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1.2  活動主体の将来展望

1.2.3.  行政活動の展望

光関連機器を利用する「企業」の動向を捉える。 

第二次大戦後 70 年代までの政策は,政府セクターの役割を拡大させて国の発展を図ることが世界的な潮流 であった。それが 80 年代以降は,各国で行政改革が標榜され,それまで国が担ってきた役割を民間企業に任 せる傾向にある。行政は,実務を民間に任せ,以下に示すような民間企業の競争力強化を促進する環境整備 業務に専念するようになる。 

 

(1) 具体的な変化 

IP 戦略が重要視される 

日本は不況下でも貿易収支の大幅な黒字を維持しているものの,技術貿易収支は赤字を続けている。一方 米国は技術貿易収支で黒字を拡大し続けており,近年の日米の経済状況を勘案した時,知財戦略の重要性が 伺える。実際に知財戦略を重視する国が増加しており,日本政府は知的財産戦略大綱を取りまとめ,その中 で「知的財産立国」を目指すことを表明した。発明や創作を尊重するという国の方向性を明らかにし,「もの」

だけでなく,デザイン,ブランドや音楽・映画等のコンテンツといった「情報」を財産と認め,これらの創 造を産業の基盤に据える意志を示している。  

 

      貿易収支      技術貿易収支   

             

         

   

出所)財務省資料など      出所)知的財産戦略推進事務局 

図 1.2.3.1  貿易収支と技術貿易収支

  今後の世界的な製造業の動向を考慮すると,先進諸国はこうした知財戦略によって研究開発拠点としての 立場を築いてゆくと考えられる。

自由貿易化が進む 

  近年,中国の WTO 加盟や EU の市場統一,FTA 締結の活発化など,自由貿易に関する動きが盛んになってい る。自由貿易協定を結んだ国とそうでない国で,輸出入に大きな影響が出るなど,自由貿易の重要性が増し,

今後も各国が協定締結を目指す動きを活性化させると考えられる。 

(20,000) 61 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000

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単位万$:100

(20,000) 61 7 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000

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こうした自由貿易が推し進められることは,自国の産業の再編行うことと同義である。国際競争力の高い 産業は益々世界へ進出し,逆に競争力の低い産業は既存のストックや人材を他の産業へと転換させることを 求められる。短期的な若干のひずみはともなっても,長期的に見れば,自由貿易の推進と産業の選択と集中 は,世界的に国策として進められる。特に日本は,経済の相互依存性が高く,関税等の貿易障壁も高く残る 東アジア諸国との FTA を締結し,EU は,東欧を巻き込んだ EU 圏内市場統合進展と北アフリカ・南米地域と の自由貿易化を進めると見込まれる。 

       

貿易を通じて、様々な国際間問題を解決することまで目論んでいる。 

各種自由貿易協定の取り扱い分野

出所) 外務省 貿易を通じて、様々な国際間問題を解決することまで目論んでいる。

各種自由貿易協定の取り扱い分野

出所) 外務省

図 1.2.3.2  各地域の自由貿易協定 

ホームランド・セキュリティ  

  従来の「国防」は,「外国との戦争」を主眼に置いて軍事費などに振り向けられてきた。しかし将来の グローバル化が進む世界では,国同士の大規模な戦争は起こりにくい反面,小規模の志を異にする集団 同士あるいは集団対国家の紛争が起こる。そうした時に,国としては軍隊の拡張よりも広範囲の国防を 念頭に置かねばならないようになる。つまりテロリズムなどを防止する意味での,不法入国の取り締ま りや違法な資金・製品の流れの遮断,さらには防災なども含めた,国に危機が及ぶリスクを最低にする バランスのとれた政策が将来社会では求められる。 

 

TechnologyInf ormation Analysis and Inf rastructure Protection DHS

( Department of Homeland Security )

Border and Transport Security Science and Technology

Inf ormation Analysis and Infrastructure Protection

Emergency Preparedness

例えば米国では,2002 年に国土安全保障省(DHS)を設立し,各省庁に分裂していた国家のセキュリテ ィ対策を一元化して対策にあたっている。 

                     

      出所)DHS  図 1.2.3.3  米国国土安全保障省のスキーム     

  また,天災や疫病などのリスクに対しても,地震をはじめ近年では疫病などで将来不確実性が増して いる。こうした災害に対しての技術開発の取組は今後非常に重要となる。現に,日本では災害対策とし て多岐にわたる取組を実施しており(図 1.2.3.4),世界中でも多くの国で同様の技術開発が必要となる と想定される。 

その他,エネルギー資源の枯渇に係る対策や安定的なエネルギー資源供給ルートの確保といった,エネ ルギーセキュリティの維持に関する取組もまた世界的になされている。 

 

有害液体物質に関する調査研究

(有害液体物質の除去手法の調査研究 )

災害一般共通項目

気象・水象に関する研究

(大気中の温室効果ガス濃度の増加に伴う地球温暖化の予測技術の 高度化、それを受けてより高解像度な気候変化予測計算の実施)

情報通信機器管理基盤技術の研究開発

(サイバーテロなどを未然に防ぐ、大規模災害時のネットワーク資源を 有効活用する技術など)

メガフロート情報基地機能実証実験

(免震性が極めて高いなど優れた防災機能を有するメガフロートをIT化 の進展に伴い需要が吸蔵しているバックアップセンタとして利用)

農作物及び森林の災害防止等に関する研究

(農地の地すべり防止に関する研究、異常降雨・大規模地震による災 害の軽減対策に関する研究)

出所)防災白書 平成13年度  

                       

図 1.2.3.4  日本の防災に関する技術開発の取組 

(2) 総合的な特徴 

  3 つの社会変化と行政活動の展望に基づき,将来の行政活動の特徴は以下の様にまとめることができる。 

 

• 少子高齢化

将来は行政では市民や企業活動に合わせて変化する必要がある。特に市民では,経済的な生産性 向上の実現ではなく,自らのニーズを実現しやすいインフラなど利便性の高いものを望むようにな る。企業もエンドユーザーである市民に合わせた活動を取るようになり,これを実現しやすいイン フラを望むようになる。つまり,将来の行政活動は,「経済成長重視のインフラ整備から,市民の利 便性重視のインフラ整備に切り替わる。」という特徴が得られる。

• 環境調和型社会

将来は行政では単に市民や企業の健康の安全を守るだけではなく,更に将来の環境に対する不安 を取り除く一歩先を行く活動が求められる。つまり,将来の行政活動は,「世界中で環境規制が強化 されてゆく中で,健康上の「安全」といったレベル以上に,より高度なレベルが必要な「安心」を 求めて微小な環境汚染・有害物資も検出し,管理することようになる。」という特徴が得られる。

• ボーダレス社会

将来は行政では同じ価値観を共有するコミュニティへの対応が求められる。コミュニティ同士の 価値観の融和及び衝突の回避などの活動がより活発になる。つまり,将来の行政活動は,「国家間,

組織間の相互依存関係が深まる。その結果,各国の特色がより鮮明化される。また,依存関係が深 まって国家間の紛争が減少する反面,組織間の紛争が激化し,犯罪,テロなどに対するセキュリテ ィ機能が重要視される。」という特徴が得られる。

1.3  将来社会と技術とのシナリオ 1.3.1.  将来技術の方向性

1.2 にて提示した 3 つの活動主体の将来展望では,今までは実現の困難であった機能が,様々な領域にお いて求められる社会を描いており,これらから将来技術の方向性を見出すことができる。 

少子高齢化では,全世界的な人口高齢化に対応できる柔軟性の高い開発体制や人材登用が採用やホームラ ンド・セキュリティなど,各年齢層の活動(高齢者など)がより活発にするために利便性が求められる社会 が想定される。日常生活をサポートできる情報通信機器や情報通信インフラの充実が図られるだけでなく,

安全で快適な生活を支えるために,医療や社会基盤分野の充実化もなされるであろう。 

環境調和型社会では,資源やエネルギーを効率的に用いるだけではなく,更に将来の環境に対する不安を 取り除く活動や,製造業のサービス化に伴う,コンテンツサービスに代表されるようないわゆる機能が商品 となる社会が想定される。 

ボーダレス社会では,各国の自由貿易化を促進させる情報通信(主に金融,セキュリティ)面の機能,周 辺環境に応じたサービスを迅速に変化させる機能,価値観の衝突による争いを避けるためのセキュリティ機 能が求められる社会が想定される。

また,こうした将来の社会変化を支える技術として,将来有望となる技術が適合すると考えられる。文部 科学省の技術予測調査や総合科学技術会議では,こうした将来重要となりうる技術領域について触れており,

具体的には以下のものが将来の有望技術として挙げられている。

• 情報系分野

情報通信技術(通信技術,情報処理技術など),エレクトロニクス技術(半導体,デジタル機器,ロ ボットなど),ソフトウェア技術(エージェント技術など)が挙げられている。

• 生命系分野

ライフサイエンス技術(バイオ技術など),保健・健康技術(治験・臨床研究,再生医療,医療機器 開発,テーラメード医療,健康管理技術など),農林・水産・食品技術(食品の安全性に関する技術 など)

• 環境・エネルギー系分野

環境技術(地球温暖化対策,科学物質リスク管理技術,環境センシング技術など),資源・エネルギ ー技術(新エネルギー源開発技術,循環型社会構築のための技術など),海洋・地球・宇宙技術(フ ロンティア開発技術など) 

• 製造系分野

製造技術(製造技術,製造管理技術など),流通・管理技術(マネジメント技術など)

• 社会基盤系分野

都市・建築・土木技術(都市設計技術,各種管理(監視などのセンシング)技術など),交通・物流・

サービス技術(ロジスティクス技術など) 

• ナノテクノロジー・材料分野

ナノ加工技術(ナノオーダの加工技術など),材料技術(新規材料創成技術など) 

   

  このように,将来社会では将来技術が様々な分野において適用されていることが予想される。一方,その