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おわりに

ドキュメント内 多国籍企業の所有権構造と参入戦略 (ページ 129-135)

第 6 章 企業の戦略的参入形態

6.7 おわりに

本章では,市場規模が小さいとき,MNE の最適参入形態を交渉配分と投資水準を基 準に分析を行った.その結果,外部委託の事後的な交渉配分が,市場構造の形成と事前 の投資水準に影響を及ぼすことが確認された.

本社企業とサプライヤーの交渉格差が極端に大きいとき,FDIが選択される.FDIが 選択される場合,ライバル企業の生産性が高いとき,投資水準が大きくなる結果,独占 市場が形成される.一方,ライバル企業の生産性が低いとき,投資水準が低下し,複占 市場が形成されるが,交渉格差が極端に大きくない場合,外部委託が選択される.外部 委託が選択される場合で,特に交渉力が小さい場合,独占市場が形成されるが,交渉力 が大きい場合は,複占市場が形成される.

ライバル企業の生産性の高さは,戦略的代替効果を通して供給量を拡大できる.この ことは,本社企業の収益低下の要因になるので,供給量の減少によるマーケット・シェ アの低下に備えて,MNE は事前の投資水準を高めておく必要がある.また,本社企業 のサプライヤーに対する交渉配分の高さは,FDIのケースよりも,中間財の過少生産を 促す結果,ライバル企業との数量競争による戦略効果を通じて,レントの減少を増幅さ せる.このマイナスの影響に備えて,本社企業は投資水準を事前に増加させる必要があ る.結果として,外部委託が選択される場合,本社企業による市場の独占化が促進され ることになる.

一方,ライバル企業の生産性が低いとき,投資水準が低くなるため,FDIの収益性が 高まる.このことは,外部委託が選択されるための交渉配分の境界値の範囲を縮小させ ると同時に,複占市場での外部委託の参入を促す.ライバル企業の生産性が低い場合,

独占を実現するほどの投資水準の増加は,投資の収益性を悪化させる.そのため投資水

121 準が低下し,市場の複占化が促されることになる.

参考文献

[14] Antràs, Pol (2003). “Firms, Contracts, and Trade Structure.” Quarterly Journal of Economics, 118, 1375–1418.

[15] Antràs, Pol (2005). “Incomplete Contracts and the Product Cycle.” American Economic Review, 95, 1054–1073.

[16] Grossman, Gene, and Elhanan Helpman (2002). “Integration vs. Outsourcing in Industry Equilibrium.” Quarterly Journal of Economics, 117, 85–120.

[17] Grossman, Sanford, and Oliver Hart (1986). “The Costs and Benefits of Ownership: a Theory of Vertical and Lateral Integration.” Journal of Political Economy, 94, 691–719.

[18] Hart, Oliver, and John H. Moore (1990). “Property Rights and the Nature of the Firm.” Journal of Political Economy, 98, 1119–1158.

[19] Leahy, D. and C. Montagna (2007). “ ‘Make-or-Buy’ in International Oligopoly and the Role of Competitive Pressure ”, GEP Research Paper

[20] Leahy, D. and C. Montagna (2009). “ Outsourcing vs FDI in Oligopoly Equilibrium ”, Spatial Economic Analysis, Vol. 4, No. 2

[21] McLaren, John [2000]. “Globalization and Vertical Structure.” American Economic Review, 90, 1239–1254.

[22] Nickerson, JA. And R. Vanden Bergh (1999). “Economizing in a Context of Strategizing: Governance Mode Choice in Cournot Competition”, Journal of Economic Behavior and Organization, 40, 1-15.

[23] Paul Krugman (1980). “Scale Economies, Product Differentiation, and the Pattern of Trade”, The American Economic Review, Vo.70, No5

[24] Y. Chen, J. Ishikawa, and Z. Yu (2004). “Trade liberalization and strategic outsourcing”, Journal of International Economics, Vo.63 419– 436

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付録

A) (6.13)式の存在範囲について 𝑎 >𝜃2のとき,

1 − 1

𝐼 (2 𝜃 − 𝑎)

> 0

が成立する.よって(6.13)式を満たすような,βの存在条件は,

1 2 𝜃 − 𝑎

− 2

𝑎 +1 𝜃

> 0

しかし,21

𝜃−𝑎< 0より,上記の条件は成立しない.したがって,(6.13)式を満たすような,

βは存在しない.

B) (6.13)式の存在範囲について 𝑎 <𝜃2のとき,

1 − 1

𝐼 (2 𝜃 − 𝑎)

< 0 ⟺2 𝜃−1

𝐼 < 𝑎

であれば,(6.14)式の仮定より,(13)式を満たす,βは存在する.一方

1 − 1

𝐼 (2 𝜃 − 𝑎)

> 0 ⟺2 𝜃−1

𝐼 > 𝑎 であれば,(6.13)式を満たすような,βの存在条件は,

1 2 𝜃 − 𝑎

− 2

𝑎 +1 𝜃

> 0 ⟺ 𝑎 >1 𝜃 したがって,

1

𝜃< 𝑎 <2 𝜃

となるとき,(6.13)式を満たすような,βは存在する.

C) 図 6.1 について

まずπ𝑂= π𝑀𝑂となるような,βを求める.ここでB = 1

(1−𝛽)𝐼とおくと,β > 0より,

π𝑂= π𝑀𝑂⟺ (𝐵 + 𝑎 −2

𝜃) (𝐵 − 5𝑎 −2 𝜃) = 0

∴ 1

(1 − 𝛽)𝐼=2

𝜃− 𝑎, 1

(1 − 𝛽)𝐼= 5𝑎 +2 𝜃 を解くと,

123 β = 1 − 1

𝐼 (2 𝜃 − 𝑎)

≡ β̂, β = 1 − 1 𝐼 (5𝑎 +2

𝜃)

≡ β̆

したがって,5𝑎 +2

𝜃>2

𝜃− 𝑎より,

β̂ < 1 − 1 𝐼 (5𝑎 +2

𝜃)

2 𝑎+𝜃1> 1

5𝑎+2𝜃であるから,

1 − 2

𝐼 (𝑎 +1 𝜃)

< β̆

が成立する.

次にπ𝑀𝑂= 0となるような,βを求める.β > 0より,β = 1 − 1

𝐼𝑎が求める解である.ここ で,(6.15)式の条件:𝑎 >𝜃1のとき,

1

𝐼𝑎< 2 𝐼 (𝑎 +1

𝜃)

∴ 1 − 2 𝐼 (𝑎 +1

𝜃)

< 1 − 1 𝐼𝑎 したがって,π𝑂, π𝑀𝑂の位置関係は,図 6.1 のようになる.

D) 最適投資水準の明示化 (i). FDI の投資水準

(6.6)式より,

𝑑 𝑑𝐼[1

9(𝑎 +1 𝜃−2

𝐼)

2

− 𝜀𝐼 − 𝑓] = 0 を解くと,

𝐼𝐷𝐹

= √√ 16

81𝜀2− (4𝑎𝜃 + 4 27𝜀𝜃 )

3

− 4 9𝜀

3

− √√ 16

81𝜀2− (4𝑎𝜃 + 4 27𝜀𝜃 )

3

+ 4 9𝜀

3

𝐼 =21

𝜃−𝑎のとき,独占下のFDIの利潤π𝑀𝐹は,

π𝑀𝐹 =1 4(𝑎 −1

𝐼)

2

− 𝜀𝐼 − 𝑓 より,投資の最適化条件,

𝑑 𝑑𝐼[1

4(𝑎 −1 𝐼)

2

− 𝜀𝐼 − 𝑓] = 0 を解くと,最適解として,

124 𝐼𝑀𝐹 = √√ 1

16𝜀2− 𝑎3 216𝜀3− 1

4𝜀

3

− √√ 1

16𝜀2− 𝑎3 216𝜀3+ 1

4𝜀

3

が得られる.

(ii). 外部委託の投資水準

(6.10)式より,

𝑑 𝑑𝐼{𝛽

9[𝑎 +1

𝜃+ 1

(1 − 𝛽)𝐼] [𝑎 +1

𝜃− 2

(1 − 𝛽)𝐼] − ε𝐼 − 𝑓} = 0 を解くと,最適解として,

𝐼𝐷𝑂= √ 2𝛽

9𝜀(1 − 𝛽)2+ √ 4𝛽2

81𝜀2(1 − 𝛽)4− ( 𝑎𝛽(1 + 𝜃) 27𝜀𝜃(1 − 𝛽))

3 3

+ √ 2𝛽

9𝜀(1 − 𝛽)2− √ 4𝛽2

81𝜀2(1 − 𝛽)4− ( 𝑎𝛽(1 + 𝜃) 27𝜀𝜃(1 − 𝛽))

3 3

が得られる.

一方(6.16)式より,独占下の外部委託の投資の最適化条件,

𝑑 𝑑𝐼{𝛽

4[𝑎2− ( 1 (1 − 𝛽)𝐼)

2

] − ε𝐼 − 𝑓} = 0 を解くと,最適解として,

𝐼𝑀𝑂= √ 𝛽 2𝜀(1 − 𝛽)2

3

が得られる.𝐼𝐷𝑂と𝐼𝑀𝑂の𝛽 ∈ (0,1)に関する偏微分は,

𝜕𝐼𝐷𝑂

𝜕𝛽 > 0, 𝜕𝐼𝑀𝑂

𝜕𝛽 > 0

となるので,𝐼𝐷𝑂と𝐼𝑀𝑂は,𝛽に関する増加関数であることが分かる.したがって,MNE の交渉配分の増加は事前の投資水準を増加させる.

E) 利潤と交渉配分の関係

投資は交渉配分の増加関数である.最適投資は,𝛽 ∈ (0,1)に関して(下に)凸関数で あるので,

𝐼 − (1 − 𝛽)𝜕𝐼

𝜕𝛽> 0

が成立する.交渉配分の増加が及ぼす複占利潤への影響は,

125

𝜕π𝐹

𝜕𝛽 = (𝑎 +1

𝜃 − 2

𝐼(1 − 𝛽)) (𝑎 +1 𝜃 +

1 𝐼(1 − 𝛽))

⏟ 9

+

+

𝛽 (𝑎 +1 𝜃 −

2

𝐼(1 − 𝛽)) (𝐼 − (1 − 𝛽)𝜕𝐼

𝜕𝛽) 9𝐼2(1 − β)2

+

2𝛽 (𝑎 +1 𝜃 +

1

𝐼(1 − 𝛽)) (𝐼 − (1 − 𝛽)𝜕𝐼

𝜕𝛽) 9𝐼2(1 − β)2

等式の右の第一項は,収益配分の増加による直接効果であり,第二項は,収益配分の増 加に反応して起こるライバル企業の生産量の減少によるプラスの戦略効果である.第三 項はサプライヤーの収益配分の減少から生じるマイナスの戦略効果である.

一方,交渉配分の増加が及ぼす独占利潤への影響は,

𝜕π𝑀𝑂

𝜕𝛽 =1

4[𝑎2− 1 𝐼2(1 − β)2]

+

𝛽 (𝐼 − (1 − 𝛽)𝜕𝐼

𝜕𝛽) 2𝐼2(1 − β)3

< 0

𝜃の値が小さいとき,𝛽の増加が及ぼす利潤へ負の影響は,複占市場よりも独占市場にお いて大きく働く.逆に,𝜃の値が大きいとき,𝛽の増加が及ぼす利潤へ負の影響は,独占 市場よりも複占市場において大きく働く.

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