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P-41 比較的短期間に増大傾向を示した FNH (focal nodular hyperplasia)-like nodule の 1 例

宇山直人1)、木下光博1)、音見暢一1)、原田雅史1)、岩橋衆一2)、齋藤 裕2)、森根裕二2)、島田光生2)、 坂東良美3)、常山幸一4)

徳島大学病院 放射線科1)、同 消化器科・移植外科2)、同 病理部3)、 徳島大学大学院医歯薬学研究部 疾患病理学分野4)

症例:80 歳代男

現病歴:3 年前の CT でなかった多血性腫瘤を、X 年 11 月の MRI で肝左葉外側区に認めた。(X + 1)年 1 月の CT で 増大しており、(X+1)年 3 月に切除された。

飲酒歴:アルコール多飲あり(詳細不明)

検査所見:HBV、HCV 陰性。腫瘍マーカー正常範囲内、Ⅳコラーゲン 712 ng/ml、ヒアルロン酸 103.0 ng/ml と高値 画像所見:

・EOB 造影 MRI(X 年 11 月):T1WI で低信号、T2WI/DWI で高信号の腫瘤で、早期相から強く造影され、肝細胞相 で被膜は濃染したが、内部は肝実質と比し軽度低信号であった。

・造影 CT((X+1)年 1 月):肝背側に突出する境界明瞭、辺縁整の約 3cm の腫瘤が見られた。早期相から不均一に強 く染まり、遷延した。

病理診断:背景肝は肝硬変様。不明瞭な薄い線維性被膜あり。辺縁部で胆汁栓を伴う偽腺管構造を認め、中心部では肝 細胞脱落、うっ血や出血を伴うが、中心瘢痕形成はなかった。VB-HE 染色で門脈域浸潤はなく、HSP70、Glypican-3 陰性で、HCC は否定的。GS は結節の辺縁に陽性で、FNH の地図様パターンと異なり、SAA 及び CRP は陰性、βカテ ニンの核移行なし、L-FABP の陰性化もなく、肝細胞腺腫は否定的で、FNH 様結節と診断した。

討論のポイント:多飲酒患者に生じた SAA 陰性 FNH 様結節で、比較的短期間で増大した。病理学的特徴があるのか?

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P-42 Budd-Chiari 症候群を呈した肝単包虫症 (Hepatic cystic echinococcosis) の 1 例

森田慎一1)、小田知友美1)、星 隆洋1)、兼藤 努1)、八木一芳1)、須田剛士1)、平野謙一郎2)、小杉伸一2)、 長谷川剛3)、迫 康仁4)、寺井崇二5)

新潟大学地域医療教育センター 魚沼基幹病院 消化器内科1)、同 消化器外科2)、同 病理診断科3)、 旭川医科大学 寄生虫学講座4)、新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野 5)

30 代、男性。アフガニスタン人。健診異常で受診。【血液所見】好酸球増多、動揺する腎機能障害あり。各種腫瘍マーカー 陰性。血清赤痢アメーバ抗体、エキノコックス抗体(BML)陰性。【画像所見】CT:肝右葉より突出性に 20cm 超の嚢 胞性腫瘤を認める。壁肥厚及び内部隔壁を認め弱い造影効果を伴う小結節を認める。肝辺縁は鈍、尾状葉腫大あり。肝 実質は腫瘤により強く圧排変形し、肝部下大静脈は狭窄している。造影ダイナミックで実質全体の斑状濃染、肝静脈相 互吻合を認める。MRI:嚢胞内容は T1WI low、T2WI high。内部結節は DWI で拡散制限なし。DIC-CT:嚢胞と胆管 の交通は指摘しえない。鑑別診断として出血性肝嚢胞、肝嚢胞腺癌などを考えた。腫瘤により Budd-Chiari 症候群、周 囲臓器障害を伴い患者と相談の上、腫瘍摘出を選択した。【術中所見】嚢胞液は淡黄色清澄で 3000ml。嚢胞壁周囲の癒 着が強く肝静脈との剥離に難渋し完全摘除に至らず閉腹した。【病理所見、最終診断】嚢胞液に無数の原頭節を壁にクチ クラ層を認め肝包虫症と診断した。摘出嚢胞組織を用いた遺伝子診断にて単包虫症 (Echinococcus granulosus) の確定 診断に至った。【結語】単包虫症は本邦では極めて稀な疾患だが、社会のグローバル化に伴い遭遇する可能性は潜んでい る。本症例は単包虫症の典型所見を呈し、供覧価値は高いと考え報告する。

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P-43 肝腫瘤を形成し診断に苦慮した悪性リンパ腫の 1 切除例

遠藤裕平1)、野田弘志1)、渡部文昭1)、笠原尚哉1)、加藤高晴1)、田中 亨2)、力山敏樹1) 自治医科大学附属さいたま医療センター 一般・消化器外科1)、同 病理部2)

症例は 61 歳女性.長引く感冒様症状と炎症反応上昇にて前医で腹部超音波検査施行し,肝左葉に 60mm 大の充実性 腫瘤を指摘され精査加療目的に当院受診.dynamicCT で肝左葉に 57×41mm の辺縁部に漸増性の造影効果を示し,内 部は造影効果に乏しい充実性腫瘤を認め,B3 との交通が疑われ,末梢胆管の拡張を伴っていた.MRI では T1WI で 内部不均一な低信号,T2WI で高信号,DWI で拡散低下,ADC map で信号低下を示した.EUS では内部不均一な低 エコー腫瘤として描出され,左肝管と連続し近傍の胆管壁肥厚を認めた.腫瘤より末梢の B2, B3 は拡張していた.ま た,PET-CT において肝腫瘤の辺縁部にリング状の異常集積を認める他,右頸部リンパ節,第 4 腰椎,右総腸骨動脈周 囲リンパ節にも異常集積を認めた.右頸部リンパ節,骨生検を施行したが悪性所見は認めず.末梢型肝内胆管癌 ( 腫瘤 形成型 + 胆管浸潤型 ) を疑い肝左葉切除術を施行した.病変肉眼所見は,50×45×30mm,境界不明瞭,辺縁いびつな 白色充実性腫瘍で内部に壊死部分を伴っていた.病理組織学的には泡沫細胞や小型リンパ球を認め,大型で異型や多形 を示す細胞が接着性なく集簇し核小体の目立つ細胞も混じる.郭清リンパ節には異型細胞を認めなかった.免疫染色で CD20,Bcl2 陽性,T 細胞系マーカー陰性でありびまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫と診断した.

討論ポイント:術前画像から悪性リンパ腫と診断することは可能であったか,画像診断のポイントについて御教授いた だきたい.

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P-44 肝血管腫を疑った 1 例

池田重人1)、来間佐和子1)、千葉和朗1)、菊山正隆1)、神澤輝実1)、今村 潤2)、堀口慎一郎3)

都立駒込病院 消化器内科1)、同 肝臓内科2)、同 病理科3)

81 歳男性。心窩部痛を主訴に近医を受診、胆嚢結石と胆嚢床の結節性病変を指摘された。既往歴に高脂血症、狭心症が あり、冠動脈ステント留置が行われていた。血液検査所見で肝機能正常、肝炎ウイルスマーカー陰性。腫瘍マーカーは CA19-9 90.2U/ml と軽度に高値を示した。腹部超音波検査にて長径 15㎜の結節と胆嚢床に 74 x 55㎜の高エコー結節 を認めた。ダイナミック CT では結節状の濃染と AP shunt による区域性濃染が混在していた。結節状濃染は平衡相ま で持続した。MRI T1 強調画像で多結節状の低信号を呈し、T2 強調画像にて同部は高信号を呈した。拡散強調画像にて 高信号を呈するが、ADC map では信号低下はなかった。5 年前の造影 CT では病変は淡く描出されるものの不明瞭であっ た。血管腫を疑ったが診断確定のために経皮的針生検を行った。病理組織学的所見では、門脈域に不整形に拡張した血 管腔の増生が認められた。異型の乏しい一層の内皮細胞に裏打ちされていた。門脈域における血管増生は血管腫様であ るが、明らかな血管腫としての腫瘤像の形成が認められなかった。診断より半年を経過する現在、経過観察中である。

検討依頼項目

1. 画像上では血管腫の診断に矛盾ない所見ですが、病理組織学的に画像診断と乖離があるように思います。針生検組織 検体のみで恐縮ですが、病理診断についてご検討ください。