4.5. 国内研究と海外共同研究の論文数の推移:日本全体の論文数
4.7.1. 光学
122
めに著者数xdiが減少しなかったと考えられる。すなわち、応用物理分野では、2014年の時 点でxdiはxdより少なくとも6年ほど遅れて変化しており、著者数xdが減少したあと、研 究経験を積んだ中堅研究者がこの分野で研究を続けたと考えられる。
f. 応用物理学のまとめ
以上の結果をまとめると、つぎの2点が明らかになった:(a) 2008年以降、新規参入の研 究者が減ったために国内群の著者数xdは減少したが、国内研究をしていた研究者が中堅研 究者に成長して応用物理分野で海外共同研究を行うようになり、国内外群の著者数xdiは減 少しなかった;(b) xdの増加率が1984-1987年頃から低下し、1987-1990年から国内研究と 海外共同研究の両方を行った研究者数xdiの増加率が低下した;(c) 1975-2014年のあいだ、
国内群の著者1人当たりの年間論文数は1975-2014年のあいたほぼ一定(約 0.57報/人)
であった。国内外群の著者1人当たりの年間論文数は1975-2014年のあいだほぼ一定(約 0.8報/人)であった。
4.7. 2000年代に論文数が増加した研究分野の論文数と研究者数
123 文数は1000報弱に止まった。
光学の海外共同研究の論文数の増加率は、2002-2005年で約7%、2005-2008年で約5%、
2008-2011 年で約 6%であった。この増加率は日本全体の海外共同研究の論文数の増加率
(4%)より高く、光学分野で海外共同研究が盛んだったことが判る。
このように光学分野では、2000年代に国内研究と海外共同研究のいずれの論文数も増加 した。4.5.で示したように、日本全体の国内研究の論文数b(図4-8、黒棒)が2000年代に 減少した。また4.6.で検討したように、2000年代に論文数が停滞~減少した研究分野の国 内研究の論文数はすべて減少した。これらの事実と比較すると、光学の国内研究が2000年 代に緩やかであっても論文数が増加したことは大きな特徴である。
b. 3種類の著者数xd、xdi、b’:図4-11b
図4-11bに国内研究の論文の著者数(国内研究のみxd、国内と海外の両方xdi、国内研究
図4-11a 光学の論文数の推移
【注1】国内研究の論文数bは黒棒、海外共同研究の論文数cは白棒、日本の論文数aは実
線(a=b+c)。【注2】】論文数はWeb of Science®, SCI-EXPANDEDを用いて検索した(検索 日2016年9月16日)。
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600
1975 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005 2008 2011 2014
論文数 / 年
西暦
b、論文数:国内研究 c、論文数:海外共同研究 a、b+c
a) 光学
124
の著者数b’=xd+xdi)の3年ごとの推移(左軸)と、xdiのb’に対する比率fdi(= xdi/(xd+xdi))
の推移(右軸)を示す。
著者数b’(実線)は年々増え続け、1999年に約1,150人だった著者数が2014年に約1,450 人に増えた。内訳をみると、xdとxdiのいずれも増加したが、xdiのb’に対する比率fdi (破 線)が2000年代も年々高くなった。新規参入者が順調に成長して、海外共同研究を行う中 堅の研究者として光学分野で活躍していることが判る。
c. 国内研究の論文数bとその著者数b’:図4-11c
図4-11cに国内研究の論文数bとその著者数b’の関係を示す。1975年から1996年まで
論文1報当たりの著者数(b’/b;図の原点と各年のプロットを結ぶ直線の傾き)は平均 2.0 人/報(最小1.7;最大2.2)で大きく変動しなかった。1999年からb’/b(論文1報当たり
図4-11b 光学の著者数の推移
【注2】国内研究のみの著者数 xdは斜線棒、国内研究と海外共同研究の両方を行った著者
数xdiは斜線棒、国内研究の著者数 b’(=xd+xdi)は実線、国内研究と海外共同研究の両方を 行った著者数の国内研究の著者数に対する比率fdi (= xdi/(xd+xdi)は破線。
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
1975 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005 2008 2011 2014
xd、著者数:国内研究のみ xdi、著者数:国内と海外共同の 両方b'、著者数:国内研究
(b'=xd+xdi) fdi=xdi/(xdi+xd)
西暦
著者数 / 年
b)
f
di/ ‐
光学
125
の著者数)は徐々に増えて2014年に2.7人/報になった。1999年から2014年のb’/b(論 文1報当たりの著者数)の平均は2.5人/報である。この論文1報当たりの著者数が推移 する様子はその値の大きさと時期が物性物理とほぼ同じであった。
物性物理と光学の 2 分野を比較すると、国内論文の論文数と著者数の増減ではまったく 反対の傾向を示すが、論文1報当たりの著者数b’/bの大きさと2000年頃を境に増える傾向 は同じであった(物性物理では1975-2002年で1.8人/報、2002-2014年で平均2.5人/
報;光学では1975-1996年で平均2.0人/報、1999-2014年で平均2.5人/報)。応用物理 でも大きな変化ではないが、2008 年を境に上昇する傾向が見られた(1975-2005 年で平 均1.7人/報、2008-2014年で平均1.9人/報)。
これらの事実は論文 1報当たりの著者数 b’/bは研究分野に依存せず、日本の研究環境に 共通の要因に支配されていることを伺わせる。
国内研究の著者1人当りの年間論文数を求めると、1975-1993年では0.5 報/人、1996-2014年では0.4報/年であった。1975-2014年では0.45報/年となり、国内研究の著者1 人当りの年間論文数は1975-2014年のあいだ、ほぼ一定であったといえる。
海外共同研究論文の著者のうち、海外共同研究しか行なわなかった日本の研究者数 xiは 求めることができないが、xdiと比較して無視できる人数であると仮定して、研究者数xdiと 海外共同研究論文数cとの比(c/xdi)、すなわち海外共同研究に関わった日本の研究者1人 当りの論文数を計算した。(c/xdi)は1975年から 1993年まで 1人年間 1.6報前後であっ た:1978年では1.2報/人、1981年では1.3報/人、1984年では2.0報/人、1987年で は1.7報/人、1990年では1.4報/人、1993年では1.7報/人。しかし、1990年代前半 までの海外共同研究論文数は年間6-68報、国内外群の研究者数は1-46人と少ないため、xi
が無視できるという仮定が成立しない可能性がある。
1996年以降になると海外共同研究論文数は年間200報以上、国内外群の研究者数は200 人以上となった。xiが無視できると仮定して国内外群の研究者 1 人当たりの年間における 国際論文数(c/xdi)を計算すると、1996年から2014年まで1.2報前後で一定あった:1999 年では1.3報/人、2002年では1.1報/人、2005年では1.3報/人、2008年では1.3報
/人、2011年では1.2報/人、2014年では1.1報/人。
1990年代前半の国内外群の研究者1人当たりの年間における国際論文数(c/xdi)は不確 定であるが、1975-2014 年のあいだ、(c/xdi)は大きく変動しなかったと考えることは妥当 である。
126 d. 3種類の著者数の増加率:図4-11d
図4-11dに3種類の著者数の増加率の平均値(10年間ごと)を示す:国内研究だけの著
者数xdの増加率(年率、斜線棒)、国内研究と海外共同研究の両方に関係した著者数xdi(年 率、灰色棒)の増加率、国内研究の著者数b’ (b’=xd+xdi)の増加率(年率、黒棒)。
著者数b’の増加率(黒棒)は1975-1984年のあいだ約17%前後であったが、1984-1993
年では約3%となり、著者数b’の増加は鈍化した。1996-2014年においても2-3%を維持し
ており、著者数b’は増加を続けた。著者数xdの増加率はb’の増加率とほとんど同じように 推移し、2005-2014年においても2%弱を維持した。
著者数xdiの増加率は、両者より10年ほど遅れて推移した。1975-1984年のxdiの増加率
は25%前後、1984-1993年は30%弱に増加した。1996-2005年に10%弱となったが、
2005-2014年においても約6%を維持した。
xdとxdiのどちらもプラスの値であり、xdiは高い増加率を維持して増加している。
127
e. 著者数xdの増加率と著者数xdiの増加率:図4-11e
図4-11eにxdとxdiの10年間の増加率の平均値の推移を示した。1975-1993年はxdi は
高い増加率を維持し、xd は増加率を大きく減少させ、バブルが崩壊した 1993 年以降は反 対にxdiの増加率が大きく減少し、xdは増加率を維持したことがわかる。すなわち、国内の 景気が良好な時期(バブル期を含む)にはxdi が高い増加率を維持し、xdは増加率を減少さ せる。国内の景気が悪い時期(バブル期後)にはxdi が増加率を大きく減少させ、xdは増加 率を維持する。
図4-11d 光学の著者数の増加率
【注3】国内研究だけを行った著者数xdの増加率(dxd/dt)は斜線棒、国内研究と海外共同研
究の両方を行った著者数xdiの増加率(dxdi/dt)は;灰色棒、国内研究の著者数b'(=xd+xdi)の 増加率(db'/dt)は黒棒。【注4】増加率は年率。
‐0.10 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40
1975‐1984 1984‐1993 1996‐2005 2005‐2014
d(xd)/dt d(xdi)/dt d(b')/dt
著者数の増加率 / 年
d) 光学
128
この国内研究と海外共同研究に関わる著者数の増加率の関係は、国内研究と海外共同研 究の論文数の関係と対応する。すなわち、国内の景気が良好な時期(バブル期)には、国内 研究論文数bは増加率を維持して増えるが、国内研究に関わる著者数xdの増加率は減少す る。同じ時期に海外共同研究論文数cは増加率が低下するが、海外共同研究にかかわる著者 数xdiは高い増加率を維持する。
「景気が良好な時期は国内研究の論文数は増加し、かつ海外共同研究に関わる著者が増 える」。このような状況はつぎのように考えれば合理的に説明することができる:景気のよ い時期に多くの若手層の研究者が海外共同研究を始めて中堅研究者層に移る。中堅層に移 ったばかりの研究者は複数の論文に関わることは少ないとすれば、研究者数 xdi が増えて
図4-11e 光学の国内研究だけを行った著者数xdの増加率(dxd/dt)と国内研究と海外共同研
究の両方を行った著者数xdiの増加率(dxdi/dt)の関係
【注5】増加率は年率。
‐0.10 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40
‐0.20 ‐0.10 0.00 0.10 0.20 0.30
d(x
di)/dt
d(x
d)/dt
e )
1975‐1984 1984‐1993
1996‐2005
2005‐2014
光学
129
増加率が高くなったとしても、論文数cの増加率は低下する可能性がある。
f. 光学のまとめ
光学分野で特徴的なことは、(a) 1975-2014年のあいだ、b’、xd、xdiの増加率はいずれも プラスであり、(b) 1984-2014年の31年もの長期にわたりxdが2-3%で安定だった(図
4-11e)ことである。特に(c) 2005-2014年の10年間でxdの増加率がプラスだった研究分野は
光学分野だけである(図4-11d)。
光学以外の研究分野では 2000 年代半ばから新規参入者である国内研究のみの著者数 xd
が減ったなかで、光学分野でxdiとxdがプラスの増加率を維持した結果、海外共同研究と国 内研究に関わる中堅研究者数が増え、若手層から中堅層への移行が進んだ。