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第 2 章  光製品と市場の展望

2.3    光製品と技術の将来像  2.3.1  情報通信

2.3.4  入出力

(1) 分野の定義 

2010 年以降の将来社会では,人間の五感に接する機械である入出力機器は人間性アクセシビリティなど を一層重視してゆこうという観点に立ったヒューマンインタフェース機器の 1 つとして非常に重要な位置 付けになると予想される。将来のヒューマンインタフェース機器は,現状よりも人が使い易い形態が求め られる。例えば,少子高齢化社会では,高齢者が使い易い機器としてテキスト情報を音声,画像や映像に 変換することで分かり易い表示にする,簡単な手順で複雑な操作を可能にするなどの機能が必要となる。

また,環境調和型社会では,モノのシェアリングが普及する社会が想定され,様々な人が使い易くなるよ う,モノが使用者に合わせて各種形態に変化できる機能が必要となる。このように人が使い易い機器にす るためには,従来のようにはじめからできるだけ全ての人が使い易い設計(ユニバーサルデザイン)から

使用するシチュエーションに応じて臨機応変に変化する設計,すなわち使用者の状態をセンシング(入力)

し,状態に合わせて最適な形態を設計するエージェント機能を介して,機器を変化させる(出力)機能が 必要となる。具体的には,入出力機器が関連する機能として,入力では使用者にあわせた画面の拡大表示,

誤作動防止機能(スイッチの簡素化,色分け)や,出力では多重表現機能(視覚だけではなく,音声や触 覚での表示),タッチスクリーンなど操作性向上を目指したものが付加される。また,これら入出力機能を 統合したものとして HMD(Head Mount Display)やバーチャルキーボード等を用いたウェアラブルコンピ ュータも,場所を選ばずいつでも誰もが入出力可能となる機器として今後期待されている。また,今後は 様々な機能が付加される情報機器に対して,高齢者やリテラシーが高くない人々が熟練者と同程度の操作 が可能となる入出力機器(ヒューマンインタフェース)が求められている。 

また,将来,入出力機器はネットワークを介して様々な組み合わせが可能となることで,より人が使い 易い機器の実現,様々なアプリケーションへの拡張が期待できる。例えば,人間中心のコンピューティン グのシステムを目指しているマサチューセッツ工科大学の Oxygen プロジェクトや産業総合研究所が行っ ていた人間行動適合型生活環境創出システム技術の取組みなどが,ネットワークを介したアプリケーショ ンの将来像として該当する。 

  こうした機能を満たす実現するための機器の一部として,光関連技術を用いた入出力機器の重要性は今 後増大すると考えられる。例えば,人の状態をセンシングできるカメラ(位置情報や表情など)やレーザ センサ(姿勢や体調など)をはじめ,人の状態に合わせて表示形態を変化させるディスプレイ(GUI: 

Graphical User Interface),複写機やプリンタなどの紙媒体への出力機器といった入出力機器が果たす役 割は大きい増大するであろう。将来,入出力機器はネットワークを介して様々な組み合わせが可能となる ことで,より人が使い易い機器の実現,様々なアプリケーションへの拡張が期待できる。 

 

これより,本節では上記の視点を踏まえて従来の入力機器,出力機器の延長上にある機器と,アプリケ ーションの視点から想定した機器の将来像とを分けて示す(表 2.3.4.1)。ここでは,入力機器としては DSC

(デジタルスチルカメラ)や DVC(デジタルビデオカメラ),出力機器としては事務機器などを取扱う。ま た,アプリケーションの視点を中心にして見た時に必要となる入出力機器としては,TV 電話や TV 会議シ ステムや VR(Augmented Reality: 拡張現実感)や AR(Virtual Reality: 仮想現実感)などの光関連機器を 取扱う。 

なお,本報告書では人の周辺環境を 2.3.7 環境・センシングの中て捉えており,主なセンシング技術は 2.3.7 の中で取扱っている。例えば,空調をはじめとする住居環境,防犯対応,人の認証(バイオメトリ クス)や ITS(Intelligent Transport Systems)関連でのセンシングは 2.3.7 にて取扱っている。 

 

表 2.3.4.1 に光産業動向調査委員会の分類に基づいた対象製品を示す。本節ではこれら製品に関連して,

将来求められる機能と市場予測を行う。 

 

表 2.3.4.1  入出力分野での製品分類 

  製品属性  製品 

LBP(光学式プリンタ) 

FAX(光学式ファクシミリ) 

PPC(デジタル複写機) 

出力機器 

光学式 MFP(Multi Function Peripherals) 

バーコードリーダ,スキャナ  DSC(デジタルスチルカメラ) 

既存の延長上にある製品 

入力機器 

DVC(デジタルビデオカメラ) 

TV 電話,TV 会議システム 

新規製品  入出力機器  AR(Augmented Reality:  拡張現実感)/ 

VR(Virtual Reality:  仮想現実感)など  光産業動向調査委員会の分類(光機器・装置の製品別生産額)を参考にして作成  

(2) 求められる機能と代表的な製品及び技術 

  2010 年になると,従来型の撮像機器でも更なる撮像品質の向上及び処理時間の短縮が求められる。すな わち,撮像品質では解像度や色再現性の向上が求められ,更に感度や SN 比向上等が求められる。一方,処 理時間では,主にイメージセンサ及びシグナルプロセッサ自体の処理速度の向上が必要となる。また,こ れらの多くが携帯機器として用いられることから,小型化,薄型化,省電力化なども必要となる。更に,

医療での用途のように正確に被写体を認識する必要がある場合のために 3 次元画像を撮像する入力機器の 登場も期待されている。 

プリンターなどの出力機器では,写真印刷をはじめ様々な用途に対応する機能が求められる。ここでも 撮像機器と同様に,出力画像の高精度化や色再現性及び処理時間の短縮が求められる。処理時間では,複 数の機能を 1 つの機器に集約することでの短縮,人が使い易い操作方法にすることでの短縮とが試みられ よう。また,業務用事務機器は環境調和型社会に対応するために,低消費電力化も必要となる。 

 

  こうした入出力機器の大半はネットワークを活用して利用されると考えられるため,ネットワークとの 親和性も重要な機能として位置付けられる。3 次元画像や 3 次元映像をネットワーク上で送信するために 情報を圧縮や解凍する機能や処理能力向上なども併せて必要とされる。 

 

  一方,ユビキタス社会の面で注目される入出力機器もある。ここでの主要なサービスとして健康安心,

教育等が挙げられる(株)野村総合研究所調べで,各々2005 年でサービスを含めた市場が 4 兆円)。なか んずく,健康安心を実現するために TV 電話や TV 会議システムを発展させた機器を用いた遠隔診断や子供 向けのより高度な教育ツールが期待される。こうしたシステムや機器では,より現実に近い臨場感を得る ために 3 次元的な表示機能も求められる。こうした遠隔地にいる人同士のコミュニケーション手段の 1 つ として VR (Virtual Reality: 仮想現実感)や  AR(Augmented Reality: 拡張現実感)が発展すると考え

られる。例えば,仮想の場にて子供に工作の実習を教える際に,遠隔地から教師が生徒に対してまるで手 を取っているかのように詳細まで教えることが可能となる。 

 

2015 年では,入出力機器では 2010 年の機能を更に高度化したものが要求され,様々な状況に対応でき るようになる。一方,アプリケーションの視点でも,2010 年よりも使用者個人に適した情報提供を行うこ とができる入出力機器が求められる。遠隔にいるコミュニケーション相手の情報をより正確に捉えるため に,TV 会議システムや AR,VR にて画像の高精度化,映像処理高速化,そして高臨場感が求められる機能 となる。 

 

  以上に述べた社会での光関連入出力主要製品像は以下のようになろう。 

入力機器(カメラ等)では,より正確な情報を短時間で知るために高速且つ高精細に状況をセンシング

(入力)する機能が求められる。また,他にも様々な用途に対応するためにフレームレート向上,小型化,

薄型化,省電力化などの機能も求められる。こうした機能に対応する入力機器は基本的には既存の機器(DSC,

DVC,各種スキャナ)の高機能化したものが求められると推定される。 

また,出力機器でも同様に高速且つ高精細に出力する出力機器(プリンタ,FAX,PPC など)が求められ ている。特に出力機器では,複数の出力を 1 つの機器で実現する多機能化を実現する機器として MFP が求 められている。更に,場所を選ばず出力できるように携帯性の向上や省スペース化の実現のために小型化 や省電力化は今後重要な機能として求められる。 

 

(3) 市場規模 

(a) 各製品群の市場規模 

これまでの議論より 2002 年,2010 年,2015 年の各年に代表的なものになると推定される製品を表 2.3.4.2 に示す。 

 

表 2.3.4.2  入出力分野の主要製品 

各分野のセット 

対象分野  属性 

既存技術の延長 

/既存マーケット 

新規技術を用いた製品 

/新規マーケット  入出力機器  DSC , DVC , Copy , LBP ( Laser  Beam 

Printer),FAX,MFP など 

  入出力機器 

ヒューマンインタフェース  TV 電話,TV 会議システム(2D)など  TV 会議システム(3D),AR,

VR など   

以下に,今後 2010 年以降上市する製品の中でも市場シェアが大きくなると考えられる主要製品の詳細に ついて示す。