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P-33 特異な進展様式を示した下部胆管癌の 1 例

北村英俊1)、葛西祐樹1)、岡田直也1)、香川幸一1)、伊藤高章1)、中下 学1)、岡沢 啓1)、水城 啓1)、 永田博司1)、堂本英治2)

けいゆう病院 内科1)、同 病理診断科 2)

症例は 87 歳 , 女性 .1 週間前から続く嘔気・嘔吐を主訴に当院受診された .CT で総胆管 , 肝内胆管の拡張に加え , 十二 指腸および上行結腸の狭窄が疑われたため , 精査目的に入院となった . 上部消化管内視鏡では上十二指腸角から下行脚 にかけて全周性の狭窄を認めたが , 明らかな粘膜面の異常は認めなかった . 下部内視鏡では肝湾曲部に狭窄を認め , ス コープの通過は困難であった . 第 10 病日に発熱を認め , 閉塞性黄疸及び胆管炎と診断し ,PTCD を施行した . 胆汁細胞 診では class Ⅲ b の異型細胞を認めた .MRCP では胆管拡張の改善と , 両側水腎症及び後腹膜の肥厚を認めた .PTCD に より , 一時は炎症反応の改善を認めたが , 再び増悪傾向となった . 腎機能の増悪を認め , 尿路狭窄に伴う腎後性腎不全 , 尿路感染症と診断した . 腎瘻の造設は困難であり , 感染症のコントロールがつかず , 第 26 病日に死亡した . 病理解剖の 結果 , 下部胆管を主座とする境界不明瞭な腫瘍を認め , 扁平上皮への分化を伴う低分化腺癌が認められた . 近接臓器への 浸潤は顕著で , 後腹膜進展による両側尿管狭窄 , 水腎症を来していた . 胃 , 十二指腸 , 上行・横行結腸への直接浸潤 , 多 発肺転移を伴っていた .【考察】胆管腺扁平上皮癌が後腹膜浸潤を来した症例を経験した . 特異な進展様式を示し , 本邦 における報告は少なく , 若干の学術的考察を踏まえこれを報告する .【検討項目】後腹膜進展を来すなど特異な進展様式 を示しており , 膵癌と胆管癌の鑑別が問題となった .

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P-34 広範な主膵管進展を伴う遠位胆管癌の 1 例

中崎佑介1)、松山隆生1)、藪下泰宏1)、土屋伸広1)、村上 崇1)、澤田 雄1)、熊本宜文1)、山中正二2) 、 遠藤 格1)

横浜市立大学医学部 消化器・腫瘍外科学1)、同 病理診断科・病理部2)

症例は 70 歳男性。黄疸を主訴に前医を受診し、下部胆管癌の診断で当科紹介となった。ERCP で下部胆管の狭窄と壁不整、

上部胆管の拡張を認め、下部胆管病変部より生検を施行し Class Ⅳ (Adenocarcinoma,suspected) と診断された。EUS では総胆管の拡張を認め、下部胆管の狭窄及び腫瘍性病変の存在が示唆された。また、膵管内に明らかな病変を指摘で きないものの、頭部から尾側の主膵管の拡張を認めた。CT では下部胆管に造影効果を伴う壁肥厚を認め、上部胆管の 拡張を認めた。さらに、膵頭部の膵管にも造影効果を認め、尾側膵管の拡張を認めた。その他リンパ節を含め遠隔転移 は認めなかった。以上より術前診断は下部胆管癌 (T3aN0M0 cStage Ⅱ A) とし膵頭十二指腸切除術、D2 郭清を施行した。

病理学的には下部胆管に腫瘍の主座を認め、遠位胆管癌 BdADPh,nodular-infiltrating type,tub1>tub2,T3a,N1,fStage

Ⅱ B と診断した。腫瘍は下部胆管から乳頭部まで至り、十二指腸、膵臓への浸潤を認め、さらに主膵管に沿って進展し 膵断端近傍まで及んでいた。現在、術後 3 ヵ月経過し、GEM 単剤による術後補助化学療法施行中である。

【検討事項】

・遠位胆管癌が主膵管に沿って進展していることに対する考察

・術前画像診断について

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P-35 生検で扁平上皮癌を認めた肝外胆管原発腺扁平上皮癌の 1 例

児玉 亮1)、三枝久能1)、牛丸博康1)、池野龍夫2)、川口研二3)、牧野睦月3)

JA 長野厚生連 南長野医療センター 篠ノ井総合病院 消化器内科1)、同 外科2)、同 病理診断科3)

【症例】63 歳,男性

【現病歴】妻に黄疸を指摘され,黄疸を主訴に当科を受診した.

【検査所見】肝胆道系酵素の異常と閉塞性黄疸,CEA 5.5 ng/ml と軽度高値を認めた.腹部 CT 検査では肝内胆管から 総胆管にかけて拡張がみられ下部胆管で狭窄していた.造影すると下部胆管に後期相で強く濃染する壁肥厚を認めた.

MRI 検査においても腫瘤としての認識は困難であったが造影にて遅延性に濃染する壁肥厚を認識した.ERCP では膵内 胆管に壁硬化と軽度の片側性圧排が加わった限局性狭窄を認めた.IDUS ではわずかに片側優位な内側低エコー層の肥 厚を認めたが腫瘤像としての認識は困難であった.膵上縁近傍からの生検では癌細胞はなく,狭窄部の生検で扁平上皮 癌を認めた.

【経過】胆管腺扁平上皮癌の術前診断で膵頭十二指腸切除術を行った.

【病理組織所見】浸潤の最も目立つ病変中央では扁平上皮癌と腺癌が移行像を伴い混在しており,扁平上皮癌と思われる 紡錘形の癌細胞が硬癌様に浸潤していた.病変の乳頭側では扁平上皮癌の成分が優位であり,胆管上皮に露出していた.

病変の肝側では腺癌が優位であった.

【検討事項】①扁平上皮癌優位な領域と腺癌優位な領域の組織学的な違いが画像所見に反映されていたか.②浸潤部は主 に扁平上皮癌と考えてよいか.

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P-36 遠位胆管癌と診断した乳頭部炎の 1 例

工藤大樹1)、平田 甫2)、北潟谷隆1)、霜田佳彦1)、伊藤 淳1)、大野正芳1)、畑中一映1)、山本義也1)、 成瀬宏仁1)、中西一彰3)、下田則彦4)

市立函館病院 消化器病センター消化器内科1)、釧路労災病院 内科2)、 市立函館病院 消化器病センター消化器外科3)、同 病理診断科4)

 症例は 80 歳代男性。食後の腹痛を主訴に当科初診。初診時肝胆道系酵素の上昇を認め,エコー所見で肝内胆管の拡 張が見られたため、精査入院となった。

 腹部エコーでは肝内胆管,肝外胆管の拡張を認めた。造影 CT では胆管,主膵管の拡張が見られ,十二指腸乳頭部付 近にわずかに造影増強効果が示された。EUS では乳頭直上の遠位胆管から上流にせり出す内部不均一な低エコー性腫瘤 性病変が描出され,一部主膵管との境界も不明瞭であった。上部消化管内視鏡所見では十二指腸乳頭部に腫瘍性病変を 疑う所見は見られなかった。

 以上から、遠位胆管癌が第一に疑われたが、ERCP 下の胆管生検では炎症などの反応性異型上皮の診断に留まっていた。

胆汁細胞診も Class Ⅰであり,同腫瘍に対して EUS-FNA も付加したが,悪性所見は得られなかった。経過で胆嚢炎も 併発したため、PTGBD を留置。PTGBD からの胆汁細胞診結果も Class Ⅰであった。術前診断では悪性の確定には至ら なかったが、臨床経過,画像所見から癌が否定できないことを説明し、患者の同意も得て膵頭十二指腸切除が施行された。

 術後病理は乳頭部から共通管部分で間質の炎症所見が著明な鋸歯状構造を示す異型のない上皮が採取された。IgG4 免 疫染色は陰性であり,自己免疫性胆管炎は否定できないとしつつも、乳頭部炎の診断であった。

 討議内容:画像上で癌が否定できたか。病理学的に自己免疫性胆管炎と診断しうるか。