第 9 章 韓国人日本語学習者の言語能力レベル別にみた共話的反応の使用実態
9.5. 日本語母語話者との比較からみたKJLの共話的反応の型および機能の使用状況 . 147
9.4.で明らかになったKJLの共話的反応の使用状況は次の表41のようにまとめられる。
学習者の言語能力レベルごとに、共話的反応の型および機能の出現状況が母語話者の場合 とどのような違いがあるのかを分析すると、学習者の言語能力レベルが初級から超級へと 上がるにつれて、その共話運用が母語話者のそれに近づいていく過程が観察できる。
表 41 KJLの言語能力レベル別共話的反応の型および機能の使用状況
共話的反応の型においては、「先取り」、「遮り」、「繰り返し」の使用が「言い換え」の使 用に先立つことが分かった。また、共話的反応の型の機能においては、「補足」、「反論」、
「同意」の機能の使用が「相手助け」の使用に先立つことが分かった。母語話者が運用し ている機能のうち、「確認」だけはKJLにおいて使用できていないことも分かった。
水谷(1995: 6)は、共話的な話し方は、組織的・体系的に日本語の構造面をきちんと学ん だ学習者が苦手とすることが多く、テレビなどで活躍している外国人タレントはたいてい 共話的な話し方が身についているという。水谷は、これは日本の社会で実践的に身につけ た日本語が共話的な話し方に基づくものだからだと主張しているが、今回の調査対象者で ある上級・超級の学習者の中には3年、5年、22年間の日本滞在経験があるにも関わらず、
上記表41に示したように、共話の運用については、母語話者とは異なる様相を見せている。
言語能力 レベル
機能 初級(5回) 中級(5回) 上級(13回) 超級(16回) NS(28回)
確認 先取り(8回)
繰り返し(1回)
相手助け 先取り(1回) 先取り(2回) 先取り(3回)
同意 繰り返し(1回) 言い換え(1回)
先取り(1回)
言い換え(1回)
遮り(1回)
先取り(3回) 言い換え(1回)
遮り(1回)
反論 遮り(1回) 先取り(1回) 遮り(1回) 遮り(4回)
先取り(3回) 遮り(1回)
問い返し(1回)
補足 先取り(3回) 先取り(2回) 遮り(1回)
遮り(7回) 先取り(3回) 言い換え(1回)
遮り(4回) 先取り(2回) 言い換え(1回)
先取り(4回) 繰り返し(1回)
遮り(1回)
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具体的には先述したように、日本語学習者の共話的反応は「遮り」の型をとり、「補足」の 機能を果たすことが多いのに対し、日本語母語話者のそれは「先取り」の型をとり、「確認」
の機能を果たすことが多い。
本章で示されたこの結果は、水谷の主張と相容れないように見える。だが、それについ ては、水谷(1995:6)の「共話は、『仲間うち』の気楽な話し方であるから、共通の理解のな い「外」の相手と話すときには通用しない」という言及を考慮する必要がある。OPIのイ ンタビュアーとインタビュイーという対人関係は、初対面である上に、相手がインタビュ アーという立場を意識しながらの会話なので、普段の雑談会話とは違い、決して仲間うち の気楽な話し方ができる関係ではない。これは、水谷の想定とは異なる場面での共話を観 察した結果なのである。そして、水谷の想定とは異なる場面での共話を観察したことによ り、超級になっても唯一、使いこなせない「確認」の機能については、自然習得が難しく、
日本語教育による支援を考える必要があることが分かった。共話的反応の型と機能を指導 項目として教えることを前提に、その教材例設計を試みる必要もあろう。具体的には13章 で後述する。
9.6. 本章のまとめ
本章は、日本語学習者と母語話者のOPIをデータとし、日本語学習者の共話的反応の型 の言語能力レベル別の使用状況を比較分析した。共話的反応の型においては、初級では「先 取り」「遮り」「繰り返し」の使用が確認され、中級からはさらに「言い換え」の使用も確 認された。機能については、初・中級では「補足」「反論」「同意」の機能での使用が、上・
超級ではさらに「相手助け」の使用も確認された。
分析の結果にもとづき、共話的反応の型においては、「先取り」、「遮り」、「繰り返し」の 使用が「言い換え」の使用に先立つことが分かった。また、共話的反応の型の機能におい ては、「補足」、「反論」、「同意」の機能の使用が「相手助け」の使用に先立つことが分かっ た。さらに、学習者と母語話者のそれぞれが用いる、共話的反応の型およびその機能の違 いとしては、母語話者に見られた「問い返し」と「確認」の共話的反応の型と機能がKJL には見られなかったことが挙げられる。また、学習者は「遮り」の型を最も多く用いてい るのに対し、母語話者は「先取り」の型を最も多く用いていることが確認された。
日本語の共話は、一般には母語話者との日々のコミュニケーションを通じて習得される と推測されるが、日本滞在3年以上の上級・超級レベルの学習者の運用状況から、自然習得 の難しさも確認できた。「問い返し」の共話的反応の型や「確認」機能は習得が困難であり、
自然習得では解決し難い。聞き手としての共話的反応の型の習得を促進し、円滑なコミュ
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ニケーションを行うために日本語教育による支援が必要といえる。
本章までは、韓国人日本語学習者の言語能力の観点から、聞き手言語行動の使用実態や その特徴について考察した。第4部の第10章からは、母語話者同士の会話場面と接触場面 における談話展開に着目し、聞き手言語行動の構造と展開パターンなどについて論じる。
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