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O-01 膵管出血をきたした膵管内管状乳頭腫瘍の 1 例 大津 卓也(静岡県立総合病院 肝胆膵内科)

O-02 膵管内管状乳頭状病変を合併した自己免疫性膵炎の 1 例 藤江 慎也(静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科)

O-03 T1 膵癌の術後 2 年で膵管内腫瘍を発症した 1 例 塩路 和彦(新潟県立がんセンター新潟病院 内科)

座長: 入澤 篤志(福島県立医科大学 会津医療センター 消化器内科学講座)

北川 裕久(富山市立富山市民病院 消化器外科)

病理コメンテーター: 山口  浩(東京医科大学 病理診断科)

画像コメンテーター: 廣橋 伸治(大阪暁明館病院 放射線科)

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O-01 膵管出血をきたした膵管内管状乳頭腫瘍の 1 例

大津卓也1)、川口真矢1)、白根尚文1)、遠藤伸也1)、寺田修三1)、佐藤辰宣1)、金本秀行2)、村松 彩3) 静岡県立総合病院 肝胆膵内科1)、同 外科2)、同 病理診断科3)

【症例】75 歳女性【主訴】背部痛【家族歴】母・姉:膵癌【現病歴】肝胆道系酵素と CA19-9 上昇で当科に紹介され、

腹部 US で膵体部に境界不明瞭な低エコー腫瘤と上流膵管の拡張を認め精査を行った。膵体部腫瘤は、EUS では径 1.7cm の辺縁不整、内部不均一な低エコーの充実性腫瘤で、辺縁に嚢胞領域を伴っていた。造影 CT では動脈相で淡い造影効 果を伴い、MRI では T2WI で淡い低信号、DWI で高信号を呈した。PET-CT では SUV max3.44 の集積を認めた。ERP では乳頭から出血を認め hemosuccus pancreaticus と考えたが、粘液の排出は認めなかった。膵体部でカニ爪状に 16mm 大の欠損像を認め、尾側の主膵管は拡張していた。IDUS では腫瘤は膵管内に急峻に立ち上がる形態をとり、膵 管外にも浸潤を認めた。擦過細胞診で class Ⅴ腺癌と診断した。ERP の所見で腫瘤は膵管内発育を呈する腫瘍の形態を とるため、ITPN を第一に、特殊型膵癌を鑑別として膵体尾部切除術を施行した。病理組織学的には主膵管内に充満す るように、非粘液性の円柱上皮が管状、乳頭状に増殖する像がみられ、膵浸潤を認め、膵管内管状乳頭腺癌と診断した。

また、主腫瘍に連続するように頭側の主膵管には low-grade PanIN を認めた。【考察】ITPN と PanIN は関連のない病 変と考えられてきたが、本症例では両者の移行像がみられたため病理学的に御検討頂きたい。

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O-02 膵管内管状乳頭状病変を合併した自己免疫性膵炎の 1 例

藤江慎也1)、松林宏行1)、石渡裕俊1)、松井 徹1)、佐藤純也1)、伊藤貴明2)、上坂克彦2)、佐々木恵子3)、 小野裕之1)

静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科1)、同 肝胆膵外科2)、同 病理診断科3)

【症例】70 歳代男性。糖尿病で通院中に血糖コントロールの増悪があり、精査目的に施行された CT で膵腫瘤を認め、

当院へ紹介。血清 CEA と CA19-9 は正常であったが、HbA1c(9.2%) と IgG4 (265 mg/dL) の異常高値を認めた。腹部 超音波では膵体部にφ 26㎜の内部低エコーで境界不明瞭な不整形腫瘤性病変を認めた。病変は CT 動脈相で周囲膵実質 より乏血性の腫瘤として描出され、晩期相では遷延性の濃染を呈した。また、MRI では T1WI で低信号、T2WI で軽度 高信号、Diffusion では軽度高信号、MRCP では主膵管は腫瘤部で狭窄し、その頭側で 5mm、尾側で 10mm と拡張し ていた。主膵管狭窄部周囲には多発する小嚢胞を認めた。EUS では膵体部に低エコー腫瘤を認め、近接する主膵管内に 連続する成分を認めた。EUS-FNA の組織診では繊維性間質の中に多数の IgG4 陽性細胞 (>10 個 /HPF) を認めたが、配 列が乱れた異型腺管もみられた。画像的には AIP としては非典型的で、主膵管内腫瘍やその悪性化病変を疑い膵体尾部 切除を行った。病理組織では膵管周囲の炎症細胞浸潤、多数の IgG4 陽性細胞、花筵状線維化、閉塞性静脈炎を認めた。

また、膵管内腫瘤は増生した丈の高い乳頭状粘液上皮と管状腺管からなり、間質には炎症細胞浸潤を認めた。画像病理 の両面で示唆に富んだ症例であり報告する。

【検討事項】1)IPMN・ITT に随伴した AIP と考えるべきか、AIP の慢性炎症に伴う膵管上皮の過形成変化と取るべきか。

2) 外科切除は妥当であったか。

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O-03 T1 膵癌の術後 2 年で膵管内腫瘍を発症した 1 例

塩路和彦1)、安住里映 1)、青柳智也 1)、栗田 総 1)、佐々木俊哉 1)、小林正明 1)、成澤林太郎 1)、野村達也 2)、 土屋嘉昭 2)、西田浩彰3)、本間慶一 3)

新潟県立がんセンター新潟病院 内科 1)、同 消化器外科 2)、同 病理部 3)

症例は 60 歳代の女性。アミラーゼの高値を指摘され X 年 3 月に当科紹介。CT にて膵管拡張を認めたため精査となった。

CT、MRI では拡張膵管の乳頭側に明らかな腫瘤は指摘できなった。EUS では膵頭部に淡い低エコー領域を認め、同部 より尾側の膵管は拡張していた。ERCP では膵頭部に膵管狭窄を認め、ブラッシング細胞診は Class V であった。小膵 癌の術前診断で、亜全胃温存膵頭十二指腸切除術が施行された。病理では 6mm の膵癌で T1bN0M0 Stage IA であった。

TS1 による補助化学療法を 6 ヶ月施行し、定期的にフォローされていた。X+2 年 3 月の CT にて残膵の膵管拡張が指摘 された。CT では腫瘤の指摘は困難であったが、EUS では拡張した膵管の乳頭側に 15mm 大の低エコー腫瘤を認めた。

病変は膵管空腸吻合部とは離れており、遺残再発ではなく、残膵に新たに発生した膵癌と考え残膵全摘術を行った。病 理では病変の主座は膵管内に存在し膵管内腫瘍と考えられた。

初回手術の病理標本を見直すと腫瘍は主膵管内に限局し、膵管上皮に浸潤。乳頭状構造は目立たないものの通常の浸潤 性膵管癌としては非典型的であった。残膵に発生した腫瘍は乳頭状構造が目立ち膵管内腫瘍を疑うが、臨床的には粘液 産生を指摘できず、術前に膵管内腫瘍を鑑別にあげることができなかった。

両病変とも主膵管内に主座をもち類似点があることから、多中心性に発生した一連の腫瘍や implantation の可能性につ いて、また膵管内腫瘍と診断してよいか、ご討議いただきたい。