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P-17 術前局在診断に苦慮した膵頭部癌の 1 切除例

阪上尊彦1)、岡部義信1)、石田祐介1)、安元真希子1)、牛島知之1)、名嘉眞陽平2)、石川博人2)、内藤嘉紀3)、 奥田康司2)、中島 収4)、鳥村拓司1)

久留米大学医学部 内科学講座消化器内科部門1)、同 外科学講座2)、久留米大学病院 病理部3)、 同 臨床検査部4)

症例は 72 歳、女性。右乳癌術後(20XX-3 年 10 月)、大動脈弁狭窄症術後、2 型糖尿病の診断で経過観察されていた。

20XX 年 10 月に経過観察目的で施行された腹部エコーおよび CT で主膵管の拡張を指摘され、当科を紹介受診となっ た。腹部 CT では主膵管全体の拡張をみるも、明らかな腫瘤性病変や閉塞起点を示唆する所見は指摘できなかった。腹 部 MRI・MRCP では、膵頭部領域の膵管拡張は副膵管であり、EUS では膵頭部領域の拡張した副膵管内に突出する低 エコー腫瘤をみた。主乳頭部からの ERP では膵頭部主膵管は途絶しており、尾側膵管は描出されなかった。膵管癒合不 全の可能性も考慮し、副乳頭挿管を試みたが困難であった。膵液細胞診では粘液を有する異型細胞を認め、推定組織型 は adenocarcinoma suspected であった。以上より、副膵管から膵鉤部領域に存在する通常型膵管癌あるいは主膵管型 IPMN 由来浸潤癌の診断で、20XX+1 年 2 月に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術が施行された。摘出病理では膵頭部内に 限局する 14mm 大の浸潤性膵管癌がみられ、主病巣周囲には乳頭状に増殖する膵管内病変を認めた。副膵管が主体に拡 張していたため、術前に腫瘍の存在診断に苦慮した症例であった。

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P-18 球状の結節を形成した浸潤性膵管癌の 1 例

岡﨑三千代1)、川田 愛1)、大家力也1)、岩﨑丈紘1)、小島康司1)、内多訓久1)、岩村伸一1)、山井礼道2)、 賴田顕辞3)

高知赤十字病院 第三内科1)、同 外科2)、同 病理診断科3)

症例は 61 歳、男性。1 か月来続く心窩部痛を主訴として当科を受診した。血液検査では AMY109、CA19-9:5411、

DUPAN Ⅱ :136、Span-1:480.7 と上昇を認め、US で膵尾部に 30mm 大の輪郭比較的明瞭な低エコー腫瘤と尾側に嚢 胞性病変を認めた。腫瘤は CECT で内部に隔壁様構造と中心に造影不良域を伴う乏血性腫瘍として認められ、MRI では T1WI で低信号、T2WI で隔壁様構造を認識でき、淡い高信号から一部高信号を呈し DWI で高信号であった。EUS で は辺縁の一部に角度により無エコー帯を伴う低エコー腫瘤として描出されたが、隔壁様構造は明らかではなく、中心に さらにエコーレベルの低下した領域を認めた。ソナゾイド造影では、周囲膵実質と同時に内部の一部が造影され、遅れ て辺縁から内部に造影された。主膵管は腫瘤背側を走行しており、腫瘤尾側の嚢胞性病変は主膵管との連続性から貯留 嚢胞と診断した。FDG-PETCT では、膵尾部にリング状の集積 (SUVmax7.1) を認め、他に有意な集積はなかった。以 上、膵尾部原発の腫瘍性病変として、血清腫瘍マーカーの上昇から浸潤性膵管癌の可能性を考慮したが画像的に典型で なく、他疾患の可能性として特殊型膵癌(腺扁平上皮癌、退形成性癌)腺房細胞癌、念のため NET、SPN、浸潤癌を伴 う MCN を鑑別に挙げた。EUS-FNA の結果、腺癌が最も考えられ、膵癌 cT3 cN0 cM0 cStage Ⅱ A の診断で膵体尾部 脾臓合併切除、D2 郭清を施行した。最終病理診断は invasive ductal adenocarcinoma, pT3 pN1a M0 pStage Ⅱ B で あり、隔壁様構造は壊死の間に残存した腫瘍組織を反映していた。浸潤性膵管癌としては球状で肉眼形態が珍しく、術 前診断が可能であったかご討論をお願いいたします。

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P-19 輪状膵に発生した膵頭部癌の 1 例

木下慶亮1)、福地聡士1)、廣島康子1)、梶本展明1)、井上邦光1)、青山佳正2)、白鳥敏夫2)、蒲地綾子3)、 村上和成4)

大分医師会立アルメイダ病院 消化器内科1)、同 外科2)、同 病理診断科3)、 大分大学医学部附属病院 消化器内科学講座4)

症例は 76 歳の女性。15 年前に近医で CT 上膵頭部および体部に 10mm 大の膵嚢胞性病変を指摘され、分枝型膵管内乳 頭粘液性腫瘍が疑われた。また十二指腸を取り囲むように膵頭部の膵実質を認めた。嚢胞性病変精査・副膵管領域確認 目的で ERCP 施行され、ERP でスコープを取り囲むように輪状部膵管が描出され、輪状膵と診断された。

2017 年 2 月中旬より全身倦怠感、食欲不振あり、血液検査で黄疸、肝胆道系酵素上昇認めた。造影 CT で肝内胆管拡張、

総胆管拡張あり、また膵頭部に径 2cm 大の乏血性腫瘤認め、腫瘍より尾側主膵管は拡張していた。ERP で膵頭部に主 膵管の途絶あり、尾側主膵管は著明に拡張していた。ERC でも中下部胆管に狭窄認め、膵頭部癌による閉塞性黄疸が疑 われた。胆管擦過細胞診にて class Ⅴ adenocarcinoma との診断で、当院外科にて亜全胃温存膵頭十二指腸切除術施行 した。病理結果は Invasive ductal carcinoma of pancreas. Ph, TS2(33mm), pT3 pN1 M0 pStage Ⅱ B であった。

今回我々は、輪状膵に発生した膵頭部癌の 1 例を経験したので、画像を提示したい。

議論していただきたい点 : ①輪状膵に合併した膵癌の画像診断について。

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P-20 診断に難渋した低分化膵癌の 1 例

平野哲朗1)、芹川正浩1)、石井康隆1)、壷井智史1)、栗原啓介1)、宮木英輔1)、河村良太1)、関藤 剛1)、 森  豪1)、村上義昭2)、有廣光司3)

広島大学病院 消化器・代謝内科1)、同 消化器外科2)、同 病理診断科3)

症例は 56 歳の女性。当院初診 4 か月前に右季肋部痛を主訴に前医を受診した。CT で中下部胆管の狭窄と周囲の軟部 影を認めたが、胆汁細胞診では悪性所見を認めず、黄疸は PS 留置により改善したため経過観察となった。その後、当 院初診 1 か月前に急性胆嚢炎を発症し、再度前医に入院した。急性胆嚢炎は ENGBD により改善したが、CT および ERCP で総胆管の狭窄は肝門部にまで及んでいたため、診断目的で当院紹介となった。当院の CT では、総胆管や胆嚢 管の壁肥厚と濃染を認め、その周囲の軟部影の範囲は拡大し膵頭部で膵実質内に連続しているように見えた。EUS では 総胆管の周囲に不整で肥厚した低エコー領域を認めたが、総胆管の外側高エコー帯は連続性が保たれていた。膵頭部周 囲の低エコー領域より FNA を施行するも線維成分のみが採取された。また、胆管周囲の低エコー領域から経皮的に生 検するも同様の所見しか得られなかった。良悪性診断が困難であったため開腹生検を行ったところ、大部分が線維組織 であったが、一部に不整形腺管を認め、低分化型腺癌と診断された。以上より、T4N0M0 cStage Ⅲの膵癌と診断し、

現在化学療法を継続中である。本症例は、開腹生検により悪性病変と診断したが、各種画像検査からは胆管癌や胆嚢癌 とは考えにくく、膵頭部領域に腫瘤を形成したため膵癌と診断した。非典型的な経過を呈しており、どの段階で膵癌を 疑うべきか検討いただきたく症例を提示する。