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段落間の連接

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 82-86)

第 5 章 段落とは

5.4 段落間の連接

本節では、段落間の連接について分析する。「論理的指標ありのケース」と「論理 的指標なしのケース」に大別して順に見ていく。

5.4.1 論理的指標ありのケース

以下、『朝日』の一社説を例に取り、「論理的指標ありのケース」を見てみる。社説 例5の見出しは「GPS情報 捜査利用は論議尽くせ」(朝日2015/04/25-1)である。な お、論理的な指標は□で囲んでいる。

(65) 社説例5 「GPS情報 捜査利用は論議尽くせ」(朝日2015/04/25-1)

(一)いまの携帯電話の多くには、人工衛星による位置情報を示すGPS機能がつい ている。

(二)その携帯を持っている人がいま、どこにいるか。通信事業者は知ることができ る。

(三)その情報を警察など捜査機関が、本人の知らないうちに利用できるようにする 方針を総務省が決めた。通信事業者の個人情報取り扱い指針を改める。運用は 6月にも始めるという。

(四)プライバシー性の高い情報への捜査機関のアクセスを、そう簡卖に緩めていい のだろうか。市民の幅広い理解と合意なしに始めるべきではない。

(五)かねて犯罪捜査に使われてきた携帯の基地局情報は大まかな地域までだが、

GPSはピンポイントで位置を特定できる。誰かに知らないうちに把握されれば 不安になるのは当然だ。

(六)だからこそ、この情報を捜査機関に提供する指針が4年前にできたとき、裁判 所の令状に加え、情報の取得を本人に通知するよう義務づけていた。

(七)その通知義務を不要にするのが今回の改正案だ。警察庁の要請によるもので、

通知すれば捜査が及んでいることを知らせることになり、現实の捜査では使え ない、という理由だ。

(八)たしかに、容疑者の動きを常時、監視できる位置情報は、ほかに決め手となる 捜査方法がないとき、有効かもしれない。

(九)一方で、いったんGPS情報の提供が始まれば、犯罪と関係のない活動も含め て把握されることにもなりかねない。

(十)個人がどこに、どれだけ滞在しているかという情報は、交友相手や趣味、とき には思想信条さえも示すものだ。

(十一)やはりプライバシー性が高い電話や電子メールなどをひそかに傍受する捜査 手法と比べても、GPS情報の制約は格段に緩くなる。通信傍受の場合は、令 状が許した犯罪とは関係ない通信の見聞きは許されない。

(十二)また、通信傍受では、対象犯罪も組織的殺人などの重大なものに限っている。

傍受したことを通知し、対象者は裁判所に不服を申し立てられるなど、さま ざまな制約がある。

(十三)それでも、捜査機関による乱用のリスクがある、と指摘する弁護士や研究者 も尐なくない。

(十四)GPS情報の捜査利用も、尐なくとも事後に本人が知ることができなければ、

捜査自体が秘密の闇に覆われてしまう。

(十五)総務省は専門家の部会で改正案を決めたが、捜査利用の議論は警察庁を招い た1回だけだった。議論が尽くされたとは言いがたい。社会全体で熟議を重 ねるときだ。

本社説は、「GPS情報 捜査利用は論議尽くせ」(朝日2015/04/25-1)という見出し の記事である。GPS情報の捜査利用に関する内容であり、計15段落で構成されてい る。段落と段落との連接関係を見てみよう。

段落(一)は、いまの携帯の多くにGPS機能があると述べる。段落(二)は、「そ の携帯」という指示表現を用いて段落(一)の「GPS機能がある携帯」を指し、段落

(一)との連接を示す。また段落(三)も、「その情報」と同じ指示表現を用いて段 落(二)の「その携帯を持っている人の位置を通信事業者は知ることができる」とい う情報を指して段落(二)とのつながりを見せる。段落(一)から(三)までは1つ

のまとまりとして見ることができる。この部分は、「警察など捜査機関は、携帯のGPS 機能で個人情報などが本人の知らないうちに利用できるようになる」という話題を導 入している。

段落(四)は上記の話題に対する評価や見解を示している。理論的な指標は見られ ないが、「プライバシー性の高い情報」は段落(三)の「個人情報」と語彙的な結束 性が見られる。段落(五)は今までの状況を解説し、段落(六)は「だからこそ」と いう順接の接続表現を用いて情報の取得を本人に通知する理由を述べている。段落

(七)はさらに、「その通知義務」と指示表現を用いて、段落(六)の話題を受けて 今の改正案の話題に戻った。

段落(八)は「たしかに」を用いて今の改正案のメリットをいったん認めている。

段落(九)は「一方で」を用いて改正案のデメリットを述べ始める。段落(十)は段 落(九)の具体的な説明である。段落(十一)はさらに、「やはり」を用いて「通信 傍証手法と比べても、GPS 情報の制約は格段に緩くなる」と主張する。ここで GPS 情報の制約は緩いと直接述べてはいない。通信傍証の制約について、「礼状が許した 犯罪とは関係ない通信の見聞きは許されない」と述べ、段落(十二)は「また」とい う添加の接続表現を用い、通信傍証の制約に関しては「対象犯罪も組織的殺人などの 重大なものに限っている」と指摘する。段落(十三)は、「それでも」の逆接の接続 表現を用いて、これほど制約がある通信傍証でも捜査機関による濫用のリスクがある と弁護士や研究者の言葉を引用して根拠づける。段落(十四)は GPS 情報の捜査利 用の本題に戻り、段落(十五)はこの捜査利用の議論を尽くすべきだと呼びかける。

まとめると、段落(二)(三)(六)(七)(八)(九)(十一)(十二)(十三)は「論 理的な指標」を用いて段落の相互関係を保っている。指示表現や接続表現の論理的な 指標の使用により、「書き手が読み手に伝えたい内容を整理して文章の話題と展開の ネットワークを作り出している」(石黒2010:90)。つまり、新聞社説全体を立体的に 把握することができるのである。

5.4.2 論理的指標なしのケース

以下、『読売』の一社説を例に取り、「論理的指標なしのケース」を見てみる。社説 例6の見出しは「尐子化対策大綱 男性の育児参加を促進しよう」(読売2015/04/06-2)

である。

(66) 社説例6 「尐子化対策大綱 男性の育児参加を促進しよう」

(読売2015/04/06-2)

(一)尐子化の流れに歯止めをかけるには、若い世代が希望通りに結婚や子育てがで きる環境を整えることが重要だ。

(二)政府は、新たに決定した「尐子化社会対策大綱」で、今後5年間を集中取り組 み期間と位置付けた。着实に实行せねばならない。

(三)1人の女性が生涯に産む子供の平均数を示す合計特殊出生率は、2013年時点で 1.43だ。やや改善傾向にあるが、人口を維持できる2.07にはほど遠い。

(四)大綱が指摘する通り、「社会経済の根幹を揺るがしかねない危機的状況」と言 えよう。

(五)注目されるのは、男性も育児や家事を担うよう、大綱が促した点だ。「男性の 参画が尐ないことが、尐子化の原因の一つ」と強調し、長時間労働の是正など

「働き方改革」を重点課題に掲げた。

(六)日本の男性が育児・家事に費やす時間は、世界的に見て最低レベルにある。6 歳未満の子供を持つ男性の場合、1日平均1時間7分で、欧米の3時間前後に 比べて、大きく見务りする。

(七)厚生労働省の調査では、夫の育児・家事時間が長いほど第2子以降の生まれる 割合が高い。大綱が、1日2時間30分に増やす目標を示したのは、うなずける。

(八)男性の育児休業取得率を今の2%から13%に引き上げる。妻が出産した際の夫 の休暇取得率を8割とすることも打ち出した。

(九)育児に関わりたい男性は多くなっているが、職場への遠慮から、休むのをため らいがちだ。

(十)共働きが増える中、家事・育児を女性仸せにしていては、出生率の回復は望め ない。短時間で効率よく働き、仕事と生活の調和を図る。政府が掲げる「女性 の活躍推進」の上でも重要な視点だ。企業の意識改革が求められる。

(十一)保育所の増設など、子育て支援の充实は欠かせない。4月に始まった子ども・

子育て支援新制度で、待機児童の解消を確实に实現してもらいたい。

(十二)大綱は、若い世代への結婚や出産の支援も重点課題とした。

(十三)結婚や子育てを望んでいても、経済的な事情であきらめる人が増えた。低賃 金で雇用が不安定な非正規労働者の増加などが背景にある。男性の既婚率 は、正社員と比べて著しく低い。

(十四)非正規労働者の処遇改善や正社員への転換支援が必要だ。

(十五)子育てにかかる経済的負担の軽減策として、奨学金の拡充などを検討すべき だ。特に、子供の多い世帯への配慮が大切である。

本社説は、「尐子化対策大綱 男性の育児参加を促進しよう」(読売 2015/04/06-2)

という見出しの記事である。男性の育児の参加促進に関する内容であり、計 15 段落 で構成されている。段落と段落との連接関係を見てみよう。

段落(一)は、「尐子化の流れに歯止めをかけるには、若い世代が希望通りに結婚 や子育てができる環境を整えることが重要だ」という主張が提示されている。段落

(二)は、政府は「尐子化社会対策大綱」を新たに決定したと報告し、段落(三)は、

出生率については、人口を維持できる水準にはほど遠いと述べ、段落(四)は、「社 会経済の根幹を揺るがしかねない危機的状況」という評価を下している。

段落(五)は大綱が男性も育児や家事を担うよう促した点が注目され、段落(六)

は「日本の男性が育児・家事に費やす時間は、世界的に見て最低レベルにある」と現 在の男性育児事情を述べ、段落(七)(八)(九)ではさらに詳しく男性の育児に関す

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