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する。相互浸透によりサブシステムが複合化した高次システムを形成する場合、この高次シ ステムはオートポイエーシス・システムであると同時に、サブシステムもオートポイエーシ ス・システムとして機能し続け、それぞれ独自の構成要素を繰り返し生産することができる。
したがって知識システムはオートポイエーシス・システムであり、サブシステムとしての 神経システムと心的システムはオートポイエーシス・システムとして機能し続け、それぞれ 独自の構成要素を繰り返し生産することができる。
b. 実空間の脳と位相空間の心の働き
現代の脳科学は、記憶が特定の脳細胞に物理的に存在することを実証した(URL 7)。
たとえば、マウスを用いた実験によれば、記憶は「エングラム細胞」と呼ばれる海馬27の 細胞群に書き込まれ、貯蔵される(Liu et al. 2012)。またRedondo et al.(2014)が行なった マウスを用いた別の実験によれば、海馬の記憶はその後の経験によって別の感情の記憶に 書き換えられるが、扁桃体28の細胞群は一度「嫌な出来事の記憶」「楽しい出来事の記憶」を 保存したら、それらの記憶はそのまま書き換えられない。
これらの事実は、心の働きのひとつである感情が物質である脳に物質の変化という形式 で記憶として存在することを明らかにした。別の言い方をすれば、これらの事実は、位相空 間にある心の働き(感情)と実空間にある脳の対応関係を示した。
実空間に存在する物質で構成された脳(すなわち構造)と位相空間に存在する心の働き
(すなわち機能)の対応関係が科学的に実証されたことは、生命システムと知識システムの 複合体としての人間のあり方を保障する確かな成果である。
c. 言語による構造化
図3-6に心的システムと神経システムの複合体(すわなち知識システム)における意識の 発生から知識の生産までの経路を示す。
図において水色の円が心的システム、赤色の円が神経システムであり、両円の重なりが相
27海馬の記憶はエピソード記憶と呼ばれ、「個人が経験した出来事に関する記憶」である。
この記憶の特徴は、出来事の内容 (「何」を経験したか)に加えて、出来事に付随する情報
(時間・空間的文脈、自己の身体的・心理的状態など)と共に記憶されていることであ る。海馬の下流にある扁桃体は記憶のうちでも情動と強く関連した記憶、すなわち恐怖や 嫌悪のような感情に関連性が強い記憶が蓄積される。
28扁桃体は、環境内の事象が自分にとって有益か危険かを判断する価値判断の中枢であ り、扁桃体の記憶は価値記憶と呼ばれる。
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互浸透を意味する。周囲の四角の緑色の部分が知識システムの環境(社会システム)である。
心的システムで生産された意識の連鎖が思考となる。思考は相互浸透により神経システ ムにつたわり思考の連鎖となる。神経システムで思考の連鎖は記憶となる。神経システムの 中に様々な記憶が蓄積され、記憶が組み合わされて知識の原型(原知識)となる。
原知識とは、それが意図をもって社会システムの中で情報として発信されたときに知識 となる原型という意味である。図3-6には描かれていないが、知識システム(赤色)と社会 システム(緑色)は相互浸透しており(3.8.)、原知識はその相互浸透により社会システムに 入ることができる。図では原知識が青矢印で環境に移動するように示したが、これは原知識 が社会システム(緑色)の中で情報として発信されたときに知識となることを表している。
このように知識システムは原知識を繰り返し生産する機能システムである。3.9.3.で述べ たように、心理システムの作動原理は「言語による構造化」(ある表象から次の表象への進 行が言語によって構造化されていること)である(Luhmann 1984=1995:511)。本論で は、ルーマンの心理システムを知識システムと定義した。したがって、知識システムの作動 原理は「言語による構造化」である。
注意すべきことは、知識システムは機能システムである。したがって一人ひとりの人間の 知的活動ごとに知識システムがあるわけではない。またクラウドコンピューティングのよ うな人間の知的ネットワークでもない。知識システムは社会にいる人間すべての知的活動 の位相空間への写像であり、一つしかない人間の知的活動の働きそのもの....
である。
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日本の科学・技術研究の実態:論文数と研究者数の分析
第4章から第6章が日本の論文数の実態を詳細に検討する実証編である。本章(第4章)
の目的は日本の科学・技術研究の実態を実証的に明らかにすることである。まず日本の科 学・技術研究の論文数の全体像を把握するためにデータベースを利用して世界における日 本の論文数の位置づけを明らかにする。ついで研究分野により論文数の推移に大きな違い があり、増加した分野、減少した分野、停滞した分野があることを示す。さらに著者の属性 として海外共同研究の有無(共同研究属性)を研究者数から推定する手法を提案し、代表的 な研究分野を取り上げて論文数の増減から研究者の質の変化を読みとる。