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1.2  活動主体の将来展望

1.3.2.  サービス事例

サービス事例の表現方法 

  1.2 までに描き出した将来社会像を基に,1.3 ではそこでの詳細な活動内容の一部を取り上げて「サービス 事例」として説明する。その概要を図示したものが図 1.3.2.1 である。具体的には「社会変化」を中心に,

「活動主体」,「技術の変化」を参考にしながら,サービス事例を示す。 

 

将来社会像 将来社会像

将来社会の サービス

事例 将来社会の

サービス 事例

詳細な内容を説明 するためのもの 図 1.3.2.1  サービス事例 

なお,サービス事例を描くにあたって,各シーンにて先に示した将来の技術及び光関連機器との関係を示 す。この目的は第 2 章で光関連機器の市場規模を算出する際の基準とするために,将来社会の代表的なシー ンではどういった光関連機器が用いられるのかを示すことである。 

(1) 少子高齢化社会におけるサービス事例  (a) 総合セキュリティサービス 

 

利用者:    20 代〜50 代の両親 

対象:     0 歳〜10 歳くらいまでの児童 

関連する将来技術:  社会基盤系分野(セキュリティ),情報系分野,生命系分野など 

  治安は悪化し検挙率も低下して,自分の安全は自分で守らねばならない社会となる。そうした時,大切な 人や物を,ネットワーク技術によって常に見守り,危機が起こった時に適切な対処方法を示したり実施した りするサービスが盛んになる。

子供セキュリティ

子供は両親が自分自身の手で守らねばならないようになる。しかし,女性の社会進出で家を空ける機会が 多くなるし,子供はずっと家にいるわけではない。そこで,子供の安全状態を監視するサービスが盛んにな る。

子供や取り巻く危険な状況は,交通事故や火災・地震などの緊急災害,子供にとって好ましくない場所へ の進入,誘拐犯や通り魔等の犯罪者の存在などがある。子供はカメラ,警報ボタン,位置情報発信機などを

備えた携帯電話を持っており,母親は随時子供の位置を確認でき,状態をカメラで見ることもできる。

セキュリティサービス会社が関わるのは,危険をより早く察知すること,危機が起こった場合に最適な対 策を教えること,現場に直行して対応することである。警報ボタンが押された場合はもちろん,子供が押せ ない場合も,セキュリティ会社が持つカメラ網やセンサー網,他のサービス利用者が持つ機器から得られる 情報などを用いていち早く危険な状況を察知する。街角に設置されたセンサー群は太陽電池などによってユ ビキタス化された電源が用いられる。さらに,得られた情報を用いて最適な対応法を伝達すると同時に支援 に向う。

高齢者セキュリティ

  高齢化により老人介護の需要が増加することで,ヘルパーの人数が追いつかない。また,親族の負担も増 大し,一人暮らしの老人も増加する。そこで日常生活には独力で生活を送るのに支障をきたさないものの,

緊急時のみ手助けをして欲しいという高齢者が増える。そうした人達に対して,「子供セキュリティ」と同内 容の事故・犯罪対策に加え,ケガ・病気対策も含めた広い意味でのセキュリティサービスが盛んになる。

  具体的には。子供に対するセキュリティサービスとほぼ同じ内容に加え,卒倒を感知するレーザジャイロ や心肺機能を感知する生体センサーを用いて,急なケガや病気を察知するとともに通報と救助を行う。

モノのセキュリティ

  画像認識技術により,人のいない場所で物が動いたことをとらえ,空き巣などを防ぐサービスが家庭向け に提供される。通常時は警備会社に人による監視を受けることはなく,異常があった時にだけ反応して警備 員による対応が始まる。

災害・テロなどの緊急時対策

子供や高齢者だけでなく,全年齢を対象としたこうしたセキュリティサービスでは,大規模事故や火事,

化学物質によるテロ等などの情報収集とセンシングを行っており,こうした緊急時に警告を発し,次にとる べき対策が提供される。

  通常は,こうしたサービスを行うには警備員が一人一人を監視している必要があった。これではコストが かかりすぎ,ごく一部の用途・利用者に限られていた。しかしセンシング能力の拡大により,人手によらな くても,危険察知までは機器が自動で行えるようになる。察知した後に警報を受けて人が対応にあたる「緊 急モード」にシフトする。こうすることで低コストでもこうした総合セキュリティサービスを享受できるよ うになる。

働 く母 親 勤務先か ら デスクトップ あるいは モバイル ディスプレイで

子供の様 子を確認 働 く母 親 勤務先か ら デスクトップ あるいは モバイル ディス プレイで

子供の様 子を確認 子 供 カメラで 様子を撮影 されている。

地理情報 も発 信されている 。 子 供

カメラで 様子を撮影 されている。

地理情報 も発 信されている 。

サ ービ ス提 供者 街角に設置し た事 業者の 監視カメラ網で、危険 に迫 った利用

者情報を キャッチ。

必要に応じて適切な対策を伝 える サ ービ ス提 供者 街角に設置し た事 業者の 監視カメラ網で、危険 に迫 った利用

者情報を キャッチ。

必要に応じて適切な対策を伝 える 不 審者不 審者

       

図 1.3.2.2  子供セキュリティ 

  図 1.3.2.2 より,当該シーンにおいては,以下の光関連機器が中心的な役割を果たすと考えられる。

DVC(Digital Video Camera),モバイルディスプレイ,高精細ディスプレイ,光通信機器 

(b) 高齢者の移動を支援するサービス 

利用者 :    60 代以上の高齢者  対象:     60 代以上の高齢者 

関連する将来技術:  社会基盤系分野(都市設計,交通),情報系分野,生命系分野など 

  高齢者の恋愛が活発になる,街中に高齢者が集まる場所が数多く見られるようになり,高齢者が自分でど んどん外へ出てゆくようになる。しかし移動しようとしても,自動車を自力で運転するのは危なかったり,

視力や聴力が衰え始めて一人で出歩くのは危険を伴ったりする人もいる。こうした移動に困難を伴う中でも,

毎日のように息子や娘に送り迎えしてもらうよりも自力で出かけたいというニーズは強い。そこでそれに応 えるべく高齢者の運転をサポートするほか,徒歩での移動を支援する機器が多く登場する。

自動車乗降時

  高齢者の姿勢をカメラやレーザジャイロ等でキャッチし,それにあわせて自動車シートが移動する。完全 に乗り込んだ後も運転に楽な位置に自動修正される。

自動車運転時

  ドライバの運転をフォローする装置が搭載される。自動車の周囲の状況を計測し,危機が迫ったと判断さ れた場合は,フロントガラス・スクリーンに警告と詳しい状況を映し出したり,自動的に回避行動に入った りする。

  また,ドライバの身体状況をセンシングしており,運転に適さないと判断された場合の警告もなされる。

歩行時

  ヘッドマウントディスプレイなどを用いて各種情報が提供される。また,運転時と同様,周囲の状況をセ ンシングしており,機器が迫った場合にいち早く使用者に伝える。

  以上より,当該シーンにおいては,以下の光関連機器が中心的な役割を果たすと考えられる。 

アイセーフレーザ,DVC,ディスプレイなど   

(2) 環境調和型社会におけるサービス事例  (a) トレーサビリティによる情報提供サービス 

 

利用者 :  小売業者,消費者  対象:   あらゆる商品 

関連する将来技術:環境・エネルギー系分野(都市設計,交通),情報系分野,生命系分野(食品)など   

  生鮮食料品や電気製品などは,農薬や化学物質などの有害物質がどれほど含有されているか公開せねばな らない時代になる。そうした情報を一括管理し,消費者が簡単に情報を入手して商品購入の選択に役立てる サービスが登場する。情報管理の方法は,分野によって二次元バーコードと RFID が並存して使われる。 

 

生鮮食料品の産地情報,鮮度情報,農薬使用情報などを提供する 

肉や魚,野菜の食品トレイや,各種製品表面に添付された二次元バーコードを読み取ることで,消費者は 生産地や捕獲地,農薬の使用履歴などの情報を得て,個人の嗜好に応じて商品を取捨選択する。 

 

電気電子製品の有害物質管理とリユース・リサイクル支援 

電気製品は,素材レベルで有害物質を使用していないことを証明せねばならない時代になり,その認証に 二次元バーコードや RFID といった認証システムが使用される。 

また,製品の廃棄段階では製品情報を用いてリユースやリサイクルを行う。再利用を希望する人を募り,

詳細情報を希望する人が見つかった場合には,高精細画像や 3 次元ディスプレイで詳しい状態を提供する。

こうして次の使い手を効率的に見つけることでリユースを促進する。 

希望者が見つからない場合には,使用している部品や含有しているレアメタルの量などを読み取って最適 なリサイクルルートに振り分ける。従来は有価物も有害物も含む製品を混在したまま処理していたので,使 える資源の廃棄や人体に悪影響を及ぼす物質の不十分な処理が横行していた。このサービスがあることで,

製造業者は低コストで環境リスクを負わずに,製品のリサイクルを行うことができる。