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モデル

ドキュメント内 多国籍企業の所有権構造と参入戦略 (ページ 113-116)

第 6 章 企業の戦略的参入形態

6.2 モデル

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本章のモデル設定の下では,外部委託の事後的な収益配分は,ライバル企業の生産性 を通して,事前のコスト削減投資の水準に影響を及ぼす.したがって,事前のコスト削 減投資の水準は外部委託が選択されるような事後的な交渉配分の境界値に影響を及ぼす ことになる.

不完備契約の下ではサプライヤーは本社企業(MNE)の収益配分が増加すると,中間 財生産のインセンティブが低下するため,MNE は交渉配分をある程度小さくする必要 がある.過度な交渉配分の増加は,中間財の生産減少を招く.更に,市場占有率(マー ケットシェア)の低下を通して,MNEの利潤を減少させるからである.

本章の主要結果として,市場規模が小さく,ライバル企業の生産性が小さい[大きい]

場合,市場の複占化[独占化]が実現し,独占市場[複占市場]の場合よりも小さな[大きな]

交渉配分で外部委託が選択されること.また,交渉配分が大きな本社企業は,サプライ ヤーの過少な中間財生産に備えて,事前の投資を大きくする結果,市場の独占化が促進 されることが示される.

最後に本章の構成を述べる.6.2節ではモデル設定に関する詳細が述べられる.6.3節 では,ゲームの各段階を踏まえて,逆向き推論法により,参入形態の違いに応じて,価 格および生産量,投資水準,利潤が導出される.6.4節では,外部委託での参入の条件が 述べられる.6.5節と6.6節では,MNEの最適参入形態が吟味される.そして,最終節 では本章のまとめが述べられる.

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A) FDI:本社企業(=MNE)の指示の下で,現地完全子会社を生産拠点として,本社企 業のカスタイマイズ投資が行われた後,中間財から最終財までの生産が集権的に行 われる.

B) 外部委託:本社企業のカスタイマイズ投資が行われた後,中間財生産は現地サプラ イヤーに外部委託される.外部委託契約は不完備契約87である.

手続きの流れは次の通りである.まず本社企業が中間財に必要な仕様書を,現地の部 品サプライヤーに手渡す.サプライヤーは仕様書に基づき,カスタマイズ化された関係 特殊な中間財(=relation specific inputs)を,中間財1単位あたり1単位の現地の労働 投入により生産する.その後,本社企業の指示の下で,中間財は現地完全子会社で最終 財に仕上げられる.最終的に両契約当事者は,現地市場での販売収入(=営業利益)を 事後的な交渉配分88に応じて分配する.残余財産(=中間財)の所有権は委託企業に帰 属する.そのため,外部委託契約が不成立の場合,サプライヤーの収入はゼロとなり,

中間財の生産費用とカスタマイズ投資は回収不可能なサンク・コストになり,契約当事 者の利潤はゼロ以下になる89.交渉段階での契約締結に対する判断材料は,両当事者の 収入配分のみである.それ以外の取り決め90を契約事項に盛り込むことは出来ないもの と仮定する.

6.2.3 生産構造

最終財需要に関して,次の逆需要関数を想定する.

𝑝 = 𝑎 − (𝑦𝐴+ 𝑦𝐵)

ここで,𝑝 > 0は最終財価格,𝑎 > 0は市場規模であり正のパラメータ,𝑦𝐴は自国財の生産 量,𝑦𝐵は外国財の生産量をそれぞれ意味する.

各参入企業は,1単位の中間財の生産を,1単位の現地の労働投入のみで生産し,現地 の賃金率は1である.

ライバル企業は 1 単位の中間財から 1 単位の最終財の生産を行うことができるとし,

その生産関数を,

𝑦𝐵= 𝜃𝑥𝐵 (𝜃 > 0)

とする.ここで,𝑥𝐵は中間財の生産量を意味する.1単位の最終財の生産には, 1 𝜃⁄ 単位 の中間財を必要とする.𝜃は,MNEの生産性の高さを表すパラメータである.中間財の

87 不完備契約の詳細はGrossman and Oliver Hart (1986)及びHart and Moore (1990)を参照せ よ.

88 ここでの交渉配分は,一般に,事業提携(joint venture)における特許の使用権配分や出資比率 等を意味する.

89 契約が決裂すると,委託元の本社企業は十分な時間がないため,中間財を自社で作ることが出来 ないものとする.

90 例えば,特定の価格や品質について取引相手が契約違反をしたときの罰則等の取り決めがある.

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生産の際,ライバル企業には事前の投資を仮定しない.利潤(営業利益)π𝐵は,

𝜋𝐵= 𝑝𝑦𝐵− 𝑥𝐵 となる.一方,MNEの生産関数を,

𝑦𝐴= 𝐼𝑥𝐴

とする.ここで,𝑥𝐴は中間財の生産量を意味する.𝐼 > 0は中間財のカスタマイズ投資で あり,1単位の最終財の生産には, 1 𝐼⁄ 単位の労働投入を必要とする.

6.2.4 意思決定のタイミング91

ここで,MNEの参入の意思決定のタイミングを以下に示す.

第1段階 参入の固定費を負担し,参入形態の選択が行われる.

第2段階 カスタマイズ投資水準が決定される.

第3段階 FDIが選ばれると,本社子会社で中間財生産が行われる.外部委託が選ばれ ると,サプライヤーにより中間財の生産量が決定する.

第4段階 サプライヤー間で,最終財販売による総収入に関して,配分率(bargaining weight)の交渉が行われ,契約当事者間の収入配分が実現する.この時点で は,中間財の生産費用と投資費用は既にサンクされている.

第5段階 最終財の生産と販売による利潤が確定する.

91 本章末付録「意思決定の流れ」を参照せよ.尚,自国企業と外国企業の市場参入は同時に起こる ものとする.

107 図 6.1

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