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まとめ

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 155-159)

第 8 章 冒頭文・末尾文について

8.8 まとめ

本章では日本語と中国語の新聞社説における冒頭文、末尾文を取り上げ、冒頭文・

末尾文の機能、表現、呼応状況及び見出しとの関連性について分析を行った。以下に その結果から明らかになった点をまとめる。

1) 冒頭文に関して、日本語の新聞社説では、機能から見ると、「事实提示」以外に

「意見提示」も多く観察された。表現から見ると、「実体的表現」以外に「主体 的表現」と「伝達的表現」も用いられていた。主に「主体的表現」の「断定」や

「伝達的表現」の「質問・反問」の形式が冒頭で見られた。それに対し、中国語 の冒頭文はほとんど「事实提示」から書き出すことが分かった。表現から見ると、

出来事や話題を陳述する「变述」、引用文や時事問題を提示する「伝聞」が多い。

中国語の新聞社説、特に冒頭部分は、報道記事の特徴が見られる。「据报道(報 道によると)」といった表現を用いて、現在話題になっていることや関連したニ ュースを提示する。

2) 末尾文に関しては、日中両言語の新聞社説ともに、末尾文の機能は「意見提示」

のみであった。社説というジャンルから、最後に書き手の論点や主張をまとめ強 調して提示すると考えられる。しかし、末尾文の表現に関しては、日中両言語に 差異が見られた。日本語では「主体的表現」以外に、「伝達的表現」も多かった。

中国語の末尾文でほとんど見られなかった「要求」「禁止」といった「伝達表現」

が日本語では用いられていた。中国語の末尾文は主に「主体的表現」の表現を取 っている。そのうち日本語の末尾文では見られない「非現实的表現」が好んで用 いられていた。

3) 冒頭文・末尾文の呼応状況に関しては、3 つのタイプが観察された。(A)冒頭文

(事实提示)、末尾文(意見提示)、(B)冒頭文(意見提示)、末尾文(意見提示)、

(C)冒頭文(問い掛け)、末尾文(応答)である。日中両言語の相違点として、

日本語の新聞社説は(A)(B)(C)の3タイプすべて見られたのに対し、中国語 の新聞社説はタイプ(A)(C)は観察されるが、タイプ(B)「冒頭文(意見提示)、

末尾文(意見提示)」、つまり冒頭文は書き手の意見や見解を提示し、末尾文はそ の主張を繰り返して強調する、というものは見られなかった。

4) 冒頭文・末尾文と見出しとの関連性については、見出しは(b)「末尾文に明示さ れるもの」と(d)「冒頭文にも末尾文にも明示されないもの」が最も多く、(a)

「冒頭文に明示されるもの」と(c)「冒頭文にも末尾文にも明示されるもの」は 非常に尐ないことが分かった。新聞社説の見出しは「意見提示」に関する表現が 多いため、見出しは(b)「末尾文に明示されるもの」が多いことが考えられる。

また、見出しに(d)「冒頭文にも末尾文にも明示されないもの」が多く観察され た理由として、末尾文の直前(特に文章の8割進んだ箇所)に明示されることが 多いことが挙げられる。

5) 日本語の新聞社説の見出しは二つの部分からなっている。前半は話題で、後半は それについての意見や見解のパターンが多い。見出しの前半部分は冒頭文で話題 を提示し、後半部分は末尾文で意見や見解を述べ、前半部分と呼応させる。

新聞社説のように固い素材また紙面の制限のある中で、なるべく読み手の興味を惹 き付けるために、日本語では冒頭重視型で、中国語では末尾重視型で工夫が施されて いると言える。

【第Ⅲ部 新聞社説におけるミクロ構造の日中対照研究】

第Ⅲ部では、新聞社説におけるミクロ構造、主に文の相互関係に注目して論を進め る。国語学の文章論では、文の相互関係について、永野(1986)は「連接関係を示す 言語形式」と呼び、また市川(1978)は文脈展開の形態を表す「文をつなぐ形式」と して扱っている。具体的には、永野(1986)は、隣り合った二個の文の連続の関係を 連接関係と定義し、連接関係を示す言語形式として「接続語句」、「指示語」、「助詞・

助動詞」、「同語反復・言い換え」、「応答詞」などを挙げている。また市川(1978)は、

文脈展開の形態を「文をつなぐ形式」と呼び、(a)「前後の文(あるいは節)相互を 直接、論理的に関係づける形式」、(b)「前文(あるいは前節)の内容を、後文(後節)

の中に持ち込んで、前後を内容的に関係づける形式」、(c)「その他の形式」に分類し ている。

一方、テクスト言語学では、主に「結束性(cohesion)」が研究されてきた。結束性 の先駆的な研究であるHalliday and Hasanは、結束性が文法的卖位を超えた意味的ま とまりの概念であること及びその概念を言語的に表出する手段として、(a)指示

(reference)、(b)省略(ellipsis)、(c)代用(substitution)、(d)接続(conjunction)

などの文法的手段と、(e)語彙的手段(lexical cohesion)があると提案している。こ のほか池上(1983)は、テクスト性を支える構造的な一要因として「結束性(cohesion)」

を 挙 げ 、 典 型 的 に は 文 と 文 の 間 の 続 き 具 合 の 問 題 で 、 狭 義 の 「 微 視 的 構 造

(microstructure)」に関するものであると述べ、「指示」、「接続詞」、「置換・省略」、「語 彙的手段による結束性」などの文法的・語彙的手段を有しているとした。

中国語における文の相互関係については、中国語の説明文における文と段落の連 接・連鎖を論じた鄭(2000)や、中国語における関連語のない複文の連接を考察した 大河内(1986)などが挙げられる。また結束性の日中対照研究に、日中エピソード文 における結束性(主題の展開)の研究としては林(2003)及びパラグラフの統一性を 中心に日中のテクストの結束性について分析した于(2011)がある。日中両言語にお ける結束性の対照研究については、上述の主題の展開やパラグラフの統一性からの研 究が見られるが、結束性の体系的で総合的な分析は管見の限り無いようである。

Halliday and Hasanは英語を分析対象としているため、日本語と中国語を比較対照す

るのに、そのままの分類では対応できない点もあると考えられる。そこで、本論文は

Halliday and Hasan(1976)の「結束性(cohesion)」を主な枞組みとしながらも、国語

学の文章論の立場から文の連接関係を提案した永野(1986)、市川(1978)、寺村他[編]

(1990)の観点も援用する。Halliday and Hasan(1976)による結束性の分析観点の各 項目の→印の横に、日本語の文章・談話論における用語(寺村他[編]1990)と市川

(1978)の「文の連接関係の類型」を記した(佐久間2002:158)。

(Ⅰ)指示(reference) →指示表現

(Ⅱ)代用(substitution) →反復表現

(Ⅲ)省略(ellipsis) →省略表現

(Ⅳ)接続(conjunction) →接続表現

(Ⅴ)語彙的結束性(lexical cohesion) →反復表現

(佐久間2002:159)

以上の先行研究を踏まえ、本論文は、ミクロ構造の形態指標を(a)「指示表現」、(b)

「接続表現」、(c)「反復表現」、(d)「省略表現」の四つの形態的指標に絞って分析を 進める66。日中両言語の新聞社説において、それぞれどのような相違点が見られるの か、について検討する。以下順に分析していく。

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