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分析結果と考察

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第 9 章 ミクロ構造の形態指標(a):指示表現

10.5 分析結果と考察

『朝日』の原文における接続表現がその中国語版に対応しない例である。(69)「ただ」

は日本語では「補足型」であるが、中国語版では「逆接型」の「然而」が用いられる。

(70)「一方」は「対比型」であるが、ここでも逆接型の「然而」が用いられている。

10.4.2 『朝日』と中国語版の一方のみで接続表現が用いられたケース

(71) a.国が最初の公害病と認めたのは1968年。それから約半世紀へた今月、被害者

団体と原因企業の三井金属が「全面解決」に向けた合意書に調印した。

(朝日2013/12/19-2)

b.1968年,日本首次将痛痛病认定为公害病。历时约半个世纪直到本月,受害者团

体与污染源企业三井金属公司终于达成共识,签署了“彻底解决”该问题的合意 书。

(72) a.そもそも産児制限という制度自体、現代の人権感覚に反するものだ。

(朝日2014/01/16-1)

b.计划生育制度本身,原本就违反现代的人权观念。

(73) a.前年割れが続いていた中国からの訪日実は、昨年秋から急回復しており、は ずみをつけたい。 (朝日2014/01/15-1)

b.此前中国访日游客人数曾连续低于上一年,但从去年秋天开始快速回升。所以希 望能加速对中国放宽签证的步伐。

(74) a.学生に最低限必要な労働法の知識を教えることも大切だ。アルバイトの時給 にも最低賃金が適用されるし、働いた時間に応じて賃金を受け取る権利がある。

(朝日2014/12/26-2)

b.此外,向学生们教授最低限度需要的劳动法相关知识也是极其重要的。例如,最 低工资保障同样适用于打工的按时给薪,以及劳动者有权利按照工作时间核算工资 等。

(71)(72)は『朝日』の原文では接続表現が用いられたが、中国語版では使用されな かった例である。原文では(71)「それから」(72)「そもそも」の「添加型」と「転換 型」が見られたが、中国語版では文と文の間に接続表現が見られなかった。一方、

(73)(74)は『朝日』の原文では接続表現が用いられなかったが、中国語版では使用さ れた例である。(73)原文では「連用形+テ」を用いて理由を表現しているのに対し、

中国語版では「順接型」の「所以」(だから)を使用している。(74)中国語版では「添 加型」の「此外」(このほか)、「同列型」の「例如」(例えば)が見られたが、原文で は接続表現の使用は見られなかった。

29 新聞社説における接続表現の割合と平均段落数

日本語 中国語

新聞名 朝日新聞 読売新聞 西日本新聞 新京報 北京青年報

総文数 1390 1340 1031 1320 1468

総接続数 157(11.29%) 52(3.88%) 129(12.51%) 275(20.83%) 222(15.12%) 総段落数 717 801 477 476 427 平均段落数 12.8 14.8 9.9 7.8 7.0

30 日中の新聞社説における各接続表現の出現率

日本語 中国語

新聞名 朝日 読売 西日本 新京報 北青報

①順接型 19(12.10%) 5(9.62%) 18(13.95%) 32(11.64%) 32(14.41%)

②逆接型 70(44.59%) 28(53.85%) 36(27.91%) 102(37.09%) 87(39.19%)

③添加型 28(17.83%) 2(3.85%) 28(21.71%) 90(32.73%) 73(32.88%)

④対比型 13(8.28%) 4(7.69%) 19(14.73%) 3(1.09%) 4(1.80%)

⑤転換型 3(1.91%) 0(0%) 7(5.43%) 0(0%) 0(0%)

⑥同列型 6(3.82%) 5(9.62%) 9(6.98%) 45(16.36%) 24(10.81%)

⑦補足型 18(11.46%) 8(15.38%) 12(9.30%) 3(1.09%) 2(0.90%)

合計 157(100%) 52(100%) 129(100%) 275(100%) 222(100%)

20 日中の新聞社説における各接続表現の出現率

表29から分かるように、接続表現総数の出現率は、高い順から『新京報』『北青報』

『西日本』『朝日』『読売』であり、それぞれ新聞社説総文数の20.83%、15.12%、12.51%、

11.29%、3.88%の割合を占めているが、さほど高くないことが分かった。接続表現は 文章の論理展開を分析するのに重要であるが、实際の書き言葉での使用率はそれほど 高くなく、多くの場合10%台で、10%を下回る文章も尐なくない(石黒2009、範2010)。 日本語の接続表現の出現率は中国語より尐なく、特に『読売』は非常に低かった。こ

れは日本語の新聞社説の「段落数」に関係していると考えられる。『朝日』『読売』『西 日本』の平均段落数は 12.8、14.8、9.9 であり、『新京報』『北青報』段落数の 7.8、7 を上回っており、改行箇所が多いことが分かる。その分、接続表現の出現率は尐なく なっている。特に『読売』の段落数は『新京報』と『北青報』のおおよそ2倍である。

次に接続表現の分類に関しては、表30及び図20から分かるように、日中両言語の 共通点として、「逆接型」「添加型」「順接型」が多く、「転換型」が尐ないことが挙げ られる。今回の調査では、『読売』『新京報』『北青報』における「転換型」の例は見 られなかった。表現別に見ると、日本語では「逆接型」の「だが・しかし」、「添加型」

の「そのうえ・さらに・また」、「順接型」の「そのため、そこで」の出現率が高かっ た。一方、中国語では「逆接型」の「但是(しかし)・然而(しかしながら)」、「添加 型」の「此外(このほか)・同时(と同時に)」、「順接型」の「因此(だから)・那么

(それなら)」の出現率が高い。相違点としては、日本語の新聞社説では「補足型」(た だ)、「対比型」(一方)が多く見られるのに対し、中国語では「同列型」(也就是说(つ まり)・比如(例えば))が多用されていることが挙げられる。以下の表31と表32の

『朝日』と『新京報』における接続表現の内訳を参照されたい。

31 『朝日新聞』における接続表現の内訳

接続表現157(100%) 出現数

第二に 1

もとはといえば 1 第三に 1

ならば 1 ほかにも 1

そうなると 1 そのうえ 4

これで(は) 5 しかも 2

そこで 1 それどころか 1

ならば 1 さらに 3

だからこそ 1 また 9

そうであれば 1 同時に 1

この結果 1 その後 3

その結果 1 この後 1

いずれにせよ 1

そのために 3 一方 6

このため 1 一方で 6

反面 1

だが 32

しかし 17 そもそも 3

それでも 5

だからといって 3 例えば 5

なのに 1 特に 1

それなのに 3

それが 3 というのも 1

ところが 6 ただ 15

ただし 2

そして 1

⑥同列型6(3.82%)

※左側の続き

①順接型19(12.10%)

④対比型13(8.28%)

②逆接型70(44.59%)

⑤転換型3(1.91%)

⑦補足型18(11.46%)

③添加型28(17.83%)

32 『新京報』における接続表現の内訳

接続表現例275(100%) 出現数

再次(第三に) 2

为此(このために) 1 其二(第二に) 2

因此(だから、そのために) 9 再者(その上、さらに) 1 源于此(そのために) 1 此外(このほか、その上) 12 因而(だから、それによって) 3 另外(さらに、加えて) 4

那么(それなら) 8 还有(そのうえ) 2

所以(だから) 4 除此之外(このほか) 1

可见(…であることは明らかだ) 3 同样(同様に) 2 因为(…なので、…だから) 1 同时(同時に) 1 如此一来(そうなると) 1 与此同时(これと同時に) 2 结论显示(結果) 1 另一方面(一方、そして) 6 同理(同じ道理、同様) 2 但(是)(しかし、けれども) 46 随后(そのあとすぐに) 1

可(是)(しかし) 7 最终(最後に) 1

不过(でも) 5 之后(その後、それから) 2

然而(しかし、しかしながら) 6 接下来(続いて) 1 而(しかるに) 29 而后(その後、それから) 1 不然(そうでないと) 2

尽管如此(それでも) 1 相反(逆に、反対に) 1 尽管说(確かに…だけれども) 2 抑或(文語・それとも) 1 固然(もとより…だが) 1 或者说(あるいは) 1 饶是如此(それにもかかわらず) 1

退一步说(一歩譲っても) 1

不管怎么说(…にかかわらず) 1 也就是说(つまり) 6 说到底(結局のところ) 6 更何况(さらに、その上) 1 毕竟(結局のところ、つまり) 4 更别说(言うまでもない) 1 归根到底(結局、つまりは) 1 再加上(に加える) 1 说白了(はっきり言うと) 1 而且(その上、かつ、さらに) 1 也即(即ち) 1

更(さらに) 5 言下之意(つまり) 1

进一步(さらに、いっそう) 1 总而言之(総じて言えば) 1 再说了(それに、さらに) 1 X+如(比如,例如,譬如) 21 而(そして、それに) 28 像(たとえば…のように) 3

二是(第二に) 3

最后(最後に) 1 只不过(ただ…に過ぎない) 2

其次(次に) 4 只是(ただ) 1

⑤転換型0(0%)

⑥同列型45(16.36%)

③添加型90(32.73%)

⑦補足型3(1.09%)

※左側の続き

①順接型32(11.64%)

②逆接型102(37.09%)

④対比型3(1.09%)

また、『朝日』の中国語版における接続表現の分析結果は、以下の表33に示す通り である。

33 『朝日新聞』の原文とその中国語版における接続表現の出現率

『朝日新聞』原文 『朝日新聞』中国語版 総文数・総接続数・割合 565文、63(11.15%) 559文、90(16.10%)

総段落数・平均段落数 298段、13.6段 237段、10.8段

①順接型 7(11.11%) 13(14.44%)

②逆接型 30(47.62%) 49(54.44%)

③添加型 8(12.70%) 24(26.67%)

④対比型 7(11.11%) 2(2.22%)

⑤転換型 3(4.76%) 0(0%)

⑥同列型 2(3.17%) 2(2.22%)

⑦補足型 6(9.52%) 0(0%)

表33の『朝日』の中国語版で得た結果は、表30で示した結果とほぼ同様であるこ とが分かる。まず接続表現総数の出現率は、『朝日』原文とその中国語版はそれぞれ

11.15%、16.10%であり、一文章の平均段落数は13.6、10.8である。原文では改行箇所

が訳文より多いため、その分、接続表現の出現率は尐なくなっている。次に接続表現 の分類に関しては、原文と訳文ともに、「逆接型」「添加型」「順接型」が多かった。

しかし原文では「対比型」と「補足型」も多く見られたのに対し、訳文ではあまり見 られなかった。そして、訳文では「転換型」と「補足型」の例はなかった。

10.5.2 考察

本節では、日中両言語の新聞社説における接続表現の分析結果をもとに、考察を行 い、日中両言語の接続表現の使用实態を解明する。

まず日本語の新聞社説における接続表現総数の出現率は、中国語より尐ない。特に

『読売』の接続表現の使用率は非常に低かった。これは日本語の新聞社説の「段落数」、

つまり改行箇所が多いことが一因であると考えられる。「接続表現の出現率の低下は、

接続表現の機能が『改行』に代用される可能性が増したことによるものであろう」と 西(1995:88)で指摘されているように、日本語の新聞社説は改行(段落数)が多い ために接続表現が尐ないのである。

次に接続表現の分類に関しては、日中両言語の共通点として「逆接型」「添加型」「順 接型」が多く、「転換型」が尐ないことが挙げられる。市川(1978)は、接続語句に は「補助的用法」と「必須的用法」があると主張する。例えば「また」、「そして」、「一 方」、「それとも」、「すなわち」、「つまり」などは補助的用法としての傾向が強く、「と ころが」、「しかし」「そのために」「だから」「ともあれ」「そのかわり」などは必須的 用法としての傾向が強いと述べている。つまり、「逆接型」は必須的用法の傾向が高

く、接続表現を省略してしまうと読み手に違和感を与える展開になる可能性があるた め、省略しにくく、日中ともに多く出現している。また新聞社説というジャンルでは、

最初に提示した意見に後で反論するパターンが多く、書き手の意見を明示するために も「逆接型」の接続表現が多用されると考えられる。

一方、「転換型」が尐ない理由としては、新聞社説の書き手は一つの話題を中心に 意見や主張を述べており、別の内容に転じることが尐ないことが考えられる。今回の 分析資料『新京報』『北青報』及び『朝日』の対訳版では、「転換型」は一例もなかっ た。日本語の接続表現の「転換型」は、中国語においては接続表現を使用しないこと が多い77。5.3.4.2 節で挙げた例(75)のように、原文では「転換型」の「そもそも」が 用いられたが、中国語訳文では接続表現は見られなかった。

(75) a.そもそも産児制限という制度自体、現代の人権感覚に反するものだ。(再掲)

b.计划生育制度本身,原本就违反现代的人权观念。

日中両言語における接続表現の相違点として、日本語の新聞社説では「補足型」(た だ)、「対比型」(一方)が多く見られたのに対し、中国語では「同列型」(也就是说(つ まり)・比如(例えば))の多用が見られた。5.3.4.1節で挙げた例(69)、(70)は、『朝日』

原文ではそれぞれ「補足型」の「ただ」と「対比型」の「一方」が用いられていたの に対し、中国語版ではそれぞれ逆接型の「然而(しかし)」が用いられている。その ため、日本語の新聞社説では「補足型」や「対比型」が中国語より多い。

「ただ」などの補足の接続表現に関して、川越(2006)はコミュニケーション上の ストラテジーの一方法として、<見せかけの重点はずし>という概念を提案し、話し 手は实はそこに重点を置きたいのだが、聞き手に配慮して、わざと補足情報であると 示すことで、押しつけがましさを減らす効果を狙うものであると述べている。新聞社 説における「補足型」も聞き手や読み手への配慮を示しつつ、書き手の主張を提示す るという特徴が見られる78

一方、中国語では「同列型」(也就是说(つまり)・比如(例えば))の多用が見ら れた。中国語の新聞社説は、書き手が意見や主張を提示してから、その関連の例を挙 げる傾向にある。そのために、接続表現の「比如(例えば)」などが用いられ、自分 の意見を分かりやすくかつ説得できるようにしていると考えられる。また、話をまと める際に、「也就是说(つまり)」の多用が確認された。

77 範(2012:71)を参照した。

78 今までの分類と異なり、「ただ」を「補足型」ではなく「逆接型」として扱う研究も見られた(石黒

2008、2009)。『しかし』のかわりに『ただ』という接続詞が用いられることもある。先行文脈で述べら

れたことを一応は肯定しつつ、部分的に引っかかるところがあるのでその部分だけ修正させてもらうよ ということを表すのに使う。逆接のなかでは比較的穏やかな表現であるため、読み手の存在を意識し、

抵抗感なく読んでもらおうとするときに使われやすい接続詞である」(石黒2008a:80)

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