1.2 活動主体の将来展望
1.2.2. 企業活動の展望
光関連機器を利用する「企業」の動向を,その量と質の側面から捉える。量的側面としては GDP の値が代 表するとみなし,質的側面としては近年の産業動向のトピックスをおさえることで,質と量の両面から,サ ービスの利用主体としての企業の将来展望を描き出す。
(1) 具体的な変化
GDP はどの地域でも堅調に増加する
GDP は企業がサービスを利用するポテンシャルと相関関係があると考えられる。GDP とは各産業の付加価値 額の総和であり,産業連関表によるとサービス業においても産業間での取引が,最終消費支出と比べて大き な割合を占める。つまり産業向けのサービスは,個人向けのサービスよりも GDP と強い相関関係にあると考 えられる。そこで今回は,企業向けサービス全体の活動量は GDP の値に比例するとみなし,将来動向を推測 する。
GDP の将来予測は,各機関による予測を用いて,図 1.2.2.1 のように算出した。
GDP将来予測
0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000 14,000,000 16,000,000
2002 2003
2004 2005
2006 2007
2008 2009
2010 2011
2012 2013
2014 2015 単位:millions of
US dollars
NorthAmerica Others Europe Union Japan
出所)OECD 等資料より作成 図 1.2.2.1 GDP 将来予測
以上のことから,次のようなことが言える。
•世界的には産業活動は活性化する。
•成長率は高い順に,「その他の地域」「北米」「欧州」「日本」で,2010 年ごろには「その他の地域」
が「欧州」を追い抜く。
GDP に関しては,東欧の成長がある分,日本よりも欧州は成長が見込めるが,それでもその他地域に逆転 されてゆく。その意味で,GDP に関しても日・欧では成熟社会,北米・その他の地域では膨張社会の傾向が 読み取れる。
上で示したとおり,経済規模は世界的に拡大傾向にあるものの,地域ごとの特色が顕れることがわかった。
次に近年の経済・産業のトレンドをここで把握しておく。
製造業がサービス化する
世界的に,企業が生み出す付加価値の中で「サービス」が占める割合が増加する。一般に,先進諸国では 第 3 次産業の比重が増加すると言われている。しかしここでの「サービス化」は,第 2 次産業のソリューシ ョン提供による復権を指す。図 1.2.2.2 に,米国の実質国内総生産における製造業とサービス業の比率を示 した。これによると,90 年代前半までは製造業の比重が下落傾向にあったが,その後は急速に上昇している。
この要因は次のような点が挙げられる。
•非主力部門や間接部門を縮小して主力事業に専念するようになり,競争力を高めた。
• 持ち前の技術開発力を活かして製品を開発するとともに,その製品を利用したソリューションを 提供するようになった。その結果,良い製品の価値を最大限に引き出すことができ,製造業の景 況が活性化した。
製造業が急速に復権している。
製造業がサービ スを重視した事業展開を 行うことで、
元来の開発力も活かすことができたことによる と考えられる 。 米国の国内実質総生産における「サービ ス業」と「製造業」の比率
図 1.2.2.2 米国の製造業復権 出所)経済産業省
こうした製品の質とサービスの質の好循環を目指し,今後も先進諸国でこうした製造業の「サービス化」
が進展するものと考えられる。特に近年では,サービスやソフトが有する文化的な影響力や格好良さを示す 言葉である GNC(Gross National Cool)が注目を浴びており,サービスの重要性が高まってきている。こう した機運は今や企業活動だけ留まらず,医療や福祉の分野でも重視されつつある。QOL(quality of life:
人々の生活を,精神的な豊かさや満足度も考慮して,質的に捕らえる考え方)といった概念が浸透しつつあ るのは,その顕れであると言えよう。
スピンオフ企業が興隆する
将来社会では,スピンオフ企業群が研究開発投資の効率を高める。
近年,製造業において研究開発した技術が事業に繋がらないという課題が指摘されている。事業に至らな い大きな理由の一つが,市場規模が小さく利益が見込めないと判断されることである。大企業は事業の選択 と集中を進める中で,市場規模の小さな新規事業に手を出すよりも,大きな市場を見込める新規事業を選ぶ。
こうした時,取り上げられなかった技術を社内で眠らせてしまうことは,研究開発投資を行った企業にとっ ても日本の産業にとっても損失となる。こうした課題への解決策として注目されるのが,技術シーズのスピ ンオフによる事業化である。
スピンオフとは,大企業の子会社でもなく完全に独立したベンチャーでもない,その中間の存在である。
こうした形式をとることで,親元企業にとっては事業の選択と集中を行いつつ,手元からは離れた場所で活 躍するスピンオフ企業からキャピタルゲインやライセンス料を徴収することで,研究開発投資の有効利用が できる。他方スピンオフ企業にとっても親元企業からの技術や資金,人材等の支援によってリスクを減らし つつ事業を展開できる。
今後は,大企業が研究開発を行いつつ,その成果は開発企業による事業化とスピンオフ企業による事業化
の 2 つのルートに分かれて,それぞれ研究開発投資を有効に活用し,経済に貢献してゆく姿をとる。
出所)経済産業省資料 図 1.2.2.3 スピンオフによるメリット
柔軟性の高い開発体制や人材が必要になる
ユビキタス社会の到来に伴い,電気電子製品のライフサイクルは短縮化している。これは,ユーザーニー ズの多様化に伴い生じる減少であり,市場形成のスピードは従来の TV など家電市場では 5〜10 年程度であっ たものが,コンピュータ市場では 2〜3 年,そしてユビキタス社会(ユビキタス・ネットワーク市場)の製品 では 1 年程度となると考えられる。また,市場の立ち上がりの速さだけではなく,市場は国を超えて広く普 及するため市場規模も大きなものとなる。よりハイリスク・ハイリターンの市場が形成されるようになる。
家電市場
技術の時定数:価格性能比は30ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが明確
市場拡大スピード:5年、10年で市場拡大 競争要件:価格と品質
家電市場
技術の時定数:価格性能比は30ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが明確
市場拡大スピード:5年、10年で市場拡大 競争要件:価格と品質
先進国→中進国→後進国と順次、市場発展 生産の拡張性は数10%/年が必要
1970 1980 1990
家電市場
技術の時定数:価格性能比は30ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが明確
市場拡大スピード:5年、10年で市場拡大 競争要件:価格と品質
家電市場
技術の時定数:価格性能比は30ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが明確
市場拡大スピード:5年、10年で市場拡大 競争要件:価格と品質
先進国→中進国→後進国と順次、市場発展 生産の拡張性は数10%/年が必要
1970 1980 1990
コンピュータ市場
技術の時定数:価格性能比は18ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが比較的明確 市場拡大スピード:2年~3年で市場拡大
競争要件:価格と市場投入スピード(3:3:3のルール)
コンピュータ市場
技術の時定数:価格性能比は18ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが比較的明確 市場拡大スピード:2年~3年で市場拡大
競争要件:価格と市場投入スピード(3:3:3のルール)
先進国中心に世界同時に市場発展 生産の拡張性は数倍/年が必要
1980 1985 1990 1995 2000 コンピュータ市場
技術の時定数:価格性能比は18ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが比較的明確 市場拡大スピード:2年~3年で市場拡大
競争要件:価格と市場投入スピード(3:3:3のルール)
コンピュータ市場
技術の時定数:価格性能比は18ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが比較的明確 市場拡大スピード:2年~3年で市場拡大
競争要件:価格と市場投入スピード(3:3:3のルール)
先進国中心に世界同時に市場発展 生産の拡張性は数倍/年が必要
1980 1985 1990 1995 2000 コンピュータ市場
技術の時定数:価格性能比は18ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが比較的明確 市場拡大スピード:2年~3年で市場拡大
競争要件:価格と市場投入スピード(3:3:3のルール)
コンピュータ市場
技術の時定数:価格性能比は18ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが比較的明確 市場拡大スピード:2年~3年で市場拡大
競争要件:価格と市場投入スピード(3:3:3のルール)
先進国中心に世界同時に市場発展 生産の拡張性は数倍/年が必要
1980 1985 1990 1995 2000
ユビキタスネットワーク市場
技術の時定数:価格性能比は12ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが不明確
市場拡大スピード:1年で市場拡大
競争要件:価格と市場投入スピードと生産のスケーラビリティ ユビキタスネットワーク市場
技術の時定数:価格性能比は12ヶ月で2倍 市場の特徴:ニーズが不明確
市場拡大スピード:1年で市場拡大
競争要件:価格と市場投入スピードと生産のスケーラビリティ
世界同時に市場発展
生産の拡張性は10倍/年が必要
1995 1997 1999 2001
出所)野村総合研究所 図 1.2.2.4 家電市場からユビキタスネットワーク市場での製品ライフサイクルの変化の推移 こうしたユビキタス社会での市場に対応するためには,製造業各社は今まで以上の速さで市場の垂直立上 を行うことが必要となる。これを実現するためには,既に携帯電話などで実現されているグローバル生産体 制を活用した水平分業だけではなく,市場のニーズに迅速に対応するための技術開発力も必要となる。この 技術開発力を支える体制として先進国を中心に 2 つの動きが今後生じると考えられる。
−技術開発コンソーシアムの形成
ユビキタス社会の製品開発において 1 社が独自で製品開発を行うには非常にリスクが高い。ニ ーズの多様化に伴い多品種の製品が必要となるが,それが 1 年以内に製品化が実現できなければ,
それまでの開発投資が無駄になってしまう可能性が高い。技術開発のリスクをヘッジ及び迅速な 市場立上を実現する手段として技術開発コンソーシアムの形成が今後進むと考えられる。
コンソーシアムを形成する各社は,コア技術は自社内で開発を続けるものの汎用的な技術は共 有化し,研究開発投資のリスクをシェアし合う。ここでの成果は各社が自由に活用できるように することで,ニーズ多様化にも柔軟に対応することができる。