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第 2 章  光製品と市場の展望

2.4  光産業市場の将来像  2.4.1 分野別の市場予測

2.4.3  市場全体の俯瞰

(1) 分野全体

2.4.2 にて示した地域別市場規模及び 2.3 にて示した分野別市場規模を時系列に整理すると,表2.4.3.1,

表 2.4.3.2 及び図 2.4.3.1 の様に表すことができる。 

 

表 2.4.3.1  分野別・地域別市場規模予測結果(単位:兆円) 

北米 欧州 日本 その他 全世界 北米 欧州 日本 その他 全世界 北米 欧州 日本 その他 全世界 情報通信 0.6 0.4 0.2 0.3 1.5 2.1 1.5 0.6 1.4 5.6 6.9 4.9 2.0 4.6 18.4 光メモリ 2.5 1.0 0.5 1.0 5.0 4.7 1.8 0.9 1.9 9.3 7.4 2.9 1.5 3.0 14.8 ディスプレイ・照明 3.3 2.6 2.4 2.2 10.4 6.0 4.8 4.4 4.3 19.4 9.3 7.3 6.8 6.9 30.3 入出力 3.1 1.6 1.3 1.6 7.5 4.9 2.3 2.0 2.5 11.7 6.4 2.9 2.6 3.4 15.3 加工 0.5 0.4 0.4 0.3 1.6 1.3 1.0 1.1 0.9 4.3 2.4 1.9 2.0 1.8 8.0 光エネルギー 0.0 0.1 0.2 0.0 0.3 0.6 0.4 0.6 0.4 2.0 2.1 1.7 1.8 1.6 7.2 環境・センシング 0.6 0.5 0.4 0.4 2.0 1.4 1.3 1.2 1.0 4.9 2.4 2.1 1.8 1.8 8.1 医療福祉 0.3 0.2 0.1 0.1 0.7 1.1 0.7 0.4 0.2 2.4 2.0 1.2 0.8 0.4 4.5 全体 10.9 6.7 5.4 5.9 29.0 22.1 13.8 11.2 12.6 59.8 38.9 25.0 19.2 23.4 106.5

2002年 2010年 2015年

   

表 2.4.3.2  分野別・地域別年平均成長率(単位:%) 

北米 欧州 日本 その他 WW 北米 欧州 日本 その他 WW 北米 欧州 日本 その他 WW

情報通信 - - - - - 18.3 18.4 18.5 19.0 18.5 26.3 26.3 26.6 27.4 26.

光メモリ - - - - - 8.1 7.9 8.1 8.3 8.1 9.7 9.6 9.7 9.8 9.

ディスプレイ・照明 - - - - - 8.0 8.1 8.0 8.6 8.1 9.0 9.0 9.0 10.0 9.

入出力 - - - - - 5.7 5.1 5.7 6.3 5.7 5.5 4.7 5.5 6.2 5.

加工 - - - - - 12.8 12.9 13.0 13.4 13.0 12.7 12.7 13.0 13.7 13.

光エネルギー - - - - - 37.3 25.5 15.2 58.4 25.8 30.2 30.2 24.1 31.3 28.

環境・センシング - - - - - 10.9 11.0 14.8 11.5 11.9 11.1 11.1 7.6 12.0 10.

医療福祉 - - - - - 16.6 16.6 16.6 16.6 16.6 13.1 13.1 13.1 13.1 13.

全体 - - - - - 9.2 9.5 9.5 9.9 9.5 12.0 12.5 11.3 13.2 12.

2002年/2002年 2002年/2010年 2010年/2015年

6 7 3 5 0 7 5 1 2  

-20 40 60 80 100 120

2002 2010 2015

光産業市場規模(兆円)

医療福祉 環境・センシング 光エネルギー 加工

入出力

ディスプレイ・照明 光メモリ

情報通信

  図 2.4.3.1  全世界の光産業の市場規模(図 2.4.1.1 再掲) 

 

全世界市場では,2002 年で約 29 兆円,2010 年で約 60 兆円,そして 2015 年の市場規模は約 107 兆円と推 計される。その中でも,ディスプレイ・照明,情報通信,入出力,光メモリで全体のほぼ 3/4 を占める。ま た,全体の年平均成長率は 2002 年/2010 年で約 9.5%,2010 年/2015 年で約 12.2%と 2010 年以降の方が大き な成長率を示すと予想される。 

 

全体的な傾向として,医療福祉や入出力,ディスプレイなどの機器の増加に伴い,取扱う情報量が大幅に 増加する。健康管理のための情報取得機会の増加(情報を取る機会の増加)と,2 次元画像の 3 次元化など 情報の質向上(情報量の増加)の 2 つの要因により,取扱う情報量が急激に増加すると考えられる。このた め,そのインフラとなる情報通信及び光メモリ(ストレージ)の市場が増加する傾向が見られる。 

 

また,世界各地でのテロ行為などで,今後も不安定な状態が続くと考えられる。こうした状況下において は,個々人のセキュリティ管理のニーズが世界各地で増加するものと考えられる。このニーズに対応した手 段として個人認証や情報セキュリティの確保といった手段が取られて行くと考えられる。また,個人認証で はカメラを用いた個人認証(指紋,虹彩,顔面輪郭確認等)による光産業の需要増加が期待できる。本編で は環境・センシング分野でこれらについて触れている。 

 

さらに,情報セキュリティでは暗号化による通信トラフィック増加により,通信需要の増加が見込める。

特に光産業が強い幹線ネットワークでは,様々な情報が暗号化されることで通信容量の増大に伴う投資が期 待できる。 

以上の様に,有事であっても,光産業の需要は増加すると考えられる。 

 

(2) 既存・新規別の市場規模

2.3 にて分野ごとに示した既存の技術の延長上にある技術を用いた製品と新規技術を用いたものとの合 計をまとめると,表 2.4.3.3,表 2.4.3.4 及び図 2.4.3.2 に様にあらわすことができる。 

 

表 2.4.3.3  分野別・新規/既存別市場規模(単位:兆円) 

既存 新規 合計 既存 新規 合計 既存 新規 合計

情報通信 1.5 - 1.5 4.0 1.7 5.6 8.2 10.2 18.4

光メモリ 5.0 - 5.0 5.9 3.4 9.3 6.0 8.8 14.8

ディスプレイ・照明 10.4 - 10.4 17.8 1.6 19.4 26.0 4.3 30.3

入出力 7.5 - 7.5 10.0 1.7 11.7 12.0 3.3 15.3

加工 1.6 - 1.6 3.0 1.3 4.3 4.8 3.2 8.

光エネルギー 0.3 - 0.3 1.4 0.6 2.0 3.9 3.2 7.

環境・センシング 2.0 - 2.0 3.6 1.3 4.9 4.6 3.5 8.1

医療福祉 0.7 - 0.7 1.1 1.4 2.4 1.2 3.3 4.

全体 29.0 - 29.0 46.8 13.0 59.8 66.6 39.8 106.5 0 2 5

2002年 2010年 2015年

   

   

表 2.4.3.4  分野別・新規/既存別年平均成長率(単位:%) 

既存 新規 合計 既存 新規 合計 既存 新規 合計

情報通信 - - - 13.4 - 18.5 14.3 - 21.6

光メモリ - - - 2.1 - 8.1 1.4 - 8.7

ディスプレイ・照明 - - - 7.0 - 8.1 7.3 - 8.6

入出力 - - - 3.7 - 5.7 3.7 - 5.6

加工 - - - 8.1 - 13.0 8.6 - 13.0

光エネルギー - - - 20.3 - 25.8 21.2 - 26.9

環境・センシング - - - 7.6 - 11.9 6.5 - 11.4

医療福祉 - - - 5.2 - 16.6 3.9 - 15.3

全体 - - - 6.2 - 9.5 6.6 - 10.5

2002年/2015年 2002年/2010年

2002年/2002年

   

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0

2002 2010 2015

場規模兆円)

既存 新規

  図 2.4.3.2  全世界の光産業の市場規模  新規/既存(兆円) 

 

全世界の視点で見ると,既存の延長上にある製品は増加を続け,2002/2010 の年平均成長率は 6.2%,

2002/2015 では約 6.6%となる。また,新規技術は 2010/2015 で倍以上の規模となり,年平均成長率は約 25.8%

となる。 

既存技術を用いた製品では,光エネルギー,情報通信がその成長率を牽引している。情報通信は既存の 技術の延長上にある製品がまだ十分普及しておらず,これら製品が今後普及することで市場が拡大すると 考えられる。 

一方,新規技術を用いた製で品は,ディスプレイ,環境・センシングがその成長率を牽引する。ディス プレイではペーパーディスプレイや電子ペーパーなど新規用途の展開が期待できる。環境・センシングで は光増感型光触媒,光エネルギーでは有機太陽電池が牽引し,いずれも「環境」指向の高まりにより適用 箇所の拡大が理由となる。 

 

既存技術を用いた製品だけでも,図 2.4.3.2 の様に市場規模は堅調に推移し,2015 年で約 67 兆円の市 場規模に達する。一方,新規技術を用いた製品の市場規模は約 40 兆円になると推計され,全体の市場規模

の約 37%を占める。今回定義した新規・既存の枠組みでは,2015 年までの光産業の市場拡大に向けて,既 存技術の開発だけではなく,新規技術を用いた製品の市場投入が重要になるといえる。 

 

(3) 全体を通じた特徴

総じて見ると,従来以上に多様且つ大量な情報が取り扱われることで,光産業の市場拡大が期待され る。この傾向には大きく 2 つの側面が見られる。それを可視化したものが,図 2.4.3.3 である。 

                     

環境・

センシング、

光エネルギ、

加工

利用機会

(利用される場所)

情報の質 高い

低い

少ない 多い

利用機会

(利用される場所)

情報の質 高い

低い

少ない 多い

2002年時点の情報量 入出力、

医療・福祉、

ディス プレイ・照明

各情報の増加に対応する ために必要となる分野が 情報通信・光メモリ

B

A

A.  情報を扱う機会の増加 

B. 情報の質の向上による情報量の増加   

図 2.4.3.3  情報量増加の傾向   

A の側面は,光エネルギー,環境・センシング,加工の各分野で見られる。これは,各分野の光関連 機器が,新しい市場や使用される場面を開拓して市場規模が拡大する現象である。具体的には,産業用 加工機器が 2010 年には先進国だけではなく発展途上国でも使用されるといった面的な広がりを示す現 象が該当する。また,世界的な環境志向の高まりから世界の各地域で大気や水質などの環境計測,光な どの省エネルギーに関連したエネルギー確保などの現象も該当する。こうした傾向は,第 1 章で示した 社会変化の 1 つである「ボーダレス化」,「環境調和」に強く関係している。 

一方,B の側面は従来よりも進歩したアプリケーションを提案することで,用いる情報が高度化し,

情報量が増える現象である。具体的には,医療福祉にて新しい計測(生体動的計測や非接触計測など)

による情報量の増加や,ディスプレイの 2 次元表示から 3 次元表示に移行することによる情報量の増加 等が該当する。前者では,高齢者の連続的な健康管理や,非侵襲計測による新しい身体測定など使用方 法の質の変化をもたらす。後者でも,2 次元的な TV 会議から,AR を用いた臨場感のあるコミュニケーシ ョン実現などの質の変化をもたらす。こうした傾向は,第 1 章で示した「少子高齢化」や「ボーダレス 化」に強く関係している。 

 

以上より,第 1 章で示した将来の 3 つの社会変化である「少子高齢化」,「環境調和」,「ボーダレス化」

は光関連機器の使用を促し,こうした機器の普及により更に上記の変化が促進される“循環”が生じる。

こうした変化により,将来社会の中で光産業は従来以上に重要な位置付けになると期待される。