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第 2 章  光製品と市場の展望

2.3    光製品と技術の将来像  2.3.1  情報通信

2.3.6  光エネルギー

(1) 分野の定義 

光エネルギーの分野では,クリーンエネルギー発電として工業化の進みつつある太陽電池を取扱う。

なお,表 2.3.6.1 に光産業動向調査委員会の分類に基づいた対象製品を示す。本節ではこれら製品に関 連して,将来求められる機能と市場予測を行う。 

表 2.3.6.1  光エネルギー分野の製品分類 

分野  応用分野 

公共,産業用  一般電力用太陽電池  住宅用 

その他  電力応用商品  民生用  光エネルギー 

電力応用太陽電池, 

民生用太陽電池 

その他   

(2) 求められる機能と代表的な製品及び技術 

【地球温暖化防止への貢献度が最も高いクリーンエネルギーとして,太陽電池が期待されている。】  光エネルギーの関連技術は,一般に光を照明用として用いる従来からの応用分野のほかにレーザ加工や

熱利用,そして太陽電池を使用した新発電システムとその応用が考えられる。情報通信,交通,産業,そ して照明など,日々の文明生活に必需の電気エネルギーであるが,その大半を担っているのは火力及び原 子力によるものである。自然環境を汚さずに発電できる新技術として,水力,風力とともに太陽光発電が,

近年様々な分野で実用化されてきており,特に太陽光発電は,光エネルギー産業として認知されるに至っ ている。太陽光発電は,電力需要の多い昼間の時間帯に発電できるため,いわゆるピークセービング用電 力としての期待も大きい。また,燃料となる一次エネルギーが太陽であることから,枯渇することなく,

かつ環境負荷がゼロという,地球温暖化防止への貢献度が最も高いクリーンエネルギー,環境調和型社会 に最適なエネルギーとして,その導入と普及促進に大きな期待がかけられている。 

 

【用途に応じて,様々な太陽電池が使用されている。】 

太陽電池の種類は使用する材料やその接合構成に応じて多数存在しており,用途に応じて使い分けられ ている。用途は系統連係型発電システム,独立型発電システム及び民生機器向け太陽電池モジュールの 3 つに大別できる。 

 

系統連係型発電システムは,主に一般住宅や産業施設で主に環境対策を目的として導入されている。こ れは,太陽光発電による電力を電力会社からの電力と調整する必要があるためであり,現在では変換効率 面とコスト面のバランスが最も良いとされているバルク結晶系型(単結晶シリコン太陽電池+多結晶シリ コン太陽電池)の太陽電池が主に使用されている他,比較的高効率かつ高価格の単結晶シリコン太陽電池 も使用されている。 

 

独立型発電システムは,過疎地における無線通信局など,通常電力の供給が困難な地域における電力供 給施設として導入されている。このシステムでは,発電コストよりも変換効率が比較的重視されており,

性能面で優れている単結晶シリコン太陽電池を採用した発電システムが主に設置される。これは,こうし た施設の消費電力が比較的小規模で安定的に推移することが多く,また,設置場所も比較的容易に確保で きるためである。 

 

上記 2 種類の太陽光発電システムは,使用する太陽電池パネルの量も家電製品向けに比べると格段に多 く,市場規模の 9 割以上を占めている。その他,民生機器向けには,電卓や時計といった比較的消費電力 の少ない製品に太陽電池モジュールが適用されている。 

 

【太陽電池に求められる機能は,主に低コスト発電である。】 

このように様々な用途に用いられている太陽電池であるが,我が国では 1974 年にサンシャイン計画が発 足して以来,材料並びにセル構造の低コスト化と大面積化に研究開発の力点が置かれてきた結果として,

現在では発電の高効率化が達成されている。現在量産化され市販されている太陽電池としては,単結晶シ リコン太陽電池,多結晶シリコン太陽電池,薄膜シリコン太陽電池が主に挙げられるが,それぞれセル効 率にして 18%(10cm 角程度),15%(12.5cm 角),10%程度の製品が市場に投入されるようになってきた。 

 

また,今後も変換効率の向上や低価格化が進むことが確実視されており,一層の普及が予想される。特

に 2010 年頃に焦点を当てると,新規に建設される施設・住宅の大半で太陽光発電システムが標準装備され,

既存の施設・住宅でも設置が進むと予想される。また,電力会社による,送電コストの高いエリアへの設 置も推定される。なお,これらの用途には安定的な電力供給が必要となるため,既存電力を併用できる系 統連結型の発電システムが利用される。その他,2010 年頃にはより高効率発電のできる色素増感型太陽電 池も民生用で実用化され,市場に投入されることが期待されている。 

 

しかしながら 200 年以上の歴史を持つ現在の発電技術と比較すると,発電コストの点では現在でも 1.5 倍程度も高く,太陽電池の低コスト化が今後の市場規模拡大への鍵技術とされている。これを目指した政 策課題として,経済産業省総合エネルギー調査会「新エネルギー部会」は,日本の太陽光発電システムの 累積導入目標として 2010 年に 482 万 kW を掲げている。いずれにしてもこの政策は,太陽光発電の発電コ ストを家庭電気料金程度(23〜25 円/kWh)や大口電気料金程度(10〜15 円/kWh)以下にすることを目指した ものである。 

 

発電コストを低減させる施策の方向性としては,変換効率の向上と製造コストの低減が挙げられる。今 後は 2015 年に向けて,変換効率にして 20%を超える製品の登場が期待されている。太陽光発電システムは 主に住宅施設や産業施設にて設置されているが,使用電力全てを太陽光発電システムに依存するケースは 希であり,不足分は電力会社からの電力で賄っているケースが大半である。これは,現在の効率では,設 置場所及びコスト面に問題があるためである。また,当面の普及対象である一般住宅への導入を促進させ るためにも,設置〜廃棄に至るトータルでの発電コスト面で,家庭用電気を使用した場合よりも優位に立 つ必要がある。第二の製造コストであるが,太陽電池セル及び発電システム全体の双方において,低コス ト化が望まれている。中でも太陽電池ウエハーは,太陽電池素子の価格の約 40%を占めており,特に低コ スト化要求が強い。また耐用年数及び償却年数を考慮すると,現状の発電システムは,その導入には補助 金等の政策面での支援が欠かせない。太陽電池は,半導体集積回路(IC)と同様に半導体製品であること から,量産化によるスケールメリットの利用による低コスト化も見逃せない課題である。 

 

その他,主にアウトドアレジャーや僻地での一時滞在用に,携帯性の向上や太陽電池パネルのフレキシ ビリティをいかした応用分野の更なる開拓が求められている。 

 

以上より,光エネルギー分野での主要製品を表 2.3.6.2 に示す。 

表 2.3.6.2  光エネルギー分野の主要製品  各分野のセット 

対象分野 

既存技術の延長/既存マーケット  新規技術を用いた製品/新規マーケット 

光エネルギー 

単結晶シリコン太陽電池セル及び  モジュール関連製品 

多結晶シリコン太陽電池セル及び  モジュール関連製品 

薄膜シリコン系太陽電池モジュール及び スタック型太陽電池モジュール関連製品 など 

化合物薄膜太陽電池モジュール関連製品  色素増感型太陽電池モジュール関連製品  タンデム型太陽電池モジュール関連製品など 

以下に,上記の主要製品について求められる機能と解決が期待されている技術課題を,製品分類毎に記 述する。

●結晶系シリコン太陽電池(単結晶シリコン太陽電池モジュール及び多結晶シリコン太陽電池モジュー ル) 

結晶系シリコン太陽電池では,高効率セルの工業的手法の開発と原料問題の解決が主要な課題である。

単結晶シリコン基板を用いた高効率低コストセル化技術としては,酸化膜パッシべーションセルへの印 刷電極の適用や高スループット化技術などの開発が期待されている。また,多結晶シリコン基板を用い たものとしては,選択エミッタ,テクスチャー技術,SiN 膜やリモート水素プラズマパッシべーション 技術,RTP 技術,スライスレス化,薄型セル化技術などの実用化が進められており,セル効率 20%の達成 が期待されている。 

 

●薄膜シリコン太陽電池 

太陽光発電システムが飛躍的に普及している今,この動向を後押しするために低コスト化が強く要求 されている。こうした状況下において,大量生産用素子として薄膜系素子の開発は不可欠であり,中で も比較的安定した高効率変換が期待できるシリコン系薄膜素子に注目が集まっている。 

最近は,アモルファスシリコン(a-Si)と微結晶シリコンを融合させたタンデム(商品名としてハイ ブリッドと呼ばれるものもある)型素子を使用した新製品が市場に投入されており,現在は 10%以上の 変換効率であるが,まもなく 12%の製品が市場に投入されてくるとみられている。一方,結晶系シリコ ン薄膜単体でも高品位結晶が実現できれば 15%以上の高い変換効率を達成できることがシミュレーショ ンによって明らかにされており,今後は一層の変換効率向上が期待されている。特に多結晶シリコン薄 膜では,水素による欠陥や粒界のパッシベイションといった素子作成プロセスの最適化が求められてい る。 

●化合物薄膜太陽電池 

化合物薄膜太陽電池は,薄膜シリコン太陽電池に比べて高効率変換が望める新しい太陽光発電素子と して,注目を浴びている。現在ではCuInSe2(CIS)やCdTeといった化合物薄膜太陽電池のサンプル出荷な