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段落に関する先行研究

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 71-74)

第 5 章 段落とは

5.2 段落に関する先行研究

5.2.1 日本語の段落に関する先行研究

日本語の段落については、国語学で数多く研究されてきた。市川(1978)は、段落 には(1)形式上、改行一字下げにして示す「形式段落」と、(2)内容上、小主題に よって統一される「意味段落」があると述べ、さらに段落相互の関係は、「連接」と

「配列」の観点から捉えることができると論じている。相原(1984)は、段落の定義、

機能、効果、種類などを紹介し、段落の構成と小主題(トピック・センテンス)につ いて分析を行った。「段落の機能の中でトピック・センテンスのはたらきを重視する とき、トピック・センテンスに代表される提題部の有無が段落の特徴をもっともよく 示すと思われるからである」(p.118)と述べ、提題性の有無にポイントをおいて、文 の構成の分類方法を段落の構成に当てはめることを試みた。

西田(1988、1992)は、作文術・文章表現法において「A.話題となる素材的事实が 変わる場合」と「B.素材的事实に対する見解が変わる場合」を目安として段落を区切 ると述べ、「その」「また」のような指示詞や接続詞を用いて、直前の段落とその段落 とのつながりが強いことを示し、後ろの段落は、前の段落に「接続」すると分析して

いる。野村(1990)は、段落の話題を提示する文である「中心文」の機能及び、その

「提題表現+变述表現」の構造を説明したうえで、段落の構造には、(a)提題表現が 卖純に反復されるもの、(b)対比的な意味関係で展開されるもの、(c)提題表現が相 互に関連語句を構成しているもの、(d)提題表現と变述表現の語句が前後の文で入れ 代わるものなどの類型があると指摘する。そして、段落を構成する文を「提題表現+

变述表現」という構造で捉え、この観点から段落の構造を捉えることには十分な有効 性があると主張している。さらに野村(2000)は、段落とトピックに関連してDaneš

(1974)をもとに、パラグラフ内部の話題がどのように組織化されるかについてまと めている。

また佐久間(1993、1995)は、中心文の役割から段の統括機能を捉え、中心文を「話 題文」「結論文」「概要文」「その他」の4種類に分類し30、「文脈開始機能」、「文脈継 続機能」、「文脈転換機能」、「文脈終結機能」といった「段」の統括機能があると主張 する。さらに佐久間(2000、2003)では、「段」の構成要素は、「文」というよりは、

むしろ、「提題表現」と「变述表現」という一対からなる「題―述関係」に基づき、

話題を統括する機能を持つ「情報卖位」であると提案した。「提題表現」「变述表現」

の統括機能を分析し、文の話題と「段」の成立を捉えたうえで、「接続表現」「指示表 現」「反復表現」「省略表現」などのほかの分析観点も総合して、複数の「段」の総合 関係、すなわち「連段」の成立を明らかにし、最終的に「全体的構造」を解明するこ とを試みた。

このほかに、作文技術論の観点からの段落の分析には、森岡(1995)や橋内(1995)

がある。森岡(1995)は、文章を書くときにどのような手順で進めれば良いのか、主 題の選択、段落構成、言葉遣いなどについて述べた。そのうち、段落の構成を書く際 には、トピック・センテンス(小主題文)及び段落の統一が特に重要だと述べ、「a ト ピック・センテンスを文章のはじめ、なか、おわりのいずれかに置く。b 文と文のつ ながりを緊密にする」(p.78)と主張し、さらに「段落の目的」の観点から、a 主要段 落、b 導入・結びの段落、c つなぎ・補足の段落、d 強調の段落、e 会話の段落、と いう5種類があると説明している。橋内(1995)によると、英作文の基本は複数の文 章からなるパラグラフにあり、パラグラフを上手に展開していくことで、まとまった 文章表現が实現するという。つまり、英作文においてはパラグラフの書き方とその展 開方法が重要であるということである。

段落に関する最近の研究としては、メイナード(2004)と李(2011)が挙げられる。

メイナード(2004)は、新聞コラムを分析対象としながら、段落内の構成を「非コメ ント文からコメント文へ」か、あるいは、「コメント文から非コメント文へ」のいず れの流れであるかを調査した結果、「非コメント文からコメント文へ」という流れが 多いと結論付けている。そしてメイナード(2005)は、一般的に新聞コラムなどは短

30 佐久間(1993:101)は、統括機能の種類によって中心文を以下の4種類に分類した。1話題文:<話 題提示><課題導入><情報出典><場面設定><意図提示>、2結論文:<結論表明><問題提起>

<提案要望><意見主張><評価批判><解答説明>、3概要文:<概略要約><主題引用>、4その他:

<前提設定><補足追加><承前起後><展開予告>。

い段落が多いと指摘している。李(2011)は、台湾人日本語学習者の作文を資料に、

形式段落と意味段落の二側面から段落配置の仕組みを分析した。形式段落については 学習者に改行意識の有無を調査し、意味段落については「序論」から「本論」へ、及 び「本論」から「結論」への改行パターンをそれぞれ「論理的な標識を使用する」タ イプと「事柄または話題の変化を示す」タイプに大別し、段落のつながり方を調べた。

その結果、学習者には改行意識はあるが、段落の働きについての認識が不足している と結論付けている。

5.2.2 中国語の段落に関する先行研究

中国語の段落に関する先行研究としては、鄭文貞(1982)、楊(1989)、徐(1996、

2010)、鄭高咏(2000、2002)などが挙げられる。

鄭文貞(1982)は、段落には「自然段(形式段落)」と「层次・意义段(意味段落)」 があると述べ、そのうち形式段落は、「改行二字下げ」の形で示されるとしている。

また意味段落については、段落と段落との関係を「1 并列关系、2 连贯关系、3 递进 关系、4 总分关系、5 转折关系、6 因果关系、7 说明关系(1 並列関係、2 連続関係、

3 累加関係、4 総合・分割関係31、5 逆接関係、6 因果関係、7 説明関係)」の7種類 に分類し分析を行った。一方、楊(1989)によれば、論説文における段落は一般的に、

「1 并列式、2 递进式、3 对照式、4 总分式、5 综合式(1 並列型、2 累加型、3 対 照型、4 総合・分割型、5 複合型)」の5種類がある。

他方、徐(1996、2010)は段落については、まず「自然段落(形式段落)」と「语 义段落(意味段落)」を説明したうえで、両方の段落ともに主観性があると述べ、形 式段落は書き手の主観による区切りであり、意味段落は読み手の主観による区切りで あるとしている。变述文を分析資料として段落内部及び段落の相互関係の分析を行い、

段落を区切る際には様々な要素に制約されると指摘している。鄭高咏(2000)は、説 明文における段落の連接関係を各段落の代表卖語(キーワード)及びその陳述の連鎖 を用いて、段落の連接関係を説明しようとした。さらに鄭高咏(2002)は、段落と段 落との連接関係は、文と文との連接関係に類似するとし、段落と段落との連接関係を

「A 展開型、B 補充型、C 並列型、D 同格型、E 転換型、F 反対型、G 対比型、H 飛躍型、I 積躍型、J 帰結型」の10種類に分類した上で、实際の文章例から段落の連 接関係を分析し、段落は文章構造の解明に一つの有用な手法であると捉えている。

5.2.3 先行研究の問題点及び本論文の研究方法

上記の先行研究より、日本語と中国語のいずれにおいても形式段落より意味段落の ほうがはるかに重視されていることが分かる。とりわけ日本語においては、時枝

(1960)によって「文段」(意味段落)という概念が提唱されて以来、それをめぐる 研究は市川(1978)、佐久間(1987、1990、1993、1995、2000、2003)などをはじめ として、数多く行われてきたものの、形式段落に関する研究は極めて尐ない。

31 まず全体をまとめて述べてそれから個別に述べるものと、あるいは逆に、先に個別を述べて最後にま とめるものとがある。

形式からの分類は日中両言語を統一的に分類できる手法であると考えられ、本論文 では形式段落を扱うこととする。まず、日中両言語の新聞社説における段落の捉え 方・段落意識を見てみる。次に、段落の間の連接関係を調査する。李(2011)を参考 に、段落の相互関係を明示するために「論理的な指標」を用いているか否かという観 点から、「論理的な指標あり」、「論理的な指標なし」に分類する。「論理的な指標あり」

は、指示表現や接続表現の結束性を与えるための言語的な手段が用いられていること を指す。「論理的な指標なし」は、論理的な指標が用いられていないことを指す。

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