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P-29 多発性骨髄腫の膵転移の 1 例

岩津伸一1)、小澤栄介1)、大仁田賢1)、中尾一彦1)、足立智彦 2)、日高匡章 2)、安倍邦子 3) 長崎大学病院 消化器内科 1)、同 移植・消化器外科 2)、同 病理診断科 3)

 症例は 70 歳男性。X-4 年 9 月より多発性骨髄腫の診断で全身化学療法中であった。X 年 12 月、左眼瞼内側に 5mm 大の紅色腫瘍が出現したため当院皮膚科に紹介となった。左眼瞼の転移性腫瘍が疑われたためスクリーニング目的で全 身の造影 CT を施行され膵腫瘍を認められたため当科に紹介となった。

 身体所見に特記事項なし。血液検査では血算、生化学に著変なく、CEA および CA19-9 の上昇も認めなかった。造影 CT では膵体部に動脈相および門脈相で膵実質より低吸収を示す径 13㎜大の腫瘤性病変を認めた。腹部 MRI で同腫瘍は 拡散制限を認めたが MRCP では主膵管の拡張や狭窄は認めなかった。超音波内視鏡検査では腫瘍径は 21×16㎜で辺縁 明瞭でややいびつな内部均一な低エコー腫瘤として描出された。診断確定のため超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診 / 生検 を行った。得られた検体は上皮性成分に乏しく、偏在した核を有し、大小不同に乏しい細胞が増殖していた。CD138 抗 体陽性、CD79a 抗体陽性より形質細胞腫を考え、特殊免疫染色で免疫グロブリンのκ鎖に偏倚した増殖が認められ、多 発性骨髄腫の膵転移と診断した。多発性骨髄腫の膵転移は稀であり、若干の文献的考察を加えて報告する。

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P-30 IPMN に併存した AIP の 1 例

大畠昭彦、景岡正信 、吉井重人、寺井智弘、青山春奈、山本晃大、星野弘典、青山弘幸、矢野庄悟、

丸山保彦

藤枝市立総合病院 消化器内科

症例は 60 代、男性。既往は前立腺肥大。2011 年 8 月前立腺肥大の follow US で膵頭部に 12mm の IPMN を指摘され、

以後当科 follow となった。3 年後 EUS で IPMN の大きさは変わらないものの隔壁の肥厚が認められ ERP 施行。膵液細 胞診を行うも悪性所見陰性で経過観察とした。初診より 3 年 8 か月経過し EUS で IPMN 20mm と増大、内部に 15mm の壁在結節を認めた。CT、MRI でも結節は造影された。IPMN の急速な増大と内部に造影される結節の出現から IPMC を疑い、膵頭十二指腸切除術を施行した。

病変は 15×16mm の腫瘤とその周囲に嚢胞を認めた。腫瘤はリンパ球、形質細胞を主体とした炎症細胞浸潤、IgG4 陽 性細胞も多数認めた。花筵状線維化、閉塞性静脈炎も存在し結節部分は AIP と診断した。また、嚢胞部分には PanIN1

~ 2 の変化も認めた。

【検討項目】1) AIP の病理診断を満たしているが、AIP としてよいか。2) IPMN と考えていた嚢胞性病変は病理学的に IPMN でよいか。3) IPMN でれば PanIN1 ~ 2 の変化ありとしてよいか。

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P-31 術前に診断が困難であった十二指腸乳頭部異所性膵の 1 例

南 一洋1)、岩崎栄典1)、福原誠一郎2)、北郷 実 3)、緒方晴彦 2)、久保田直人4)、尾島英知 4)、金井隆典 1) 慶應義塾大学医学部 消化器内科 1)、同 内視鏡センター 2)、同 一般・消化器外科 3)、同 病理学教室 4)  症例は 61 歳男性。生来健康であったが、2 ヵ月前からの間欠的な腹痛と黄疸を主訴に医療機関を受診した。血液検査 では肝胆道系酵素の上昇、CT では胆管拡張を認め、内視鏡で乳頭部口側隆起の明瞭な膨隆を認めた。経皮経肝胆管ド レナージ施行の上で当院へ転院となった。

EUS 検査で口側隆起粘膜下に 15×10mm 大の低エコー域を認め、非露出腫瘤型の乳頭部腫瘍を疑った。ERC にて胆 管造影をおこなったところ乳頭近傍でスムーズな胆管狭窄と総胆管結石を認めた。IDUS では乳頭近傍での全周性の壁 肥厚と内腔の狭小化を認めた。EST を施行するも腫瘤の露出は認めず、同部の生検結果は反応性異型を認めるのみであっ た。乳頭部腫瘍を狙い EUS-FNA を施行したが、異型の乏しい腺組織が少量採取されたのみで、診断困難であった。症 候性乳頭部腫瘍であり、十分な相談のうえで、膵頭十二指腸切除術を施行した。経過良好で術後 13 日目に退院となった。

 病理学的所見では、腫大した乳頭部口側粘膜下は線維化を伴う炎症と異所性膵を認め、これらが良性狭窄を呈した可 能性が否定できなかった。胆管壁は線維化を伴って肥厚していたものの、明らかな悪性所見は認めず、二次性の炎症性 変化と考えられた。

 十二指腸乳頭部の異所性膵による胆管狭窄、胆管炎の症例は稀であるが報告されており、本症例の最終診断、術前画 像診断について検討をお願いしたい。

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P-32 自然経過にて改善を認めた膵頭部腫瘤の1例

外山貴洋1)、羽場 真1)、桐山諭和2)、飯田章人1)、溝口直人1)、大谷宣人1)、山雄健次1)、成田 真1) 社会医療法人 明陽会 成田記念病院 消化器内科1)、同 病理診断科 2)

69 歳,男性。腹痛,閉塞性黄疸の精査加療目的に近医より紹介受診。初診時の造影 CT で膵頭部に 46mm の造影不良 な腫瘤があり,尾側の主膵管拡張,下部胆管閉塞と上流側の胆管拡張,上腸管膜静脈と門脈及び胃十二指腸動脈の不正 な狭窄を認め,腫瘍周囲から傍大動脈にリンパ節腫大を認めた。加えて MRCP では体尾部の主膵管拡張も認めた。血 清 IgG4 は 71.7mg/dL であった。膵頭部癌が疑われ,閉塞性黄疸に対し胆管ステントを留置した後に EUS を施行した。

EUS では頭部に境界不明瞭な 40mm 大の低エコー腫瘤が認められ,内部エコーは不均一で hyperechoic foci も認めた。

膵頭部の腫瘤に対して十二指腸下行脚より EUS-FNA を施行した。病理結果では異型細胞を認めず癌の診断確定は得ら れなかった。1か月後に再検したところ膵頭部腫瘤は 31mm 程度に縮小傾向を認め,EUS-FNA では前回同様に異型細 胞を認めなかった。胆管ステント留置時に施行した胆汁細胞診,胆管擦過細胞診でも異型細胞は認められなかった。複 数回の病理学的検索で悪性所見が認められなかったことから腫瘤形成性膵炎と診断し経過観察の方針となった。初診よ り 3 か月後の造影 CT で膵頭部腫瘤はほぼ消失し,ERCP でも主膵管・胆管ともに狭窄はなく描出良好であった。自然 経過にて改善を認めた膵頭部腫瘤の1例を経験した。当初の画像検査で悪性疾患が強く疑われた場合でも,詳細な画像 検索と EUS-FNA による病理学的検索が治療方針に影響を与えたという点で示唆に富む症例と考え報告する。