第 3 章 本論文の理論的枞組み及び分析資料
3.2 分析資料
では「指示」「接続」「反復」「省略」といった形態的指標を手掛かりとする。マクロ 構造とミクロ構造の二つの側面から体系的な分析を行い、文章・テクスト構造の全体 像を捉える。総合的な考察として、日本語の新聞社説と中国語の新聞社説における文 章・テクスト構造を解明したうえで、日中両言語の社説のジャンルにおける特性を明 らかにする。
具体的には、日本語の『朝日新聞』『読売新聞』『西日本新聞』の新聞社説、中国語 の『新京報』『北京青年報』の各社説に加えて『朝日新聞』の対訳版を用いる。なお、
日本語の新聞社説は九州大学のデータベースより、中国語の新聞社説はデジタル版
(ネットで閲覧可能)よりそれぞれ収集した。
日本語の新聞社説は1日に2篇、中国語の新聞社説は1日に1篇の場合がほとんど のため、データ数を揃えるために、日本語の社説は2015年4月1日から4月30日の 1ケ月分、中国語の社説は2015年4月1日から5月31日の2ケ月分とした。詳細は 表4に示す通りである。
表4 分析資料の内訳
社説の言語 社説掲載の新聞名 期間 社説の篇数17 日本語
朝日新聞
2015.4.1~4.30
56
読売新聞 54
西日本新聞 48
中国語 新京報
2015.4.1~5.31 61
北京青年報 61
日中対訳 朝日新聞 2013.1~2015.10 22
ここで、各新聞社説の写真図を提示し、それぞれの特徴を紹介しておく。なお、以 下『朝日』『読売』『西日本』『新京報』『北青報』と略する。
図4『朝日新聞』 『読売新聞』 『西日本新聞』
17 『朝日』『読売』『西日本』から当初収集したのは、それぞれ58篇、57篇、51篇であったが、各社説 の分量を平均にするため、通常より非常に長いと見受けられるものは分析対象から外した。
図5『新京報』 『北京青年報』
図4はそれぞれ『朝日』、『読売』、『西日本』の社説である。日本語の新聞社説は「見 出し」と「本文」からなる。そのうち、見出しは2つの部分から構成されている。前 半部分は实線枞で囲まれ、活字は尐し小さくなっており、後半部分は尐し大きめの活 字が用いられている。
一方、図5は『新京報』と『北青報』の社説である。中国語の新聞社説は「見出し」
と「本文」以外に、「リード文」も見られる。見出しについては、2つの部分になって いるものと1つになっているものがあるが、1つのものがほとんどである。紙面では 本文より大きく太い活字が用いられている。またリード文に関しては、『新京報』は 見出しの下に配置されるのに対し、『北青報』は本文の間に挟まれて下線が付される 形になっている。
『朝日』と『読売』は日本の全国紙であり、『朝日』は詳しい解説が特徴であるの に対し、『読売』は全体的にバランスのとれた内容で、国際情勢から社会面まで、あ らゆるジャンルの情勢が均一に入手できるとされている18。また『西日本』は、「福岡 を中心にするブロック紙であるが、レイアウト、内容ともに五大紙に勝るとも务らな い内容であり、社説による行政、経済の解説はなかなか読み応えがある」(戸田1998:
41)とされている。
一方、中国語の新聞社説は、「社论」という。管見の限り、「社説」というコラムを 持っている新聞自体は非常に尐ないが、社説を持つものは、『人民日報』、『環球時報』
(人民日報の国際版)、『新京報』、『北京青年報』、『单方都市報』などが挙げられる。
そのうち、『人民日報』、『環球時報』(人民日報の国際版)はスローガンのようなもの が多いと思われることから、本論文における分析対象から外した。また、『单方都市 報』は「中国の広東省の大手メディアグループ・单方報業グループ傘下の大衆紙であ り、改革の先進地・広東省の気風を色濃く反映している」(雷2013:111)とされてい るように、地域や思想に偏る傾向があるため、分析対象からも外した。従って、本論 文で分析の対象としたのは『新京報』と『北京青年報』である。
『新京報』は、「北京でもっともページ数が多く、情報量が多い総合日報であり、
社説のある新聞の中で、購読と小売りを中心とし、一般市民に読まれているものであ
18 戸田(1998:16-18)を参照した。
る」(Lee・楊2013:80)19とされている。また『北京青年報』は、中国では人気の全 国総合日刊紙である。この二紙を選択したのは、それぞれが地域や思想に偏らない広 い範囲の購読者を持っていることによるものである。
なお、日本語の新聞社説と中国語の新聞社説には、次のような相違が見られる。詳 しい分析は、第4章で述べることにする。
(1) 日本語の新聞社説には、リード文が付いていないのに対し、中国語の新聞社 説には、リード文が付けられている。
(2) 日本語の新聞社説の段落数が、中国語の新聞社説に比べて多い。日本語の社 説は段落がこまめに多く区切られているのに対し、中国語の新聞社説は段落 が大きく尐なく区分されている。
19 Lee・楊(2013)は、さらに、「新京報」の社説の長さについて以下のように述べている。「「新京報」
の社説の長さをT-unitで測ったところ、29.4であり、この値はLee(2009)で分析対象とした「朝日新
聞」の31.1、New York Timesの30.9と比較可能なものであると判断した」(p.80)。この記述から分かる
ように、社説の長さにおいて「新京報」と「朝日新聞」の比較が可能である。またほかの新聞紙にも同 様なことが言える。
【第Ⅱ部 新聞社説におけるマクロ構造の日中対照研究】
第Ⅱ部では、新聞社説におけるマクロ構造、主に段落構成に焦点を当てて論を進め る。「ある文章を読んで理解するということも、何かについて文章を書くということ も、基本の作業は段落の理解と段落の組み立てにあるのではないか。読解も表現も結 局は段落に帰着する」と平井(1970:252)で指摘されているように、本論文も文章・
テクストを構成する最大の卖位である段落に注目してマクロ構造を解明する。
具体的には、「題材の配列」と「統括機能」の観点から分析を行う。前者では、文 章・テクストはどのような論理展開をなしているか、どのような「一貫性(coherence)」
を備えているのか、について検討する。後者では、文章・テクストの統括段落がどの ように位置するか、どのような「統一性(unity)」を備えているのか、について検討 する。
「題材の配列」と「統括機能」を分析する前に、まず新聞社説の構成の一部分であ る「見出し」について紹介する。次に「段落とは」何かについて論じ、日中両言語の 新聞社説における段落の捉え方及び段落の連接について分析を行う。また本章の最後 では、新聞社説の最初の1文である冒頭文及び最後の1 文である末尾文にも注目し、
新聞社説のテクスト構造において非常に重要である冒頭文と末尾文には、どのような 工夫が施されているのかを明らかにする。