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O-04 膵癌との鑑別に苦慮した膵体部腫瘤の 1 例

鈴木辰典1)、中井陽介1)、高原楠昊1)、水野 卓1)、木暮宏史1)、田中麻里子2)、渡谷岳行3)、阪本良弘4)、 多田 稔1)、國土典宏4)、小池和彦1)

東京大学医学部附属病院 消化器内科1)、同 病理部2)、同 放射線科3)、同 肝胆膵外科4)

症例は特記すべき既往のない 39 歳男性。健診の腹部超音波で膵体部腫瘤を指摘され、当院紹介受診。自覚症状や身体 所見に特記すべき異常所見はなく、腫瘍マーカーや IgG4 を含め各種血液検査に明らかな異常を認めなかった。

造影 CT で膵体部に造影効果の乏しい 22mm 大の境界明瞭な類円型腫瘤を認め、尾側膵管拡張・実質萎縮を伴っていた。

腫瘍から連続する軟部影が腹腔動脈に半周を越えて接しており、血管周囲神経叢浸潤が疑われた。

MRI で膵体部に T1WI 低信号腫瘤を認め、造影では早期で実質より低信号、遅延相で高信号を認めた。

EUS では境界明瞭な低エコー腫瘤として描出され、ソナゾイド造影で早期より淡い濃染が見られた。腫瘤により主膵管 の途絶および尾側膵管の拡張を認めた。

以上の画像所見より borderline resectable 膵体部癌が疑われ、術前化学療法が検討されたが、EUS-FNA にて膵神経内 分泌腫瘍と診断された。

各種内分泌機能検査はいずれも正常範囲内で、非機能性膵神経内分泌腫瘍の診断で膵体尾部切除術を施行した。

切除検体は白色充実性の比較的境界明瞭な腫瘍で、組織学的には大小不同の核を有する腫瘍細胞が、索状・胞巣状に増 殖し、免疫組織学的に synaptophysin(+)、chromogranin A(+)、CD56(+) を示し、MIB-1 index は 10% 程度であった ことから、NET (G2) と最終診断された。

主膵管狭窄および尾側膵管拡張・実質萎縮を来し、膵癌との鑑別が問題となる膵神経内分泌腫瘍の 1 例を経験した。

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O-05 PanIN の併存により非典型的な主膵管像を呈した膵神経内分泌腫瘍 (p-NET) の1例

廣瀨勝也1,2)、岩尾年康2)、吉野武晃2)、新井田憩2)、川口隆憲3)、安川 覚4)

東京女子医科大学統合医科学研究所1)、一般財団法人温知会 会津中央病院 消化器科2)、同 病理部3)、 京都府立医科大学附属病院 病理診断部4)

 症例は 73 歳女性。当院での定期超音波検査で膵体部腫瘤を指摘し、精査加療を行なった。

 造影 CT では動脈相早期より比較的均一に濃染される境界明瞭な類円形腫瘤を認めた。EUS では膵内に境界明瞭で辺 縁整なφ 20mm 程度の低エコー腫瘤を認め、ソナゾイド造影で早期濃染を認めた。p-NET を疑い EUS-FNA を施行し、

病理組織診でも p-NET との診断であったが、MRCP にて主膵管狭窄と周囲の分枝拡張を認め、典型的な圧排性狭窄と は異なる主膵管の変形を疑い ERP を施行した。ERP では膵体部主膵管に硬化を疑う狭窄が存在し、同部位で拡張した 分枝も造影された。以上の所見と組織診より、p-NET もしくは MANEC を疑い膵体尾部切除術を施行した。

 病理診断では、腫瘍は比較的均一な類円形の核を持つ索状の細胞が並んでおり、免疫組織化学で chromogranin(+), synaptophisin(+), MIB-1 index 2.3% であったため、腫瘤部は p-NET G1 と診断した。その付近には周囲に線維化を伴 う狭窄した主膵管と、その上皮に low-high grade PanIN を認め、術前検査で認めた主膵管像は PanIN と p-NET の双 方からの影響による主膵管周囲の炎症、線維化による影響ではないかと考えた。

 本症例の p-NET と PanIN の関連、膵管像の成り立ちの原因について御検討いただきたい。

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O-06 主膵管内進展を伴い膵広範に浸潤した膵神経内分泌腫瘍の 1 例

朝井靖二1)、土屋貴愛1)、祖父尼淳1)、辻修二郎1)、田中麗奈1)、殿塚亮祐1)、向井俊太郎1)、藤田 充1)、 山本健治郎2)、山口 浩2)、糸井隆夫1)

東京医科大学病院 臨床医学系消化器内科学分野1)、同 基礎医学系人体病理学講座2)

症例は 45 歳男性。体重減少と口渇・多飲などの糖尿病症状を主訴に近医を受診した。腹部超音波検査にて、膵腫瘍が 指摘され当院紹介受診となった。腹部 US 所見では膵頭部から尾部にかけて境界明瞭・辺縁不整な低エコー腫瘤を認め、

膵体部腹側に突出するように 15mm 大の類円形腫瘤を 2 ヶ所認めた。CT では膵頭部から尾部にかけて約 11cm 大の低 吸収構造が連続して認められ、造影にて早期相から強い造影効果を呈していた。MRI では T1 強調像で低信号、T2 強調 像で高信号を示し、DWI にて有意な高信号は認めなかった。EUS では膵頭部から尾部にかけて境界明瞭・辺縁不整な低 エコー腫瘤を認め、体尾部の膵実質は認識が困難であった。膵体部腹側には 20mm 大のリンパ節腫大を認めた。ソナゾ イド造影では投与後、約 15 秒から濃染し、後期にかけても遷延した。腫大したリンパ節も同様の造影パターンを呈し た。胃内より腫瘍に対して EUS-FNA を施行したところ、病理組織診断は Neuroendocrine tumor G2 の診断であった。

ERP では膵頭部の主膵管はカニ爪状様に途絶し、主膵管内に腫瘍が充満しているようであった。治療として膵全摘術が 施行された。摘出標本の病理診断は FNA 検体と同様であり、非機能性 Neuroendocrine tumor G2 と診断した。術後 約 1 年4ヶ月が経過しているが現在も再発は認めていない。今回、術式として膵全摘術を施行しているが、別の術式を 考慮することは可能であったか討論していただきたい。