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生産の条件が非対称なケース

ドキュメント内 多国籍企業の所有権構造と参入戦略 (ページ 94-97)

第 5 章 企業の参入戦略と交渉力

5.5 生産の条件が非対称なケース

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を通してFDIの利潤増加を促す.本社企業の交渉力が大きな場合,ライバル企業との競 争を通じて,中間財価格が低下する.この中間財価格の低下は,交渉力の大きさによる,

部品サプライヤーの投資意欲の減少を相殺する.したがって,交渉力の増加は,輸送費 低下によるFDIの限界費用の低下を緩和させるのである.

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は,中間財価格の上昇を通じ,限界費用を増加させるため,アウトソーシングの選択は 不利になる.分析結果は次のようになる.

命題 5.4

(1) 上流企業と下流企業の生産性の格差拡大(ρ > 0のケース)は,企業のアウトソーシン グの選択を促進させる.

(2) 競合する企業間で交渉力が異なる場合,ある企業の交渉力の増加は,当該企業のアウ トソーシングの選択を促すが,交渉劣位にある企業の FDI の選択を促す.したがっ て,交渉力の増加は,上流企業と下流企業の生産性の格差拡大を通して,企業のアウ トソーシングの選択を更に促進させる.

ρの値(ρ < 0)を所与として,上記の単一非対称均衡の存在理由を𝛽𝑖 > 𝛽𝑗のケース で,考察する.Fの値が比較的小さな場合(図5.3領域a),企業jは常にFDIを選択 する.アウトソーシングを選択すれば,部品サプライヤーの限界費用が大きいため,中 間財価格が上昇し,供給量が減少するためである.企業jの交渉力の低さはこの影響を 促進する.一方,企業iはアウトソーシングを選択する.企業iがアウトソーシングを 選択すれば,交渉力の大きさが中間財価格の上昇による限界費用の増加を抑制すると同 時に,企業jとの競争は中間財価格の低下を促進する.したがって,Fの値が比較的小 さな場合であっても,アウトソーシングの選択は企業iにとって有利に働くのである.

Fの値が比較的大きな場合(図5.3領域b),企業iは常にアウトソーシングを選択す る.アウトソーシングを選択すれば,交渉力の高さは中間財価格を低下させ,供給量が 増加するためである.一方,企業jはFDIを選択する.企業jがアウトソーシングを選 択すれば,部品サプライヤーの限界費用が大きいため,中間財価格が上昇し,供給量を 下げてしまう.企業jの交渉力の低さはこの効果を促進する.企業jがFDIを選択すれ ば,企業jの投資は,自己の限界費用を下げるが,同時に企業iの限界費用を低下させ る.しかし,企業iの交渉力が大きいため,その効果は小さい.したがってFの値が比 較的大きな場合であっても, FDIの選択は企業jにとって有利に働くのである.

5.5.2 生産費用が非対称なケース

ここでは,上流企業と下流企業の生産性が等しいケース:

𝜌 = 0 ⟺ 𝑟 = 𝑟𝑚

のとき,ϕ ≡ 𝑒̅2− 𝑒̅1と定義し,企業iがライバル企業jに対してコスト優位なケースで,

各企業の参入形態の均衡を議論する.

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図5.4:生産費用が非対称なケースでの参入形態(𝛽𝑖> 𝛽𝑗

図5.5:生産費用が非対称なケースでの参入形態(𝛽𝑖< 𝛽𝑗

図5.4と図5.5 より,生産性の格差(ϕの大きさ)拡大に伴って,企業 iがFDIを選 択し,企業 j がアウトソーシングを選択する傾向が強まる.したがって,生産性が高い 企業ほどFDIを選択し,生産性の低い企業ほどアウトソーシングを選択する.

𝛽𝑖の増加は,企業iの2つの無差別曲線と,𝜋j𝐼𝑂= 𝜋j𝑂𝑂を下方にシフトさせ,OOとOI の均衡領域を拡大させ,IOの均衡領域を縮小させる.一方,𝛽𝑗の増加は,企業iの2つ の無差別曲線と,𝜋j𝑂𝐼 = 𝜋j𝐼𝐼を下方にシフトさせ,OOとIOの均衡領域を拡大させ,IIと OIの均衡領域を縮小させる.分析の結果をまとめると次のようになる.

命題 5.5

(1) 生産性の高さは,FDIを促進させる.

(2) 生産性の高さは,交渉優位にある企業のアウトソーシングを促進させ,交渉劣位に ある企業のFDIを促進させる.

ϕ F

0

𝜋𝑖𝑂𝐼 = 𝜋𝑖𝐼𝐼

𝜋𝑖𝐼𝑂 = 𝜋𝑖𝑂𝑂

𝜋j𝐼𝑂 = 𝜋j𝑂𝑂 𝜋j𝑂𝐼 = 𝜋j𝐼𝐼

IO

II IO

IO,OI

OO OO

IO

OI OO

OI

OI

ϕ F

0

𝜋𝑖𝑂𝐼= 𝜋𝑖𝐼𝐼

𝜋𝑖𝐼𝑂 = 𝜋𝑖𝑂𝑂

𝜋j𝐼𝑂 = 𝜋j𝑂𝑂

𝜋j𝑂𝐼 = 𝜋j𝐼𝐼 IO

II

IO IO,OI

OO OO

IO IO

OO OI

OI

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生産性の高い企業は,企業間競争を激化させ,自己の中間財価格を上昇させるが,交 渉力の高さが,中間財価格の上昇を緩和するため,ϕが小さい場合,アウトソーシングを 選択することが有利な状況が存在する.一方,生産性の低い企業は,企業間競争によっ て,供給量を下げるため,アウトソーシングを選択すれば,中間財価格が低下するが,

結果的に部品サプライヤーの投資の減少が限界費用を増加させるのである.この限界費 用の増加は,ϕが小さい場合,FDI の投資費用の増加を上回る.したがって,アウトソ ーシングの選択よりも,ϕが小さい場合,FDI を選択する方が有利な状況が存在するの である.

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