• 検索結果がありません。

活動に深くかかわる観客とゆるやかにかかわる観客

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 132-135)

第 3 章 表現活動の実際

3.5 表現活動の観客

3.5.4 活動に深くかかわる観客とゆるやかにかかわる観客

(1) 初めての客とリピーター

観客にはイベントに初めてくる人もいれば,何度も通うリピーターの人もいる。こわれ者の祭典 等でイベントの開始時に,初めて来た人,今まで来た人,それぞれ,司会者などの声掛けにより挙 手してもらうことがある。それらの様子をみていると,多くのイベントにおいて一定割合リピーターの 人がいることがうかがえる。もっとも挙手する人の割合を見る限り,たとえばこわれ者の祭典の定期 的な公演においては,リピーターが大多数を占めているわけではなく,初めて来る人の割合の方 が多い印象を受ける。また,イベントによってもその比率は異なってくる。たとえば月乃さんがこわ れ者の祭典以外の場でパフォーマンスや講演をする際,こわれ者の祭典を知っているかどうかを 観客に尋ねることがあるが,「こわれ者の祭典」というイベントでない場合はそこで「知っている」と 挙手する人の割合は少数派である。このように,活動のことを知り,リピーターとなって何度も関連 イベントに参加するような人もいれば,初めてこわれ者の祭典や K-BOX などの活動に触れる,と いう人が混在している状況で多くのイベントはなされる。リピーターであるかどうか,活動を知って いるかどうか,などの点において深く活動にかかわる観客もいれば,そうではない観客もいる状況 となっていることが考えられる。

(2) 打ち上げ交流会に来る人と来ない人

打ち上げ交流会に来る人の割合はごく一部の例外というわけではなく一定割合いる。たとえば 東京公演では100名程度の参加があれば40~50名程度,新潟公演で70名程度の参加があれ

ば 20~30 人弱程度が打ち上げ交流会に参加することが一般的な参加者の姿である。打ち上げ

交流会にはこわれ者の祭典の公演と同じように,何度も筆者も会ったことがある人もいれば,初め て参加する人の姿も見受けられる。打ち上げ交流会では飲食費の実費等含め,金銭的,時間的 コストがかかるにもかかわらず,一定割合の人が交流会に参加し,自らの生きづらさを語り,観客 や表現者と関係を結ぼうとする。単純に打ち上げ交流会に来る/来ない,によって活動との関係 が推し量れるわけではないものの 94,交流会に来る/来ない,はひとつの,活動に深くかかわる 人であるのか,そうではない人なのかの基準になりうると考えられる。

94 関係者やスタッフなどとして,活動に密接にかかわっていながら打ち上げ交流会に来る機会が少な い人もいる。同様に観客においてもリピーターでありながら,打ち上げ交流会には来ない人もいる。

(3) イベントに意図して来る人と偶然居合わせる人

表現活動は多様な場,形態でなされる。定例ライブなど表現者自身の主催により行われること もあれば,他の組織や人が主催して行われるイベントに招かれて参加することがある。双方のイベ ントにおいて表現者自身の活動を見に来場する人もいるが,表現者自身のことを知らないという 人も多く見受けられる場もある。また,K-BOX の活動にみられるように,地下街やショッピングセン ター,祭の場などでイベントが行われる際は,買い物や祭りに来ている人が立ち止り,パフォーマ ンスやイベントを楽しむ姿が見受けられる(2011 年 6 月 25 日など)。表現活動に参加する人は,

意図して来る人と,そうではなく偶然その場にいる人とがおり,そうした基準により,活動に深くか かわる人と,ゆるやかにかかわる人が生じてくることがうかがえる。

(4) ライブに来る人と他のメディアで活動に触れる人

表現活動に触れるメディアも単一ではなく,触れるメディアによって観客の幅も変わってくる。た とえばライブ活動ならば,そのライブに来ている人が観客となるが,一部のライブ活動等は動画サ イトなどで中継されることもあり,それらを見る人や,それらがアーカイブされたものを見る人もまた 観客といえる。会場に来ている観客数は,こわれ者の祭典新潟公演で役70~80人程度,東京公

演で90~100人程度,K-BOXのライブでは20~30人程度,という観客数が一般的なものとなる

が,動画中継がなされるとそれよりはるかに多くの人がライブを視聴する。たとえばあるこわれ者の 祭典東京公演(2011 年7月17日)では,動画配信サイトの公式チャンネルに採用されたこともあ り,18,000 人くらいのアクセスがあったことが報告された(2011年 8月 17日会議より)。表現活動 に触れる観客は,定期的なライブ活動はもちろんのこと,それのみではなく,動画中継や出版され た書籍やラジオなど様々なメディアに触れる人々が観客となっていることがうかがえる(図 40)。直 接ライブに来る人とそうではなくインターネットや書籍等で活動に触れる人によって活動にかかわ る深さの度合いが変わってくることが考えられる。

図 40 メディアの広がりと客層(筆者作成)

(5) 活動に深くかかわる観客とゆるやかにかかわる観客

表現活動は様々な場や状況でなされ,さまざまなメディアを通して表現活動に触れる人がいる。

そうした状況や表現媒体に応じて,観客と表現活動との距離が異なってくることが考えられる。表 現活動を観にライブ会場に来て,交流会などに繰り返し参加している人は表現活動に深くかかわ る観客ととらえられるであろうし,それに対して,そうではないが,表現活動に触れる人は表現活動 にゆるやかにかかわる観客であるととらえられる(図 41)。一言で観客といっても,深くかかわって いるといえる人もいれば,ゆるやかな形で表現活動に参加している人もおり,観客は様々なレベル で表現活動にかかわる人たちで構成されている。パフォーマンスという形態をとることによって幅 広い範囲から活動にアクセスすることが可能になっていることが考えられる。

定例ライブの観客 動画中継の視聴

書籍の購読者,出演するテレ ビ等の視聴者等

図 41 活動に深くかかわる観客とゆるやかにかかわる観客(筆者作成)

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 132-135)