• 検索結果がありません。

モデル

ドキュメント内 多国籍企業の所有権構造と参入戦略 (ページ 156-159)

第 8 章 企業の参入形態と輸出補助金

8.2 モデル

本章での企業とは,潜在的な輸出志向型の企業を想定している.それらは主に自動車 産業等,いわゆる輸出企業である.以下では,差別化された最終財の市場規模を所与と した上で,次の二種類の市場参入形態を考える.

A) 国内向け最終財(=国内財)のみを生産する.

B) 国内向け最終財に加えて,第三国向け最終財(=輸出財)を生産する.

自国企業は,上記の二つの参入形態の選択をする.自国の輸出企業は,自国政府によ る生産補助金(輸出補助金)による供与を受け,第三国市場に財を供給する.同様に,

外国のライバル企業も第三国市場への参入形態選択の意思決定を行う.その際,自国企 業と同様に,外国政府による輸出補助金の措置を受けることを想定する.ただし,外国 企業に関しては,モデルの簡略化のためにライバル国内市場を捨象する.

148

図8.1:モデルのイメージ

自国と第三国からなる世界の代表的な消費者の効用関数を,

𝑢 = (∫ 𝑌(𝑖)𝛼

𝑁

0

𝑑𝑖)

1 𝛼

where 𝑌(𝑖) = y(𝑖) + 𝑦(𝑖) (8.1) と定義する.ここで,𝑌(𝑖)は,第iバラエティ財の消費量である.𝑌(𝑖)は自国と外国(自 国のライバル国)で,生産されており,y(𝑖)は自国企業が,𝑦(𝑖)は外国のライバル企業 が,それぞれ生産したバラエティ財の消費量を意味する.Nは自国のバラエティ財の数 を意味する.また,α > 0は差別化の度合を表している.

消費の制約条件を考えると,次のようになる.

∫ 𝑌(𝑖)𝑝(𝑖)𝑑𝑖

𝑁

0

= 𝐸 (8.2)

ここで,𝑝(𝑖)は,第iバラエティ財の価格を意味し,Eは第三国のバラエティ財への総支

出を意味する.(8.2)の制約下で,(8.1)の効用最大化問題を解くと,以下の通り,第i 差別化財の需要関数は,

𝑌(𝑖) = 𝐴𝑝(𝑖)−𝜀 となる.(8.1)より,

𝑦(𝑖) + 𝑦(𝑖) = 𝐴𝑝(𝑖)−𝜀 (8.3)

となる.代替の弾力性εは,次のようになる.ε = 1

1−𝛼> 0

ここで,𝛼 ∈ (0, 1)は差別化の度合を表す.また,バラエティ財の第三国における市場 規模を,

A ≡ 𝐸

∫ 𝑝(𝑖)0𝑁 1−𝜀𝑑𝑖 (8.4)

と定義する.

更に価格指数Pを 自国企業

外国企業

第三国市 輸出

輸出 国内向け生産

149 𝑃 ≡ (∫ 𝑝(𝑖)1−𝜀𝑑𝑖

𝑁

0

)

1 1−𝜀

と定義する.(8.4)式の分母は𝑃1−𝜀と等しく,集計的な最終財価格を意味する.

次に自国企業の生産に関する条件121を想定する.自国企業は,中間財x(𝑖)の 1 単位の 投入により,最終財𝑦(𝑖)をθ > 0単位生産できるものとすると,生産関数は,

𝑦(𝑖)=𝜃𝑥(𝑖)

と表わされる.また,1単位の中間財x(𝑖)は自国の労働で1単位生産されると仮定する.

このとき,自国の賃金率をw > 1とする.ここで,θ > 0は生産性水準を表す変数であり,

分布関数G(θ)に従う122と仮定する.

第三国への輸出では,自国で生産された中間財を第三国に輸送した後,第三国で最終 財の生産が行われる.最終財の生産は中間財の組立を意味する.最終財の現地生産は,

現地の労働力を投入して行われる.第三国の賃金率を1と仮定する.

中間財の輸出に際して,氷解型輸送費τ ∈ (0, 1](=iceberg trade cost)を想定する.

ここでτ=0は自由貿易を意味する.自国政府は,自国企業の生産性の情報を得た後,国 内の輸出企業に中間財 1 単位あたり𝑡 ∈ (0, 1)単位の補助金を供与するものとする。本章 では,この補助金は輸出補助金であり,中間財の生産時点で自国企業に供与される生産 補助金を想定していない.国内と海外(第三国)の市場参入において,企業は,それぞ れ参入固定費:𝑓𝑑> 0, 𝑓𝑒> 0を負担すると仮定する.その際,国内市場の参入固定費よ りも海外市場の参入固定費は大きいと仮定する.

0 < 𝑓𝑑< 𝑓𝑒

最終財の生産には,中間財の生産費用とその組立費用が掛かるものとする.中間財の 生産1単位あたり,1単位の労働を必要とする.また組立費用として,中間財1単位あ

たり, r > 0単位の労働力を必要と仮定する.故に,自国での生産において,最終財1単

位当たりの生産の限界費用𝑐𝑑は,

121 後述する通り,外国のライバル企業の生産に関するパラメータ表記は,アスタリスク(*)を添字 で示して自国企業のものと区別する.

122 分布関数G(θ)は,Helpman, Melitz, and Yeaple (2004)では,次のパレート分布が想定されてい る.本章でも同様の確率分布を想定する.

𝐺(𝜃) = ∫ 𝑔(𝜃)𝜃 = 1 − (𝑎 𝜃)𝑧,

𝜃

𝑎

(𝜃 ≥ 𝑎 > 0)

G(θ)を微分すると確率密度関数𝑔(𝜃):

𝑔(𝜃) = 𝑧 𝑎𝑧 𝜃+1

を得る.ここで,𝑎 > 0は,生産性水準の下限値を意味する.𝑧 > 0は生産性の散らばり具合を意味し,

生産性の分散が大きいほど小さい.𝑧を生産性の異質度合を表す指標と見なすことが出来る.

150 𝑐𝑑 =𝑤(1 + 𝑟)

𝜃

となる.一方,第三国への輸出では,中間財が自国で生産,輸出された後,それが現地 で組み立てられる.その際,組立費用として,中間財1単位あたり r > 0単位の現地の労 働力を必要と仮定する.したがって,輸出の限界費用𝑐𝑒は,政府の補助金,輸送費用,

および第三国の賃金率(=1)を考慮すると,次のようになる.

𝑐𝑒=1 − 𝑡 𝜏 (𝑤 + 𝑟

𝜃 ) 最後に,意思決定の流れを整理する。

第1段階では,生産性水準が確率的に決定する.第2段階では,生産性水準に基づい て,政府が輸出企業に輸出補助金を供与する.第3段階では,各企業の参入形態123が選 択される。そして,第 4 段階で,自国市場での価格と利潤が決定し,第三国市場では,

自国企業とライバル国企業とのクールノー競争を通して,格企業の価格と利潤が決定す ることになる。ただし,第4段階における自国企業とライバル国企業との競争は同時に 起こることを想定している.

ドキュメント内 多国籍企業の所有権構造と参入戦略 (ページ 156-159)