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P-13 膵扁平上皮癌の 1 例

桒田 威1)、松森友昭1)、三嶋眞紗子1)、西川義浩1)、高田 裕1)、山本修司1)、宇座徳光1)、児玉裕三1)、 瀬尾 智2)、桜井孝規3)

京都大学医学部附属病院 消化器内科1)、同 肝胆膵 ・ 移植外科2)、同 病理診断科3)

症例は 64 歳、女性。2017 年 1 月背部痛あり、近医を受診した際に施行された CT にて膵頭部腫瘤を認めたため、当科 紹介受診となる。腹部造影 CT にて膵頭部に 30mm 大の腫瘤を認め、境界は比較的明瞭で、腫瘍の造影効果は辺縁で強 く、内部はやや造影効果に乏しかった。MRI では腫瘤は T1/T2 強調画像共に低信号、DWI では著明な拡散低下を認め、

MRCP では腫瘤部で主膵管の途絶を認めるが尾側主膵管拡張は伴っていなかった。PET-CT では腫瘤部に一致して著明 な異常集積を認め、他臓器には異常集積を認めなかった。EUS にて膵頭部腫瘤は径 30mm 大、比較的境界明瞭で、内 部エコーは高・低エコーが混在し一部にのみ無エコー域を伴っていた。また、EUS を施行した際の上部消化管内視鏡にて、

下行脚に腫瘍の露出と考えられる不整な潰瘍性病変を認めた。膵癌を疑い EUS-FNA を施行し、初回 EUS 時の十二指腸 生検では診断が得られなかったため再度生検を施行した。病理組織診断は poorly differenciated carcinoma で、CK7 陰性、p40 がびまん性に陽性であった。膵未分化癌や膵腺扁平上皮癌を考え、亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。

切除標本の病理組織学的所見では、腫瘍は CK7 陰性、p40 陽性の扁平上皮癌を主としており、典型的な腺癌成分を認め ないことから膵扁平上皮癌の診断となった。膵臓の扁平上皮癌は非常に稀であり、本症例の膵扁平上皮癌の診断の妥当性、

腫瘍発生の起源などについて検討していただきたい。

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P-14 膵腺扁平上皮癌の胆管浸潤と高分化型胆管癌が共存した1例

蓑島 考1)、横山和典1)、松本 航1)、代田 充1)、沢田尭史1)、旭 火華1)、喜納政哉1)、高田譲二1)、 益子博幸1)、山野三紀2,3)

日鋼記念病院 消化器センター1)、同 病理診断科2)、 昭和大学横浜市北部病院 消化器センター3)

症例は 65 歳男性。閉塞性黄疸を主訴に近医より紹介入院となった。MRCP では乳頭部近傍の遠位胆管に閉塞を認め、

主膵管の拡張は認めなかった。CT では胆管閉塞部位は早期相で 10mm 大の低吸収域を認め、後期相で膵実質と同程 度に造影された。同病変に近接した膵内には早期相、後期相ともに造影効果の乏しい 15mm 大の不整形腫瘤を認めた。

EUS では遠位胆管内に突出する結節状腫瘤により胆管閉塞をきたしており、閉塞部位から膵内に腫瘤が連続していた。

ERCP ではカニュレーションが困難であったために膵管ステント留置によるプレカットを施行したが、硬い腫瘤の抵抗 により不成功に終わり、PTBD を施行して減黄をおこなった。減黄後の胆管造影では胆管内に結節状の腫瘤による陰影 欠損を認めた。PTBD からの胆汁細胞診では扁平上皮癌が疑われた。また、CS で下行結腸癌を認めた。術前診断は CT の腫瘤像が膵内に存在することから胆管浸潤により胆管内に結節を形成した膵頭部腺扁平上皮癌と考えた。幽門輪温存 膵頭十二指腸切除と下行結腸切除術が施行された。病理組織学的には膵頭部に主座を置く腺扁平上皮癌が遠位胆管粘膜 固有層にまで浸潤しており、近接した胆管壁内に限局する高分化型腺癌を認めた。

本例では、術前に膵癌と胆管癌の併存を指摘できなかったことから、腺扁平上皮癌特有の画像所見が指摘でできるかど うか、膵腺扁平上皮癌と高分化型胆管癌の発生の問題などをご討論頂きたい。

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P-15 膵腺房細胞癌の 1 例

比佐岳史1)、青柳大樹2)、塩澤 哲2)、大久保浩毅3)、長谷川健3)、桃井 環1)、工藤彰治1)、山田崇裕1)、 福島秀樹1)、古武昌幸1)

佐久総合病院佐久医療センター 消化器内科1)、同 病理診断科2)、千曲中央病院 外科3)

症例は 60 歳台、男性。左季肋部・左背部痛を主訴に近医を受診した。CT にて膵体尾部に嚢胞性腫瘤が疑われ、当科紹 介となった。US では膵体尾部に 70mm 大の境界明瞭、輪郭比較的整な楕円形低エコー腫瘤を認め、内部には淡い高エ コー部分や無エコー部分が混在していた。造影 CT では腫瘤の大部分が不均一な造影効果を呈し、一部は造影されなかっ た。体尾部主膵管は腫瘤により腹側に押し上げられ、尾側主膵管は軽度拡張し、周囲脂肪織濃度上昇を伴っていた。腫 瘤内造影部位は MRI・T1 強調像で低信号、T2 強調像で淡い高信号、腫瘤内非造影部位は T1 強調像で高信号、T2 強調 像で高信号を呈した。EUS では膵体尾部の低エコー腫瘤内部に嚢胞部分を認めた。一方、腫瘤乳頭側の主膵管に拡張は なく、体尾部主膵管内に腫瘤から連続するポリープ状隆起を認めた。主乳頭からの粘液排出は認められなかった。分枝 膵管内に充満発育する腫瘍と診断し、膵体尾部切除術を予定した。術中、横行結腸への浸潤が疑われたため、左半結腸 切除を追加した。標本膵管造影では主膵管内に透亮像を認め、造影剤は腫瘤内から結腸に流入した。肉眼的には膨張発 育型の灰白色腫瘤で、主膵管の一部にポリープ状隆起を伴っていた。組織学的には核小体が明瞭な類円形核と好酸性細 胞質を有する N/C 比の高い上皮が充実あるいは腺房様構造を形成していた。結腸への浸潤は認められず、切除断端は陰 性であった。免疫染色では、Chromogranin A (-), Synaptophysin (-), CD56 (-), Tripsin (+) であり、膵腺房細胞癌(pT2 pN0 M0 pStageIB)と最終診断した。

討論点:腫瘍の発育進展様式

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P-16 Gem+nabpaclitaxel が奏効し conversion surgery が可能となった内分泌腫瘍への 分化を伴う局所進行腺房細胞癌の 1 例

夏目誠治1)、千田嘉毅1)、肱岡 範2)、原 和生2)、水野伸匡2)、奥野のぞみ2)、桑原崇通2)、柳澤昭夫3)、 清水泰博1)

愛知県がんセンター中央病院 消化器外科1)、同 消化器内科2)、京都第一赤十字病院 病理診断科3) 症例は 68 歳の女性。腹部大動脈、腹腔動脈、胃、左副腎に接する局所進行膵体部癌に対して前医から通算 5 コースの Gem+nabpaclitaxel 療法を行った。化学療法後腫瘍は縮小したことから R0 切除が可能と判断し conversion surgery を施行した。腹腔動脈、脾動脈神経叢を術中病理検査に提出したが悪性所見を認めず、脾動脈は根部で処理できた。膵 体尾部切除、左副腎、胃部分切除術を施行した。手術時間は 334 分、出血量は 410ml であった。合併症なく術後 18 日目に退院した。病理学的には、好酸性の顆粒状胞体を有する異型細胞が腺房様構造を残しつつ充実性に増生しており BCL10 陽性であることから腺房細胞癌と診断した。一方、一部の腫瘍細胞は ChromograninA にも染色されており内分 泌腫瘍への分化を示唆する所見であった。化学療法の治療効果は Evans 分類の Grade Ⅱ A、ypT3N0M0 Stage Ⅱ A、

R0 切除であった。術後補助療法として Gem+nabpaclitaxel を 6 ヶ月投与し、8 ヶ月現在無再発である。内分泌腫瘍へ の分化を伴う腺房細胞癌は稀であるばかりでなく、Gem+nabpaclitaxel が奏功した点も大変興味深い症例と考え報告す る。

討論ポイント:病理学的診断 ( 内分泌腫瘍への分化について )、化学療法の組織学的効果