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第 9 章 韓国人日本語学習者の言語能力レベル別にみた共話的反応の使用実態

第 4 部 談話展開の観点

12.4. 日本語母語話者とインドネシア人日本語学習者の共話展開のパターン

本節では聞き手が話し手の発話を引き取り完結する共話に注目し、共話をなす後行発話 である共話的反応が談話展開にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにするために、

まず、「話し手の先行発話―聞き手の共話的反応」の有機的関係に着目し分析した。以下の 図41、図42は具体的な共話展開パターンを図示したものである。図の中では、左から右に 進むにつれ話し手発話、先行あいづち、共話的反応の型とその機能をそれぞれ違う図形で 示した。また、上から下に進むにつれ出現数が多い順から少ない順を示した。さらに、そ れぞれの項目間の有機的な関連性が深い場合は太い線で示した。

図 41 母語話者の共話展開パターン 図 42 日本語学習者の共話展開パターン 日本語母語話者は、図41に示されている通り、「先取り」、「繰り返し」の共話的反応によ って、「言いよどみ」、「言いさし」の表現形式による話し手の先行発話に続く部分を予測し たり、確認したりすることにより、話し手発話の内容を方向づける。このような談話展開 は母語話者に最も多くみられる。一方、インドネシア人日本語学習者においては、図42に 示されている通り、「先取り」などの共話的反応の型によって、「言いさし」の表現形式に よる話し手の先行発話で提供された情報にさらに詳しい情報をつけくわえる展開が最も多 くみられる。そして、それが話し手に談話展開のきっかけを与えている。

12.4.1. 話し手と聞き手のコミュニケーション成立の場合

本節からは、省略されている部分に対する共話的反応と、明示されている部分に対する

言いよど み10回

問い返し6回

繰り返し6回

言い換え2回 言いさし

9回

遮られに よる中止 4回

相手助け 5回

同意2回 補足4回 確認12回 先取り8回

理解・納得の「はい、はい」 遮り1回 疑問・否定の「そうね」

同意の「うん、そうそうそう」

母語話者の共話展開パターン

話し手発話 先行あいづち 共話的反応の型 共話的反応の型の機能

インドネシア人学習者 日本語母語話者

インドネシア人日本語学習者の共話展開パターン

言いさし 16回

言い換え5回

繰り返し4回

遮り1回 遮られに

よる中止 6回

言いよど み4回

相手助け 5回

同意2回 確認3回 補足14回

反論2回 先取り15回

問い返し1回 同意の「そう」・「はい、そう

です」・「そう、そうですね」

話し手発話 先行あいづち 共話的反応の型 共話的反応の型の機能

日本語母語話者 インドネシア人日本語学習者

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共話的反応について、具体的な会話例をもとに共話展開のパターンを探ってみたい。

12.4.1.1. 母語話者の省略されている非発話部分に対する共話的反応

次の会話例102)では、1I2で母語話者の話し手が「子供向けの雑誌とか、 」と言 いさしているところを、理解・納得のあいづち「はい、はい」と「なんかね」でまず話順 を取ってから、「~例文とか、、」という実質的内容を伴った共話的反応で先取りし、確認を とっている。2J2の先取りにより話し手が言うつもりで言えなかった省略された部分を聞 き手が予測し、「~例文とか、、」と共話的反応を示していると判断される。その後に続く3

I2の発話「はい」に対する応答である4J2 の「どういった感じですか?」という発話から、

J2は会話の主導権を取り、日本語学習者への質問につなげ、話し手の発話の展開を誘導し ていることが窺える。この結果と関連して、森本(2002)は、母語話者が発話の主導権をと ることは一見相手の発話権を侵害しているようにもみえるが、相手の言いさした発話を引 き取らず放置しておけば、会話は進行しなくなることを指摘している。つまり、母語話者 の共話的反応は相手の発話権を無視しているわけではなく、会話への進行という円滑なコ ミュニケーションにつながる。したがって、その役割は重要であるといえる。

会話例102) 子ども向けの本の話:I2-J2の会話 1 I2 子供向けの雑誌とか,,

2 J2 はい、はい。なんかね、例文とか,,

3 I2 はい。

4 J2 どういった感じですか?

続いて、会話例103)でも、4I5で仕事が金曜日は休みだという話しを聞いて大学院の授業 日について尋ねられ、学習者の話し手が「金曜日と土曜日」と言いさしたところに、5J1で

「だからいっしょにできるんですね」と先取りし、確認を取っている。この5J1の共話的反

応は、I5の話し手側からすると、4I5で「金曜日と土曜日は授業がないので大学院と仕事が

一緒に並行できます」という主旨の発話の波線部が聞き手に先取りされ省略された部分で あり、母語話者の聞き手側からすると話し手発話を聞きながら理解した部分でもある。そ の後に続く「日本の会社。で、本社が大阪?」という発話は、共話的反応の2J5発話から予 測できる事柄について問いかけ、確認を取っているが、これは「授業のある日」→「日本 の会社」→「本社が大阪」と、関連した話題を広げているといえるだろう。

187 会話例103) 大学院と仕事の両立の話:I5-J1の会話

1 J1 へーあそうなんだ、じゃ金曜日は休みなんですか?

2 I5 金曜日は休み

3 J1 あー、授業は金曜日だけ?大学院は

4 I5 金曜日と土曜日,,

5 J1 だからいっしょにできるんですね

6 I5 はい、だから…

7 J1 あーなるほど、じゃあこれからもじゃその日本の会社なんですか。それも

8 I5 そうなんです、日本の会社です

9 J1 で、本社が大阪?

会話例104)では、話し手1I4の「はい、結構、あの、渋滞が」という言いさしに対して、

話し手発話で省略されている発話意図を読み取り、聞き手は2J4で「渋滞が、[地名2]て渋 滞が多いですよね」と共話的反応を示し内容を繰り返すことで、確認を求めている。

会話例 104) バンドンの渋滞の話:I4-J4の会話

1 I4 はい、結構、あの、渋滞が,,

2 J4 渋滞が、[地名2]て渋滞が多いですよね。

3 I4 はい。あの、週末の時に(うん)はい。

以上から、母語話者は話し手の省略された発話意図を理解し多用な共話的反応の型を用

い、2人でひとつの発話を作り上げる共話を構成することで、談話展開を支えることが分か

った。

12.4.1.2. 学習者の明示されている発話部分に対する共話的反応

次の会話例105)では、1J1では「東京にはまだ(行ったことがないですか)」と考えられる 話し手の発話意図が「~東京にはまだ、」と言いさしている。これを引きとり聞き手発話2 I5では、先行する話し手の発話で省略されている「行ったことがないですか」に対してで はなく、明示されている「~東京にはまだ」に対して「まだ~」と先取りし、大阪から遠 いからと補足している。

会話例105) 東京体験希望の話:J1-I5の会話

1 J1 じゃあ、東京にはまだ,,

2 I5 まだ、遠いですね、大阪から(うーん)もし新幹線で【【