。うわあ,キモイと。

(略)

Kacco:なんか,言葉にするのってすごく自分にとってハードルが高くて,で,今,自分の 中で感じてるものとか抱えてるものとか,見つからないんですよね。言葉探しやっても。

なおかつそういう時って頭が回転するのがすごく遅くなってるんで。で,見つからなくて。

当初は,私,摂食障害あるんですよ。で,過食症と拒食症っていううちの過食症のエピ ソードで,ごはんを家族が寝静まった深夜に1升ぐらい食べちゃうんですけど,その時,

言葉じゃなくてもうどうしても,それまでは家族が寝静まってから食べてたんだけど,も うどうしてもやりきれなくて,で,家族が見てる前で。

松井:やった。

Kacco:グワーッとやって,それでやっと,ああ,自分の子どもは普通じゃないんだ,やっと 病気だって認めてもらって肩の荷が下りたんです。

松井:ああー。

江口:そういう伝え方なのね。

Kacco:どっちかというとそうですね。言葉で言うのが苦手で。

このように生きづらい経験が時にユーモアも交えながら語られる。それと共に,回復のきっかけと なるような体験が以下のように語られる。

松井:2つ目の質問なんですけど,伝えることができてすごくうれしかった時。さっきと質問 またね,意味が真逆になりますけど,伝えることができてすごくうれしかったこと。そして,

皆さんに,伝えることについてのメッセージをぜひお願いしたいと思いますので。月乃 さん,お願いします。

月乃:私ですね,まあそんな冷や汗を流してた人生で,精神病院に 3 回入院したんです けど,病院を退院した後,そういう当事者が通う自助グループみたいなところに行った んですよ。それで,それで旅行に行ってですね,ヤングミーティングっていうね,35 歳 以下が当時ヤングだったんですけど。

江口:(笑)ちゃんとそこ押さえておかないといけないな。

松井:(笑)押さえておかないと。

月乃:まあ,アル中の世界,アルコール依存症の世界なんだけど,ちょっとトウは立ってる んですけど。でもすごくみんなね,普通の若者にみえたんですよ,その人たちが。で,

同じアルコール依存症っつっても俺だけなんか異常で,みんなさわやかな若者じゃん って思ったんですよ。そしたら,ひとりひとり話し始めたら,みんな手首に傷があって,

それこそアイコさんや Kacco さん達みたいに,伝わらなくて苦しくて,病院に入院して オーバードーズ 42してみたいなのをみんな話しだして,ええーっと思って。こんなに俺 と同じような人がいっぱいいるのかあと思って。で,そのまま若い子,俺たちみんなで 雑談したんですけど,手首に傷がない人のほうが少なかった(笑)。

江口:え,手首に傷がないほうが?

月乃:ほとんどがその集まりではリストカットしたあとがあったの。で,私,すごくリストカット したあとがあるのを気にしてて,今も微妙に時計で隠してるんですけど,これ今,今日 後ほど物販物買うとこれ,手首の傷見せるっていうサービスが(笑)。

松井:サービス(笑)

江口:どこがサービスだって。

松井:どんなサービスですか(笑)。

月乃:まあ,そんなことで。それで,あぁと思って。でもその時ね,すごく伝わることがうれし かったわけ。手首に傷があって恥ずかしいとか,人前で冷や汗かいたっていうのは,

みんなね,そんな話すると,「うんうん」とかうなずいてて,あ,これは,このマイナスの,

俺のマイナスが伝わるじゃんと思って,それがとっても伝わることがうれしかった。

江口:だから,ここ(こわれ者の祭典)はさ,変な話,自助グループになってたわけだからさ。

立ち上げ当初は。だからもうお客さんのほうからね,「見て見てー」が結構いたからね。

「このリストカットなんか甘い,月乃さん」みたいな。「私,アームカットよ」みたいな感じで 出てくるんですから,本当にね。

月乃:で,メッセージなんですけど,なんかマイナスのところをね,伝える場所が皆さんに あるときっとすごく楽になると思うんで。今日,実は折り込みに自助グループ案内って 新潟のいろんな,言友会 43さんの案内もありますけど,そういう当事者グループの会が 一覧にあります。そういうところに行って自分のマイナスのことを話したりとか,今日これ が終わった後,実は交流会と称して近くの居酒屋に行ってみんなで雑談するんです

42 自傷行為として薬を過剰に服用することをいう。

43 吃音の自助グループ。この回では言友会より2名がゲストとして参加していた。

けど,ぜひそういうとこに参加していただいて,今まで話せなかったような,アイコちゃ んが話したみたいな自分の病気のこととかね,誰かにちょっと話すと,みんな「うんうん」

ってうなずいてくれると思うんで。そうするとね,伝えることの楽しさがきっと始まると思う んですけど。

江口:まあ,それぞれいろんな病気自慢していただくっていう。

月乃:そういうことですね。

以上のように自らの生きづらい経験と回復のきっかけが語られる。当事者の立場としては参加し ていない司会者が,当事者である表現者の話を引き出していくスタイルで経験は語られ,生きづら い経験の表現にユーモアが加味される 44。また,自らの経験などを話すトークと共に,イベントの 展開上組み込まれるトークもある。たとば以下のようにイベントの開始時には司会者の自己紹介が なされる。

江口:えー,そういうわけで元気大使45,あらためまして新潟のお笑い集団,NAMARA,江口 歩です。今日はどうぞよろしくお願いします。(拍手)

松井:はい。そういう中,私,先ほどまで番組やっておりましたが,はい。FM放送ナビゲーター をしております松井弘恵と申します。よろしくお願いいたします。(拍手)(2011 年 6 月19 日)

表現者が出演する前には司会者がイベントの導入として挨拶や観客への感謝や,イベントの説 明がなされる。また,メンバーの紹介がなされたりもする。こうした司会者のトークもイベントの重要 な一部である。また演出的に以下のように月乃さんがイベント開始時に案内をすることがある。

月乃:じゃあ,今日新作の朗読をします。初めにちょっとごあいさつみたいのから。今日は 今オープニングなので,オープニングのあいさつからさせていただきます。

僕たちのイベント,こわれ者の祭典にようこそいらっしゃいました。今はイベントのオ

44 もっとも江口さんは身体障害者手帳5級を有しているとのことで,そのことがイベントで語られる場合 もある。しかしその機会は多くはなく,江口さん自身の経験を話すよりむしろ,メンバーに比べたら 5 級なんて恥ずかしくていえない,と言ったように表現者の経験談を際立たせるような意味合いで表さ れ,江口さん自身の当事者性が強調されることはあまりない。

45 新潟県が任命している健康づくりにかかわる「元気大使」を任命されていることのトークがあった後の 自己紹介となっている。

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