• 検索結果がありません。

67

P-01 多発する分枝拡張を伴う膵上皮内癌の 1 例

南 竜城1)、小澤智美1)、上尾太郎1)、大花正也1)、待本貴文 2)、藤田久美3)、本庄 原 3) 天理よろづ相談所病院 消化器内科1)、同 消化器外科2)、同 病理診断科3)

症例は 70 歳女性。15 年前に 2 型糖尿病と診断され、内服加療を行っていた。糖尿病増悪の精査目的で施行した腹部エコー で膵腫瘤を認めたため当科紹介となる。血液検査では空腹時血糖 292mg/dl、HbA1c 9.0%、CEA 5.9ng/ml、CA19-9 55.9ng/ml、CA19-9.1U/ml であった。腹部エコーでは膵体部に 20mm の低エコー腫瘤と尾側膵管の拡張を認めたが、造影 CT では膵 管拡張起始部に明らかな腫瘤を指摘できなかった。MRCP では体部の膵管狭窄とその周囲に多発する分枝拡張を認めた が、MRI 拡散強調像では体部にわずかに拡散制限がみられるのみであり、FDG-PET でも有意な集積はみられなかった。

EUS では 20mm の比較的境界明瞭な分枝拡張を伴う低エコー腫瘤として観察されたため、浸潤癌を疑い EUS-FNA を行っ たが、細胞診、組織診いずれも悪性所見は認めなかった。ERP では体部に主膵管狭窄と分枝拡張を認め、狭窄部よりブ ラシ細胞診、ENPD 細胞診を行ったがやはり悪性所見は認めなかった。病理学的診断はえられなかったが、画像所見か ら悪性の可能性が否定できないため、膵体尾部・脾合併切除術を行った。病理所見では主膵管狭窄部と周囲の分枝膵管 上皮に high-grade PanIN を認めた。膵実質への浸潤は認めず、膵上皮内癌 (pTis, N0, M0, fStage0) と診断した。術前 画像では上皮内癌に伴った分枝拡張と周囲の実質の萎縮を腫瘤として認識していたものと考えられた。

68

P-02 分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(BD-IPMN)の経過観察中に発見された超音波内視鏡検 査(EUS)が診断に有用であった IPMN 併存微小膵癌の 1 例

髙橋孝輔1)、岡村卓真1)、日野直之1)、松崎寿久1)、吉川大介1)、吉田 亮1)、山尾拓史1)、岩崎啓介2)、 小澤栄介3)、大仁田賢3)、中尾一彦3)

佐世保市総合医療センター 消化器内科1)、同 病理診断科2)、長崎大学病院 消化器内科3)

【症例】79 歳、男性【既往歴】2型糖尿病【現病歴】20XX 年に BD-IPMN と診断され、近医の定期フォローアップ EUS で膵体部に低エコー領域を認め、精査加療目的に当科紹介となった。【経過】採血で CEA、CA19-9 は正常範囲内、

造影 CT、PET-CT、上腹部 MRCP では膵体部に異常は指摘されなかった。また明らかな膵管狭窄や主膵管拡張も認め なかったが、EUS で膵体部嚢胞横に 8mm 大の境界明瞭で辺縁一部不整な低エコーの充実性腫瘤を認め、造影ハーモニッ ク EUS では周囲実質と比較し造影不良で、微小膵癌を疑った。ERP でも主膵管に狭小化や硬化像はなく、ENPD を留 置し連日膵液の細胞診を提出したところ、細胞診で Class Ⅳ、その後の EUS-FNA で ClassIII の所見を認め、分枝膵管 発生の膵体部癌と診断し膵体尾部切除術を施行した。病理結果は cT1N0M0、cStage Ⅰであり、腫瘍径は 6×4mm であっ た。BD-IPMN は病理学的に IPMA の診断であった。術後 1 年以上経過するが明らかな再発はない。【結語】本症例は主 膵管拡張などの間接所見を有さない 6mm 大の IPMN 併存微小膵癌の早期診断に EUS・CH-EUS が有用であった一例で あった。【討論ポイント】主膵管に変化をきたさない小膵腫瘤と分枝膵管、近傍の小膵嚢胞との関係(貯留嚢胞、IPMN 初期像)。ENPD の ClassIV は同腫瘤を反映したものか。

69

P-03 術前診断に難渋した嚢胞性病変の 1 例

深澤佳満1)、進藤浩子1)、深澤光晴1)、高野伸一1)、高橋 英1)、廣瀬純穂1)、川上 智1)、早川 宏1)、 川井田博充2)、佐藤 公1)、榎本信幸1)

山梨大学医学部附属病院 第一内科1)、同 第一外科2)

症例は 71 歳女性。近医で腫瘍マーカー高値を指摘、精査目的の CT、MRI で嚢胞性病変を認めたため、精査加療目的に 当科紹介となった。

腫瘍マーカーは CEA 7.5ng/ml、CA19-9 540.7U/ml。CT では膵尾部末端に 35mm 大の類円形の嚢胞性病変を認めた。

共通被膜を有し一部に石灰化を伴っており、内部には隔壁構造を認めた。MRI では嚢胞内は不均一で、T1 強調像で低信号、

T2 強調像で高信号、MRCP で淡い高信号を呈した。嚢胞性病変と主膵管の連続性は確認できなかった。EUS では共通 被膜で覆われた嚢胞性病変であり、一部 cyst-in-cyst 様構造を認め、内部は不均一であった。また、嚢胞頭側に 10mm 大の境界不明瞭な低エコー領域を認めた。ソナゾイド造影を施行すると周囲膵実質に比べて弱い造影効果を認めた。共 通被膜構造と cyst-in-cyst から MCN と診断し、鑑別として MCN 由来浸潤癌もしくは MCN に併存した通常型膵癌を考 え、脾臓合併膵尾部切除術を施行した。

病理組織では嚢胞壁は線維性間質で構成されており、卵巣様間質は存在しなかった。嚢胞上皮は大部分で脱落しており、

残存する上皮は異型の乏しい円柱上皮であり、乳頭状増殖は認めなかった。以上より嚢胞性病変は貯留嚢胞と診断し た。また、嚢胞頭側に 11mm 大の浸潤性膵管癌を認め、周囲リンパ節に転移を伴っていた。通常型膵癌(T1c N1b M0 Stage Ⅱ B)、それに伴う貯留嚢胞と最終診断した。

嚢胞および膵癌の術前画像診断、嚢胞の病理診断、膵癌と嚢胞の関連について御討議いただきたい。

70

P-04 PanIN 併存を病理学的に診断し得た膵単純性嚢胞の 1 切除例

佐上亮太1)、錦織英史1)、阿南勝宏1)、藤原省三1)、村上和成2)

大分三愛メディカルセンター 消化器病・内視鏡センター1)、大分大学医学部附属病院 消化器内科2)

【症例】65 歳 女性【既往】胆石・虫垂炎

【現病歴】2013 年に施行した AUS で膵鉤部に 13mm 大の嚢胞を指摘され,2015 年 3 月に紹介受診となった.EUS で は隔壁を有する 17mm の嚢胞として認識され,体部に 6mm の嚢胞を認めた.膵管との交通は確認できず,分枝膵管と の交通が予想され IPMN 疑いとしてフォローを開始した.2016 年 3 月の MRI では 22mm の T1 低・T2 高信号の嚢胞 性病変として認識された.MRCP で膵管との交通は確認できず,頭部に分枝膵管拡張所見を認めた.9 月に造影 CT で 25mm 大まで増大し,EUS で内部隔壁の肥厚を認めた.内部結節を認めないが,組織診目的で ERP を施行した.頭部 に主膵管変化と分枝の拡張を認め,嚢胞は造影されないが細胞で class Ⅲ b を 3 回検出した.以上より BD-IPMN の悪 性化,鑑別として MCN などを考慮し,膵頭十二指腸切除術を施行した.上皮は PAS 染色,Alcian blue 染色陽性の細 胞質内粘液を有し,嚢胞周囲に紡錘形細胞を認め,MCN との鑑別が必要であったが,卵巣様間質が確認できず単純性 嚢胞の診断となった.嚢胞周囲分子膵管には PanIN1-2 程度の異型が散在していたが嚢胞との関連は不明であった.

【結語】膵単純性嚢胞に膵癌を伴う可能性を示唆する症例を検討したので報告した.

【検討事項】①細胞診 class Ⅲ b の出処② PanIN と膵嚢胞の関連③分枝拡張の原因.