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第 2 章  光製品と市場の展望

2.3    光製品と技術の将来像  2.3.1  情報通信

2.3.3  ディスプレイ・照明

(1) 分野の定義 

ディスプレイの分野では,LCD や PDP などの TV をはじめとする表示装置を取扱う。表 2.3.3.1  に光 産業動向調査委員会の分類に基づいた対象製品を示す。本節ではこれら製品に関連して,将来求められ る機能と市場予測を行う。 

表 2.3.3.1  ディスプレイ分野の製品分類 

分類 対象製品

CRT ディスプレイ  LCD ディスプレイ  PDP ディスプレイ  プロジェクタ 

有機 EL ディスプレイ  FED ディスプレイ 

上記以外の薄型ディスプレイ(電気泳動ディスプレイなど) 

ディスプレイ

LED ディスプレイ 

照明用既存光源(白熱電球,蛍光灯,HID,非白色 LED 照明(赤,

黄,緑,青等),等) 

照明

白色 LED 照明及び有機白色照明 

(2) 求められる機能と代表的な製品及び技術 

【ディスプレイ】

2002 年時点では,コンシューマー用途では,主に CRT ディスプレイや LCD ディスプレイが,TV モニタや PC 用モニタ,携帯端末用モニタ(LCD ディスプレイのみ),プロジェクタ(LCD ディスプレイのみ)などの 様々な用途に使用されている。一方で,PDP が大型ホーム TV として市場に投入され,市場シェアを拡大し つつある。また,有機 EL ディスプレイも携帯電話に採用され始めるなど,同じ用途に様々なディスプレイ が使用されるようになってきている。その他,電子ペーパー/ペーパーディスプレイも試験的に製品が投 入されはじめ,新規用途も拡大しつつある。こうしたコンシューマー用途では,既存の据置型ディスプレ イに関しては大型化,高精細化が求められている一方,携帯型のディスプレイでは大型化や高精細化の他,

低消費電力化,高輝度化なども求められる。また,新規用途として期待されている電子ペーパー/ペーパ ーディスプレイ等では,耐久性(折り畳めるなど)も求められている。 

 

産業用途では駅の電光掲示板などに使用されるインフォメーションディスプレイに変化が起きている。

今までは赤色 LED と緑色 LED を使用した LED ディスプレイが大半であったが,青色 LED を使用した白色光 の表示が可能な LED ディスプレイが市場に投入されつつある。なお,この背景としては,青色 LED に関す る特許紛争が解決し,主要メーカ間における技術提携がなされたことが挙げられる。また,白色 LED を用 いた照明機器も開発されており,その先鞭として,自動車用のヘッドライトが近年のうちに市場に投入さ れる見通しである。なお,2004 Detroit Auto Show にて,Audi が LED 搭載のヘッドライト生産を発表し ている。その他,映画館にて電子シネマが採用されつつある。 

 

2010 年頃になると,来るべきボーダレス社会,ユビキタス社会に適応した形の製品が提供されるように なり,ディスプレイは時と場所を選ばず様々な状況下で利用されるようになる。どこでも必要な情報を表

示したいというニーズに応えるためには,軽量かつ薄型といった機能用件が求められる。また,場所と時 間を気にすることなくディスプレイを使えるようにするためには,電力供給なしに情報を長時間表示させ るための低消費電力化が求められている。 

 

また,徐々に家庭におけるディスプレイの位置付けや機能が変化していく可能性が高い。TV 放送のデジ タル化や高精細化などに伴い,TV モニタと PC 用モニタとの間に要求機能面の差違がほぼ存在しなくなっ てくると予想される。その結果,映像出力機能のみを有したモニタが各所に置かれ,必要に応じて PC や TV 放送の映像を出力する形態が普及すると推定される。なお,この形態におけるモニタは,無線通信によ って TV 映像出力機器や PC と接続され,映像情報の受信及び表示を行う。こうした利用形態は主に先進諸 国にて普及し始め,その利便性より,1世帯あたり数箇所に設置されることが推定される。そのほか少子 高齢社会の到来に伴って,個人(特に高齢者)の日常生活をサポートする,携帯性に富んだ情報伝達機器 としてのディスプレイが,主に先進諸国にて普及するものと考えられる。 

 

このように,将来におけるディスプレイに求められる機能は,据置型(コンシューマー),モバイル型(コ ンシューマー),インフォメーションディスプレイ,電子シネマ,照明といった用途それぞれに分けること ができる。具体的には,据置型コンシューマー用では大画面,高精細が主要機能である。モバイル型コン シューマー用では大画面,高精細に加え,軽量化(薄型化),低消費電力,高耐久性が求められる。また,

インフォメーションディスプレイでは高耐久性とフルカラー表示が,電子シネマでは高精細化が主要機能 である。その他,照明では輝度向上及び長寿命化,低コスト化が求められている。 

 

こうした機能要件に応じて,アプリケーションとなるディスプレイも異なってくる。2010 年以降になる と,TV モニタや PC 用モニタのような据置型のモニタには,LCD ディスプレイや PDP ディスプレイ,CRT デ ィスプレイ,有機 EL ディスプレイ,FED ディスプレイが採用される。但し,FED ディスプレイに関しては,

製造コスト等の面より,商品化されて当該市場の一角を担うようになるのが 2015 年以降になる可能性が高 いと考えられる。携帯端末用のモニタでは,軽量化及び薄型化の条件を満たすことのできる LCD ディスプ レイと有機 EL ディスプレイが主に採用される。また,電子ペーパー/ペーパーディスプレイに関しても同 様である。 

インフォメーションディスプレイでは,高耐久性及びフルカラー化の条件を満たし,かつ消費電力を抑 えられる LED が今後も使用されると予想される。電子シネマでは一層の高精細化が実現され,既存映写機 を代替していくものと考えられる。その他,照明では徐々に高輝度化が図られ,自動車用照明機器を皮切 りに,LCD ディスプレイのバックライトやその他一般照明へと適用範囲が拡大していくものと予想される。 

 

以下に,求められる機能と解決が期待されている技術課題を,今後市場規模の拡大が期待されているデ ィスプレイデバイス毎に記述する。 

 

●LCD ディスプレイ 

LCD ディスプレイは徐々に大型化が進み,ホーム TV としても大型のものが今後続々と製品化されるこ とが確実視されているが,技術課題として,バックライトの性能向上(主に長寿命化)や画像処理能力

の向上が依然として挙げられる。バックライトの機能用件としては,高輝度化や低消費電力化,長寿命 化などが挙げられるが,これらは誘電体バリアランプや白色 LED ランプによる解決が期待されている。

また,PC 用据置型モニタに関しても同様である。 

 

LCD ディスプレイは,今後システム液晶化等によって高精細画面化,省電力化,省スペース化といっ た高付加価値化が進むものと思われる。また,携帯端末用モニタとしては,主な技術課題は低消費電力 化も挙げられる。 

 

●PDP ディスプレイ 

PDP ディスプレイは,自発光ディスプレイであるため高輝度かつ高視野角であり,大画面化や薄型化 にも適したディスプレイである。普及当初は 32 型,42 型が主流であったが,LCD の大型化が進んできた ため 42 型からさらに 50 型,60 型へと大型化が進んでいる。技術課題としては,低消費電力化,長寿命 化,画像処理回路の性能向上によるさらなる高画質化及び高階調化,駆動回路の高速化などが挙げられ る。 

 

●プロジェクタ 

現在のプロジェクタは,主にビジネスプレゼンテーション用途に用いられているが,今後低価格化が 進むにつれて,家庭でのエンターテインメント用途で普及することが予想される。ただし,その場合に は,今まではあまり要求されてこなかった色再現性や高コントラストといった面での性能向上が必要と なるため,関連する光学系の開発が期待されている。その他,「リアプロジェクション」テレビとしてコ ンシューマー向けに海外で大きな市場になりつつあるが,光学系の性能向上の他にリアプロジェクショ ン用スクリーンの高画質化などが挙げられる。 

 

●有機 EL ディスプレイ 

有機 EL ディスプレイの特性である「軽量」,「薄型」,「低消費電力」といった性質は,携帯端末用モニ タやノート PC 用モニタでは欠かすことのできない機能要件であるため,当面はそれらの製品化が優先的 に行われる可能性が高い。また,電子書籍としても使用され,新聞や小説の代替品として普及する可能 性が高い。 

 

携帯端末用モニタとしての主な技術課題は,低消費電力化である。その他の技術課題としては,有機 EL ディスプレイでは長寿命化が挙げられる。また,2010 年以降ではフレキシブル有機 EL ディスプレイ が実現される可能性も高いが,技術課題としては,大画面化が挙げられる。 

 

そのほか,ポケッタブル PC 用として,現在の形状や機能を継承した形のディスプレイとして有機 EL ディスプレイも採用される可能性が高いが,将来には,折り曲げの可能なフレキシブル有機 EL ディスプ レイが市場に投入される可能性が高い。なお,フレキシブル有機 EL ディスプレイの技術課題としては,

当面はフレキシブル TFT 回路の実現が最大の技術課題である。