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第 2 章  光製品と市場の展望

2.3    光製品と技術の将来像  2.3.1  情報通信

2.3.2  光メモリ

(1) 分野の定義 

光メモリの分野では,CD,DVD や MO などの光ディスクを取扱う。表 2.3.2.1 に光光産業動向調査委員会 の分類に基づいた対象製品を示す。本節ではこれら製品に関連して,将来求められる機能と市場予測を行 う。

  表 2.3.2.1  光メモリ分野での製品分類 

  製品属性  製品 

CD(プレーヤ,記録型) 

MD(プレーヤ,記録型) 

DVD(プレーヤ,記録型) 

光ディスク装置 

MO  既存の延長上にある製品 

メディア  CD(-R/-RW),DVD(+R/-R/-RAM/-RW/+RW),MO,MD  ポスト DVD(BD/HD DVD) 

次々世代光ディスク(近接場光メモリ,体積メモリ,ホログラムメモリ)

光ディスク装置 

次世代光磁気ディスク(DWDD,MAMMOS) 

新規製品 

メディア  上記光ディスクに対応したメディア 

※光産業動向調査委員会の分類(光機器・装置の製品別生産額)を参考にして作成 

(2) 求められる機能と代表的な製品及び技術 

  2002 年時点では光ディスクは CD,DVD を中心に AV 用途及び PC 用途として用いられている。CD プレーヤ,

DVD プレーヤ及び,PC 用途の DVD と CD のコンボモデルとを併せて 9 割近い市場シェアを占めている。これ

は,近赤外 LD あるいは赤色 LD を用いたピックアップにて再生・記録する点で共通している。また,数量 は少ないが光磁気ディスクも日本を中心に PC のストレージ,MD は音楽用として用いられている。 

  CD プレーヤは音楽記録媒体として,その位置付けは今後も踏襲されると考えられる。また,映像の記録 媒体として DVD はドライブの低価格,コンテンツの充実から,それまでの VTR からの切替が進行している。

ただし,2003 年から始まったハイビジョン放送の記録媒体としては,更なる記録容量が必要となり,青紫 色 LD を用いたポスト DVD の登場が期待されている。 

  一方,PC 用途として CD 及び DVD は,ROM(Read-only Memory)としてドライブやメディアの低価格化,

記録メディアとしてはハードディスクやフロッピーディスクと比較して記録容量の大きさと携帯性の良さ を兼ね備えた利点によって普及している。この用途でも,ROM の容量拡大,記録容量の拡大に向けて青紫 色 LD を用いた DVD の登場が期待されている。 

 

  2010 年になると,AV 用途では従来 VTR が使用されていた放送や映画などの用途にも光ディスク(ポスト DVD)が用いられる社会が推定される。ポスト DVD は,ROM として DVD ソフトの高画質版から,記録媒体と してハイビジョン放送を 2 時間連続して保存可能なものとして普及する。TV 映像の保存では 25GB(ハイビ ジョン映像 2 時間撮影)を皮切りに様々な用途の記録媒体として,かつ頭だしが速いなどの利点を活かし て既存の VTR を概ね代替することが考えられる。こうした用途でも,基本的に光ディスクは追記書換型の 機能を持ち,従来の VTR と変わらない機能が必要になると考えられる。この後,映画や放送用途に普及す ると想定される。 

 

  また,PC 向けでは,光ディスクや光磁気ディスクでは HDD のバックアップと携帯機器(DVC,PDA 等ノー ト PC よりも小型の機器)への搭載が推定される。光ディスクの特長として,HDD と比較してデータのクラ ッシュが非常に少ない,メディアとしての持ち運びが可能という点が挙げられる。2010 年ではボーダレス 社会の到来により,情報のセキュリティのニーズが増大する。情報保護という点で,光ディスクや光磁気 ディスクでは HDD のバックアップ用途として書込みや読出し時のデータクラッシュの保護,オフラインで 情報を管理することができることから,光ディスクのニーズが高まることが推定される。フラッシュメモ リと比較すると,光ディスクは小型化では負けるものの,安価である点を活かして AV 用途や PC 向けとし て棲み分けると推定される。 

 

  具体的には,2010 年では環境調和型社会の到来に伴い,個人情報を効率的にカスタマイズし,使用者の 特性に合った形態のサービスや製品を得ることができる社会が到来する。こうしたカスタマイズにはネッ トワーク上の DB のバックアップ管理は不可欠であり,先にも述べたように DB の管理用メディアとして光 ディスクや光磁気ディスクは有望であるといえる。特に,光磁気ハイブリッド記録は,HDD に代わる記録 媒体としての普及が期待される。磁気記録での密度向上の問題(微小軸の熱揺らぎによるデータ損失など)

の解決策の 1 つとして挙げられる。光でトラッキングした後に GMR(Giant Magneto Resistive Head:巨 大磁気抵抗効果)ヘッドを用いて磁気記録する形式である。また,MO をはじめとする光磁気記録も有望と 考えられている。光磁気記録は常温において磁気記録よりも保磁力が大きく,また磁気記録よりも磁化反 転が早い特徴を生かして,一部の用途にて磁気記録の代替になることも期待される。大量の映像データを 扱い,且つ何回も記録や再生を繰り返す用途(放送局などの映像編集や映像のオンデマンドサービスなど)

にて光磁気ディスクの普及が期待される。 

 

  また,2010 年ではデジタル家電が普及し,食事のレシピや各種機器の使用方法など,従来テキスト情報 で提供されていた情報が,画像や映像(動画)を用いた情報に取って代わる時代になる。更に,動画が 3D 化に進行することで,2D よりも 1,000 倍近い容量(2D でメガピクセル画像の 3D 化)が必要になる用途も 出現する。こうした画像情報の増加に伴い,ストレージの大容量化が求められ,ストレージはコンピュー タに直接ストレージを接続する PC 用途からネットワークに直接接続する NAS(Network Attached Storage) や,ネットワーク上にストレージを集約する SAN(Storage Area Network)の需要が大幅に増加すると考え られる。また,図 2.3.1.1 に示したように 2000 年から 2010 年にかけて通信インフラ(TDM 方式等)の伝 送容量の増大に伴い,NAS の需要は増加すると考えられる。 

 

  他にも画像や映像が伝送される用途の記録媒体としても光ディスクや光磁気ディスクは大きく普及す ると期待される。個人のデジタル画像の保存をはじめ,図書館や博物館などの作品(画像)などの長期間 の保存が必要なアーカイバルな情報にいたるまで様々な場面で画像や映像の保存のニーズは広がると想定 される。こうした用途では,個人的な利用では記録容量が比較的少ないことから CD,MO や DVD を中心に既 存のメディアでの画像や映像記録が普及する。また,放送局が取扱う映像,博物館の作品や医療関連の情 報などアーカイバルな画像や映像は高解像度や長時間映像が必要となるため,ポスト DVD や表面記録型の 近接場光メモリなどを中心に普及していくと想定される。特に,光ディスクはデータ保存の信頼性の高さ から,アーカイバルな情報の保存用として市場は大きく拡大すると想定される。 

 

例えば,将来の少子高齢化社会では高齢者向けに光ディスクの需要が増加する。将来は足腰の悪い高齢 者のために遠隔地からの TV 電話や TV 会議システムを用いた診療や,高齢の患者に分かり易い情報提示な どが実現し,医療行為での映像や画像情報の提示は需要が増すと推定される。こうした用途では,患者の 電子カルテ(X 線動画像や内視鏡画像,手術時の画像等)は医療行為に関わる全ての情報を光ディスクに 保存する需要が増加する。また,患者毎の情報セキュリティの視点では,オフラインで情報を保存し,且 つ大量の情報を保存することが可能な光ディスクの需要が増加すると期待される。 

 

2015 年では,基本的に 2010 年の世界像の延長上で更に情報量が増加した社会が推定される。様々な情 報を映像(特に動画)でやり取りするようになる社会が推定される。MPU の高速化やストレージの大容量 化により莫大な情報のやり取りが実現される。2010 年よりも更に大容量のストレージが求められるように なり,テラバイト級以上のストレージが求められるようになる。 

これらの様々な用途への光ディスクの展開は,単に光ディスクの技術開発だけではなく,SCSI や USB を はじめとするインタフェースの発展によって支えられている。今後光メモリの発展のためには,インタフ ェースの拡大も必要となる。 

 

以上より,光メモリに求められる機能として主に記憶容量が挙げられる。 

従来の製品では数 GB が限界であったものが,今後は順次数十 GB,2010 年にはサブ TB までの記憶容量が 必要となると考えられる。数十 GB の記憶容量を実現する製品としてはポスト DVD(BD:Blu-ray Disc や

HD DVD:High Definition DVD),サブ TB から TB にかけては次々世代光ディスク(近接場光メモリ,体積 メモリ,ホログラムメモリなど)が挙げられる。また,光磁気ディスクもサブ TB の実現に向けて次世代光 磁気ディスクの上市(DWDD,MAMMOS など)が期待される。ポスト DVD は AV から PC 用途まで幅広い利用が 期待される。また,サブ TB を実現する次世代光磁気ディスク,TB を実現する次々世代光ディスクは,放 送局が用いる高解像度の映像の記録媒体や,ネットワークストレージの HDD(テキスト,画像,映像など の記録)のバックアップ用途としての利用が期待される。 

また,光ディスクでは記録容量以外に信頼性(データの保存)も重要な機能として求められる。 

 

(1)項で示した製品が,当該分野における代表的な製品として位置付けられる。2002 年,2010 年,2015 年の各年における主要製品をまとめたものを表 2.3.2.2 に示す。また,2010 年以降上市する主要製品につ いては,用いられる技術の詳細について示す。 

表 2.3.2.2  光メモリ分野の主要製品  各分野のセット  対象分野 

既存技術の延長/既存マーケット  新規技術を用いた製品/新規マーケット  光メモリ  CD 

光磁気ディスク(MO) 

DVD 

各種メディア 

ポスト DVD(Blu-ray Disc,HD DVD)*1  次世代光磁気ディスク(DWDD,MAMMOS)*2 

次々世代光ディスク(近接場光メモリ,体積メモリ,ホログラ ムメモリなど)*3 

各種メディア*4   

※1:ポスト DVD:BD,HD DVD などの青紫色 LD を用いた光ディスク。メディアの多層化も該当する。 

※2:次世代光磁気ディスク:光源として青紫色 LD を採用し,メディアもより高密度化したもの。 

※3:次々世代光ディスク:より短波長(UV 等)の光源とより高 NA なレンズを用いた光ディスク。 

メディアの多層化も該当する。そのほか従来の光ディスクとは異なった構造を持つものもある。 

※4:メディアは機器に対応したものを推定。 

 

光ディスクは,レコーダや記録用ドライブとして光源(LD)の短波長化とレンズの高 NA 化により高密度 化を実現することができる。2010 年では,サブ TB の記録容量を実現するために,多くの光ディスクで青 紫色 LD や更に短波長化を実現した UV 領域の LD などを搭載すると推定される。また,光源に合せてレンズ の高 NA 化(NA>2)や超解像ディスク化も推定される。また,次世代光磁気ディスクの実現が期待される。 

更に 2015 年では,ストレージ用のバックアップ用途や画像の 3 次元化に合せて TB 級の光メモリが求め られる。この記憶容量を実現する製品としては,次々世代光ディスク及び次世代光磁気ディスクの実現が 期待され,2010 年に比べ光源の更なる短波長化,レンズの高 NA 化が求められる。 

 

一方,ROM としての開発も AV 向けを中心に進められる。メディア材料ではレジスト材料の高感度化,マ スタリング密度の向上による高密度化の実現が求められる。前者ではレジスト材料の低分子量化により,

ノイズ低減が可能となる。後者では,電子ビーム(EBR)もしくは現状よりもスポット系を更に小さくした レーザビームを用いることで高密度化が可能となる。EBR では電子源の高密度化(大電流化)などが必要